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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
二度目の春休み

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第1364話 ガベリーナの依代

 昨日は予告通りのお休みをいただき、ありがとうございました。

 予定通り、本日からまた連載再開いたします。

 ライトと仲良くなった砂の女王の案内で、建物としてのジャッジ・ガベルの最上階に移動した。

 そこは屋上展望台のようになっていて、屋根のような遮るものが何一つなく360°空が見える。


 しかし、この展望台は不思議なことに、屋外にいるように見えるにも関わらず砂埃が一切吹き込んでこない。それどころか、ノーヴェ砂漠特有の凍てつくような夜風すら吹いていない。

 これは、この展望台が外部から入り込む空気以外の物質を遮断する結界を張っているためだ。


 この結界は、建物としてのジャッジ・ガベル全体を球体状で覆っている。

 砂の女王の解説によると、全体に結界を張ることで砂埃だけでなくノーヴェ砂漠に生息する雑魚魔物や人間達の侵入をも防いでいるのだとか。

 それはつまり、このジャッジ・ガベルの内部に入ることができるのは砂の女王もしくはジャッジ・ガベルの許可を得た者のみということである。


 展望台広間に入ったライトとレオニスが、思わず感嘆の声を上げる。


「うわぁ……ノーヴェ砂漠が一望できますね!」

『ここはねぇ、私のお気に入りの場所なのよー』


 砂の女王がしゃがんで手のひらを床につけ、ライトを降ろす。

 そしてライトを降ろした後の砂の女王が、シュルシュル……とみるみるうちに身体を小さくしていった。

 あっという間にライトとレオニスの身長の中間くらいの背丈になった砂の女王。まるで手品のような変化に、ライトが興奮している。


「砂の女王様、スゴい!身体の大きさを自由に変えられるんですね!」

『私の身体は砂でできてるからねぇー。身体が大きいままだと貴方達とお話しするのにちょっと都合悪そうだから、小さくなってみたのよー。ていうか、貴方の手のひらに乗れるくらいの大きさにもなれるわよー?』

「手のひらサイズの女王様!? もし良ければ見せてもらってもいいですか!?」

『いいわよー』


 ライトのリクエストに、砂の女王が快諾しつつさらに身体を小さくする。

 最終的には20cmくらいになり、本当にライトの手のひらに乗れるサイズになった。

 今度はライトが砂の女王の前にしゃがみ、彼女の前に右手を差し出す。

 そのライトの手に砂の女王がピョイ、と飛び乗った。


 手乗り文鳥ならぬ手乗り女王。ライトが左手で右手を庇うようにして砂の女王を守りながら、展望台に遅れて入ってきたレオニスに見せるべくそっと走り出した。


「レオ兄ちゃん、見て見て!砂の女王様って、身体の大きさを自由に変えられるんだって!」

「ン? おお、こりゃまた可愛らしい大きさになったじゃねぇか」

「でしょでしょ!どの女王様も綺麗で美しくて素敵だけど、この小さな砂の女王様もすっごく可愛い!」

『♪♪♪』


 ライトの手のひらに乗った砂の女王を見て、レオニスが意外そうな顔で驚きつつ眺める。

 先程まで砂の女王と敵対しかけていたレオニスだが、何気にレオニスも可愛いもの好きなのでミニサイズの砂の女王のことを普通に可愛いと思ったようだ。

 そして二人に『可愛い』『綺麗で美しくて素敵』と褒めに褒められた砂の女王、嬉しそうにドヤ顔している。


「砂の女王が身体の大きさを変えられるなら、お茶会に使うテーブルなんかも俺達が普段使うやつでいいな」

「そうだねー。じゃ、砂の女王様、今からお茶会の支度をしますので少し待っててくださいねー。あ、身体の大きさはさっきのサイズでお願いしますね」

『分かったわぁー』


 ライトが床に砂の女王を丁寧に降ろし、レオニスとともにお茶会の準備を始めた。

 レオニスが空間魔法陣からテーブルと椅子を出し、ライトが様々なお菓子や飲み物をアイテムリュックから取り出してテーブルの上に置いていく。

 場所は展望台のド真ん中、ノーヴェ砂漠の満月と星空を思う存分眺めることができる位置である。

 するとここで、ライトがレオニスに話しかけた。


「ねぇねぇ、レオ兄ちゃん、ガベリーナさんへのお茶はどうしよう?」

「ガベリーナか? お茶会で飲み食いできるように何か依代を探しとけ、とは言っておいたし、ガベリーナも見繕うとも言ってはいたが。さて、どうしたかな。砂の女王、この城の中にガベリーナの依代になりそうなもんはあるのか?」

『依代ー? どうだろ、ガベリーナは今までそんなこと一度もしてないはずだしー……』


 ライトの問いかけに、レオニスが答えつつ砂の女王に依代の件を問うた。

 しかし、これまでガベリーナは誰かを迎え入れるために依代を用意したことなど一度もないようだ。

 砂の女王はしばし思案した後、手をポン☆と叩いた。


『じゃあ、私がガベリーナのために砂の人形を作るわ!そうすれば、飲んだり食べたりもできるでしょう?』

「おお、そうできるならそれが一番良さそうだな」

『そしたら早速作るわねー!』


 レオニスの賛同を受けて、砂の女王が早速人形作りを始めた。

 まず砂の女王が手のひらからサラサラと砂を生み出し、レオニスが出した椅子の座面に砂の山を築く。そしてその砂の山の上に女王が手を翳した。

 すると、砂の山が次第に形を変えていき、小さな子供のような形になった。

 高さは約20cmの三頭身体型で、目鼻や髪の毛などの細かい造形はないが二本の腕と手を持ち二本の足で立っている。


 三頭身の砂人形が出来上がり、砂の女王が床に向けて声をかけた。


『ガベリーナー、この人形に入るー?』

『…………おお、砂の女王よ、ありがとう。良い依代が見当たらなくて、困っていたところだ』

『そう、それなら良かったわぁ、じゃあここに入ってねぇー』


 砂の女王の誘いに、数秒遅れてガベリーナの声が聞こえてきた。

 レオニスに依代を探せ、と言われて以降ガベリーナの方でもずっと探していたようだが、これといった適切なアイテムが未だ見つかっていなかったらしい。

 実際この城の中には余分なものなどほとんどなく、住人といえば砂の女王唯一人なのでどの部屋も生活感など微塵もない空間ばかりなのだ。


 砂の女王が急遽作り出した三頭身の砂人形に、早速意識を移したガベリーナ。

 短い腕や手足を動かしたり、頭部にある口をパクパクと開けたり閉じたりして動作を確かめている。

 そしてその場でピョンピョンピョン、ピョン、と三回ほどジャンプした後、訳で改めて声を口を開いた。


『…………ふむ。なかなかに、いや、思った以上に良い感じだ。砂の女王、ありがとう』

『どういたしましてぇ。ガベリーナと私の仲じゃない、このくらいのことお安い御用だわぁ』


 右腕をピッ☆と上に上げた後、ペコリ、と頭を下げて砂の女王に礼を言うガベリーナ。

 三頭身という見た目のせいで、まるで幼子がするような仕草がものすごく愛らしい。

 それを見たライトが、目をキラキラと輝かせながら大絶賛した。


「うわぁー、ガベリーナさん、すっごく可愛い!」

『ぬ? わ、私が可愛い、だとぅ?』

「はい!その砂のお人形さん姿がとーっても可愛いです!」

『そ、それは、砂の女王が可愛らしく作ったからであって、決して私が可愛らしい訳では……』

「そんなことないです!仲良しの砂の女王様にもきちんとお礼を言えるガベリーナさんは、中身というか性格がとても良くて真面目なんですよ!」

『性格が良い、なんて……砂の女王以外の者で、私に対してそんなことを言う者は初めてだ……』


 ガベリーナの見た目だけでなく、中身=性格も褒めちぎるライト。

 ライトもガベリーナとは先程まで、法廷内であれこれと言葉の論戦を交わしていた仲だが、そのことでガベリーナを恨んだり憎しむつもりはない。

 何故ならガベリーナの中に潜むライトへの不信感は、彼女自身どうしようもないところから来ているものだからだ。


 それに、ライトが懸命に訴えた話やBCOのことを聞いた後では、そのどうしようもない本能的な嫌悪を抑えて客人として迎え入れるとまで言ってくれた。

 その言葉や努力の姿勢は、彼女の生真面目さや勤勉さを如実に表している。

 そんなガベリーナの性格を、ライトは公正に評価しただけである。


 椅子の座面に立っている三頭身の砂人形(ガベリーナ)に、ライトが手を差し伸べる。


「ガベリーナさん、その小さな砂の人形では椅子に座ってもテーブルに届かないので、テーブルの上に直接乗っちゃいましょうか」

『何? 机の上に直に座るなど言語道断。それは行儀が悪くてはしたないことだぞ』


 ライトの誘いに、ガベリーナが俄然反論する。

 ガベリーナは法廷内では裁きを下す者であり、行儀の悪いことやマナー違反を厭う傾向にあるのだ。

 しかし、ライトはそんなことを全く気にすることはない。

 他者の同意を得るべく、まずはレオニスに話を振る。


「行儀なんて別に構いませんよ? だってここにいるのは、ぼく達四人だけですし。ねぇ、レオ兄ちゃん?」

「ああ。俺も行儀なんて全然気にしないし、むしろ俺自身そんなに行儀が良い方じゃねぇからな」

「砂の女王様も大丈夫ですよね?」

『もちろんよぅ。ガベリーナのその依代を作ったのは私ですものー。ガベリーナといっしょに美味しいものを食べられるなら、何の問題もないわぁ!』

「……だそうですよ?」

『うぬぅ……』


 レオニスだけでなく砂の女王まで問題ナッシング!と言い放ったことに、ガベリーナが思わず呻る。

 マナー的に問題なしが三人、対してマナー違反を唱えるのはガベリーナ唯一人。

 多数決で言えば三対一でガベリーナの敗けである。

 そして、多数決で勝敗が決まった以上、ガベリーナとしてもそれを無視することはできない。

 三頭身の砂人形の頭が項垂れていたが、観念したように頭をクイッ☆と上げて頷いた。


『……分かった。三対一の多数決に従い、机の上に乗らせてもらおう』

「じゃ、ぼくの手の上に乗っかってくださいねー」

『うむ。お邪魔しまーす』


 話し合いの結果を受け入れて、ライトの指示に従うガベリーナ。

 短い足を懸命に上げながら、ライトの手をよじ登る。

 そして手のひらに乗ったガベリーナを、ライトがそっとテーブルの上に持っていって降ろした。


 テーブルの上には、各種飲み物やラウル特製絶品スイーツが多数並ぶ。

 ライトはガベリーナをテーブルの上に乗せた後、小さな砂人形でも食べられるように一口ドーナツをさらに小さく千切って小皿の上に乗せた。


「さ、だいたいの準備ができたし、そろそろ始めるとするか。いッただッきまーーーす!」

「いッただッきまーーーす!」

『『???』』


 レオニスの食事の挨拶に続き、ライトも元気よく唱和する。

 人族の習慣に疎い砂の女王とガベリーナには、その行動の意味が分からずにきょとんとしているが、まぁ問題はない。

 そうしてノーヴェ砂漠のド真ん中、満月と満天の星空のもとライト達のお茶会が始まっていった。

 ライト達のノーヴェ砂漠でのお茶会準備回です。

 今回何が一番苦労したって、ガベリーナさんの依代問題ですよ。

 適当な無機物にしたら美味しいお茶やスイーツが飲み食いできないし、かといってそれまでほぼ無人状態が長らく続いたガベリーナの体内に、ぬいぐるみやら人形やら飲み食いに適した形の依代があるとは到底思えず。

 とりあえず、お茶会に参加させるためには人の形をした何かにしなければならない。さて、どうしたもんか……と散々散々悩んだ挙句、作者は砂の女王に砂人形を作らせることにしました。

 だって!砂の女王様なら砂を使って何でも作れそうだし!

 その結果、三頭身の可愛らしい依代と相成りました。

 形状で言えば飛騨人形、さるぼぼみたいな感じですねー(゜ω゜)


 作者の家にも何でか飛騨人形があるんですが、いつ、誰からもらったんだか分からんのですよねぇ(=ω=) 多分つーか間違いなく誰かからの土産だと思うんですが。

 しかし、あのさるぼぼがちょこまかと歩いたり動いたりしたら、すんげー可愛いだろうなー、と思う作者。

 建物としての外観は厳ついガベリーナですが、その名前同様依代も可愛らしくなって良かった。結果オーライです( ´ω` )

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