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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
新しい仲間

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第1227話 そこにあるささやかな幸せ

 暗黒の洞窟を後にしたライト達。

 次に向かうは目覚めの湖。水の女王やアクア達、目覚めの湖の仲間達にもラーデを紹介しに行くのだ。

 目覚めの湖に向かう道中で、ライトが背中にいるラーデに話しかけた。


「ねぇ、ラーデは水の中を自由に歩いたり息したりとかできる?」

『ぬ? 水の中を泳ぐ、とかではなくてか?』

「うん、ただ普通に泳ぐだけじゃなくて、水底を歩いたり誰かと会話したりとかのことー」

『……それらは全て、陸に生きる者には不可能なことばかりではないか?』

「あ、できないんだね。じゃあ先に、アクアや水の女王様達を水辺に呼ぼうね!」

『???』


 ライトの質問に、訳が分からない、といった顔をするラーデ。

 ラーデは天界に住んでいたとされる皇竜メシェ・イラーデ。水浴び程度には泳げても、水中で息をしたり歩くことはできない(というか、そもそも経験したことがない)ようだ。


 そうして程なくして、目覚めの湖の桟橋に到着したライト達。

 ここ最近は、ずっとウィカやアクアの水中移動に頼ることが多かったので、この桟橋に来るのも何気に久しぶりのことだ。

 ライトが桟橋の先端まで進み、湖面中央に向かって大きな声で呼びかけた。


「おーい、ウィカ、イード、アクア、水の女王様ー、ぼくだよー、ライトだよー」

「レオ兄ちゃんとラウルもいるよー、皆こっちに来てー」


 ライトの呼びかけからしばらくして、呼ばれた面々が桟橋の前に現れた。

 水の女王はアクアの背に、ウィカはイードの頭にちょこんと乗っかっている。


『ライト君、やっほー☆』

『皆、いらっしゃい!』

『てゆか、こっちの橋に呼ばれたの、久しぶりー?』

『ライト、レオニス、ラウル、よく来たわね!…………って、何かもう一頭いるわね?』


 目覚めの湖の面々がそれぞれに挨拶する中で、水の女王が真っ先にラーデの存在に言及する。

 そんな水の女王の言葉に、アクアもまた素早く反応する。


『えーと……こないだからこの近くに、ものすごーく強大な力が発生していたのを感じてはいたけど……もしかして、君がその強大な力の元?』

『多分な。我は皇竜メシェ・イラーデ、今は『ラーデ』という名でこの地に来た』

『僕は水神アクア。湖底神殿の守護神で、ここにいる水の女王の守護者でもあるんだ。ラーデ君、よろしくね』

『こちらこそ。同輩(・・)の誼でよろしく頼む』


 巨大な水竜のアクアが、ライトの背中にくっついているラーデを見つめながら話しかけ、ラーデもそれに快く応じている。

 頭越しに交わされるアクアとラーデの会話に、ライトは内心で驚愕している。

 それは、ラーデがアクアに対して『同輩』と言い切ったことへの驚きだった。


 同輩というのは地位、年齢、身分などが同じくらいの者を指して言う言葉だ。

 そして年齢はともかく、両者はともにBCOレイドボスという同じ立場にある。

 ラーデがBCOのことを指して言っているのかどうかは分からない。もしかしたら、ただ単に高位の存在同士という意味でアクアのことを捉えたのかもしれない。

 しかし、アクアはラーデの挨拶に対して不思議がるでもなく素直にコクリ、と首肯した。

 もしかして、両者の間にはBCOのレイドボス仲間という自覚があるのだろうか?


 そんなライトの様々な思惑を他所に、水の女王が皆に向けて声をかける。


『ねぇねぇ、こんなところで立ち話も何だから、皆で小島に行かない?』

「そうだな」

「うん、そうしようか」

「……と、その前に、水の女王様とアクアに頼みがあるんですが」

『何?』


 水の女王の提案にレオニスやラウルが賛成する中、ライトが水の女王達にお願いをした。


「ラーデに二人の加護を与えてやってほしいんです。万が一にも水に溺れたら困るから」

『ああ、それもそうね。もちろんいいわよー』

『お安い御用さ』


 ライトの頼みに、二人とも快く応じる。

 アクアは右前肢をラーデの頭上に翳し、水の女王は両手でラーデの頬を包み込む。

 そうして五秒もしないうちに手を引っ込めて、にこやかな笑顔をラーデに向けた。


『はい、オッケー』

『ラーデ君、だっけ? これでアナタはもう、今後一切水で困ることはないわ』

『おお、そうなのか。それは実にありがたい。心より礼を言う、ありがとう』

『どういたしまして♪』


 アクアと水の女王から、それぞれ水の加護を付与してもらったことにラーデは驚きつつも、素直に感謝の言葉を述べる。

 もともとラーデは強大な力を持っているが、さすがにその威は水中にまで及ぶものではない。

 例えばの話、アクア達の加護無しに水中に飛び込めば、そのまま溺れてしまうことだって十分に有り得る。

 そうしたリスクが減ることは、ラーデにとって大きな利益になるのだ。


『ささ、じゃあ皆であっちの小島に行きましょ♪』

「はい!」

『レオニス君、今日こそ追いかけっこする?』

「すまんな、この後まだ出かける予定があるからまた今度な」

『ちぇー、仕方ないなぁ』

『ラウル君、イエローサーモンのお刺身あるー?』

「おう、こないだイヴリンちゃんのお父さんに頼んで、特別に融通してもらったぞ」

『ヤッター☆』

『………………』


 ライトが嬉しそうに水の女王の後を追い、レオニスはアクアの追いかけっこのお誘いを断ったり、ラウルはウィカのリクエストのイエローサーモンの刺身の入荷?を伝えたりしながら、湖中央の小島に向かって水面の上をてくてくと歩いている。

 目覚めの湖の仲間達はともかく、人族であるライトやレオニス、そして木の妖精のラウルまでもが水上歩行をする有り様に、ラーデはただただ言葉を失う。


 桟橋先端でふよふよと浮いたまま、取り残されかけているラーデに、イードが声をかけた。


『ラーデ君、よかったらワタシの頭の上に乗っていく?』

『……ぁ、ぁぁ、頼む……』


 水面からイードの触腕が伸びてきて、ラーデの身体をそっと掴んで己の頭の上まで運ぶ。

 そしてスイスイ、スイー、と優雅に泳ぐイード。

 イードの前には、相変わらずのんびりとした会話を交わすライト達と目覚めの湖の愉快な仲間達が数歩先を歩いている。

 イードの頭上でちょこん、と座るラーデは、目の前で繰り広げられている不思議な光景をぼんやりと眺めていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 湖中央の小島に移動したライト達。

 ライトとラウルがお茶会の支度をしている間、レオニスとラーデは目覚めの湖の愉快な仲間達と話をしていた。

 この目覚めの湖も新しい客人は滅多に来ないので、皆ラーデに興味津々なのだ。


『へー、ラーデ君って皇竜っていう種類の竜族なのねー。そしたら、アクア様や白銀ちゃんとも遠い親戚みたいなもんなのかしら?』

『ンー、僕も白銀の君も竜族の一種だけど……ラーデ君の場合、僕とはまた違った意味でかなり特殊な竜族だと思うな』

「まぁな、特に竜族は種族が事細かに分かれているのは人族の間でも有名だしな。一口に竜族と言っても、何十種類もの竜がいるし」

『そなの!?』


 ラーデが皇竜ということを知り、水の女王がのほほんと感嘆している。

 水の女王は精霊以外の他種族に関して疎い方なので、竜族が何十種類もいるというだけでびっくり仰天だ。

 そんな水の女王の横にいるウィカが、ラーデに向かって問いかけた。


『ラーデ君は、どうしてカタポレンの森に来たの?』

『この森にはたくさんの魔力が溢れていて、我の療養に最適だから、と闇の女王や竜の娘に勧められたのだ』

『療養ってことは、ラーデ君はどこか身体が悪いの?』

『身体が悪い、という程のことでもないのだが……先日まで邪悪な者どもに身体を乗っ取られていてな。レオニス達のおかげで何とか身体を取り戻したはいいものの、本来の姿はこのような小さなものではなくてな……完璧に元の姿に戻るには、大量の魔力が必要なのだ』

『あー、そういうことなら確かにこの森は最適だよね!』


 ラーデの療養という言葉を聞いて、ウィカが心配そうにしている。

 だがその真の理由を知り、ウィカがニパッ☆と糸目笑顔になる。

 そしてここで、ウィカがまた瞬時に真顔になりラーデとレオニスに話しかける。


『ぁー、そしたらさ、後でナヌスの人達にもラーデ君のことを説明しに行ってほしいんだけど』

「ン? ナヌスに、か?」

『うん、そう。だってナヌスの人達、数日前からかなり大騒ぎしてるよ?』

「ぁー……確かにナヌスは魔法に秀でた一族だもんなぁ……」

『そゆことー』


 ウィカの言い分に、レオニスも心当たりがあるようで深く頷いている。

 レオニスの言うように、ナヌスは魔法を巧みに使いこなすことで有名な種族だ。そんなナヌス達が、ラーデという強大な存在の出現に気づかない訳がない。

 アクアだって、目覚めの湖に居ながらにしてラーデの強大な力に早々に気づいたのだ。ナヌス達がそれに気づかない道理がないのである。


『なんかねー、何日か前にナヌスの人達が慌てて僕を呼んでね? 「大変です!あちらの方角に、とんでもない魔力を持った者が現れました!」って言うの。その時は、僕も何のことだかさっぱり分かんなかったんだけど。今日ライト君達がラーデ君を連れてきてくれたおかげで、ようやくナヌスの人達が慌ててた理由が理解できたって訳』

「そっか。じゃあ後でナヌスの里にも立ち寄っておくか」

『そうしてやってね☆』


 レオニスの即断即決に、ウィカが再び糸目笑顔になる。

 魔力に敏感な者達が、己達の縄張り付近にラーデの魔力を感知したら―――彼らはその真価を正しく捉えることができるだけに、さぞや慌てふためくに違いない。


 ちなみに、何故目覚めの湖の面々が動揺していないかと言うと。

 そのとんでもない魔力の発生方向が、ライトとレオニスの家のある方向だったせいである。

 その日のウィカ達の会話は、以下の通りである。


『ねぇねぇ、何かとんでもない魔力があっちになぁい?』

『あるねー。……って、これ、ライト君とレオニス君の家のある方角だよねぇ?』

『……あ、ホントだ。なら大丈夫だね。レオニス君かライト君が話しに来るまで、僕達は静観してよっか』

『それがいいねー』


 突如出現した、謎の強大な魔力の塊。

 その出現方向がレオニス宅だというだけで、ウィカ他目覚めの湖の仲間達は安堵したという。


 それは『レオニス達が原因の出来事なら大丈夫、心配は要らない』『もし何か起きても、レオニス達が対処するっしょ』という信頼の証。

 もっとも、それは裏を返せば『あのレオニス達が関与していることなら、まぁしょうがないよね』という諦観をも含んでいるのだが。


 そしてライト達のお茶会の準備が整い、少し離れた場所で待機していたレオニス達にお声がかかる。


「皆ー、準備ができたよー」

「おう、今からそっち行くわ」

『ラウルの美味しいスイーツ♪今日は何かなー♪』

『ボクはイエローサーモンのお刺身が超楽しみー♪』

『ワタシはミートボール君が一番大好き♪』


 よっこらしょ、と立ち上がるレオニスより先に、水の女王とウィカがピューッ!とライト達のいる方にすっ飛んでいった。

 イードも島の縁をスイスイー、と泳ぎ、お茶会に一番近い水辺に移動していく。

 そんな中、アクアがラーデに向かって微笑みかける。


『さ、ラーデ君、僕達も行こうか』

『ああ』


 アクアが差し伸べた左前肢に、ラーデがちょこん、とその上に乗っかる。

 目覚めの湖中央の小島にあるささやかな幸せを目指して、皆嬉しそうに集まっていった。

 暗黒の洞窟訪問の次は、目覚めの湖訪問です。

 目覚めの湖の愉快な仲間達は、ライト達が最も懇意にしている友達。

 しかもカタポレンの家からも距離的に近い方なので、ご近所付き合いという観点からもラーデの紹介は欠かせないよね!ということで、早速ラーデを連れての顔合わせ、という訳です(・∀・)

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