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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
新しい仲間

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第1216話 幸せに満ちた空間

 近い将来、鷲獅子関連の仕事を請け負わなければならないことがほぼ確定となったレオニス。

 気を取り直すかのように、披露宴のビュッフェの肉料理やデザートをたんまり食べた後、ベンチに座ったまま天を仰ぎ愚痴る。


「くッそー……休日に新しい仕事の話を持ちかけられるのが、こんなにも嫌なもんだったとは……カイ姉、セイ姉、メイ、正直すまんかった。今度また詫びの品を持って謝りに行くわ……」

「アハハハハ、カイさん達はいつだってレオ兄ちゃんの頼みを聞いてくれるもんねぇ」

「そうなんだよなー。だから俺もついつい甘えちまう」


 空を見上げながら力なく呟くレオニスに、ベンチの横に座るライトも笑いながら相槌を打つ。

 レオニスが反省しているのは、かつてレオニスがライトとともに初めて海底神殿を訪れた時のこと。

 その帰り道、ラギロア島でバカンス中のアイギス三姉妹と出会い、その際に手に入れたばかりの大神樹ユグドラシアの枝を渡したことがあった。

 ここで会ったついでとばかりに大神樹の枝を渡し、加工を依頼するレオニスにセイとメイが『ここで仕事の話をするなんて』と思いっきり文句を言っていた。

 その時の自分の行いを猛省しているのだ。


 しかしライトとしては、鷲獅子関連の話は内心ワクテカだったりする。

 レオニスが野良グリフォンと友誼を結ぶことになれば、いずれライトにもグリフォンとお近づきになれる機会が来るだろう。

 落ち込んでいる今のレオニスには言えないが、ライトは今からそれがとても楽しみである。


 そんなライト達に、再びバッカニア達が声をかける。


「おーい、レオニスの旦那ー、肉やデザートはもういいのかー?」

「おう、たらふくご馳走になったわ。ありがとうな」

「そしたらレオさん、そろそろアマロ先輩のところに行かないか? 多分もう少ししたら披露宴もお開きになるだろうし」

「おお、そうか。お開きになる前に、改めてアマロにおめでとうを言っておかなきゃな」

「うんうん、ボクらも新郎新婦の目出度い晴れ姿をよーく拝んでおかないとね!クフフ!」


 スパイキーやヨーキャの誘いに応じ、早速雛壇にいる新郎新婦のもとに向かうレオニスとライト。

 雛壇の周りには、少し前まで二人を祝いたい人達が賑わっていたが、今は少し人が少なくなっていた。

 その隙に一息つくように、飲み物を一口二口飲むアマロ。

 そんなアマロに、レオニスが声をかけた。


「よう、アマロ。晴れの日の主役は大変だなぁ」

「あッ、レオニス君!ぃゃー、大変は大変だけど……一生に一度のことと思えば、ね?」


 新郎新婦を労うレオニスの言葉に、アマロが照れ臭そうに右人差し指で頬をポリポリと掻いている。

 そんな新郎を、新婦サティが微笑ましい笑顔で見つめる。

 幸せいっぱいのカップルを見ているだけで、ライトもレオニスも幸せな気分になる。


「アマロ、そろそろ嫁さんの紹介をしてくれないか?」

「あ、ああ!この横にいるのが俺の生涯の伴侶となる人、サティ・パイレーツ。これから俺と二人で、ヴァイキング道場第一支部を支え盛り立てていくつもりだ」


 レオニスの催促に、アマロが早速新婦であるサティの紹介を始めた。

 アマロからの紹介に、サティがにこやかな笑顔でペコリと頭を下げて一礼する。

 年はアマロと同年代で、ティアラとヴェールで飾られた紺瑠璃色の編み込み髪が純白のウェディングドレスにとても美しく映える。

 紫鳶色のぱっちりとした大きな瞳は愛らしく、身長も150cm程度とかなり小柄な方だ。

 そんなサティに、レオニスの方から改めて挨拶をする。


「初めまして。俺の名はレオニス・フィア。アマロやハンザ、コルセアにレイフにバッカニア、ヴァイキング道場の連中とは懇意にさせてもらっている」

「まぁ、貴方が大陸一の金剛級冒険者さんなのですね!アマロさんからだけでなく、うちのお店に来る冒険者さんからもいつもお話に伺っておりました。今日は私達の披露宴に来ていただけて、本当に嬉しいです!」


 レオニスからの挨拶に、サティがパァッ!と明るい笑顔になる。

 サティの実家の衣服店では、ヴァイキング道場の道着の修繕だけでなく冒険者達の衣服の修繕もそこそこ手がけている。

 特に魔法使い達が好んで着るローブ類や、鎧の下に着るアンダーウェアのお直しも多い。

 故にゴート衣服店でも冒険者達の噂を聞くし、その中でレオニスが話題になっていたことも度々あるらしい。

 一体どんな噂をされていたのか気になるところだが、今ここでわざわざ尋ねることもあるまい。


 そしてレオニス達は、しばらく他愛もない雑談を楽しんだ。

 一見華奢に見えるサティに、果たして剣術道場支部長の妻という大役が務まるのか?と心配する声も周囲にはあったという。

 しかし彼女の人好きのする笑顔はとても可愛らしく、会う人全てに好印象を与える。


 繁盛している家業の衣服店の看板娘だけあって、接客業から会得した対人スキルと人懐っこい笑顔は本物だ。

 これからアマロとともに、ヴァイキング道場第一支部を陰に日向に支えていってくれることだろう。


「レオニス君も、これからはホドの街に来た時には本館だけじゃなくて、是非とも我が第一支部にも寄っていってくれよ!」

「もちろんだ。お前んとこの道場生といっしょに、アマロ、お前も扱いてやるから覚悟しとけ」

「ハッハッハッハ!そりゃ嬉しいな!でも、俺はともかく道場生にはお手柔らかに頼むぜ?」


 アマロの頼みを即座に快諾するレオニス。

 もしかしてそれは、ただのお世辞かも?などということは一切考えもしない。アマロを始めとして、パイレーツ家の者達がこの手の世辞を言うことなど絶対にないし、レオニスもまたそれを知っているのだ。


 そうしてレオニス達が歓談していると、今度はハンザが新郎新婦の雛壇横に来た。


「おお、レオニス君達もここにいたのか」

「ハンザか。そろそろ宴もお開きの時間か?」

「ああ。良い天気に恵まれて、このようにたくさんの人々に祝ってもらえて名残は尽きぬが、そろそろ時間の方もいい頃合いになってきたのでな」

「そっか」


 披露宴の終わりを告げに来たハンザに、レオニスが改めてアマロの方に向き直り声をかける。


「アマロ、今日は素晴らしい時間をありがとう。ヴァイキング道場のますますの繁栄を、俺も心より願っている」

「こっちこそ、天下の金剛級冒険者に祝ってもらえて本当に光栄だ。俺達ヴァイキング道場はもとより、同じ冒険者としてうちの末弟のことも気にかけてやってくれるとありがたい」

「おう、任せとけ。何ならバッカニアのパーティー丸ごと俺が面倒見てやるわ」

「ブフーーーッ!」

「「うげッ」」


 改めて挨拶し合うレオニスとアマロ。

 その中でアマロがバッカニアのことに言及し、ちょうどその時シャンパンを飲んでいたバッカニアが思いっきり噴き出した。

 そしてその噴き出した先にはスパイキーとヨーキャがいて、バッカニアの霧吹きシャンパンを思いっきり浴びてしまっている。


「ちょ、アマロ兄、何言ってんだ!つーか、レオニスの旦那もそこで軽く引き受けてんじゃねぇよ!」

「何だ、バッカニア、何をそんなに慌ててる? レオニス君は偉大な先輩冒険者だろう?」

「そりゃレオニスの旦那が偉大なのは事実だが!この人の場合あまりにも偉大過ぎて、俺達凡人にはもはやついていけん領域なんだよ!」

「えー……俺は冒険者のことは分からんが、そこまで言う程なのか?」


 大慌てでアマロに食ってかかるバッカニアに、その後ろで必死に首を縦に大きく振り続けるスパイキーとヨーキャ。

 霧吹きシャンパンでびしょ濡れのままヘッドバンキングしているので、雫があちこちに撒き散らされている。

 そんなバッカニア達の必死の形相に、アマロが心底不思議そうな顔をしている。


 何故こんなにもバッカニア達が慌てふためいているかと言えば、それはひとえにレオニスの『パーティー丸ごと面倒を見てやるわ』発言のせいである。

 そう、単身でシュマルリに山篭りして野良ドラゴンと友誼を結ぶような規格外に、パーティー丸ごと面倒を見られたら一体どうなるか―――ちょっと考えただけでも、バッカニア達にとっては背筋が凍る地獄絵図の未来しか見えない。

 そして必死に抗うバッカニア達を、フェリックスもまた擁護する。


「なぁ、アマロ。悪いこた言わん。バッカニア達を長生きさせたかったら、あまり無茶振りすんな。いくら冒険者だからってな、できることとできんことが厳然としてあるんだぜ?」

「何だよ、フェリックスまで……俺、そんな無茶振りしたか?」

「「「「したッ!!」」」」


 フェリックスの謎の擁護?を受けたアマロの問いかけに、バッカニア達三人とフェリックスがクワッ!と目を大きく見開きながら肯定する。

 いや、本当に無茶振りしたのはレオニスの方なのだが。レオニスがそう答えるに至った元凶はアマロなので、その反撃を一身に食らうのはアマロ、という訳だ。

 四人の剣幕の凄まじさに、アマロはタジタジとするばかり。

 そしてフェリックス達の横で、レオニスがスーン……とした顔をしながら呟く。


「お前ら、ホンット好き放題言ってくれるね……よし、そしたら近いうちに、フェリックスを訪ねにビナーの街に行くぞ?」

「え、ちょ、待、何でそこでビナーが出てくる!?」

「何でって、そりゃお前……フェリックスの薬草採取を手伝いに?」


 フェリックスの問い返しに、レオニスがコテン☆と小首を傾げて可愛らしく答えるも、地獄の使者(レオニス)がやってもちっとも可愛くない仕草である。

 そんなレオニスの思わぬ反撃に、今度はフェリックスが本気で慌てふためいている。

 レオニスの矛先がバッカニア達に向くならともかく、まさか自分の方に向けられるとは夢にも思わなかったフェリックス。

 地獄の使者襲来を何とか回避しようと必死に言い募る。


「天下の金剛級冒険者に、そんなんさせられるかっての!つーか、レオニスがビナーに来たら受付の姉ちゃんが驚き過ぎてブッ倒れるわ!」

「違ぇねぇwww」

「「「ワーッハッハッハッハ!!」」」


 フェリックスの懸命の言い訳に、バッカニア達が同意しつつふんぞり返りながら高笑いしている。

 なかなかに酷い言われようだが、小さな街に超有名人が何の前触れもなしに訪れれば、確かにビナーの冒険者ギルドがプチパニックになるかもしれない。


 唯一呆れ顔のレオニスが「何だよ、お前ら、人を化け物か何かのような言い方しやがって」と文句を言うも、それに対しても「自覚がねぇってのは幸せだな!」「違ぇねぇwww」「「「ワーッハッハッハッハ!!」」」と笑い飛ばす。


 冒険者特有の底抜けに明るい笑い声が響き渡り、それにつられて周囲の者達も笑いだす。

 ホドの名門剣術道場、パイレーツ家次男アマロの結婚式は、明るい笑い声に満ちた思い出深いものとなった。

 五話に渡って続いたアマロの披露宴もお開きです。

 冒頭でレオニスが反省していたのは、第559話のことですね(・∀・)

 全くねぇ、仕事を持ち込む方は『ついでによろしくー』みたいに軽い気持ちでやりますが、持ち込まれた方にしたらたまったもんではないですよねぇ(´^ω^`)


 でもって、和やかなうちに終了した披露宴。

 ただ単に「おめでとー」「ありがとー」「じゃ、またねー☆」な披露宴じゃあまりに芸がなさ過ぎるので、多少は何か盛り込まないとなー、と考えた作者。

 かといって、あまりに派手な事件や事故的なものを起こすのもアマロ達が可哀想だし。

 披露宴がブチ壊しにならない程度に、ということで何とか捻り出したのが、イーノと鷲獅子関連の話でした。


 その結果、ライトにとっては大きな楽しみが一つ増えることに。

 それは『野良グリフォンとの出会い』。作者の脳内では、ライトがずーっと『ねぇねぇ、いつ会えるの!?』『本物のグリフォンを早く見たーい!』と作者をせっつき続けております(´^ω^`)

 うんうん、そのうちっつか土日のいつかにお出かけさせてあげるからね。もうちょいおとなしく待ってなさい(´^ω^`)

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