第1345話 ハドリーの里を形成しよう!大作戦
作者からの予告です。
明日は親族の一周忌にお呼ばれしてまして、朝から出かける予定が入っていますので明日の更新はお休みとさせていただきます。
申し訳ございませんが、ご了承の程よろしくお願い申し上げます。
ラーデやシーナとともに、コルルカ高原奥地で金鷲獅子アウルムと会った日の翌日。
この日のライトは、昼の少し前からレオニスやラウルとともに神樹ユグドラツィのもとを訪れていた。
もちろん今カタポレンの家に滞在中のアル親子やラーデもいっしょに来ている。
今日の神樹訪問の目的は、以前ユグドラツィと約束した『使い魔の卵を全部ハドリーに孵化させて、ユグドラツィのもとにハドリーの里を形成する』ためである。
ラウルの日々の頑張りのおかげで、十五個の卵の孵化に必要な巨大大根約四百本の準備もできたし、レオニスの協力もしっかり取りつけた。
ライトが春休みに入った今こそ、ハドリーの里形成を実行に移す絶好の機会なのである。
そして、アル親子がユグドラツィと会うのはこれが初めてのことだ。
ライト達に連れられて、ユグドラツィのもとを訪れたアルとシーナ。その根元で真上を見上げながら、緑生い茂る勇壮な姿に思わず嘆息を洩らす。
『これが、噂に聞く神樹ユグドラツィ……何と雄大な御姿でしょう……』
「アォン!」
シーナ達がユグドラツィに見惚れていると、ふわり……と温かく柔らかな光に包まれた。
そしてその光が収まった瞬間、ユグドラツィの声がシーナ達に届いた。
『初めまして、こんにちは。私は神樹ユグドラツィ。貴方方の来訪を、心より嬉しく思います』
『ッ!!……私は銀碧狼のシーナと申します。こちらは我が子アル、どうぞお見知りおきを』
「ワゥワゥ!」
『ウフフ、何とも元気なお子ですねぇ』
突如響いてきた優しい声に、シーナが一瞬だけ驚くもすぐに挨拶をした。
その声の主がユグドラツィであると早々に名乗ったためだ。
シーナはその場で深々と頭を垂れ、アルは上を見上げて嬉しそうに吠える。
『ぼくはアル!よろしくね!』と挨拶したアルのことを。ユグドラツィがとても嬉しそうに褒め称えた。
ユグドラツィとアル親子が初対面の挨拶を交わしている間、ライト達はその邪魔をしないように使い魔の卵の孵化準備を進めている。
そして無事に互いの挨拶を交わし終えたところで、ライト達もユグドラツィに挨拶をした。
「ツィちゃん、こんにちは!今日はあの約束、ハドリーの孵化をしに来ました!」
『こんにちは、ライト。あの約束を果たしてくれるのですね、ありがとう、とても嬉しいです』
「やあ、ツィちゃん。俺も卵の孵化のために、大きな大根をこの通りたくさん作ってきたぞ」
『まぁ、とても立派な大根ですねぇ……こんなにたくさん作り上げるには、さぞ苦労したでしょうに……ラウルも私のために頑張ってくれて、本当にありがとう』
『神樹よ、今日も神秘の瞬間に立ち会わせてもらうぞ』
「まぁまぁ、ラーデもようこそいらっしゃい。というか、私のことは『ツィちゃん』と呼んでくださいね?」
卵の孵化に来たというライトと、そのための下準備に尽力したラウルに、ユグドラツィが礼を言う。
そしてユグドラツィのことを『神樹』と呼ぶラーデに、ユグドラツィの注意が飛ぶのももはやお約束である。
そしてラウルが用意した巨大大根の山(一山につき二十五本、これを十五ヶ所に分けて山積み)を見て、ユグドラツィが心底感心している。
そして最後にレオニスがユグドラツィに向けて挨拶をした。
「よう、ツィちゃん、久しぶりだな。ライト達からいろいろ話は聞いているが、元気そうで何よりだ」
『こんにちは、レオニス。貴方も今は元気そうで何よりです。先日はとても心配しましたよ?』
「うぐッ……そ、それは……ツィちゃんにまで心配をかけてしまって、本当にすまんかった……」
『フフフ、冗談ですよ。謝る程のことでもないので、気にしないでくださいね』
「そう言ってもらえると助かる」
ユグドラツィにチクリとしたジョークを言われて、レオニスはバツが悪そうに謝る。
ユグドラツィが言う先日の心配とは、ビースリー騒動の件である。
ライトがコヨルシャウキのもとに向かった後、レオニスはカタポレンの森の警邏をすると言って出かけたまま、数日の間家に帰らなかった。
この時心配したラウルがユグドラツィに頼んでその大まかな居場所を視てもらい、とりあえずどこかの山中で無事生きている、という確認だけはできた。
その時のことをユグドラツィは言っていて、レオニスもそれが分かったのでユグドラツィにも謝った、という訳だ。
レオニスとユグドラツィ、双方無事和解?した後、早速ライトがレオニスに声をかける。
「さ、そしたら今日はレオ兄ちゃんにもたくさん働いてもらうからね!」
「おう、任せとけ。あの茶色の小さな卵に、今度はラウルが作ったこのデカい大根を与えるんだよな?」
「そそそ、こないだそれでハドリーが孵化したからね!……って、そういえばツィちゃん、リィはどこですか?」
『リィなら私の頭の天辺でうたた寝していますよ。……ほら、リィ、起きなさい。お客様がお見えですよ』
先日ライト達の手で孵化させたばかりの、草木の精霊ハドリーのリィ。
そういや彼の姿が見えないな?と周囲をキョロキョロと見回すライト。
ユグドラツィによると、リィは今ユグドラツィの頭上にいてお昼寝中だと言う。リィは草木の精霊なので、日光浴をすることで力を蓄えているのだろうか。
そしてユグドラツィの呼びかけの後、しばらくすると神樹の上から何かがふよふよと降りてきた。
淡緑色をしたそれは、ハドリーのリィであった。
『ママ、おはよーぅ……ふぁぁ……』
『おはよう、リィ。さあ、お客様方にご挨拶なさい』
『はぁーい……』
あくびをしながらまだ眠たそうに目を擦るリィに、ユグドラツィが優しい声でライト達への挨拶を促す。
そしてライト達の前にふよふよと進み出て、ペコリ、と頭を下げつつ挨拶をした。
『パパ、こないだのお兄ちゃん、こんにちは。赤い竜のお兄ちゃん、こんにちは』
『赤いお兄ちゃんと、白い狼さん達は、はじめまして、だよね? 僕はハドリーのリィといいます。ママとともに、僕とも仲良くしてくれると嬉しいです。よろしくお願いします』
幼子の姿で礼儀正しく挨拶をするリィに、レオニスやシーナが感心する。
「おお、この子がライト達が話していたハドリーか……確かに肌の色がドライアドと似ているな」
『とても礼儀正しくて可愛らしい精霊ですね。私の名はシーナ、こちらは私の子でアルといいます。こちらこそ、よろしくお願いしますね』
「アォーン!」
「俺の名はレオニスだ、よろしくな」
リィと初めて会うレオニスとシーナ達が、それぞれ名乗りつつ人差し指を出してリィと握手したり、顔を近づけて頬ずりしたりしている。
レオニス達とリィが挨拶をしている横で、ラウルがライトに小声で話しかけた。
「ライト、リィのパパになったんか?」
「自分からなった覚えはないけど、フォルからもらった卵を持ってきたのはぼくだからねー……そこら辺、本能的に分かってるのかもね」
「ぁー、確かにそうかもな……」
ライトがリィに『パパ』と呼ばれていることにラウルはびっくりしているが、ライトは平常心で対応している。
というのも、ライトがパパと呼ばれるのは、何もこれが初めてではないからだ。
四番目の使い魔である黄金龍のルディからもパパと呼ばれているし、三番目の使い魔のミーナからは主様と呼ばれている。何ならリィより半日先に生まれた転職神殿にいるハドリーのレアだって、ライトのことをパパと呼んでいる。
それを考えると、使い魔達が皆真の主であるライトを生みの親として慕うのは当たり前のことであり、むしろミーナのようにいきなり主呼びされないだけマシというものである。
そして、ここにいる全員が挨拶をし終えたところで、ライトが明るい声で話を切り出した。
「さあ、そしたら今からハドリーの孵化を始めるよ!レオ兄ちゃん、ラウル、お手伝いよろしくね!」
「「おう」」
「ラーデとアルとシーナさんは、ツィちゃんやリィといっしょにそこで見学しててね。何なら皆で仲良くおしゃべりしてくれててもいいよ」
『うむ、承知した』
『分かりました』
「ワォン!」
『はぁーい』
ライトの掛け声に、レオニスとラウルは巨大大根が山積みされているところに歩いていく。
他の面々には手伝ってもらうことはないので、ユグドラツィやリィとともに見学もしくは談笑を勧める。
そしてライトは最後に、ユグドラツィに向けて最も大事なことを伝え始めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ツィちゃんには一つお願いというか、今のうちに考えておいてもらいたいことがあります」
『ン? 何ですか?』
「それはですね。今から孵化させる十五体分のハドリーの名前です!」
『ハドリーの、名前…………』
いつになく力強い様子でお願いするライトに、ユグドラツィが若干気圧され気味に呟く。
ライトがこうも強くユグドラツィに頼み込むのには、訳がある。
それは『間違ってもレオニスに名付けさせてはいけない!』という思いからである。
これまでレオニスは幾度となく名付けを請われる場面があり、その都度快く応じてきた。
それらの例を振り返ると、ノワール・メデューサのクロエやエリトナ山のガンヅェラ、皇竜メシェ・イラーデのように、一対一の単体ならまだマシな名前をつけることができる。
だが、これが一度に複数の名付けとなると事態は一気に豹変する。
その良い例が、ドラリシオ達への名付けだ。
かつて知己のドラリシオ三体につけた『ドラ子』『ドラ恵』『ドラ代』はもとより、先日ドラリシオの群生地で再会したドラリシオ・ブルーム達に与えた名がまた酷い。
『ブル子』『ブル恵』『ブル代』、そして『ブル美』。これら全てがレオニスの案で、異論を唱える間もなくそのまま通ってしまった。
そう、個別案ならまだマシな名付けセンスが、大人数相手になると途端にとんでもなくダサい方向に発揮されてしまうのだ。
そして今回のハドリーの孵化は、何と十五体。なおかつこの場にはレオニスも同席している。
もし万が一、ユグドラツィがレオニスに名付けの素案を求めでもしたら―――あのレオニスのことだ、きっと男の子なら『ハド太』『ハド郎』『ハド男』、女の子なら『ハド子』『ハド恵』『ハド代』とか言い出すに違いない。
それこそ目も当てられない事態に発展することは明白である。
そうしたこれまでの経験を踏まえ、ライトは手遅れになる前にユグドラツィに『今のうちに十五体分の名前を考えておいてね!』と伝えたのだ。
ライトはユグドラツィに可愛らしい名前を決めてもらうために、さらに力説を続ける。
「リィだって、ツィちゃんが直々につけてくれた名前ですからね。他のハドリーもきっと、ツィちゃんから名前をもらいたいと思うはずですし」
『そうですね……名前は一生使う大事なものですものね』
「はい!名前はその子にあげる、初めてのプレゼントですからね!だから、男の子用の名前と女の子用の名前をそれぞれ十個づつ、可愛らしい名前を考えておいてくださいね!」
『分かりました。責任重大ですが、ここでともに暮らす子達のために一生懸命考えます』
ライトのダメ出しもとい激励に、ユグドラツィも次第にやる気が出てきたようだ。
ここまで念押しすれば、きっとユグドラツィもちゃんとした名前を考えてくれるに違いない。
ライトは安堵しつつ、再びユグドラツィに声をかけた。
「じゃ、ぼくはレオ兄ちゃん達といっしょに卵の孵化にいってきますね!」
『ええ、ライトも頑張ってくださいね』
「はい!」
ユグドラツィに名付けという重大任務を託し、ライトはレオニス達がいる方向に走っていった。
ライトの春休み中にしておきたいことの二つ目、使い魔の卵の大量孵化の開始です。
今現在ライト達のもとにはアル達銀碧狼親子もいるので、いっしょに連れてきているのですが。アル達って、まだユグドラツィに会ったことないよね?( ̄ω ̄;≡; ̄ω ̄) ←懸命に過去話をサルベージする人
ぃゃー、話も1300話を超えるとそれなりにキャラクターも増えてきて、既存キャラ達の面識があるかどうかもなかなか思い出せなくてですね_| ̄|●
確かまだ出会ってなかったよなぁー、だとするとお互い初対面なんだからきちんとご挨拶しないとね。でもってツィちゃんの声が届くように、アル達に祝福を与えるシーンも入れておかないとね……とか思いつつ、今話を書いたのですが。間違ってたらどうしよう…(; ̄ω ̄;)… ←記憶力に全く自信ない人
もし過去話で既に出会ってたら、どなたかこの鳥頭の作者にこっそり教えてください!><




