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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
取り戻した日常

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1303/1686

第1303話 冥界樹の苦悩、そして勇者候補生と銀河の女神のナイショ話

 その後も地底世界での和やかなお茶会が続いた。

 コヨルシャウキは二人の女王に様々なスイーツや飲み物を勧められ、それら全て断ることなく都度口にしている。銀河を司る女神は、かなり好奇心旺盛なようだ。


 白虎のシロは、ウィカとアクアの間にデデーン!と座りご満悦の様子。

 大好きなウィカの隣にいられるから、というだけでなく、初めて会う他所の神殿守護神アクアとも話ができるのがとても嬉しいようだ。


『ワタシのことは『シロちゃん』って呼んでね!』

『そしたら僕のことも『アクア君』って呼んでくれる?』

『もちろんよ!ワタシ、神殿守護神のお友達ってアクア君が初めてなの。だから今日は、アクア君が地底世界に来てくれてすっごく嬉しい!』

『僕も他の神殿守護神には滅多に会わないから、シロちゃんと知り合えて嬉しいよ。ちなみに僕は、シロちゃんより先に三体の神殿守護神に会ったことあるよ』

『え!? そんなにたくさんの神殿守護神に会ってるの!? すごーい!』


 クールなアクアに、シロがキラキラとした尊敬の眼差しで見つめる。

 普段から神殿守護神どころか他者との交流自体がないシロにとって、あちこちに出かけるアクアはとても眩しく映るようだ。


 そしてライトとレオニスは、ユグドランガとの会話を楽しんでいた。


『レオニス、ライト。先日は我が姉ユグドラエルが住まう天空島を守ってくれて、本当にありがとう。其方達が駆けつけてくれなければ、天空島は邪竜どもに奪われていたことだろう。心より感謝する』

「いや、礼を言われる程のことでもない。もともと俺達の方も、天空島と手を組んで邪竜どもを殲滅する予定だったからな」

「そうですよ!それに、エルちゃんや天空島の皆はぼく達の大事な友達です!友達が困っていたら、助けるのは当然のことです!」

『ありがとう……エル姉様は天空島の者達に慕われるだけでなく、天空島の外にも善き友にも恵まれたのだな……』


 まずユグドランガは、真っ先に先日の天空島襲撃事件に触れてライト達に礼を言った。

 公国生誕祭直後に、邪竜の奇襲を受けた天空島。その攻防戦やユグドラエルが全ての島に結界を張る奮闘ぶりを、きっとユグドランガも分体を通してハラハラしながら見ていたのだろう。


『しかし……ああいう危機的な場面を見守るしかないというのは、何とも歯痒いものだ。できることなら、我も其方達のようにエル姉様のもとに駆けつけて戦いたかった』

「そうだよな……ランガがそう思う気持ちもよく分かる。俺だって、もしランガの立場だったら絶対にそう思うもんな」

『ツィの襲撃事件のことを聞いたときもそうだったが……あの時ほど、神樹である我が身を呪ったことはない』

「ですよね……」


 非常に悔しそうな口調のユグドランガに、ライト達も頷きながら聞いている。

 しかし、ユグドランガのそうした悩みは本当にただ聞いてやることしかできない。彼ら樹木は、自ら動くことができないのだから。

 これはユグドランガのみならず、全ての神樹に言えることだった。


「でも、神樹の皆にはそれぞれ頼もしい仲間がいるじゃないか」

「そうだね!シアちゃんには八咫烏、エルちゃんには天空島の皆、ラグスさんには白銀さんや竜族の皆、イアさんには男人魚の皆がいるもんね!」

「そうそう。ツィちゃんにだって俺達がいるし、ナヌスやオーガとも友達になったし、何よりイアの枝で作った強力な結界に守られてるからな」

「でもって、ランガさんには地の女王様やシロちゃんがいますもんね!」

『………………』


 ライト達の言葉に、ユグドランガが黙したまま聞き入っている。

 自ら動けない悔しさは、ライト達にはどうすることもできない。

 だが、サイサクス世界に散らばる六本の神樹の全ては頼もしい仲間に恵まれているのだ、ということをライト達は伝えたかったのだ。


「他の神樹達の危機に直接駆けつけてやることはできなくても、皆それぞれ近くに頼もしい仲間がいて助けてくれるさ」

「そうですよ!それに、神樹の皆さんは回りに助けられるばかりじゃなくて、いつも回りを助けてくれてますし!」

「そうそう、お互い様ってやつだ。互いに支え合っているんだから、ランガもそう気に病むな」

『お互い様、か……そうだな、我等神樹のみならず生きとし生ける者は皆全て、周りの者達と互いに支え合って日々生きているものだものな』


 ライト達の言葉に、ユグドランガの枝葉がサワサワと揺れ動く。

 それはまるで、小さく頷いているかのような仕草に思える。

 言葉だけの気休め、と言ってしまえばそれまでだが、ユグドランガにはその気休めの言葉をかけてくれる者すら今までいなかったのだ。


「ま、もしまた神樹の皆に何か起きたとしても、ユグドランガの代わりに俺達が絶対に助けに行くから安心しな」

「ぼく達だけじゃなくて、ラウルやマキシ君も助けてくれますよ!」

『それはありがたい。これからもよろしく頼む』

「おう、任せとけ」


 ライト達の頼もしい言葉に、ユグドランガが弾むような声で応える。


『そして、我にできることがあったら何でも言ってくれ。其方達の恩に報いるべく尽力しよう』

「ありがとう。何かあったら相談させてもらうわ」


 ユグドランガの申し出に、レオニスも乗り気な様子で応える。

 六本の神樹の中で一番最後に出会った冥界樹ユグドランガ。

 彼の苦悩や悲しみ、そして種族の壁をも乗り越えてライト達との友情がより深く育まれていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 お茶会は皆に様々な会話と交流をもたらし、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。

 途中白虎のシロがウィカとアクアに『ウィカ様、アクア君、地底の泉でいっしょに水浴びしませんか!?』と誘って三者揃って泳ぎに出かけたり、水の女王と地の女王が美味しいスイーツをたらふく食べたことで眠気に襲われて昼寝をしはじめたり、ユグドランガがレオニスに変な方向に伸び過ぎた枝の枝打ちを頼んだり等々、皆好きなように地底世界でのひと時を楽しんでいた。


 ちなみに他の者達が枝打ちやら昼寝やら水浴びをしている間、コヨルシャウキは何をしていたのかというと。勇者候補生であるライトと話し込んでいた。


『これ、ヒカルよ。此方がここに住むとして、其方とのビースリー鍛錬』

「しーッ!コヨルシャウキさん、そんな大きな声で言っちゃダメ!」

『モゴゴゴ』


 コヨルシャウキにビースリーの話題を出されたライト、慌ててコヨルシャウキの口を押さえにかかる。

 ライトが勇者候補生であることは、レオニスにはとっくにバレている。

 だがそれは、暗黙の了解として黙認してもらっているだけのこと。ライトとしては、まだ大っぴらに話していい事柄ではないのだ。


 思いっきり口を押さえつけられて、コヨルシャウキがしばしモゴモゴしていたが、ライトがそっと手を離して以降彼女もその意図を汲んで小さな声で話し始めた。


『其方とのビースリー鍛錬は、今後どのようにして実行すればよいのだ?』

「えーとですね……コヨルシャウキさんは、ここから星海空間に移動できます?」

『もちろん。星海空間に行くだけならば、どこにいようとも瞬時に移動できる』

「ですよねー。あの亀裂を作り出せれば、亀裂の向こう側に行くのはすぐですもんねー」


 コヨルシャウキのライトへの問いかけ、それは『今後どのようにしてビースリー鍛錬を行うか』であった。


 ビースリーはコヨルシャウキにとって己の存在意義そのものなので、ビースリーをしないという選択肢はない。

 そしてライトとしても、レベル上げや職業習熟度上げなどで今後も時折ビースリー鍛錬を利用したいと思っている。

 双方の利害が一致する訳だが、それを実行にするにあたり致命的な問題があった。


「でも……星海空間からこの地底世界に直接帰ってくることって、可能ですか?」

『それは……どうすればいいのか、全く方法が分からぬ……』

「やっぱりそうですか……向こう側に行ったはいいけど、こっちに帰れなくなるのは困りますねぇ」


 そう、致命的な問題、それは『地底世界への帰還方法が分からない』である。

 星海空間へ移動するだけなら、コヨルシャウキが担うことができる。

 しかし、ビースリー鍛錬を終えた後どうやってこの地底世界に戻ればいいかが分からないのだ。

 この問題を解決しないことには、ライトもコヨルシャウキもビースリーを決行することができない。



「じゃあ、後でぼくがヴァレリアさんに会った時に、コヨルシャウキさんの移動方法とか相談しておきます。多分ヴァレリアさんなら、何とか方法を考えてくれると思うので」

『うむ、そうしてもらえるとありがたい。というか、ヴァレりんはこの地底世界にも来れるのか?』

「多分問題ないと思いますよー。サイサクス世界から星海空間にまで行けるヴァレリアさんなら、この地底世界にも余裕で来れるかと」

『それもそうか』


 他の者達に聞かれぬよう、小声でゴニョゴニョと話し合う様は実に怪しい空気を醸し出している。

 するとそこに、ユグドランガの枝打ちを終えたレオニスが戻ってきた。


「何だ、二人して仲良く密談か?」

「え"ッ、密談!? そそそそんなことないよ!てゆか、レオ兄ちゃん、おかえり!」

「おう、ただいまー」


 レオニスがライトを軽く揶揄いつつ、ふとジャケットの内ポケットから取り出した懐中時計を見る。

 時刻は午後の二時を少し回ったところだった。


「もう二時か。ぼちぼち女王達を起こして、帰る支度をするか?」

「そうだねー。今日もランガさんとたくさんお話できたし、女王様達もたくさんスイーツを食べて満足そうだったし、そろそろ帰ってもいいかもね」

「じゃ、片付けを始めるか。ライトは女王達を起こしてやってくれ」

「はーい」


 レオニスが空のバスケットやカップなどを片付け始め、ライトはまだ敷物の上ですやすやと寝ている水の女王と地の女王に声をかけた。


「水の女王様、そろそろおうちに帰りますよー。地の女王様も起きてくださーい」

『ムニャムニャ……ブラウニー、おかわりぃー……』

『フニャフニャ……アップルパイ、美味ちぃ……』


 ぐっすりと寝てしまっている二人の女王。

 気持ちよく寝ているところを起こすのは忍びないが、かと言ってこのまま水の女王を置いてきぼりにする訳にもいかない。

 ライトは二人の女王の身体をそっと揺すりながら、目を覚ますよう声をかけ続ける。


「ほら、水の女王様、起きてくださーい」

『ンー…………もう帰るの?』

「地の女王様も、起きてくださーい」

『ンー…………もう帰るのー?』


 何度目かのライトの呼びかけに、ようやく上体を起こした二人の女王。

 起き抜けの言葉がほぼ同じなのは、彼女達が姉妹であることの証か。


 まだ眠い目を擦りながら、対面で向かい合う水の女王と地の女王。

 二人はどちらからともなく近づいていき、ヒシッ!と抱きしめ合った。


『地のお姉ちゃん……今日はお姉ちゃんに会えて、すっごく楽しかった……』

『水の女王ちゃん……私も水の女王ちゃんに会えて、とっても嬉しかったー……』

『また遊びに来てもいい?』

『もちろんよー。私はいつでもここにいるし、皆が遊びに来てくれるのをいつでも待ってるわー』

『ありがとう……』

『こちらこそ、ありがとうー……』


 別れを惜しむ二人の女王の瞳から、ポロポロと涙が零れ落ちる。

 束の間の出会いを喜び、再会を誓う姉妹の抱擁は誰にも邪魔することはできない。

 そうして一頻り抱きしめ合った二人の女王。双方とも気が済んだのか、どちらからともなくゆっくりと身体を離し、二人してふわり、と宙に浮いた。


『……さ、そしたら地底の泉で水遊びしているウィカちーやアクア様のところに行かなくちゃ』

『私もシロちゃんを迎えに行かなくっちゃー』

『……って、帰る前に私だけでもランガ君とコヨルシャウキちゃんにご挨拶しておかないとね』


 地底の泉に向かいかけた水の女王。一旦飛ぶのをやめて踵を返してユグドランガを見上げた。


『ランガ君、今日は突然お邪魔してごめんなさい。でも、とっても楽しかったわ。本当にありがとう』

『こちらこそ、地の女王の姉妹である水の女王に会えてよかった。また気が向いたらいつでも遊びに来てくれ。心より歓迎する』

『ありがとう!ランガ君、これからも地のお姉ちゃんとシロちゃんのことをよろしくね』

『もちろん。彼女らもまた我の大事な家族だからな』

『うふふ、そう言ってもらえると私も嬉しいわ。じゃ、またね!』

『ああ、其方も元気でな』


 ユグドランガに別れの挨拶をした水の女王。

 二者のやり取りを、地の女王もずっと微笑みながら見ていた。

 そして水の女王は、コヨルシャウキにも声をかけた。


『コヨルシャウキちゃん、今日はいっしょにお茶会できてすっごく嬉しかったわ。ありがとう』

『何の。此方の方こそ、お茶会なるものを経験できて楽しかった。また機会があれば、ともにお茶会をしようぞ』

『うん!またライト達とここに来た時に、皆でいっしょにお茶しましょうね!』


 コヨルシャウキの手を両手でギュッ!と握る水の女王に、コヨルシャウキも抗うことなく受け入れる。

 コヨルシャウキにとって、水の女王はサイサクス世界で初めてできた女の子の友達。水の女王の明るく朗らかな性格に、コヨルシャウキも心惹かれたようだ。


 そして水の女王は、まだ片付けをしているライト達にも声をかけた。


『ライト、レオニス、先に地のお姉ちゃんといっしょに地底の泉に行ってるわねー。さ、地のお姉ちゃん、行きましょ』

『はーい。二人とも、お片付けが終わったら泉に来てねー』


 地底の泉に向かってスーッ……と移動していく二人の女王を、ライトは「はーい」と言いつつ、レオニスも「はいよー」と答えながら後片付けを続けていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 二人の女王が地底の泉に行くと、アクアは泉で優雅に泳ぎ、ウィカとシロは泉の畔でのんびりと寛いでいた。

 まず水の女王が、畔にいたウィカに声をかける。


『ウィカちー、ライト達がそろそろ帰るってー』

『そなの? そしたらアクア君にも声をかけなくっちゃ』

『アクア様ー、目覚めの湖に帰りましょーーー』

『はーい』


 水の女王に帰宅を告げられたアクア、水面からふわり、と浮いて水の女王とウィカがいる畔に寄ってきた。

 そして地の女王も、シロに向かって声をかけていた。


『シロちゃーん、水の女王ちゃん達がおうちに帰るってー』

『え、もう帰っちゃうの?』

『それは仕方がないわよー、水の女王ちゃん達にも帰るおうちはある訳だしー』

『そっかー……寂しいけど、しょうがないよね……』


 ウィカ達の帰宅を知ったシロが、明らかにしょんぼりとしている。

 そんなシロに、ウィカが優しく声をかけた。


『シロちゃん、そんなに悲しまないで? ボクもまた遊びに来るから』

『ウィカ様……お気遣いいただき、ありがとうございますぅ……シロはいつまでも、いつまでもウィカ様のお越しをお待ちしておりますぅ……』


 ウィカの紳士ぶりに、シロが眦を滲ませながら健気に応える。

 そのすぐ後に、後片付けを終えてユグドランガにも別れの挨拶を済ませたライト達が地底の泉に到着した。

 水面から上がってきたアクアの背中に、ライトとレオニスと水の女王、そしてウィカが乗り込む。


『アクア君ー、また皆で遊びに来てねー? 私達、待ってるからねぇー』

『ウィカ様ー!アクア君ー!さようならー!』


 地の女王が大きく手を振り、シロが泉の中央に向かうアクアの背中に大きな声で呼びかける。

 地底神殿の女王と守護神に見送られながら、ライト達も手を振りつつ地底の泉の中に沈み目覚めの湖に帰っていった。

 ぐおおおおッ、時間ギリギリー><

 後書きはまた後ほど……



【後書き追記】

 地底世界でののんびりとしたお茶会その他です。

 あー、まったりとした平穏な日々、そして属性の女王達の触れ合いやウィカを慕うシロの乙女心に癒やされるぅー( ´ω` )

 その一方でコヨルシャウキさんも、ライトに口を塞がれてモゴゴゴするとか面白キャラへの道を順調に歩んでしまっていますけど(´^ω^`)

 それでも!いずれまた来たるライトとのビースリー対戦時には!ボスとしての威厳を再び発揮してくれる、ハズ!……多分?

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ライト同様に、コヨルシャウキもこの世界でならば「死ぬ」のではないか?心配になりました。 彼女は死の概念を知らない……。
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