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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
取り戻した日常

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第1311話 新緑と深緑の煌めき

 海底神殿の中に入り、海の女王とともに珊瑚製のソファに座ったライトとラウル。

 早速ライトがアイテムリュックから様々な装飾品を取り出して、テーブルの上にザラッ、と無造作に置いた。

 その数ざっと三十個はあるだろうか。


 それは、次に女人魚達に会ったら渡そうと思っていたアクセサリー類。

 この先また何人の女人魚達に新しく出会い、その都度おねだりされるであろうことは火を見るよりも明らかなので、とりあえずたくさんの数を用意しておこう!というライトの策である。


 その品々は、アイギスで購入した小物もあれば、ライトの生産職スキル【金属錬成】で18金を合成してマキシに渡し、個人的に依頼して作製してもらった品もある。

 特にマキシなど、アクセサリー作りの良い練習になる!と言ってライトの依頼を快諾し、張り切っていろいろと作製してくれた。


『うわぁ……キラキラしたのがたくさんあるぅー……』

『これ、どれを選んでもいいの?』

「はい。あ、でも一人一つでお願いしますね?」

『もちろんよ!でも……どれを選べばいいか、迷っちゃうー』

『ホント、どれも素敵過ぎて一つに絞れなーい!』


 指輪にイヤリング、髪留めに腕輪、ペンダント等々、様々な形のの美しいアクセサリー類に、女人魚達の目は速攻で釘付けになる。

 ライトに『お一人様一点まで』と言われ、どれを選ぼうか皆迷っている。


 そして、ライトが出したアクセサリー類の美しさに目を奪われるのは、何も女人魚達だけではない。

 海の女王も思わず感嘆を漏らす。


『まあ、どれもとても素敵な装飾品ね……この子達が夢中になるのも納得だわ』

「あ、もし良かったら、海の女王様もお一つ好きな物をどうぞ」

『え? 私ももらっていいの?』

「もちろんです!だってぼく達も、以前海の女王様から加護や勲章をいただきましたし。そのお礼代わりと言っては何ですが、この中にもし欲しいと思う物があれば、是非受け取ってください」

『……じゃあ、お言葉に甘えて……』


 ニコニコ笑顔で勧めるライトの言葉に、最初は遠慮がちだった海の女王がそわそわしながらテーブルの上のアクセサリー類を眺める。

 そうしてしばらくアクセサリー類を見ていた海の女王。ふと視線を一点に留めて、そっと手を伸ばす。

 彼女が一番真っ先にその手に取ったのは、緑色のペンダントヘッドが付いた金色のペンダントだった。


『私……これがいいわ』

「おお、さすが海の女王様、お目が高いですね!その指輪には、最高級の珊瑚―――イアさんからいただいた枝の中でもすっごくいい部分を、ペンダントトップに使ってるんですよ!」

『……海樹の枝の珊瑚……』


 ライトが海の女王が選んだペンダントを見ながら、嬉しそうに解説する。

 その向かいの席に座っている海の女王は、大粒の雫型のペンダントトップをじっと見つめていた。


 ペンダントチェーンはアイギス製で、ペンダントトップはマキシに加工依頼した逸品。

 ペンダントトップにはライトが言うように、ユグドライアの枝の中でも最も魔力が高いとされる緑色の部分を使用している。

 新緑色と深緑色がマーブル状に混ざり合った、とても美しいペンダントヘッドだ。


 それは以前レオニスがユグドライアからユグドラツィの結界用に譲ってもらった枝の一部で、結界用の駒への利用には至らない細い枝の先端部分をライトもいくつか譲ってもらっていた。

 要は端材の有効利用である。


 今回ライトがテーブルの上に出したアクセサリー類の中には、海の女王が選んだペンダント以外にも海樹の枝を研磨して使用したものがいくつかある。

 それは『海樹からこんなにたくさんの枝をもらったんだから、結界用に使えなかった分も余すことなく何かに使いたい』『海にいる人魚達にも、装飾品として還元したい』と思うライトやレオニスの配慮からくるものだった。


 雫状に加工された新緑色の珊瑚のペンダントトップを、海の女王が両手の上に乗せながらじっと眺めている。

 そんな海の女王の横で、フラウやガーネット、ヘレナや初見の女人魚I、J、Kも自分が欲しいアクセサリーを選んでは手に取っていた。


 そしてここで、海の女王が改めてライトに礼を言った。


『ライト、こんなにも素敵な首飾りをありがとう。とても嬉しいわ』

「どういたしまして!海の女王様や人魚のお姉さん達に喜んでもらえるだけで、ぼくも嬉しいです!」

『貴方達、今から海樹のもとにも寄っていくの?』

「はい、そのつもりです」

『そしたら私もいっしょについていっていい? この首飾りのお礼を、海樹にも直接伝えたいの』

「もちろんいいですよ。きっとイアさんも喜んでくれると思いますし」


 海の女王の申し出に、思いがけないことではあるがライトも即時快諾する。

 普段海の女王は海底神殿から出ることはあまりないが、海樹は海底神殿からは目と鼻の先にある近距離。

 この程度の距離ならば、海の女王の帰巣本能が強く働くこともないだろう。

 そうと決まれば、善は急げ!とばかりに海の女王が席から立ち上がった。


『そしたら行きましょうか。……あ、その前に、この首飾りをかけてもらえるかしら?』

「いいですよー」


 早速珊瑚の首飾りを着けたいという海の女王。

 その手に持っていたペンダントをライトに渡し、ライトが海の女王の後ろに回って金具を外してから、彼女の首にそっとかけてあげる。

 そして金具を留めてすぐに前方に回り、ペンダントを着けた海の女王を見て歓声を上げた。


「うわぁ……すっごく素敵です!」

『ホ、ホント?』

「はい!とってもよく似合ってます!ね、ラウル?」

「ああ。海の女王の深い青色の身体に、緑色の珊瑚がよく映えていてとても綺麗だ」

『…………ありがとう』


 ライト達にべた褒めされた海の女王が、両手で頬を押さえながら照れ臭そうに礼を言う。

 ライトに話を振られたラウル、スラスラとした褒め言葉が立て板に水の如き流暢さで出てくる。


 もちろんこれは、ラウルの嘘偽らざる純度100%の本音。

 何しろラウルの辞書には『お世辞』『おべんちゃら』『建前』といった類いの言葉など載っていないのだから。

 とはいえ、こんな褒め方をされたら海の女王が照れまくるのも無理はない。


 しかし、海の女王を褒めまくるのは何もライト達だけではない。

 六人の女人魚達も、口々にその美しさを褒め称える。


『女王ちゃん、とっても綺麗ーーー!』

『ホントホント!女王ちゃんは特に何もしなくてもいっつも綺麗だけど、その首飾りを着けたらいつもの十倍、いえ、百倍以上綺麗だわ!』

『綺麗なだけじゃなくて、すーっごく可愛いー!』

『女王ちゃん!首飾りだけじゃなくて、腕輪や耳飾りも着けましょうよー!』

『髪飾りや指輪もいいわね!』


 キャーキャーとはしゃぎながら海の女王を褒めちぎる女人魚達。

 勢い余って他のアクセサリーまで全部着けさせようとしているが、当の本人が慌てて拒否している。


『あ、貴女達!待って!私はこの首飾り以外は要らないわ!』

『えー、そうなのー?』

『そんな、遠慮しなくていいのにー』

『女王ちゃんなら、何を着けても絶対に似合うのにー』


 海の女王の固辞に、女人魚達が皆口を尖らせて残念がっている。

 ライトが持ってきたアクセサリー類なのに、女人魚達が『遠慮しなくていいのにー』と宣うのは如何なものかと思うが。

 ライトも内心では『たくさん着飾った海の女王様を見たい!』と思っているので、何の問題もなかったりする。


 不満そうな女人魚達を前に、海の女王が己の胸元に下がる珊瑚のペンダントヘッドにそっと指先を当てながら呟く。


『私は、この首飾り一つだけで充分。他は要らないわ』

『まぁ、女王ちゃんがそう言うならー……』

『そうねー。言われてみれば、その首飾り以上に大きくて素敵な珊瑚は他にないものねー』

『私達の女王ちゃんだもの、一番良い物だけが似合うってことね!』


 静かに微笑みながら、女人魚達に諭すように語る海の女王。

 その穏やかな声音からは、彼女が本当に心から満足していることがひしひしと伝わってくる。

 海の女王当人がそこまで言うのだから、女人魚達もそれ以上ゴリ押しするような野暮な真似はしない。

 再び海の女王の美しさを絶賛しながら、海の女王に抱きついたり頬ずりをしたりしている。


 まさに美女の園を具現化した光景に、ライトの頬は緩みっ放しになる。

 あー、海の女王様一人だけでも麗しいのに、その周りにたくさんの美人な人魚のお姉さん達が群がるとか眩し過ぎる!

 まさに眼福、まさに至福!あー、スクショ撮りたいー、今すぐ撮りたいー、誰か俺の目にスクショ機能を付与してくれ!

 そんなしょうもないことをライトが密かに考えている。


 だが、そんなキャッキャウフフ♪な空気を全く読まない者がここに一人。


「さ、そしたら早速皆でイアのところに行くか」

『そ、そうね!ライト達も、今日はそんなに寄り道し続ける時間なんてないでしょうしね!』

「ラウル……ホンット、こういうところでも全く遠慮ってもんがないよね」

「お褒めに与り光栄だ」

「うん、褒めてないからね?」


 女子達のキャピキャピした空気を、迷うことなく一刀両断したラウル。その切れ味は、オリハルコン包丁に勝るとも劣らないであろう。さすがはオリハルコン包丁の持ち主である。

 そんなラウルに海の女王が慌てて応え、ライトはジトーッ……と恨めしげな半目で睨む。

 もっとも海の女王の言葉は正論で、午後からエンデアンに来たライト達にあまり長居できる程時間の余裕はないのだが。


 再び席から勢いよく立ち上がり、海底神殿の出口に向かう海の女王。

 輝くような笑顔で振り向きながら、ライト達に声をかける。


『さ、じゃあ皆で海樹のところにお礼を言いに行きましょうか!』

「はい!」

「おう」

『『『はーーーい♪』』』


 海の女王のかけ声に、ライトとラウル、そして六人の女人魚達が応え彼女の後をついていく。

 一行の先頭を嬉しそうに泳ぐ海の女王の胸には、二色の緑の宝石珊瑚の雫がキラキラと煌めいていた。

 海底神殿での憩いのひと時です。

 海中ではいつも地上で催すようなお茶会などできませんが、その代わりに人魚のお姉さん達に装飾品をプレゼントするのがお約束になりつつある今日この頃。

 これはまぁ、ひとえにライトが幻の鉱山で金属採掘し放題=地金の費用ゼロなのと、アイギスでの紐作りバイトなどでそこそこ稼いでいて小遣いに困らないおかげなのですが。

 とはいえ、毎回毎度受注生産するのもまどろっこしいので。先にたくさん作っておいて、お姉さん達に好きな物を選んでもらう!という方式にしたりなんかして。


 そしてアクセサリー関連の話だからか、ヒョコッとマキシが作者の脳内に出てきまして。一番素晴らしいアクセサリーの制作担当者に立候補してくれました。

 ンまぁー、こんなところでマキシのアイギス修行が役立つなんて!作者は全く考えておりませんでした!

 ありがとう、マキシ。普段はラウル程出番が回ってこないけど、こうして時々でも活躍してくれてホントお母ちゃんは助かってるよ!(^∀^)

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