第1277話 戦いの前夜
お盆休みとして四日間のお休みをいただき、ありがとうございました。
予定通り、本日より連載再開いたします。
謎の亀裂出現から十日目。
最後の魔物狩りから帰宅したライトは、ラグナロッツァの屋敷に移動した。平和な日の最後の晩餐を、ラウルやマキシとともに過ごすためである。
二階の旧宝物庫から一階の食堂に移動したライト。
するとそこにはマキシが一人、テーブルに就いていた。
マキシの姿を見たライトが、早速声をかける。
「マキシ君、おかえりー。てゆか、マキシ君一人なの?」
「あ、ライト君、ただいまです。今日は冒険者ギルド総本部で、夕方からビースリー開戦の決起集会?があって、ラウルはそれに参加してるんで僕だけ先に帰ってきたんです」
「あー、そっか、マキシ君は冒険者登録してないもんね」
「はい……本当は僕も冒険者になればいいんですけどね……僕の正体が八咫烏であることは、ライト君やレオニスさん、アイギスの皆さん以外には絶対に知られたくないので……」
「だよねー。それは伏せといた方がいいとぼくも思う」
ライトの呼びかけに、振り返りながら席から立つマキシ。
マキシが帰宅しているのにラウルが不在の理由を聞いて、ライトが納得している。
本当はマキシも冒険者登録できればいいのだが、そのためには種族が八咫烏であることを明かさねばならない。
いや、そのことを伏せて登録することもおそらくは可能だろうが、己の種族を偽ってまで冒険者登録しようとはマキシも思っていないようだ。
するとここで、マキシがふと玄関がある方向を見た。
「……あ、ラウルが帰ってきたようです」
「ホント!? ぼく、見てくるね!」
マキシの言葉に、ライトは急いで食堂を出て玄関に向かうべく廊下を走る。
玄関ホールに着くと、そこにはラウルだけでなくレオニスもいた。
「ラウル、おかえり!……って、レオ兄ちゃんもいる!おかえりーーーッ!!」
「おう、ただいま、ライト」
十日ぶりに帰宅したレオニスの、鮮やかな深紅のロングジャケットを目にしたライトの顔が瞬時にパァッ!と明るくなる。
今日はコヨルシャウキが宣言した待機期間の最終日だし、もしかしたらレオ兄も屋敷に帰ってくるかも……?とライトも予想かつ若干の期待は抱いていた。
だが、こうして実際に十日ぶりにレオニスに会えると、それだけで喜びも一入に感じられた。
これまでも、シュマルリ山脈遠征やコルルカ高原奥地遠征など、一週間はかかるかも、と言われていたレオニスの遠征。
しかしそれらは全て一週間もかからず、レオニスは三日程度で事を済ませてライト達のもとに無事帰ってきていた。
だが、今回ばかりは違う。ラグナロッツァにいるにも拘わらず、ライトはレオニスと十日も会えなかった。
こんなことは、ライトがこのサイサクス世界に生まれて初めてのことだった。
ライトはレオニスとの久しぶりの再会の嬉しさに、あれこれ考える間もなくレオニス目がけて思いっきり突進した。
ドゴォーーーン!というものすごい音を立てて、レオニスの胸に飛び込むライト。
もちろんレオニスがそれに怯んだり蹌踉けたりすることなどない。ガシッ!としっかり受け止めている。
「ただいま、ライト。久しぶりだな」
「うん!レオ兄ちゃんも、思ったより元気そうで良かった!」
「ライトこそ、あれから大丈夫だったか? 一応ラウルからは、次の日にはもう元気になってた、とは聞いていたが……」
「この通り元気だよ!レオ兄ちゃんにも心配かけちゃって、ごめんね」
「ンなこたぁないさ。むしろ俺の方こそ、お前が大変な時に傍についていてやれなくて……本当にごめんなぁ」
猛突進してきたライトの頭を優しく撫でながら、本当に申し訳なさそうに謝るレオニス。
ライトはレオニスの胴体に抱きついたまま、顔を上げてレオニスの顔を改めて見つめる。
連日の夜勤に加え、眠る時間もあまり取れていないのか、頑丈が取り柄のレオニスにしては珍しく目の下に薄っすらとクマができている。
しかも、日を追う毎に髭を丁寧に剃る余裕もなくなっていったので、無精髭まで生えてきていた。もっとも、レオニスはもともと髭はあまり濃い方ではないので、そこまで目立たないのだが。
いずれにしても、十日に渡るコヨルシャウキの監視や配給活動の手伝いなどでずっと働き詰めだったため、如何にタフなレオニスでも若干窶れているのが窺えた。
なのに、帰宅後真っ先にライトの体調を心配し、長らく家を空けていたことを謝るレオニス。
そんなレオニスの気遣いや謝罪に、ライトはすぐに反論する。
「そんな!レオ兄ちゃんが謝ることなんて一つもないよ!ぼくのことなんかより、今はラグナロッツァが大変な時なんだから!」
「まぁな……とはいえ、十日の期限の間に勇者候補生を見つけることはできなんだから、結局ビースリーの回避もできなかったがな」
「見つからなかったのだって、仕方がないよ。それだってレオ兄ちゃんや誰が悪い訳でもないし……」
レオニスの懺悔にも近い言葉に、ライトもしょんぼりとしながら懸命にフォローに回る。
そう、勇者候補生が見つからずにビースリー回避に至ならなかったのは、誰のせいでもない。他ならぬ、この俺のせいなんだから―――
誰にも言えない言葉を飲み込むライトの胸は、キリキリと痛み続ける。
するとここで、レオニスがライトの身体をひょい、と抱えて抱っこした。
「……ま、できなかったことをくよくよと悩んでもしゃあない。これから頑張るためにも、久しぶりに皆で晩飯食うか」
「あ、そしたらさ、皆で向こうの家でご飯食べて、お風呂も皆で入ろうよ!ぼく、そのために皆を呼びに来たんだ!」
「おお、そりゃいいな」
「でしょでしょ? 向こうの家でラーデも待ってるよ!」
「よし、そしたら俺もラウルも着替えてくるから、二階の転移門に集合な」
「うん!マキシ君ももう帰ってきて食堂にいるから、マキシ君を呼んで先に転移門の部屋で待ってるね!」
「おう、頼んだぞ」
レオニスが一旦ライトの身体を下に降ろし、ライトが嬉しそうにマキシを呼びに食堂に向かって駆け出す。
そんな元気なライトの後ろ姿を、レオニスとラウルは微笑みながら見守っていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そうして久しぶりに皆で過ごす晩餐は、とても賑やかだった。
十日ぶりに自宅でのんびりしながら食べる晩御飯は格別らしく、レオニスがいつも以上にバクバクとご馳走を食べ続ける。
「うおおおおッ、やーっぱ家で食うラウルの飯は美味ぇなぁ!」
「お褒めに与り光栄だ」
「ぃゃー、俺も一応エクスポなんかで体力回復してはいたんだがなー。やっぱちゃんとした飯を食わんと、力も出ねぇもんなんだな」
「そりゃそうだ。人族の諺にもあるだろ? 腹が減っては戦はできぬ、ってな」
「全くだ」
ラウルとのんびりとした会話をしながらも、猛烈な勢いで食べ続けるレオニス。
亀裂の夜間監視と配給活動、そして冒険者ギルド総本部の三ヶ所を行き来している間、レオニスもたまにラウルが持たせておいた食事を食べてはいた。
だが、それこそ食事を摂る寸暇も惜しんで動き回っていたため、体力回復はもっぱらエクスポーションなどの回復剤頼みだった。
ご飯を食べる勢いが一向に衰えないレオニスに、ラウルは涼しい顔で次々と空になった皿を回収し、別のご馳走が盛られた新しい皿を空間魔法陣からササッ、と取り出してはレオニスの前にスッ、と置く。
ラウルに言わせれば『フェネセンとのフードバトルに比べりゃ、この程度の食欲なんぞまだまだ可愛いもんだ』だそうだ。
そんな主従の忙しなくも微笑ましいプチフードバトルを眺めながら、ライトとマキシはラーデとフォルにご飯を食べさせている。
「レオ兄ちゃん、いつにも増してたくさん食べてるねー。ラウルのご飯がよっぽど美味しいんだねー」
『全くだ。あの身体以上に大量の食物を食しているが、一体どこにそんなに入るというのだろうな?』
「レオニスさん達のように、冒険者のお仕事をしている人達は身体が資本だってカイさん達も常々言ってますからねー。きっとレオニスさんのことだから、お腹の中の胃袋も空間魔法陣でできているんですよ!だってほら、レオニスさんは世界最強の金剛級冒険者なんですから!」
「フィィィィ☆」
レオニスの爆食いを微笑みながら見守るライトと、半ば呆れつつ感嘆するラーデに、何気に失敬なマキシと美味しそうに木の実を齧るフォル。
しかしマキシとしては、ディスっている気など毛頭なく120%敬意を表しているつもりだったりする。
そうして晩御飯を食べた後は、風呂に入る前に少し食休みをする。
皆で食後のコーヒーやお茶を飲みながら、これからの話を軽くしておく。
「俺とラウルは、明日の昼からビースリーの対応に当たらなきゃならん。だからまたしばらくの間、家には帰ってこれんと思う。その間、マキシにライトやラーデのことを任せたいんだが。頼めるか?」
「もちろんです!僕が全力でライト君達をお守りします!」
明日以降のことをマキシに託すレオニス。
レオニスはもちろんのこと、ラウルも冒険者ギルド総本部所属の冒険者としてビースリーの対処に出動しなければならない。
その間ライトや家のことを任せられるのはマキシしかいない、という訳だ。
レオニスからの依頼に、マキシがフンス!と張り切りながら快諾する。
そしてレオニスの注意は、当然のようにライトにも向けられた。
「ライトも、俺やラウルがいない間はマキシの言いつけをきちんと守れよ?」
「うん!」
「ビースリーは二週間で収まるが、間違ってもその間ラグナロッツァには来るなよ? 明日の正午以降は、ラグナロッツァの屋敷に行くのも絶対に駄目だからな?」
「…………うん!」
「おい、ちょっと待て……何だ、今の間は……」
マキシの言いつけを守ることには即座に承諾したライト。
だが、その後の『ラグナロッツァの屋敷に行くのは禁止』という一番大事な注意に、何故かライトは即答せずに微妙な間が空いたではないか。
この謎の間を含む返答の仕方に、レオニスは嫌な予感しかしない。
レオニスが、ジトーッ……とした半目でライトを睨む。
一方のライトはというと、ペカーッ☆と輝くようなニッコニコの笑顔であくまでも明るい口調で軽く戯けてみせる。
「フフフ、冗談だよ!いつだってぼくは、レオ兄ちゃんの言いつけをちゃんと守ってきたでしょ?」
「どうだかなー……ていうか、今回ばかりはこんな冗談口を叩いていいような状況じゃないんだ。ライト、お前にだってそれくらいは分かってるよな?」
「もちろん!」
「頼むから、明日以降の二週間の間だけはカタポレンの家でおとなしくしててくれ。ビースリーは必ず二週間で終わる。それまでの辛抱だから、な?」
「うん、分かった!」
最初は軽口ばかりだったが、レオニスの真剣な眼差しと語りかけをきっかけに両者とも真面目になる。
ビースリーは勃発後、二週間を過ぎると魔物の出現がピタリと止まる。このことは、過去に起きた複数のビースリー事件の分析によって判明している。
故にレオニスは、その間だけは絶対におとなしくしてろ!とライトを諭す。そう、レオニスは明日から二週間を堪えきり、ビースリーを乗り越えるつもりでいるのだ。
そんなレオニスの強い決意を感じ取ったライトも、今度こそ茶化したりすることなく真面目な顔で即座に承諾した。
ライトの即答に、レオニスも安堵したような顔になっている。
「……さ、そしたらそろそろ皆で風呂に行くか」
「賛成ー!お風呂ももう沸かしてあるし、皆の分のバスタオルだってぼくが脱衣所に用意しておいたからね!」
「おお、そりゃ用意がいいな。ラウルも手間が省けて良かったなぁ?」
「ああ。先に風呂の用意をしてくれた礼に、風呂上がりには皆に俺様特製のカフェオレアイスをご馳走しよう」
「ヤッター!」
風呂に行こうと提案するレオニスに、ライトが喜び勇んで準備万端なことを伝える。
その程度の軽いお手伝いのご褒美に、何とラウル特製カフェオレアイスが全員に振る舞われるという。これは嬉しい誤算だ。
早速ライト達は皆で風呂に向かっていった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
風呂ではライトがレオニスの背中を流し、ラウルの背中はマキシが流す。その間ラーデの身体はレオニスが洗い、フォルの身体はラウルが洗う。
その後洗う側と流す側が交代し、レオニスがライトの背中を流してラウルが八咫烏のマキシの身体を洗う。
マキシの三本の脚、その指や爪の間まで念入りに洗うラウルに、マキシが「うひゃひゃひゃ!ちょ、待、ラウル、やめてやめて、くすぐったいーーー!」と叫び、身を捩じる。
軽く暴れるまん丸体型のマキシに、ラウルは「ちゃんと洗っておかないと、こういうところに汚れが溜まりやすいんだぞ」と言いながら、マキシの脚をガッツリと掴んだまま爪や指の間を洗うのを続行している。
そんな二人の仲睦まじい様子を、ライトとレオニスが大笑いしながら見ていた。
身体や頭を洗い終えた後は、皆でのんびりと浴槽に浸かる。
ライトとレオニスとラウルは浴槽の縁に凭れかかり、ラーデとフォル、そして八咫烏姿のマキシはのんびりとお湯の上に浮かんだり、ふよふよと泳いだりしている。
「はぁー……やーっぱ風呂も家のものに入るに限るなぁ……」
「だよねー……身体の汚れは浄化魔法なんかでも一応取れるけど……身体の疲れまでは取れないもんねぇ……」
「全くだ……」
レオニスが自宅の風呂の良さをしみじみと呟き、ライトがそれに賛同し、ラウルもまた短い言葉で同意する。
冒険者ギルドにも一応風呂の設備はあるが、シャワーしかなく浴槽は設置されていない。
本当に汗を流すだけの簡易的な設備である。
しかし、入浴とは身体を清潔に保つだけでなく、疲れた身体を癒やす効果もある。
そうした癒やし効果を求めるなら、やはり浄化魔法やシャワーだけでは物足りない。ちゃんとした浴槽で、ゆったりと湯船に浸かるべきなのである。
風呂から上がった直後は、脱衣所で皆で横一列に並び、腰に手を当てながら冷たい飲み物をぐい飲みで一気に飲み干す。
レオニスは牛乳、ライトはコーヒー牛乳、ラウルは麦茶、マキシはフルーツ牛乳。これが皆の風呂上がりの定番ドリンクである。
その後リビングに移動し、ラウル特製カフェオレアイスを食べながら髪の乾かし合いをする。
入浴時同様に、賑やかで楽しい時間が続いた。
だが、楽しい時間もいつかは終わりが来る。
午後の十一時を回った頃、レオニスが皆に声をかけた。
「……さ、そろそろ寝るか。ラウル達はあっちの屋敷に帰るか?」
「そうだな、そうするか―――」
「あ、ラウル、待って!」
そろそろ就寝時間になり、レオニスがラウルとマキシの移動の確認をしていると、ライトが慌てて話に割って入ってきた。
いつもなら、ラウルとマキシはラグナロッツァの屋敷に帰るところなのに。一体どうしたのだろうか?
「ねぇ、ラウル、マキシ君……あのさ、今日はさ、二人ともこっちに泊まっていかない? レオ兄ちゃんのベッドはすっごくデカくて、四人で寝ても平気なくらい大きいんだよ!」
「…………そっか。小さなご主人様からのお誘いだ、是非ともお言葉に甘えて今日はこっちに泊まるかな。マキシにご主人様よ、いいか?」
モジモジしながら、ラウルとマキシにカタポレンの家での宿泊を持ちかけるライト。
ラウルとマキシがこの家に泊まったことは、実はまだ一度もない。だから今日だけは、皆といっしょに寝たい!とライトは思ったのだ。
そしてラウルはライトの願いを断ることなどないので、その場で承諾しつつレオニスやマキシにも確認を取る。
そんなラウルの問いかけに、レオニスやマキシも否やなどない。
二人とも笑顔でその問いかけに答えた。
「おう、もちろんいいぞ。ライトの望みだ、叶えてやらんとな」
「僕も大丈夫!ライト君、今日は皆でいっしょに寝ましょうね!」
「うん!皆、ありがとう!」
ライトのおねだりを皆快く受け入れてくれたことに、ライトは花咲くような笑顔で礼を言う。
普段のライトなら、こうしたわがままなど言わないのだが。明日からラグナロッツァで起きることを思えば、『今日くらいは皆といっしょに寝たい』とライトが願うのも当たり前のことだ。
そしてその当たり前の願いは、レオニスやラウル、そしてマキシにも痛い程伝わっていた。
「よし、そしたらラウル、お前とマキシの二人分の枕と毛布を出してくれ」
「了解ー」
「寝る並び順はどうする? 外側に俺とラウル、その内側にライトとマキシ、でもって一番真ん中にフォルとラーデ、でいいか?」
「うん、それでいいよ!ぼくはラーデを抱っこするから、マキシ君はフォルを抱っこしてね!」
「分かりました!」
リビングに向かうべく、廊下を一列になって歩くライト達。
歩きながら並び順を決め、レオニスの寝室に入っていく。
レオニスの要請通り、ラウルが空間魔法陣を開いて二人分の枕と毛布を取り出す。
そして、窓側からレオニス、ライト、ラーデ、フォル、マキシ、ラウルノ順番で巨大なマットレスの上に寝転んだ。
マットレスの横の左右、そして頭上側の計三ヶ所に魔石ランタンが置かれていて、橙色のほんのりとした柔らかい灯りが寝室内を優しく照らしている。
「明日は朝九時に総本部に集合だから、七時に起きればいいかな」
「それなら皆でゆっくりと朝ご飯も食べれるね!」
「俺はもっと早くに起きて、久しぶりに畑の野菜と林檎の収穫をするわ」
「そしたら僕も、ラウルといっしょに収穫の手伝いをするよ!」
皆明日の朝に向けて、それぞれの予定を語る。
こんな平和な会話をできるのも、明日の昼まで。それ以降は厳しい戦いが続き、普通の会話すらままならなくなっていくだろう。
だが四人とも、決して今はそのことには触れない。
四人で過ごせる穏やかなこの時を、一瞬たりとも逃すことなくただただ味わっていたかった。
「……さ、そしたらそろそろランタンの灯りを消すぞー」
「はーい」
「了解ー」
レオニスの合図に、ランタンの近くにいるライトとラウルが応じ、それぞれ頭上側と左側のランタンのスイッチを押して灯りを消した。
三つのランタンの灯りが消え、レオニスの寝室は瞬時にして一面の闇に包まれる。
それから程なくして、すぅ……すぅ……という寝息が複数聞こえてくるようになった。マキシ、ラウル、レオニスの順で眠りに落ちたようだ。
フォルとラーデも、レオニスが眠る頃にはすやすやと寝ていた。
カタポレンの家でこの四人がいっしょに寝泊まりする、初めてにして最後になるかもしれない夜。
月明かりが窓辺をほんのりと照らし、静かに更けていった。
ライト達が平和に過ごせる最後の日の夜です。
いつもなら当たり前で何気なく過ごす、特に何もない時間。それこそが本当は最も幸せな時だったのだ、ということを思い知るのは、いつだってその日常が壊れた後なんですよねぇ。
ライト達の壊れかけた日常は、果たして戻ってくるのでしょうか———
さて、リアルでは今日はお盆の最終日ですね。
作者は昨日も一昨日もその前も、ずーっと日中&夜もあちこち駆けずり回っておりました。
お新盆自体は一昨年に比べたら少なかったはず、なんですけどねぇ?(=ω=)
何でこんなにクッソ忙しいのか_| ̄|●
とはいえ、今日危惧されていた台風7号は、予想より大幅に進路が海側に逸れて直撃を免れて一安心。
これはきっと、お盆が終わってあちらに帰る全てのご先祖様達が『台風で送り火が消されたら敵わん!』と奮起して海側に押し出してくれたに違いないわ!と思う作者。
ご先祖様、ありがとうございますぅー、来年もまた無事にお盆を迎えられるよう作者も日々頑張ります!(-人-)




