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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
新しい仲間

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第1230話 ナヌス達の警戒と和解

 皆でアクアの誕生日祝いを楽しんだライト達。

 主役のアクアはご機嫌でミートボールくんピラミッドを平らげ、ライトはウィカとくるくる踊り、水の女王もライト達を真似てラーデの手を取り宙をくるくると回りながら踊る。

 笑顔の水の女王に振り回されて慌てているラーデが何とも愛らしい。


 一方レオニスとラウルは、イードと腕相撲をして二人ともイードに負けていた。イードの触腕や吸盤のほんのりとしたぬめりのせいで、二人とも思うように手に力が入らなかったらしい。

 触腕を高々と挙げて、ガッツポーズでWINNERの勝鬨を上げるイードの横で、レオニスとラウルが四つん這いで打ちひしがれている。


 そんな飲めや歌えや踊れやの楽しいひと時を過ごした後、ライト達はナヌスの里に行くことにした。

 先程ウィカが言っていたように、ラーデの出現に警戒しているナヌス達の誤解を解き、改めてラーデを紹介するためである。


『ライト君、レオニス君、ラウル君、今日は本当に楽しかったよ。僕の誕生日を祝ってくれて、本当にありがとう。ライト君がプレゼントしてくれたこの首飾りも、これからずっと大事に身に着けるね』

「どういたしまして!アクアにこんなに喜んでもらえて良かった!」

「ああ、それに俺達も楽しかったしな」

「皆でアクアの誕生日を祝えて、本当に良かったな」


 笑顔で礼を言うアクアに、ライト達もまた嬉しそうに答える。

 そしてアクアはラーデにも声をかけた。


『ラーデ君、君とも友達になれると嬉しいな。僕と友達になってくれるかい?』

『もちろん。むしろ我の方から願い出ねばならぬところだ。カタポレンの森の先輩として、そして竜族同士、今後我とも仲良くしてくれるとありがたい』

『ありがとう。こんな嬉しい日に友達が増えるなんて、また一つ新しいプレゼントをもらった気分だよ!』


 アクアが大きな前肢をラーデの前にスッ……と差し出す。

 それを受けてラーデも小さな手を前に出し、アクアの前肢に触れた。

 アクアとラーデ、BCOレイドボス同士の友誼が結ばれた瞬間だった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 アクア達に見送られながら、目覚めの湖を後にしたライト達。

 次の目的地であるナヌスの里に向かう。

 ちなみにウィカだけはライト達についてきている。もともとウィカは、目覚めの湖のご近所さんであるナヌス達とも普段から懇意にしているためだ。


『ホントにねー、ここ数日ナヌスの人達がそりゃもう大騒ぎでさ。結界の強化とか防衛とか大忙しで駆けずり回ってるんだ』

「ナヌスの里では、そんなことになってたんだね……」

「まぁなぁ……ある日突然近所に強大な魔力を持つ何者かが現れたら、そりゃ慌てもするわな」

『うぬぅ……そのナヌスとやらが、我のせいで混乱に陥ってしまっているなら申し訳ないことをしたな』


 レオニスの肩にちょこん、と乗っかっているウィカが、ナヌスの里の現状をライト達に改めて伝えている。

 その話に、ライトもレオニスも頷かざるを得ない。

 そしてラウルに抱っこされているラーデは、自分が原因でパニックに陥っている者達がいることを知り、居た堪れなさそうにしている。

 そんなラーデに、ライト達が明るく話しかけた。


「大丈夫だよ、ラーデ。今日はうちのご近所さんへの挨拶に、皆のところを回ってるんだ。今から行くところは皆ぼく達の友達だから、ラーデのことだってちゃんと説明すれば分かってくれるよ」

「そうそう。ナヌス達だって、原因が分からないから警戒しているだけであって、話せばきちんと理解してくれるさ」

『……だといいがな』


 ライト達の励ましに、俯き加減だったラーデも次第に頭を上げる。

 そしてナヌスの里に向かう道すがら、レオニスが空間魔法陣を開いて【加護の勾玉】を取り出した。


「ほれ、ラーデ、これを首にかけておくぞ」

『これは何だ?』

「こいつは【加護の勾玉】と言ってな、ナヌスの里に入るための通行証みたいなもんだ」

『ほう、これがないとその里には入れないのだな?』

「そうそう、ナヌスの里は強力な結界が張られていてな。これを持っていない者は入ることは不可能なくらいに、頑強な結界なんだ」


 レオニスがナヌスの里の結界のことを説明しながら、ラーデの首に【加護の勾玉】をかける。

 今のラーデの背丈は約50cm、小人族のナヌスの身長と大差ないくらいなので首にかけるとちょうどいい塩梅になっている。


 そうしてそろそろナヌスの結界のある辺りに来た時。

 頭上から大きな声がした。


「お前ら、そこで止まれ!」


 険しい声でライト達を止めたのは、ナヌスの里を守る衛士のエディだった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 エディの呼びかけに従い、その場で足を止めたライト達。

 木の上からエディが飛び降りてきて、ライト達の前に立ちはだかった。


「ライトに森の番人か。久しぶりだな」

「エディさん、こんにちは!」

「おう、久しぶり」


 とりあえず顔見知りに挨拶するエディに、ライトとレオニスが挨拶しながら応える。

 しかし、エディの表情はいつになく強張ったままだ。

 それはひとえに、見知らぬ顔=ラーデへの警戒だろう。


「……そのちっこい奴は何だ? そいつからは、とんでもねー力が感じられるが」

「あ、えーとね、この子はラーデという名前でね、ついこないだ天空島で友達になったばかりなんだ!」

「ついこないだって、いつのことだ?」

「ンーとねぇ、先週……七日くらい前かな?」

「七日……やっぱりこいつがあの魔力の塊か……」


 ライトに質問を繰り返すエディ。その声音は強張っていて、手に持っている槍の先端が小刻みに震えている。

 非常に強がってはいるが、強大な魔力の塊を前にして恐怖心を隠しきれないとみえる。

 そんなエディに、ライトも真摯に答える。


「あ、あのね、エディさん。ラーデは危険な子じゃないよ?」

「それは俺が判断することじゃない。もうすぐ族長達がここに来るから、お前らはここでおとなしく待ってろ」

「う、うん……」


 ライトとエディが問答をしている間に、今度は里の中央から族長のヴィヒト他数人のナヌスが駆けつけてきた。

 どうやらエディは足止め係として、衛士の役目を立派に果たしていたようだ。


「……ライト殿にレオニス殿!ウィカ殿もおられるか!」

「あッ、ヴィヒトさん!」


 急いで駆けつけてきたヴィヒト他ナヌス達。いつものラフな格好ではなく、皆革鎧やら革盾などを装備していて実に物々しい姿だ。

 謎の魔力の塊が里に近づいてきていることを察知し、迎撃するべく総出で戦闘態勢に入っているのだろう。

 そして息咳切りながら駆けつけた先には、顔馴染みのライト達三人がいた、という訳だ。

 そのことに、ヴィヒトは内心で少なからず安堵したものの、まだ油断はできない。

 実情を知るべく、ヴィヒトは意を決したようにライト達に声をかけた。


「レオニス殿……これはどういうことか、ご説明願えるかな」

「ああ。ここにいるのはラーデといって―――」


 ヴィヒトの求めに応じ、ライトはレオニスとともにラーデのことを順を追って説明していった。

 まずは先週起きた天空島の襲撃事件から始まり、そこでラーデを保護したこと、そしてそのラーデは皇竜メシェ・イラーデという竜の祖であること、ラーデが元の姿を取り戻すには大量の魔力を必要としていること、そのためにこのカタポレンの森で療養中であること等々。


 それらをずっと静かに聞いていたヴィヒト。

 レオニスが事情を一通り語り終えたところで、徐にその口を開いた。


「なるほど……事情は相分かった。レオニス殿が庇護し、ウィカ殿も認める者ならば、我らもその者を信用しよう」

「ヴィヒト、分かってくれてありがとう」


 ナヌス達の族長であるヴィヒトの理解を得られたことに、ライト達は安堵する。

 これは、普段から交流のあるライトやウィカがともにいて、さらにはレオニスが直にヴィヒトにその経緯を説明したというのが功を奏した。

 それに加え、ラーデ自身からも敵意や悪意が感じられなかったことも、ヴィヒトが受け入れた理由として大きい。


 ヴィヒトの後ろで、ヴィヒト同様ほっとした表情を浮かべているナヌス達。

 その中には魔術師団団長のヴォルフや守備隊隊長シモン、同副隊長リックもいる。

 彼らもまたナヌスの里を守るために、最前線に出てきたのだろう。


「そしたら森の番人殿。里の者達にラーデ殿のことは説明しておく故、今日のところはひとまずお帰りいただけるだろうか? 今ラーデ殿に里の中に入られたら、我ら以上に里の者達が動揺するであろうからな」

「分かった、また日を改めて来るわ」

「申し訳ない。里の者達には我らからよくよく説明しておく故、気を悪くしないでいただきたい」

「もちろんだ。今日はご近所さんへの挨拶として顔を出しに来ただけだから、ヴィヒトもそんなに畏まらんでいい」


 ヴィヒトの申し出に、レオニスも一も二もなく承諾する。

 ここ数日ずっと大騒ぎだったというナヌスの里。そこへ突然大騒ぎの元であるラーデが現れたら、確かに一般人は動揺しますます大騒ぎになるだろう。

 無用な混乱を避けるためのヴィヒトの判断には、賛成しこそすれ気を悪くするようなことなどなかった。


 そしてレオニスとヴィヒトが話をしている間に、ライトがアイテムリュックからとある者を取り出した。

 それは、ナヌスの里への鉄板の手土産である『黄色いぬるぬるの素(大袋)』である。


「これ、いつものお土産です。ナヌスのお姉さん達に渡してください」

「おお、これはこれは、いつもかたじけない。ありがたく頂戴しよう。ヴォルフ、シモン、リック、これを共用倉庫に運んでくれ」

「「「はい!」」」


 ライトが差し出した手土産、黄色いぬるぬるの素を見たヴィヒト他ナヌス達全員の表情がさらに和らぐ。

 こんなもの一つで大喜びするのもどうかと思うが、黄色いぬるぬるの素は今やナヌスの人々に欠かせないマストアイテムとなっているのだ。


 ヴィヒトの命令に従い、三人の屈強なナヌス達が黄色いぬるぬるの素(大袋)を担いで里の中央に駆け出していく。

 そしてヴィヒトが改めてライト達に声をかけた。


「今日は本当にすまない。後日また改めて訪ねてきてくだされ」

「いえいえ、そんな!ヴィヒトさんが謝ることじゃないです!」

「そうだぞ、そんな気にするな。またそのうち遊びに来るから。じゃ、またな」


 ラーデを連れたご近所さんへの挨拶回り。ここナヌスの里が最も難関であったが、何とか穏便に済ますことができたライト達。

 申し訳なさそうに見送るヴィヒト達を背に、ライト達は次の目的地に向かって歩き出していた。

 目覚めの湖での楽しいひと時の後の、ナヌスの誤解?を解く回です。

 結果として里の中に入るまでには至りませんでしたが、それもまた致し方なしです。

 そう、いくら拙作が基本平和を尊ぶスローライフワールドであっても、全部が全部主人公達の思い通りに事が進む訳ではありませんからね。

 それでも何とか穏便に問題解決できたのは、ライトがモットーとする『円満なご近所付き合い』があってこそ。

 黄色いぬるぬるの素の差し入れ等、ずっと懇意にしてきた日頃の行いのおかげなのです(`・ω・´)

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