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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
二度目の春休み

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第1349話 目覚めの湖での再会

 ユグドラツィのもとを後にしたライト達。

 一行が次に訪ねるは目覚めの湖である。


 ちなみに何故先にユグドラツィのもとを訪れて、その後に目覚めの湖に来ることにしたのかと言うと。先に目覚めの湖に行ってしまうと、特にアルがずーっと遊びたがってなかなか帰れないだろうから、という理由である。


「アル、イードと会うのは久しぶりだねー」

「ワゥワゥッ!」

「何して遊ぶー?」

「ガゥバゥ、ワゥワゥ♪」

『え? 目覚めの湖でイードといっしょに泳ぎたい? 寒さに強い私達はともかく、人族のライトが今この時期に湖で泳ぐのはとても無理ですよ?』


 目覚めの湖に向かう道中で、何をして遊ぶかのんびりと話し合うライトとアル。

 すると何と、アルは目覚めの湖で泳ぎたいと言うではないか。


 季節はまだ三月下旬、水遊びをするにはちょっとどころかかなり早過ぎる。

 湖の水だって当然冷たいし、そんな冷水の湖で泳いだりしたら普通なら風邪を引いたり、最悪の場合は心不全だって起こすかもしれない。

 それを心配したシーナがアルを窘めるも、ライトはケロッとした顔で答える。


「あ、ぼくなら大丈夫です。水の女王様や氷の女王様の加護をいただいているので、水の冷たさや寒さに凍えることは絶対にありませんから」

『え? 水属性の女王の加護を二つも所持しているのですか?』

「はい!」

『……そういえばライト、貴方も何から何まで普通ではありませんでしたね……』

「ぃゃぃゃ、ぼくはレオ兄ちゃんに比べたらまだまだ普通の人族ですよ? ちょっとだけ異種族の友達が多いだけで。でも……シーナさん、ぼくのことを心配してくれてありがとうございます!」


 ニパーッ☆と輝かんばかりの笑顔でシレッととんでもないことを明かすライトに、シーナがスーン……とした顔になっている。

 しかしライトがシーナの気遣いに礼を言うと、フッ……と小さく微笑みんでいる。

 この人外ブラザーズの言う『普通の人族』は大概おかしいのだが、それでもこうして他者に感謝し礼を言えるというのは褒めるべき美点である。


「そしたらアル、今日は湖で思いっきり泳ごうか!」

「アォーン!」


 自分の要望が通って目覚めの湖で泳ぐことが決まり、アルが嬉しそうに駆け出す。

 目覚めの湖はもうすぐそこなのに、何ともせっかちなことだ。

 やんちゃな子供達姿に、保護者(レオニス)達はクスクスと笑いながらのんびりと後をついていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 そうしてレオニス達が目覚めの湖に到着すると、ライトとアルは早速湖の小島に向かって泳いでいた。

 アルが犬掻きならぬ狼掻きで泳ぐ横で、ライトが着衣のまま平泳ぎで泳いでいる。

 ライトは水の女王の加護を受けているので、身に着けている衣服やアクセサリーの類いもライトの身体の一部と判定されて濡れないのだ。


 既にはるか遠くまで泳ぐライト達の姿を見ながら、レオニスがシーナに声をかける。


「ライト達は湖の中央にある小島に向かっていると思うんだが、シーナ、あんたは今泳ぐのは大丈夫か?」

『夏ほど気持ち良いものではないでしょうが、それでも問題はありませんよ。私達が普段住むところに比べたら、この辺は春の陽気かと思うくらいに温かいですし』


 二人が桟橋のところで小島に行く方法を話していると、そこにイードが現れた。


『レオニス君、ラウル君、いらっしゃーい♪』

「お、イードじゃないか、久しぶりだな!」

「よう、イード。うちの小さなご主人様とアルとはすれ違わなかったか?」

『あー、ライト君とアル君にはさっき会ったわよー。アル君のおかーさん、ご無沙汰しておりますぅー♪』

『ぁ、ぃぇ、こちらこそご無沙汰しております……』


 シーナに向かって礼儀正しくペコリ、と頭を下げるイードに、シーナも思わずつられてペコリ、と頭を下げる。

 シーナは以前アルとともに、目覚めの湖を訪れたことがある。

 その時もアルは嬉しそうに散々水遊びをして、さらにはイードに『お近づきの印に、どぞー』という言葉とともに『クラーケンあんよのおすそ分け』までもらった仲だ。

 イードもそのことを思い出してか、にこやかな笑顔でシーナに話しかける。


『アル君のおかーさん、今日もあんよのおすそ分け要りますー?』

『え"!? ぁ、ぃぇ、今日はというか、今後一切そのようなお気遣いは無用にて……』

『え? もしかして、ワタシのあんよ、お口に合わなかったです?』


 イードの問いかけに気まずそうに答えるシーナ。

 おすそ分けは要らない、とシーナに断られて、イードがしょんぼりとしている。

 自分の肉は美味しいはずなのに、シーナ達銀碧狼の口には合わなかったのだ、と落胆しているようだ。

 そんなイードに、シーナが慌てて弁明し始めた。


『い、いえッ、貴女のお肉は決して不味くはなかったですよ!? 不味いどころか、それはもうとても美味で……クラーケンのお肉なんて、普段口にしない私達からすれば生まれて初めて味わう極上の美味しさでした!…………ですが…………』

『???』


 必死に言い募るシーナに、イードが小首を傾げながら聞いている。

 そしてシーナが目を左右に泳がせながら、やっとその理由を口にした。


『我が子が友と慕う、親しい者のお肉を食べるというのは……さすがにというか、どうにも申し訳なくてですね……』

『ぬーん、そうなのですねぇ』


 シーナの口から語られた理由。それは『我が子の友達と分かっていて、そのお肉を食べるのは忍びない。だから遠慮したい』というものであった。

 すると、シーナの後ろでその話を聞いていたレオニス達が話に混ざる。


「あー、確かになぁ。子供の友達の肉は、いくら美味しくても食うのに気が引けるよなぁ」

「だろうなぁ。イードだって、俺やウィカが肉を切り分けてやるって言っても食えんだろう?」

『え"ッ!? ウィカちーやラウル君を食べる!? そんなことできないよぅ!!だってウィカちーは身体ちっこいし、ラウル君だって食べられるようなとこあんまりないし』

「だよな。もっとも俺達の場合、イードのように自分の肉を分けてやることなどできんがな」

『そっかぁ……でも、言われてみればそうよねぇ……ワタシだって、ウィカちーに『ボクの尻尾美味しいから食べてね!』って言われても、絶対に食べられないもん……』


 ラウルの例え話に、イードが慌てたように二本の触腕をブンブン!と左右に振り続ける。

 しかしそのラウルの例え話で、シーナが何を思って自分の提案を断ってきたのかが理解できたようだ。

 イードが改めてシーナに声をかける。


『アル君のおかーさん、変なこと言って困らせちゃってごめんなさい』

『い、いいえ、貴女が心優しいクラーケンだということは私も知っていいます。ですからどうぞ、気を落とさずに……』

『はぁーい。アル君のおかーさんは、やっぱアル君に似て優しいですねぇー』

『わ、私が優しい!? そそそそんなこと、初めて言われました……』


 互いを思い遣り、互いを優しいと言うイードとシーナ。

 特にシーナは他者から優しいと言われることは滅多にないらしく、思いがけない言葉に面食らっているようだ。

 そんな照れ屋さんなシーナに、イードがニコニコ笑顔で触腕を差し伸べる。


『そしたらアル君のおかーさん、ワタシが小島までお運びしましょうか?』

『え? いいのですか?』

『もちろん!アル君もライト君も、今頃小島に着いているでしょうし。早く行きましょ!』

『そ、そうですね……では、お言葉に甘えて小島まで運んでいただきましょう……』


 イードの魅力的なお誘いに、シーナもおずおずと乗る。


『そしたらワタシの背中に乗ってくださいねぇー♪……あ、レオニス君とラウル君も乗っていいよー♪』

「おお、そりゃありがたい。俺達もイードの背に乗せてもらうとするか」

「ああ、たまにはそういう移動の仕方もいいよな」


 イードが水面に寝そべるように横たわり、その上にレオニス、ラウル、そしてシーナが乗り込む。

 それはまるで巨大な(いかだ)のようだ。イカだけに筏、なんちゃって。


 レオニス達を乗せた筏、イード号は湖中央のスイー、スイー、と静かに発進し泳いでいく。

 ゆったりとした動きと心地良い風を受けて、三人は湖中央の小島に向かっていった。

 ライトの一大計画『ハドリーの里を形成しよう!大作戦』の次は、目覚めの湖訪問です。

 作中でも言及している、銀碧狼親子の前回の目覚めの湖訪問は第59話のことですね。1300話近く経ってからの再訪は、作者としても胸熱です。


 イードもねぇ、最初の頃はイカ焼きだのお好み焼きの具材だのと食材扱いされていたのですが。ライトと仲良しになってからは、食べられることは全くなくなりました。

 そりゃねぇ、仲良しの友達の身体の一部とか、余程の飢饉にでも陥っていない限りは食べるのは無理ですよねぇ(´・ω・`)

 しかも今では水神アクアの鱗の効果で、イードの言葉も分かるようになりましたし。こうなると、この先もう二度とイードのお肉を食べることはないでしょうね。


 そんなイードは、基本的に目覚めの湖でお留守番することが多いですが。今話のように時折でも拙作内で活躍してくれるといいなー、と思います( ´ω` )

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