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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
取り戻した日常

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第1309話 半年ぶりのエンデアン

 冒険者ギルド総本部に向かう道すがら、ライトとラウルはのんびりと会話をしていた。


「エンデアンに行くの、すっごく久しぶりだなー」

「そうだな。ライトといっしょにエンデアンに行くのは、去年の夏休み明け以来か」

「だねー。クレエさんとデッちゃんのデートの案内役をした時以来だね!」

「俺はエンデアンには、殻処理仕事と海産物の仕入れを兼ねてちょくちょく行っているが……そうか、ライトがエンデアンに行くのは半年ぶりなんだな」


 ライトが前回エンデアンを訪ねた時のことを、二人ともしみじみと思い出している。

 昨年の夏、エンデアンはディープシーサーペントの度重なる襲来に疲弊していた。

 そしてその原因が『ディープシーサーペントが淡紫色のお姉さん=クレエに会いたかったから』という理由だったことが判明し、その縁でクレエとディープシーサーペントを引き合わせることになったのだ。


 その時には、海樹ユグドライアのもとで様々なガラクタを褒美としてもらったり、帰り道ではライト、レオニス、ラウル、クレアの四人で誰が一番最初にエンデアンに到着するかを競って爆走したりもした。

 とても濃密な一日で多忙だったけど、ものすごく楽しかったことを今でもライトははっきりと覚えている。


「そしたら今日も、ちょっとだけデッちゃんやイアさんに会っていかない? ぼく、人魚のお姉さん達にまたアクセサリーをあげる約束してるんだ」

「おう、いいぞ。俺も久しぶりにイアに会って話をしたいしな」

「ヤッター!じゃあラウルの殻処理仕事が終わったら、いっしょに海に行こうね!」

「了解ー」


 話の流れでライトがラウルに『海の友達に会いに行こう!』と提案した。

 もちろんラウルに否やはない。

 殻処理仕事と言っても、ラウルが依頼先で巨大なホタテの貝殻を空間魔法陣に収納するだけの簡単なもの。複数依頼を受けて数軒回るとしても、依頼そのものは一ヶ所につき二分三分程度で完了する。

 今の時刻は正午を少し回ったところ。各種移動時間諸々を差し引いても、寄り道する時間はたっぷりあった。


 そんな話をしているうちに、冒険者ギルド総本部に辿り着いた。

 エンデアンに移動する前に売店に寄り、二人で期間限定品のぬるぬるドリンクチョコレート味を五本づつ購入するのも忘れない。

 何故なら今日は二月二十八日、ぬるチョコドリンク販売最終日だからである。


 そして奥の事務室にある転移門で、ラグナロッツァ総本部からエンデアン支部に移動したライト達。

 二人は早速クレエがいる受付窓口に向かった。


「よ、クレエさん。久しぶり」

「まぁ、ラウルさん!こんにちは!」

「クレエさん、こんにちは!ご無沙汰してます!」

「まぁまぁ、ライト君まで!こちらこそご無沙汰しておりますぅー」


 ライトとラウル、二人の訪問に受付嬢クレエの顔が綻ぶ。

 ライトとは半年ぶりに会うクレエ。未だにライトはクレア十二姉妹の顔の区別がつかないが、どの姉妹も相変わらず愛らしくて会うたびにライトは心が癒やされる。

 そしてクレエが早々かつそわそわとした様子で、ラウルに問いかけた。


「ラウルさん、本日は殻処理依頼を引き受けにいらしてくださったのですか?」

「ああ。ここ最近、ずっとラグナロッツァの例の件にかかりっきりだったからな。こうして他の街に出るのなんて久しぶりのことだ」

「ああ……そういえばラグナロッツァは、つい先日までものすごーく大変な事態でしたものねぇ……」


 ラウルの答えに、そわそわしていたクレエの表情が一転して曇る。


 ラグナロッツァの一大事は、世界中に散らばる冒険者ギルド全ての支部にも伝えられた。

 当然このエンデアンにも即日で通達され、極秘裏で勇者候補生探しが各地で行われていた。

 そしてビースリーの開戦直前に問題が無事解決されたことも、当然ながらクレエは知っている。

 そのことに、クレエが心から安堵しつつ話を続ける。


「それでも何とか穏便な決着がついたようで、私達もホッとしておりましたぁ」

「おかげさまでな。うちのご主人様はもとより、全国から駆けつけてきてくれた大勢の冒険者達によってラグナロッツァは窮地から救われた」

「我が街エンデアンからも、結構な数の冒険者がビースリーを迎え撃つべくラグナロッツァに馳せ参じたんですよぅー。何事もなく無事帰還できて、本当に良かったですぅ……」

「本当にありがたいことだ。俺なりにその恩を少しでも返せるよう、これからも殻処理依頼を引き受けさせてもらおう」

「ありがとうございますぅー!今すぐ優先順位が高い順に見繕ってまいりますぅー!」


 ラウルの恩返し発言に、クレエの顔はこれまでにないくらい輝きまくる。

 そして目にも留まらぬ早さで、依頼掲示板のある方向にすっ飛んでいった。

 エンデアンの殻処理問題は、相変わらずラウル頼みのようだ。


 そうして依頼書の束を持って受付窓口に戻ってきたクレエ。

 ありったけの依頼書にザッと目を通しながら、シュパパパパ!と依頼書の順番を入れ替えている。

 何でもできるスーパーウルトラファンタスティックパーフェクトレディー!の敏腕仕事ぶりに、ライトもラウルも「ぉぉぉ……」と嘆息するばかりである。


「えーとですねぇ、喫緊でお願いしたいのが二件、できれば受けていっていただきたいのが二件の計四件あるのですがー……」

「四件か、それくらいなら今日全部受けていこう」

「ありがとうございますぅー!神様仏様殻処理貴公子様ぁー♪」


 クレエが厳選した四件の依頼を、ラウルが快く引き受ける。

 ラウルの快諾を得られたクレエ、早速依頼書にギルド印を捺印し手続きを進めていく。

 そうして四件の案件をラウルに託すべく、クレエが依頼書をラウルに渡した。


「では、よろしくお願いいたしますぅー」

「承知した。依頼完了後にちょっと寄り道するから、ここに戻るのは夕方になると思うがよろしくな」

「分かりましたぁー。どうぞお気をつけていってらっしゃいませー!」

「いってきまーす!」


 花咲くような笑顔のクレエに見送られながら、ライトとラウルは冒険者ギルドエンデアン支部を後にした。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 その後ラウルはライトとともに、殻処理依頼を順調にこなしていった。

 その内訳は、飲食店が二件、食品加工業者が二件。

 いつもの大人気定食屋『迷える小蛇亭』他、どこも二度や三度は殻処理依頼で訪ねたことがある場所だったので、ラウルは道に迷うことなく移動してはサクサクと依頼をこなす。


 そして、どの行き先でもラウルは大歓迎されていた。

 依頼主はラウルの顔を見るなり「ああッ、殻処理貴公子様!ご無沙汰しておりますー!」「此度もお世話になりますー!」「我らが救世主様、いつもありがとうございますー!」と、それはもう神仏を崇めるかの如き対応である。


 一ヶ所につき、二百枚から四百枚近くのホタテの貝殻を空間魔法陣に収納していくラウル。

 四件合わせて総数千枚以上、推定報酬10万G超えである。

 救世主とまで崇められるラウル、その辣腕ぶりを目の当たりにしたライトは我が事のように誇らしい気持ちになる。


 そうして全ての依頼を終えた後、ライト達はエンデアンの街の外に出た。

 壁の向こうに一歩出れば、人気の少ない荒野と海が広がる。

 いや、エンデアンの街も海に面してはいるのだが、そこで二人して海に飛び込もうものなら大騒ぎになりかねない。故に一度は街の外に出なければならないのだ。


 周りに人がいないことを確認したライト達。

 ふわり、と宙に浮いたかと思うと、ものすごい勢いで海の方に飛んでいった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 陸から離れた沖合まで出たライトとラウル。

 海面のすぐ近くまで降りていく。

 まずライトがマントの内ポケットに用意しておいた呼び笛を取り出し、口に含んで思いっきり吹いた。

 その音は、吹き込んだ息の量に反してピィー……というかなり小さな音だったが、程なくして数人の女人魚達がピョコ、と頭を出した。


『私達を呼んだのは、誰ー?』

『あら? 人間が二匹、空に浮いているわね?』

『人族って、空飛べたっけ?』


 ライト達のことを不思議そうな目で見る女人魚達。

 その中に、ライトのことを見知った者がいた。


『あーッ、ライト君じゃなーい!』

『ライト君、お久しぶりー!』


 ライトに声をかけてきたのは、キャサリンとガーネットである。

 二人はかつてライトがレオニスとともに、海の女王のもとを訪ねた時に知り合った女人魚達。一番最初に出会ったキャサリンの耳には、キラキラと輝く雫型のイヤリングが輝いていた。


「キャサリンさん、ガーネットさん、お久しぶりです!」

『イヤーン、お姉さん達の名前をちゃーんと覚えててくれたのねー!嬉しーい!』 

『ライト君、とっても偉いわー!』


 ライトと顔見知りであるキャサリンとガーネットが、嬉しそうに両手を上げてブンブンと振っている。

 一方でライト達のことを知らない女人魚達は、何事が起きたのか全く分からずに小首を傾げている。


 しかし、ライト達のことを知らぬ女人魚達が警戒心を露わにすることはない。

 人魚達だけが使う呼び笛を持っていて、それを使ったということは少なくとも敵ではないことは彼女達にも分かる。

 何より自分達の仲間であるキャサリンやガーネットが、こんなにも歓迎の意を現しているのだ。警戒などする必要もないのである。


 そんな中、キャサリンがライトに話しかけた。


『ライト君、今日も海の女王ちゃんに会いにきたのー?』

「はい。今日は近くの街に来たので、久しぶりに海の女王様と海樹のイアさんに会いに行きたいな、と思いまして」

『そっかそっかー、海の女王ちゃんも海樹も喜ぶと思うわー』

「だといいんですが」


 ライト達の訪問目的を聞いたキャサリンが、うんうん、と頷いている。

 そのキャサリンの横で、ガーネットもライトに声をかけた。


『ささ、こんなところで立ち話も何だから、早く海の中においでよー!』

「はーい。ラウル、行こっか」

「おう」


 顔見知りの女人魚達に招かれて、ライトとラウルが静かに海に入っていく。

 そうしてライト達は海底神殿と海樹のもとに向かっていった。

 ラグーン学園再開初日の午後の、ライトとラウルのエンデアン行きです。

 ライトがエンデアンを訪れるのは、作中でも言及していた通り夏休み明け直後、第839~853話以来ですねー(゜ω゜)

 というか、あん時も14話=二週間も滞在しとったんか…( ̄ω ̄)…

 そりゃまぁね、行きと帰りの両方でクレエとかけっこ競争してたらね、話数も嵩みますやね(´^ω^`)


 リアル時間にして一年と四ヶ月ぶりのエンデアン訪問に、賑やかな女人魚達のお出迎え。

 キャサリンとかガーネットとか、懐かしくも愛らしい美女人魚達を再び出せて、作者はとても嬉しいです♪( ´ω` )

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