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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
取り戻した日常

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第1318話 五回目の質問

 使い魔の卵から生まれた新しい仲間、ハドリーのレアを温かく迎えるライト達。

 特に転職神殿組の三人など、ハドリーの愛らしさにそれはもうニッコニコ(ミーア)のメロメロ(ミーナ)のデレデレ(ルディ)である。


 そんな三人の後ろで、ライトがヴァレリアとともにレアを見守りつつ、ゴニョゴニョとひそひそ話をしている。


「ヴァレリアさん、あのハドリーって、無人島の森林調査イベントに出てきたモンスターのデータ流用ですよね?」

「そそそ、あっちでは『名も無き草』なーんておざなりな名前つけられてたけど。それを花冠なんかでより可愛らしく飾り立てて使い魔にしたのがあの子、ハドリーだね」

「使い魔って、オスメスありますよね? そしたらハドリーの男の子バージョンもあるってことですか?」

「もっちろん!全ての使い魔において、男女の性別が存在するよ!……って、私はその存在の有無を知っているってだけで、ハドリーの男の子バージョンの実物はまだ見たことはないけどね。ていうか、何ならハドリーの女の子だって現物を間近で見るのなんてこれが初めてかもー」


 ライト達が小声で話しているのは、他の期間限定イベントである『無人島の森林調査』やら『モンスターのデータ流用』なんて不審かつ彼女達にとって意味不明な言葉を、レア達に不用意に聞かせないためである。

 そしてここで、ライトがハッ!とした顔でヴァレリアに改めて問うた。


「あ、そうだ。今日ぼくがここに来たのは、ヴァレリアさんに聞きたいことが決まったからなんです!」

「あー、それは先日の四次職マスターのご褒美の件かい?」

「そうです!」

「ライト君が四次職をマスターしたのは、これで五回目だね。早いもんだなぁー」


 ライトの要望を聞いたヴァレリアが、しみじみとした表情でうんうん、と頷いている。

 ライトがヴァレリアと初めて邂逅したのが一昨年の秋。今から一年と四ヶ月半前のことだ。

 一年半弱を経て、ライトは五つの四次職職業をマスターした。これを早いと思うか遅いと思うかは人それぞれだろう。


 そして、それまで目を閉じ感慨深げに頷いていたヴァレリアがパチッ!と目を開けてライトを真っ直ぐ見据えた。


「で? 今回の質問は何だい? 私が知っていることなら、何でも答えようじゃないか」


 ライトの言葉に、ヴァレリアがニヤリ……と不敵な笑みを浮かべる。

 この不敵さと常に自信に満ちた言動に、ライトはいつも内心で一瞬だけビビる。

 だが、ライトも臆してなどいられない。意を決したように、ライトもヴァレリアの目を真っ直ぐに見つめながら徐に口を開いた。


「……BCOのイベントについて、教えてください」



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ライトがヴァレリアに対する五回目の質問に選んだのは『BCOのイベント』だった。

 BCOのイベントというと、先日ラグナロッツァで勃発したビースリー騒動が記憶に新しいが、他にもたくさんある。

 例えば今ライトが懸命に取り組んでいるクエストイベントも、もとは【湖の畔に住む小人達の願いを叶えよ】という名前のイベントだし、先程生まれたばかりのハドリーのレアも【使い魔の卵を育成しよう!】というイベントから始まったコンテンツだった。


 ライトがこれまでに経験したイベントは、今のところこの三つだけ。

 この先も数々のイベントをこなしていきたいとライトは思っている。

 そのために、いくつかの疑問を解消しておきたかった。


「ほう、イベントについて、か。イベントの何を聞きたいんだい?」

「まず、ぼくがマイページで開始できるBCOのイベントとこのサイサクス世界の歴史がどう関係しているのかを知りたいんです」

「と、いうと? もうちょい具体的に話してもらえるかい?」

「はい……」


 ライトの真意が今一つ捉えきれないのか、ヴァレリアが小首を傾げつつライトに問いかけた。


「ぼくがヴァレリアさんにイベントのことを聞こうと思ったのは、こないだのラグナロッツァビースリーがきっかけです。このサイサクス世界で他にもビースリーが起きたのかどうかを調べたら、過去に三件のビースリーがあったという記録を本で読みました」

「その歴史書で読んだのは、『小鬼大量襲撃事件』と『神獣襲来事件』、そして『真夏の夜の悪夢事件』でした。これは、BCOのビースリーイベントである二月の豆撒きとクリスマスの神獣レスタエクオス、そしてサマーバケーションですよね?」

「で、今のぼくのマイページのイベント欄を見ても、この三つのイベントは出ていませんでした。これは、どう考えればいいんでしょう?」

「どれも時期外れだから出ていないだけなのか、あるいはこのサイサクス大陸でもう既に過去に起きたことだからイベントができないのか……そこら辺が、ぼくには全く分からないんです……」


 それまでライトの話を静かに聞いていたヴァレリア。

 ライトの言い分を理解できたようで、真面目な顔つきで答え始めた。


「あー、うん、確かにそれはライト君の方では判断がつかないだろうね」

「ですよね……で、ホントのところはどうなんでしょう? ぼくのマイページのイベント欄では、半分くらいが???(ハテナ)マークで伏せられていてタイトルも分からないんですよね……これってやっぱり季節が関係してるんですかね?」

「うん、そうだよ」


 ライトの問いかけに、ヴァレリアがあっさりと肯定した。


「例えば三月の今、サマーイベントやハロウィンイベントをするのはおかしいでしょ? だからイベント欄の方でも、それを行うに相応しい季節以外は封印されてるって訳」

「やっぱりそうなんですね!今イベント欄を見ると、お花見イベントやホワイトデーイベントが出てきてますし!」

「そゆことー」


 ヴァレリアの尤もな解説に、ライトも得心している。

 そしてその勢いで、ライトが最も聞きたかったことに踏み込んでいく。


「でも、ぼくが先月の初めにイベント欄を見た時に『節分!豆まき祭り』が出ていたような気がするんですけど……これは、どういうことですか? サイサクス世界では既に『小鬼大量襲撃事件』として三十年前に起きてるんですよね?」

「このサイサクス世界で既に過去に起きた事件を、ぼくがマイページのイベント欄で発動させたら……一体どうなるんですか?」


 ライトの疑問、それは『過去に既に起きた事件と同じ概要のイベントを、自分のマイページで発動させたらどうなるのか』であった。

 ライトの推察では、イベントをクリックしても全く何も起きないか、もしくはこのサイサクス世界で再び同じ事件として勃発するか。

 前者の場合は全く問題ないが、もし後者なら洒落にならない。


 特にビースリーなどのバトル系イベントは、現実であるサイサクス世界に与える影響が大き過ぎる。

 最寄りの街を壊滅させる大惨事の再来とか、悪夢以外の何物でもない。

 この辺りの疑問の答えを明確にしておかなければ、イベント発動など怖過ぎてできやしない。

 その疑問に対し、ヴァレリアは事も無げに答える。


「えーとねぇ、このサイサクス世界で既に事件として起きたものは、再び地上に顕現することはないよ」

「じゃあ、ぼくがイベント欄でそのイベントを発動させたらどうなるんですか?」

「その時は、ライト君だけが単体で異空間に飛ばされてイベント開始となるね。要はBCOの過去イベの復刻みたいなもんかな?」

「ぼくだけが異空間にすっ飛ばされるんですか……」

「そりゃそうさ。BCOのイベント他様々な恩恵を受けたり権限を使えるのは、勇者候補生だけだもの」


 想定外の答えに、ライトが呆気にとられた顔になる。

 しかし、これは考えようによっては良いことかもしれない。

 地上に甚大な被害を及ぼしそうなイベントでも、異空間で行われるなら地上に被害は発生しないということなのだから。

 その後も、ヴァレリアが次々に具体例を挙げた解説を続ける。


「ただしそれは、埒内の者達も認識しているような大きな事件に限るね。逆に言えば、無人島調査とかお花見イベントのような、埒内の者達の関与が皆無もしくは曖昧なものならば、異空間ではなくそれに適した場所―――アクシーディア公国内に実在する地名が、イベント内で提示されるはず。そこに向かうことで、そのイベントが正式に発動するよ」

「あ、あと、『ドラゴンの卵を孵化させよう!』は唯一例外ね。クー太が既にこのサイサクス世界で顕現しちゃってる上に、例の名物受付嬢のペットとして広く認識されているからね。だからライト君のイベント欄にも、もう絶対に出てこないよ」


 ヴァレリアの流れるような解説に、ライトが逐一頷きながら納得している。

 確かに無人島調査やお花見イベントなら、現実世界に及ぼす影響は限りなく低いだろうし、『ドラゴンの卵を孵化させよう!』はイベントの最終結果であるクー太が既に生まれている時点で復刻のしようもない。

 過去に既に実施済みで復刻できないようなイベントは、今後もライトのマイページのイベント欄に永久に出てこないのも当然である。


 そしてここで、ライトがもう一つ気になっていたことをヴァレリアにおそるおそる問いかけた。


「じゃあ、例えばの話ですが……もしぼくが、こないだのビースリー騒動が起きる前に『昏き星海からの来訪者』を発動させていたら……どうなってたんですか?」

「その場合は、星海ビースリーが勃発するはずだった本来の場所、某所にライト君が直接出向くことでビースリーイベントが開始されることになっただろうね?」

「え"ッ!? それ、洒落なんないヤツじゃないですか!!」


 ライトの質問にあっけらかんと答えるヴァレリアに、ライトがガビーン!顔で驚愕している。

 先日のラグナロッツァでのビースリー騒動は、ライトがコヨルシャウキのいる異空間に出向くことで何とか事なきを得た。

 そしてそれは、コヨルシャウキが『勇者候補生をここに連れて来い』と要求した故の対応だった。

 つまりは正式なイベント発動ではなく、コヨルシャウキが独断で動いたことによるイレギュラー案件だったからこそ成し得た成果である。


 しかし、もしライトの手によって『昏き星海からの来訪者』がイベントとして発動していたら―――コヨルシャウキとの交渉など一切できなかったかもしれない。

 そしてヴァレリアに助けを求めようにも、素気無く対応拒否される可能性が高い。

 彼女のことだ、きっと「自分の意思でイベント発動したなら、責任を持って最後まで対処してやり遂げるように」とか言いながら助けを求めるライトの要求を跳ね除けるに違いない。

 そんなことを想像するだけで、ライトの背筋はツェリザークの風雪を受けたかのように寒くなるばかりだ。


「ヴァレリアさん……とんでもないことをサラッと言わんでください……てゆか、そんな危険なことはもっと早くに教えてくださいよぅ……」

「いやー、ライト君は今クエストイベントで手一杯でしょ? とてもじゃないけど、イベント掛け持ちする余裕なんかないだろうと思ってさ!」

「そりゃそうですけど……じゃあ、クエストイベントが終わったらヴァレリアさんの方から注意事項として教えてくれてたんですか?」

「それは分かんない!私だって、聞かれもしないことをわざわざ教えてあげる程過保護じゃないしね☆」


 恨めしげな目でジトーーーッ……とヴァレリアを睨むライトに、ヴァレリアはカラカラと笑いながらシレッと受け流している。

 特に最後の質問の時など、テヘペロ顔で曖昧に濁す。

 それは暗に『勇者候補生たる者、あらゆる事態を想定して動けて当然』『それができないうちは、勇者候補生を卒業することなど夢のまた夢』と言っているのだろう。

 やはりこの魔女、油断ならない人物である。


 今のところライトだけが知る、BCOにおける様々なシステムと恩恵。

 それは計り知れない程の絶大な力と効果を持つが故に、その取り扱いも慎重に慎重を期さなければならないのだ。

 そのことを、ライトはヴァレリアへの五回目の質問によってまざまざと思い知ったのだった。

 ライトの転職神殿訪問の二つ目の目的、ヴァレリアへの五回目の質疑応答です。

 ライトが職業システムの四次職をマスターする度に得られる、ヴァレリアへの質問権。

 これねー、何にしようか毎回毎回悩むんですよねぇ(=ω=)

 とりあえず今回は、直近に起きたビースリー騒動を契機に他のイベントの取り扱い方を明確にしておこう!ということで出してみました。

 これはまぁ、現時点で未発動のイベントとサイサクス世界史に残る過去イベの兼ね合いというか、いつか感想欄で質問が寄せられるかも……という作者の『捕らぬ狸の皮算用』的なヤツですね!(º∀º) ←使い方が違う

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