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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
野良グリフォンと友達になろう!大作戦

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第1251話 旧い友情と新たな友情

 昼食を摂ることにレオニス達は、広間の真ん中辺りに移動した。

 巨大な金鷲獅子だけでなく十一頭の鷲獅子もいることだし、壁際の端っこで食べるよりも広々とした真ん中辺りで食べるのがいいだろう、という判断である。


 金鷲獅子はしっかりとした足取りで歩き、ラーデは金鷲獅子の横をふよふよと浮きながら飛んでいる。

 その間にも、金鷲獅子のお腹から時折『ぐきゅるるるる……』という音が聞こえてくる。

 金鷲獅子のお腹の虫の催促の凄まじさに、その横を飛んでいるラーデがくつくつと笑っている。


 そうして一同は広間の中央に移動し、皆で昼食の支度を始める。

 レオニスとラウルは人族用のエリアを担当し、アルフォンソ他鷲獅子騎士達は金鷲獅子と自分達の相棒のための食事の用意をする。


 広々とした場所で、鷲獅子騎士達が次々とビッグワームの素を水で戻していく。

 鷲獅子騎士団及び竜騎士団の団員達は、このビッグワームの素を扱うために初級以上の水魔法を習得することを義務付けられているという。

 初級ならば神殿や魔法スクロール専門店などで各種購入できるので、水魔法を持っていない者でも購入して覚えることができるのだそうだ。


 そうして皆それぞれにビッグワームの素を戻す作業をしている。

 鰹節の本節か木片にしか見えないそれを地面に置き、水魔法で水を出してたっぷりとかけていく。

 するとその木片もどきはみるみるうちに膨れ上がり、丸太のようなビッグワーム並みの大きさに変化していった。


 普段ならそこで終わるのだが、鷲獅子騎士達はさらに水を追加でかけている。

 後で食事中に聞いたところ、これは病み上がりの金鷲獅子のための特別加工だという。

 アルフォンソ曰く『人族で言うところのお粥のようなもので、より多くの水で戻すことでビッグワームをさらに柔らかくして食べやすくなる。さらには消化も良くなるので、胃腸の負担の軽減にもなる』のだそうだ。


 鷲獅子騎士団で飼育している鷲獅子達も、体調不良や怪我で臥せっていて動けない者、また出産直後の雌などにもこうした柔らかいビッグワームの素を与えて養生させるのだとか。

 今の金鷲獅子はまさに病み上がりの身。一体どれくらいの期間を穢れに侵されて臥せっていたのかは分からないが、長らくろくな食事も摂れなかったであろうことは想像に難くない。

 そんな金鷲獅子に、いきなり固形物を与えるのはよろしくない。

 まずは胃腸に優しいお粥モードから、という鷲獅子騎士達の配慮である。


 そうして出来上がった、山積みの柔らかビッグワーム。

 アルフォンソがその山の前に金鷲獅子を案内し、解説を始めた。


「金鷲獅子殿、これは我らが相棒にして友である鷲獅子達が好んで食すもので、ビッグワームという虫型魔物を加工した食べ物です。金鷲獅子殿のお口に合うかどうかは分かりませんが……空きっ腹とのことですので、是非とも一度ご賞味ください」

『うむ。吾への献上品を用意するとは、其の方ら、なかなかに見どころがあるの』

「もったいないお言葉、ありがとうございます。身に余る光栄でございます」


 金鷲獅子に恭しく接するアルフォンソ。珍しく敬語を使っていて、実に丁寧な口調ながらその顔はかなり緊張している。

 鷲獅子騎士ならば誰もが憧れる鷲獅子の王、金鷲獅子。

 憧れの対象を前にしたら、如何に普段は剛毅な者でも緊張してしまうだろう。


 そして、金鷲獅子の方も鷲獅子騎士達の待遇にまんざらでもなさそうだ。

 アルフォンソの恭しい態度に、他の鷲獅子達も金鷲獅子を尊敬の眼差しで見つめている。

 初対面同士ではあるが、ここまで丁寧な対応をされたら誰だって悪い気はしない。


 レオニスやラウルの方も、昼食の準備が整った。

 アルフォンソ以外の鷲獅子騎士達は、最低限の干し肉と乾パンしか持ってきていなかったが、それではあまりに可哀想なのでレオニスやラウルが持っている分の食事を分けてあげることにした。

 ハンバーガーにフライドポテト、ホットドッグにサンドイッチ、そして温かいミネストローネスープまで人数分配られて、鷲獅子騎士達は皆口々に「ありがとうございます!」と礼を言っている。


 そしてレオニスとラウルの「「いっただっきまーす!」」という合図をきっかけに、人族と鷲獅子、そして妖精と皇竜も加わった他種族の昼食会が始まっていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



『おお!このビッグワームとやら、実に美味いのう!』

『金の、誰も其方の食事を取らんから、ゆっくり食べるがよい。というか、そんなに慌てて食べると噎せてしまうぞ?』

『いやいや、本当に腹が減ってどうしようもないのだ。ここ最近ずっと食事もままならなんだ故にな』

『まぁ、其方のその気持ちも分からんでもないが……』


 山と積み重なった柔らかビッグワームを、それはそれは美味しそうに頬張る金鷲獅子。

 もっしゃもっしゃとものすごい勢いで食べている様子に、ラーデが半ば呆れながらも金鷲獅子の心配をしている。


『というか、其方、いつからあんなことになっていたのだ? 其方の様子だと、かなり長い期間病んでいたようだが……』

『ああ、あの呪いのようなものか……あれに侵されたのは、今から百年以上も前のことでな。魔力を簒奪される感覚が続いておった』


 金鷲獅子が語るところによると、百年以上前に大量のゴーストを引き連れた不気味な輩が金鷲獅子に襲いかかってきたのだという。

 死神が持つような大きな鎌を持った不気味な輩は、その配下らしきゴーストを金鷲獅子に(けしか)けてきて、金鷲獅子がそいつらの相手をしている隙に黒い球状のものを金鷲獅子の胴体に投げてきて埋め込んだらしい。


 その手口に聞き覚えのあるレオニスやラウルの顔が、一気に険しくなる。

 そんなレオニス達の横で、ラーデはなおも金鷲獅子と会話を続ける。


『百年以上もそんなものに侵されていたのか……よくぞ今まで生き永らえてこれたな』

『もちろんそんなものに易々と屈する吾ではない。だがしかし……先の夏辺りから、身の内に巣食う呪いの勢いが何故か急激に強くなっていってな。次第に吾は動くこともままならず、この部屋の片隅で(うずくま)るしかなかった』

「先の夏……ツィちゃんの襲撃事件があったあたりからか」


 ラーデと金鷲獅子の会話を聞いていたレオニスが、険しい顔のままふと呟く。


 かつて暗黒蝙蝠マードンが、屍鬼将ゾルディスの配下だった頃。

 炎の洞窟でレオニス達と出食わした時に『貴ッ様らが!『魔力の泉』を!潰して回ッとるせぇーいで!【愚帝】様から!泉の補填強化命令が出て!我がその作業に駆り出されッとるのダァァァァッ!』と叫んでいたことがある。

 金鷲獅子が言うところの、昨年の夏から急激に穢れの勢いが強まったというのはマードンが叫んでいたのと同じで、廃都の魔城の四帝の魔力搾取が激しくなっていったのだろう。


 己の利益のためには他者の生命など一切顧みない、廃都の魔城の四帝の残忍さにレオニスは改めてその胸の内で怒りを燃やす。

 そんなレオニスの横で、今度は金鷲獅子がラーデに問うた。


『吾のことなどどーでもよい。皇竜よ、其の方こそ今までどこで何をしておったのだ? 吾の顔を見に来たのも、百年どころか二百年以上は前の話ではないか』

『ああ、実は我も天空島で厄介なものに取り憑かれておっての……』


 金鷲獅子の問いかけに、今度はラーデが身の上話を始める。

 金鷲獅子と同じく、ラーデもまた邪な存在に身体を乗っ取られかけていたこと、もはや風前の灯と思われたところでレオニス達を含めた多種族の援軍を得た天空島勢に助けられたこと、身体を乗っ取られかけた後遺症で今はこんな小さな身体になってしまったこと等々。


 ラーデの話をそれまでじっと静かに聞いていた金鷲獅子。

 突如ブワッ!と大量の涙を流し始めた。


『皇竜の……其の方、吾の知らぬところで吾以上の苦痛と恥辱に塗れておったのだなぁ……』

『まぁな……あの永劫とも思える果てしなき闇の中は、今思い出しても悍ましい』

『よくぞ、よくぞ今まで生き永らえてくれた!皇竜の、吾は其の方と再び相見えることができて本当に、本当に嬉しいぞ!』

『ぉ、ぉぅ……我も其方がまとう眩い金色を再び見ることができて、とても嬉しく思う……』


 ラーデの置かれていた過酷な日々を知り、人目も憚らず滝涙を流す金鷲獅子。

 エグエグと泣き続けるこの金鷲獅子も、どうやら大変情に厚く涙脆い性格のようだ。

 もっともラーデの方は、金鷲獅子の頭の真下あたりにいたので、金鷲獅子の滝涙がまるで本物の滝行のようになってしまっているのだが。


 しょっぱい涙の滝行の憂き目に遭い、そそくさとレオニスやラウルのいる方に避難するラーデ。

 ラウルが空間魔法陣からバスタオルを取り出し、びしょ濡れになったラーデの身体の水分を拭き取ってやっている。

 そしてラーデが離れていったことで、金鷲獅子の目は他の方に向かう。


『ところで……そこにいる鷲獅子達は、この地にいる鷲獅子ではないな?』

「この鷲獅子達は、私どもとともに人里で暮らしております」

『それは……卵や雛を奪ってのことか?』

「!!!!!」


 大泣きしたばかりの金鷲獅子だったが、問いかけに答えたアルフォンソに対して突如憤怒と警戒のオーラを丸出しにする。

 その圧は凄まじく、さっきまで滝涙を流していた金鷲獅子とはとても思えない。

 その変貌ぶりと強烈な威圧に、アルフォンソだけでなく他の鷲獅子騎士や相棒の鷲獅子達もビクンッ!と飛び跳ねながら震え上がる。


 確かにアルフォンソのあの短い言葉だけを聞けば、野に生きる鷲獅子達を人族が無理矢理連れ去っていったのか?と金鷲獅子が疑うのも無理はない。

 しかし、アルフォンソとしても金鷲獅子に誤解されるのは本意ではない。

 身体は竦み上がって心中でもビビりまくっているが、それでも何とか奮起して異を唱える。


「……い、いいえ、この子達は親の親の親、それこそ何代も前から人里にて暮らしておる鷲獅子の末裔にて……天地神明に誓って、野性の鷲獅子を拉致監禁したものではございません」

『ふむ、そうなのか? 其の方ら、それは真か?』

「「「……(コクコク、コクコク)……」」」


 アルフォンソの反論に、意外そうな顔で今度は周囲に侍っている鷲獅子達に問いかける。

 金鷲獅子に問われた鷲獅子達は、慌てたように何度も何度も必死に首を縦に振り続けていた。

 その様子を見て、金鷲獅子も納得したようだ。


『ふむ、そうか……いや、疑ってすまなかった』

「い、いえ、ご理解いただけたようで何よりです……」

『いやな、もちろん吾とて吾を救い出すに尽力してくれた其の方達を疑うのは本意ではなかったが……こんな何もない場所でも、極稀に鷲獅子の雛や卵を狙う人族が出没するのでな。それらと同類かと思ってしまったのだ。本当にすまぬ』

「そ、そんな!金鷲獅子殿が謝ることはございません!人族の中には稀少種を狙う不届き者がいるのは事実ですし!」


 誤解を解き潔く謝る金鷲獅子に、アルフォンソが慌てて声をかける。

 実際アルフォンソの言う通りで、稀少な動植物を狙う密猟者はこのサイサクス世界にも残念ながら存在する。

 きっと金鷲獅子も、そうした密猟者達が鷲獅子の卵や雛を狙うところに何度も出食わして、その都度撃退してきたのだろう。


『それでも、吾が恩人を一時でも疑うなど決して許されることではない。もし吾が其の方であったなら、吾を八つ裂きにしても飽き足らぬであろう』

「そそそそれは……我らが敬愛する金鷲獅子殿を八つ裂きにするなど、絶対に我らには死んでも無理です……」


 突然物騒なことを言い出す金鷲獅子に、鷲獅子騎士達はもちろんのこともはやアルフォンソでさえも涙目だ。

 そんなアルフォンソ達に、金鷲獅子が豪快な笑い声を上げる。


『ハッハッハッハ!そんなに怯えずともよい!其の方らは皇竜とともに、紛うことなき吾の生命の恩人ぞ。その恩、吾は決して生涯忘れぬ』

「あ、ありがとうございます!金鷲獅子殿にそのように言っていただけるだけでも、我ら鷲獅子騎士団員全員の一生の誉れです……!」


 金鷲獅子の豪快な笑い声に、アルフォンソ達は心から安堵しつつ頭を下げる。

 憧れの金鷲獅子に、生命の恩人と言われて嬉しくない鷲獅子騎士団員などこの世に存在しない。

 金鷲獅子は一頻り大笑いした後、今度は真面目な声でアルフォンソ達に語りかける。


『吾でできることであれば、其の方らの望みを叶えよう。褒美は何がいい?』

「ほ、褒美……金鷲獅子殿からいただけるものなら、何でも嬉しいですが……そうですね、一つ願いがございます」

『うむ、申してみよ』


 金鷲獅子にその功績に対する褒美を問われたアルフォンソ。

 嬉しさのあまり顔が上気していたが、何か一つ褒美を思いついたようだ。


「金鷲獅子殿、我ら鷲獅子騎士とその相棒の鷲獅子達と、友誼を結んでいただけますか」

『友誼? つまりは友達になれ、ということか?』

「矮小な人族の身で、甚だ烏滸がましいとは存じますが……友として接していただけたら、これ程嬉しいことはございません」


 金鷲獅子にとっては意外な答えに、心底不思議そうな顔で確認する金鷲獅子。

 だがこれは、鷲獅子を駆るアルフォンソ達にとっては本当に喉から手が出る程に欲しい褒美だ。

 鷲獅子の王たる金鷲獅子との友誼、まさにそれはアルフォンソが求めてやまないものだった。


 深々と頭を下げて頼み込むアルフォンソに、金鷲獅子が難しい顔で口を開く。


『うぬぅ……今の其の方らでは、それは難しいのではないか?』

「そ、それは……」


 アルフォンソの求めに難を示す金鷲獅子。

 それまで二者のやり取りをじっと見守っていたラーデが、思わず身を乗り出し金鷲獅子に何かを言おうとする。

 だがレオニスはそれを制し、首を横に振る。

 この件に関しては部外者だけに、静かに経緯を見守ろう、というレオニスの意思。ラーデはそれを瞬時に受け取り、再び黙って引っ込んだ。


 そして金鷲獅子に拒否されて、ショックを受けるアルフォンソ達。

 絶望に陥った彼らに、金鷲獅子が再び声をかけた。


『まず、友となるなら敬語を止めるべきであろう。敬語を使っているうちは、友とは呼べぬぞ?』

「!!!!!」


 金鷲獅子の言葉に、アルフォンソ達の目は大きく見開かれる。

 何も金鷲獅子は、アルフォンソ達と友達になどならない!と言っている訳ではない。

 友達ならば、お互い気軽に話せる間柄でないとね!ということだったのだ。

 金鷲獅子の意図に気づいたアルフォンソが、再びその目を輝かせながら嬉しそうに口を開く。


「あ、ああ、そうだな!友達ならば、敬語など使わぬものだな!」

『そうそう、何でも気安く話せて、気の置けない仲でこその友であろう?』

「ああ!金鷲獅子殿、これからもよろしく頼む!」

『承知した。今日は久しく会っていなかった旧友が来てくれただけでなく、友が一気に増えた。何と善き日か!』


 敬語をやめて話しかけたアルフォンソに、金鷲獅子もまたにこやかな笑顔で喜ぶ。

 人族と鷲獅子の王、二者の深い友情が築かれた瞬間だった。

 ああああ、今日も書いても書いても終わらないー><

 後書きはまた後ほど><


【追記】

 コルルカ高原奥地の秘密の洞窟?での皆での昼食会です。

 昼食とか言いつつ、実際には午後二時か三時頃なのですが。

 腹ペコモードの金鷲獅子だけでなく、レオニス達も昼食どころではなかったのできっとそれなりに空腹のはず。

 なので、お昼ご飯しちゃえー!てことで、前話で金鷲獅子の腹の虫を盛大に鳴かせた訳ですね(・∀・)


 駄菓子菓子。金鷲獅子の性格が、ほんのり面白系になってきているのは何故だ…( ̄ω ̄)…

 皇竜のラーデが生真面目系なので、多少はざっくばらんな方でもそれはそれでバランス取れていいかな、とは思うんですが。拙作の場合、ざっくばらんな性格にすると大抵が面白おかしい系に走っちゃうんですよねぇ・゜(゜^ω^゜)゜・


 嗚呼でもいつかは金鷲獅子のカッコいい場面も出したいな。

 いつになるかは分かりませんが(´^ω^`)

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