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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
ピッカピカの三年生一学期

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第1378話 宝物の如き煌めき

 クロエに手を引っ張られながら、暗黒神殿庭園に移動したライト達。

 早速クロエの誕生日を祝うための席の準備が始まった。


 まずレオニスが空間魔法陣を開いて大きなテーブルと椅子八脚を出し、ラウルが同じく空間魔法陣から料理や飲み物、スイーツを次々と出し、ライトとマキシがそれを各人用に綺麗に並べていく。

 支度が整うまでの間、クロエと闇の女王は少し離れたところでラーデと歓談している。


 そうして全ての準備ができたところで、ライトがクロエ達に向かって声をかけた。


「ココちゃーん、闇の女王様ー、ラーデー、準備ができたからこっち来てー」

『はーい♪』


 ライトの呼びかけに、それまで地べたにぺったりと座っていたクロエがすぐさまスクッ!と立ち上がり、ウキウキとした足取り?で庭園の方に向かっていく。

 そんなルンルン気分のクロエの後ろを、闇の女王とラーデが微笑みながらついていく。


「さ、ココちゃんはここに座って!」

『うん!』

「そしたらレオ兄ちゃんはこっち、闇の女王様はこちらに座ってください!」

「はいよー」

『うむ』

『♪♪♪♪♪』


 ライトの案内でまずクロエが席に座り、その右側にレオニス、左側に闇の女王が着席した。

 大好きなパパ(レオニス)ママ(闇の女王)に挟まれて、クロエはますますご機嫌になっている。

 その後他の面々が各々席に着き、全員が座ったところでライトが立ち上がった。


「では、今からココちゃんの誕生日をお祝いする会を始めまーす!ラウル、バースデーケーキの蝋燭に火をつけてー」

「了解ー」


 お誕生日会の司会を務めるライトの指示に従い、ラウルがテーブル中央にある大きなバースデーケーキの真ん中に一本だけ立ててある蝋燭に火を灯した。

 ラウル特製バースデーケーキは生クリームたっぷりのベーシックなショートケーキタイプで、直径40cm、高さ20cmはある巨大なホールケーキだ。

 ケーキの上には大粒の苺を始めとして、シロップ漬けの桃やブルーベリー、キウイなど色とりどりのフルーツがこれでもか!というくらいにたくさん盛り付けられている。


 そしてラウルが蝋燭につけた火は、ラウルの右手人差し指の指先から火魔法で出した極々小さな火。

 その小さな火が蝋燭の芯に燃え移り、ポゥ……と温かくて柔らかな灯りがクロエ達の顔を照らす。

 暗黒の洞窟最奥の間を照らしている、普段の紫炎とは違うオレンジ色の灯りが珍しいのか、クロエが魅入られたように息を呑みつつじっと見つめ続けていた。


「そしたらぼくが『ハッピーバースデー』を歌うので、皆はいっしょに歌ったり手拍子で参加してね!」

「「「「♪ハッピーバースデー、トゥーユー♪ハッピーバースデー、トゥーユー♪……」」」」


 一歳を迎えたクロエのために、ライトが『Happy Birthday to you』を朗々と歌い上げる。

 ライトに合わせてレオニス、ラウル、マキシの三人も歌いながら手拍子をし、歌を知らないラーデやクロエ、闇の女王は手拍子だけで参加する。

 今日の主役のクロエやご機嫌で歌っているライト達はもちろんのこと、ラーデも闇の女王もずっと楽しそうに微笑んでいた。


「「「「ハッピーバースデー、ディア、ココちゃーん……♪ハッピーバースデー、トゥーユーーー♪」」」」

「ココちゃん、お誕生日おめでとう!」

「「「『『おめでとう!!』』」」」

『皆、ありがとう!』


 ライト達の祝いの言葉に、クロエが花咲くような笑顔で応える。

 するとここで、レオニスがクロエに話しかけた。


「ココ、そしたらケーキの上にある蝋燭の火に息を吹きかけて消しな」

『え? こんなに綺麗な火なのに、もう火を消しちゃうの?』

「これは、人族が誕生日を祝う時に必ず行う儀式の一つでな。ケーキに蝋燭を立てるのは『神様に願いを届けるため』、そしてその火を消すのは『一息で火を吹き消したら願いが叶う』と言われているんだ」

『そうなのね!じゃあ、まずお願い事を決めてからココが消すね!』


 蝋燭の火を消せと言うレオニスに、クロエがとても残念そうな顔をしながら問い返す。

 しかし、何故蝋燭の火を消すのかをレオニスが優しく解説をする。

 そして蝋燭や灯した火を消す意味を聞いたクロエは、再び嬉しそうな顔に戻ってからしばし思案する。レオニスが言っていた願い事を何にしようか、懸命に考えているようだ。


 そして願い事が決まったのか、程なくしてクロエがバースデーケーキの方に身を乗り出して顔を近づけた。

 クロエは大きく息を吸い込み、バースデーケーキの上に立てられた蝋燭の火を消すべく、フーーーッ!と一気に息を吹きかけた。

 たった一本の蝋燭なので、その小さな火を消すのは容易い。

 暗黒神殿の庭園を照らしていたオレンジ色の小さな火が消えて、いつもの仄暗い紫炎の灯りに戻る。


 蝋燭の火を無事消したので、ライトが改めてクロエに声をかけた。


「ココちゃん、一歳の誕生日おめでとう!何をお願いしたの?」

『えーとねぇ……パパとママとお兄ちゃん達とラーデ君、皆でまたココのお誕生日をお祝いできますように!ってお願いしたの』

「そうなんだ!とても素敵な願い事だね!」


 ライトの問いかけに、照れ臭そうに答えたクロエ。

 もじもじしながら答えるクロエの、何と愛らしいことよ。

 この答えを聞いたレオニスが、クロエに話しかけた。


「何だ、ココ、そんなことならわざわざお願いしなくたっていいのに。だってこれからは俺達が生きている間、毎年ずっとこの庭園でココの誕生日を皆でお祝いするんだからな」

『パパ、ホント!? ココのお願い事がもう叶っちゃったの!?』

「ああ。闇の女王さえ良ければな」

『ママ、ココのお願い叶えてくれる!?』


 レオニスの言葉を聞いたクロエが、ガバッ!と闇の女王の方に身体を向けて問うた。

 その問いかけに、闇の女王が一瞬はたとした顔をしつつもすぐに気を取り直し、コホン、と軽く咳払いしながら答えた。


『当然です。この善き日を祝わないなんて、絶対にあり得ません』

『ありがとう、ママ!大好き!』


 闇の女王の快諾に、クロエが闇の女王に抱きついて喜んでいる。

 そしてすぐにクロエがライト達にも問いかけた。


『ライトお兄ちゃんもラウルお兄ちゃんも、ラーデ君もマキシ君も、またココの誕生日をお祝いしに来てくれる!?』

「もちろんだよ!これから毎年お祝いしようね!」

「何をさて置いても駆けつけよう」

「僕も、何が何でもお祝いしに来ます!」

『世界中のどこにいようとも、この日はココのために馳せ参じると誓おう』

『皆、ありがとう!』


 レオニスや闇の女王に続き、ライト達も即時快諾する。

 こんなささやかで可愛らしい願い、大喜びで受け入れて当然であり、断ることなど天地がひっくり返っても絶対にあり得ない。


 するとここでラウルが立ち上がり、空間魔法陣からケーキナイフを取り出した。


「さあ、蝋燭も消したことだし、皆でケーキを食べるか」

「『賛成ーーー♪』」

「均等には切らずに、ココちゃんに一番大きなケーキをあげるからな」

『ラウルお兄ちゃん、ありがとう!……あ、ラウルお兄ちゃん、その蝋燭、ココにちょうだい!』

「了解。はいよ」

『ありがとう!』


 早速ケーキを切り分けていくラウル。

 その前にケーキの上から蝋燭を取り除いたのだが、その蝋燭をクロエが欲しがった。

 その願いを聞いたラウル、ケーキから蝋燭を引き抜いてすぐにクロエに手渡した。


 ラウルから蝋燭を受け取ったクロエが、己の手のひらの中にある一本の蝋燭を愛おしそうに眺め続ける。

 先程までオレンジ色の灯りを灯していた蝋燭。

 ライト達にしてみればただの演出用小物だが、本物の火が灯す温かな光を初めて見たクロエにとって、この蝋燭の灯りは宝物の如き煌めきだった。


 そしてラウルが誕生日会の主役であるクロエに一番大きなケーキを真っ先に取り分けて、その後皆の分を順次分けて配っていく。

 全員にバースデーケーキが渡ったところで、レオニスがパン!と両手を合わせた。

 その動作に、レオニス以外の全員がすぐに同じく手を合わせる。


「よし!じゃあクロエの一歳の誕生日を祝して、皆でケーキを美味しくいただこう!いッただッきまーーーす!」

「「「『『『いッただッきまーーーす!』』』」」」


 レオニスの食事の挨拶に、ライト達が元気よく追随する。

 こんな誕生日会という場でさえも食事の挨拶を欠かさないとは、ある意味ものすごく生真面目である。


 そうして皆でフォークを持ち、ケーキを食べ始める。

 しつこくない程度の甘さの生クリームとフルーツの爽やかで適度な酸味が相まって、実に美味なケーキだ。

 あまりの美味しさに、皆パクパクとケーキを頬張り続ける。


『ラウルお兄ちゃん、このケーキ、すっごく美味しい!』

「うん!ケーキだって何だって、ラウルが作る料理は全部美味しいよね!」

「お褒めに与り光栄だ」

「ラウルよ、俺のバースデーケーキはこれの50cmサイズで頼む」

「何だその巨大サイズは……そんなのほとんどオーガ用サイズじゃねぇか」

「ラウル、僕の誕生日にもこのケーキ作ってね!……って、僕は正確な誕生日が分かんないけど」

「マキシの誕生日か、確かお前は秋に生まれたんだったよな? なら秋の季節でマキシが好きな日を誕生日に決めちまえばいい」

『ラウル、我も来年にこのケーキを所望したい』

「ラーデの誕生日は、こないだの討滅戦が起きた日でいいよな?」


 極上の絶品ケーキを皆口々に褒め称え、その作り手であるラウルに皆が皆次々と話しかける。

 その話は主に『自分の誕生日の時にも、これと同じケーキを作って欲しい!』という要望が多数を占めていて、中でも特にレオニスの注文が一際おかしいような気がするが。多分気のせいだろう。キニシナイ!


 暗黒神殿守護神であるノワール・メデューサ、クロエの誕生日会は、ラウル特製バースデーケーキのおかげで賑やかでとても楽しい始まりとなった。

 クロエの誕生日を祝う会の始まりです。

 ぃゃ、ホントは各自プレゼントを出すところまで書くはずだったんですが。バースデーケーキを食べ始めたところで既に4000字超えてもた…( ̄ω ̄)…


 クロエ達のような高位の存在は、自分達の誕生日を祝うという習慣がない(というか、そもそも人族のように一年を365日とする暦を用いる習慣がない)ので、ライト達が催してくれる人族ならではの習慣が珍しくも面白く興味が尽きないのですよね。

 そのためクロエの反応も全てが新鮮に満ちていて、とにかくワクワクしながら全身全霊で誕生日を楽しんでいる彼女の様子を書きたくて文字数が嵩んだ、というのもあります。


 あと、クロエが蝋燭の火を消す場面を書くに当たり、ふと作者の中に生じた素朴な疑問。何故誕生日ケーキに蝋燭を灯し、その火を消すのか?

 これまで特に何も考えてきていませんでしたが、拙作で描写するのだからその由来を知らなくてはね!とソッコーでggrksした作者。

 古くは古代ギリシャ時代が始まりで、そのしきたりが一旦途絶えた後15世紀頃のドイツで再び同じような風習が生まれたそうで。

 これは『キンダーフェスト』という風習で、当時は子どもの誕生日には悪魔がやってくると考えられており、子どもをその悪魔から守るためケーキに火をつけたろうそくを立てていたのだとか(゜ω゜)

 こういうのって調べるといろんな話が出てきて面白いですよねー♪゜.+(・∀・)+.゜

 そのおかげで寄り道ばかりして、結果投稿時間がどんどん遅くなるんですけど_| ̄|● ←本末転倒


 てな訳で、ライト達が用意したプレゼントは次話に持ち越し。

 さて、ライトやマキシはともかく、レオニスパパやラウル兄ちゃんは素敵プレゼントを用意できたんでしょうかね?

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