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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
ラグナロッツァに潜む危機

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第1283話 激しい悔恨ととある日の思い出

 ライトが亀裂の向こう側に渡り、ラグナロッツァのビースリー回避が確定したその日のうちに、カタポレンの家を出たレオニス。

 ずっとサボってきた森の警邏に出る、という理由で家を飛び出してきたが、本当は警邏などどうでも良かった。

 ただただ一人になりたかった。


 宛もなく森の中を彷徨い、木々の上を飛び続けるレオニス。

 空を飛んでいる間中、謎の亀裂が出現して以降の様々なことがレオニスの頭の中で渦巻き続ける。

 ライトに謎の亀裂の話をした時、話の途中から明らかにライトの顔色が悪くなっていった。そして終いには、気を失ってしまった時のことを思い出していた。


 あの時のライトは、既に自分が勇者候補生だということを知っていて―――

 ビースリーのボスが自分を探していることを知り、動揺して失神してしまったんだろう。

 どうしてあの時、俺はライトの異変に気づいてやれなかったのか……

 ラグナロッツァの一大事にかまけてばかりで、どうしてもっとライトのことを気にかけてやらなかったんだろう―――


 そして、どうして俺はコヨルシャウキとあんな約束―――勇者候補生とはそっちで戦ってくれ、なんて話をしてしまったんだろう。

 ラグナロッツァの民を救うという名目で、勇者候補生にだけ犠牲を強いるなど―――

 俺の傲慢な考えのせいで、ライトはコヨルシャウキに連れていかれてしまった……


 これまでレオニスがしてきた行動、その全てに激しい後悔の念が絶え間なく押し寄せる。

 その度にレオニスの目の前は涙で歪み、周囲にレオニスの絶叫が響き渡った。


 そうして日夜問わず飛行し続けること丸三日。

 飲まず食わずとまではいかないが、その間レオニスが口にしたのはエクスポーション数本だけで、食事も全く摂らぬまま過ごしていた。


 三日間彷徨う間に、八咫烏の里やドラリシオの群生地の近くを通ったりもした。

 だが、レオニスはそれら知己を得た者達のもとに立ち寄ることは一切なかった。

 いつものレオニスなら「近くに来たから、ついでに立ち寄ってあいつらの顔でも見にいくか」とか言いながら、気軽に顔を出すところなのに。

 しかし、今のレオニスはとてもそんな心境ではなかったし、とにかく誰にも会いたくなかった。


 とはいえ、さすがに丸三日もの間ずっと飛び続けていると、如何に体力お化けのレオニスでも疲労がかなり溜まってきた。

 カタポレンの家を飛び出してから四日目の昼を少し過ぎた頃。

 レオニスはぼんやりとした頭で、この先どうするかを考える。


 ああ、そういやここからもうちょい先に行くとディーノ村があるな……

 ……そしたらグラン兄の家にでも寄って、少し休んでいくかな……

 グラン兄の家なら村の端っこで、冒険者ギルドからも遠いからクレアに会うこともないだろうしな……


 今いる場所がディーノ村から近いことに、ふと気づいたレオニス。

 ディーノ村はレオニスの生まれ故郷であり、たくさんの思い出が詰まった場所だ。

 とはいえ、両親を亡くしたレオニスが育った孤児院はもうないし、レオニスがわざわざ立ち寄れる場所もほとんどない。

 かつてレオニスが幼い頃、シスターマイラに叱られたり他の子と喧嘩して孤児院を飛び出し家出した時などに、泊めてくれた優しいおじいさんやおばさんが住んでいた家ももう住む人がいなくなり、だいぶ昔に取り壊された。


 寂れゆく一方のディーノ村で、今でもレオニスが行ける場所は二ヶ所しかない。

 一つは冒険者ギルドディーノ村出張所、そしてもう一つがグランとレミが結婚後に借りて住んでいた借家である。

 その借家はディーノ村のはずれにあり、グラン達が借りていた当時でも『あんな辺鄙なところ』と言われるくらいに何もないところにある。


 グラン達が借りていた借家は、今はライトに管理を任せている。

 そのため家の鍵はライトに渡してあるが、レオニスも合鍵を持っているので家への出入りは問題なくできる。

 ひとまずレオニスは飛ぶ方向を少し変えて、ディーノ村に向かっていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 程なくして、グランとレミが住んでいた家に到着したレオニス。

 空間魔法陣から家の合鍵を取り出し、玄関を開けて家の中に入る。

 家の中は特に埃っぽくもなく、ライトがきちんと手入れをし続けていることがよく分かる。


 レオニスは玄関で靴を脱ぎ、深紅のロングジャケットを脱ぎながら寝室に向かう。

 寝室にはベッドが二つ並べられており、そこには確かにグランとレミが生きて暮らしていた証を感じられる。


「グラン兄、レミ姉、すまんな。今日だけ一泊させてくれ……」


 ここにいない兄姉に向かって断りを入れつつ、ベッドにゴロン、と寝転ぶレオニス。

 それまでずっと飛び続けていた疲れがドッと出たのか、レオニスはベッドに横たわった途端に寝てしまっていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 そのまま泥のようにずっと眠っていたレオニス。

 ふと目が覚めて窓のある方を見ると、外はかなり明るい。

 レオニスがこの家に来た時はまだ普通に昼だったはずなのだが、何のことはない。レオニスが一頻り寝て起きた時には、既に丸一日が経過していた。


「ぁー、俺、丸一日寝てたんか……」


 レオニスはベッドからのそりと起き上がりながら、右手で頭をガリガリと掻きむしる。

 レオニスがこんなにだらしなく長寝したのは、冒険者になって以来初めてのことだ。

 ベッドから起きて立ち上がったレオニスが、風呂場に向かう。

 三日間風呂にも入らず、ずっとカタポレンの森の上を飛び続けていた上に昨夜はそのまま寝てしまったので、さすがに自分で自分の臭いが気になったようだ。


 シャワーで軽く汗を流し、洗顔後に髪を洗う。

 本当は髭も剃りたいところだが、今から誰に会う訳でもないし、めんどくせぇからいいや……とぼやきつつそのまま風呂から上がる。

 空間魔法陣から新しい下着や綺麗な普段着を取り出し、ささっと着替えて台所に向かった。


 レオニスは台所にあるテーブルの椅子に座り、ふぅ……と一息つく。

 するとその時、レオニスのお腹から『ぐきゅるるるる……』という音が鳴った。

 それまで丸三日も飛び続け、久しぶりのベッドで長時間寝て風呂にも入ってさっぱりすれば、嫌でも腹の虫が鳴るというものだ。


 それまで全く空腹感を感じていなかったレオニスも、己の腹から『飯食え!食いもん寄越せ!』という盛大な催促が突きつけられたことで、ようやくお腹が空いてきたのを自覚したようだ。

 どれだけ悲嘆に暮れていようとも、やはり人間とは生きている限りは腹も減るし眠りに落ちるものなのである。

 レオニスは腹の虫を落ち着かせるため、椅子に座ったまま空間魔法陣を開き、おにぎりやらサンドイッチやら適当に食べ物を出して食べ始めた。


 もっしゃもっしゃと一人寂しく食事を摂るレオニス。

 どれもラウル特製の逸品なのに、何を食べても味がしない。

 いや、味覚的には美味しいと感じるのだが、美味しいものを食べても『嬉しい』とか『楽しい』などの喜びの感情が全く沸き起こらないのだ。


 一人で食べる飯ってのは、こんなにも味気ないもんだったっけ……

 ライトを引き取る前は、一人で飯を食うのなんて当たり前のことだったのにな……

 レオニスはそんなことを考えながら、黙々と食べ物を口に運んでは飲み込む。

 そうした機械的な食事を摂りながら、レオニスはこれからのことを考え始めた。


 ラウルやマキシには『今日は戻らない』と言ってカタポレンの家を出たが、さすがに丸四日もの間一度も帰らなければ相当心配していることだろう。

 本当はまだ家に帰りたくないが、かと言ってこれ以上ラウル達に心配させるのも忍びない。

 仕方がないから、ここは一旦家に帰るか―――そう思っていたレオニスの脳裏に、ふととある日の出来事が映像として蘇る。


 それは、ライトを伴って初めてディーノ村に来たあの日。

 ライトがラグーン学園に通うことになり、グランとレミの墓前でその報告をするために墓参りに行った時のことだ。

 それをふと思い出したレオニスは、居ても立ってもいられずに席から立ち上がり、深紅のロングジャケット他フル装備に着替え始めた。


「せっかくここまで来たんだから、グラン兄とレミ姉の墓参りもして行こう。そして……一日も早くライトが帰ってこれるよう、グラン兄とレミ姉に頼んでこなくちゃな」


 善は急げ!とばかりに急いで着替えたレオニス。

 着替えてから一旦寝室に戻り、掛け布団や枕の位置を整えて綺麗な形に直しておく。

 そしてレオニスは玄関から外に出て扉に鍵をかけ、家のすぐ裏にある山を登っていった。

 激しい後悔の念に苛まれるレオニスの、森の警邏とは名ばかりの半ば家出同然の迷走ぶりです。

 作者も昔、とても悲しい出来事が身に起きた時に、車を運転しながら一人号泣し続けたことがあります。

 今回のレオニスの行動は、まさにその時の作者の行動や心情そのままに描いています。そう、レオニスが森の上を飛びながら絶叫したように、車の中ならどれだけ大声で泣き喚いても誰にも見られませんしね……


 正直、あんな悲しい思いはもう二度としたくないですが……人間生きていれば、何が起こるか分からないもの。

 だからこそ、一日一日を大事に生きていきたいと作者は思います。

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