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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
邪竜の島討滅戦

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1193/1692

第1193話 決戦直前の下準備

 それから十分程して、レオニス達はヴィゾーヴニルのもとに集まり空中にて緊急会議を開いた。

 これから大事な話し合いをする訳だが、主力級戦力を一堂に集めたためあまり時間を割くことはできない。

 手短に話を済ますために、最後にピースとともに来たパラスが合流してすぐにレオニスが話を切り出した。


「皆忙しいところを集まってもらってすまん。皆に相談しなきゃならんことができた」

「ここにいる闇の精霊には、暗黒神殿の神殿守護神ノワール・メデューサのココが憑いていて、俺達とともにこの場を見ている。ココは闇の女王とともに闇を統べる高位の存在だ。そのココが掴んだ情報によると―――」

「あの邪竜の島に、邪皇竜メシェ・イラーザが卵の状態でいるらしい」

『『『!!!!!』』』


 レオニスからもたらされた新情報に、その場に集められた者達全員の顔が驚愕に染まる。

 光の女王や雷の女王が邪皇竜メシェ・イラーザのことを知っているかどうかは定かではないが、それでも『邪皇竜』という禍々しい名を冠する者が只者な訳がないことは彼女達にもすぐに理解できた。


 その後レオニスは、クロエから聞いた情報を中心に皆にメシェ・イラーザの情報を伝えた。

 邪皇竜メシェ・イラーザの卵は邪竜の島の中央の巨大な魔法陣の中にいること、その卵は自分達が駆逐した邪竜の魂を吸収して成長しているらしいこと。

 地上ではメシェ・イラーザは大厄災として語られた存在であること、それ故卵のうちに何とか孵化を阻止したいこと等々。


 皆顔面蒼白になりながら、レオニスの話に聞き入っている。

 中でも特に驚いていたのは白銀の君。彼女はシュマルリの竜達を統べる竜の女王だけに、同じ竜である邪皇竜メシェ・イラーザのことも知っているようだ。


『何と……伝説の竜、メシェ・イラーザがあの島にいるとは……』

「白銀は、メシェ・イラーザのことを知っているのか?」

『いいえ、私自身は父母からメシェ・イラーザのことを伝え聞いただけで、実際に直接会ったことはありません。もっとも私の父母も……いや、祖父母ですら実物のメシェ・イラーザに会ったことは一度もなかったらしいですが』

「そうか。人族の間でもメシェ・イラーザは御伽噺の中の生物だったが、竜族の間でも同じようなもんか」

『そうですね……』


 レオニスの問いかけに、白銀の君は俯きながら答える。


「もし良ければ、白銀の父母から伝え聞いたという話を聞かせてもらえるか?」

『父母の話によると、邪皇竜メシェ・イラーザはかつて天界にいた皇竜メシェ・イラーデという神竜だったといいます。それがいつしか魔の手に堕ち、邪皇竜メシェ・イラーザという邪悪の塊に変貌してしまった……もしいつか神竜に会うことができたなら、邪を祓い本来の姿を取り戻す手伝いをしたい―――特に父はそれを強く望んでいました』

「そうか……竜族の間でも、メシェ・イラーザがかつて皇竜と呼ばれていたことは伝わっているんだな」


 白銀の君の話に、レオニスが頷きながら考える。

 白銀の君の父が『邪を祓い本来の姿を取り戻させてやりたい』と言っていたのならば、もしかしてそれを可能にする方法があるのかもしれない。

 レオニスがそんなことを考えていると、闇の精霊に憑いているクロエが突如大声を上げた。


『パパ!大変!』

「ン? ココ、どうした?」

『今マードンが邪竜の島の近くに着いて、ココの目で島全体を見てるんだけど……』

「どうした、もしかして何か異変があったのか!?」


 クロエの慌てぶりに、レオニスの中で猛烈に嫌な予感が走る。

 そしてその予感は、瞬時に的中することとなる。


『邪皇竜の卵が……もう孵化しちゃってる!』

「何だとッ!?」


 クロエの言葉に、その場にいる全員の顔が強張った。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 クロエの報告に愕然とするレオニス達。

 できることなら卵のうちに対処したかったのだが、どうやら一足遅かったようだ。

 そしてクロエは続けて、孵化済みの邪皇竜メシェ・イラーザの様子を語る。


『今はまだ孵化した直後っぽくて、身体もとても小さいけど……赤黒い靄に包まれて、赤と黒の長い身体が見え隠れしてる……』

「クロエ、それはもしかして、邪皇竜はまだ幼体ってことか?」

『うん。メシェ・イラーザの身体が赤と黒の二色のうちは、まだ幼体。だけど、身体に青色の線が浮かんできてその青色が赤と黒と同じ量になったら、それはもう成体になった証』

「そうか……俺達もこれ以上のんびりしていられなさそうだ」


 マードンの目を通して、クロエが邪竜の島の様子をリアルタイムで報告してくれている。

 邪皇竜メシェ・イラーザを知るクロエによると、今はまだ孵化直後で幼体の状態だという。

 卵の段階で仕留めるのは叶わなかったが、幼体のうちならまだ望みはありそうだ。


 というか、成体になる前に何としても邪皇竜を仕留めなければならない。

 今は赤黒い靄、瘴気に包まれて身を守っているようだが、成体になれば全身から発する瘴気の量は幼体を包む靄の比ではない。

 そうなったら、もうレオニス達の勝ち目はかなり薄くなる。


 そして、レオニスの懸念は他にもある。

 邪皇竜メシェ・イラーザは、ずっと天空にいるとは限らない。いずれは地上にも降りてくるだろう。

 そうなったら地上が大惨事になることは、火を見るよりも明らかだ。

 そんな大惨事の未来を回避するには、是が非でもここでレオニス達が邪皇竜メシェ・イラーザの成体化を食い止めなければならなかった。


 レオニスは両の拳をギュッ、と握りしめ、意を決したように口を開いた。


「皆……今聞いた通り、邪皇竜メシェ・イラーザは既に孵化した。もはや夜明けを待つ猶予はない。今すぐ動くぞ」

「今から十分後を目安に、ヴィーちゃんとグリンちゃんの浄化砲を邪竜の島にブチ込んで一気に撃ち落とす」


 今後の作戦を語るレオニスの言葉に、全員が無言のまま力強く頷く。

 邪皇竜メシェ・イラーザが成体となるまで、どのくらい時間が残されているかも全く分からない今、迷ったり悩んだりしている余裕などない。

 もはや自分達には一刻の猶予も残されていないことを、ここにいる全員が理解していた。


「十分の準備時間の間に、今前線で戦っている者達を全部引き上げる。パラスは天使達、白銀は獄炎竜と迅雷竜、ディランは竜騎士達、一人残らず全てここに連れてきてくれ。全員がヴィーちゃんとグリンちゃんの後ろに退避でき次第、すぐさま浄化砲を撃つ」

「うむ、分かった!」

『分かりました』

「承知した!」


 レオニスの指示に白銀の君とパラス、そしてディランが速攻で動いてそれぞれ違う方角に飛んでいく。

 次にレオニスは、ピースに向かって話しかけた。


「ピースはここで、浄化砲の準備をしてくれ。本当はヴィーちゃんとグリンちゃんが左右に分かれたりして、邪竜の島を挟撃するような形でそれぞれ別個で浄化砲を撃てればいいんだが……さすがにそれは厳しいよな?」

「うーーーん、やってやれないことはないと思うけど……あの魔法陣を展開できるのは、小生一人だけだからね……あっちとこっち、離れた場所の間でちょこまかと動き回るリスクを考えると、一ヶ所で一個の魔法陣を共有した方がいいと思う」

「だよな。……よし、分かった。浄化砲発射前にヴィーちゃん達にかける身体強化魔法の準備の方も頼む」

「うん、分かった!」


 ピースもレオニスの指示に従い、魔杖を取り出すなどの準備に取りかかる。

 するとここで、光の女王と雷の女王がレオニスに声をかけた。


『レオニス、私達は何をすればいい?』

「そうだな……そしたら二人でエルちゃんのところに行って、これまでの事情を話しておいてくれるか? 特に邪皇竜メシェ・イラーザのことは、エルちゃんの島にいる者達はまだ誰も知らないはずだ。エルちゃん自身、今は天空島の防衛にかかりっきりで忙しいから、分体を通してこっちの様子を見る余裕もないだろうし」

『そうね、ヴィーちゃん達の浄化砲でびっくりさせても悪いものね』

『分かったわ!今すぐエルちゃん様のところに行ってくるわね!』

「なるべく早めに戻って、ヴィーちゃんとグリンちゃんの傍で力になってやってくれよ!」

『はーい!』


 二人の女王はコクリ、と頷いてから天空樹の島に向かって飛んでいく。

 そうしてそれぞれが持ち場に分かれていき、ヴィゾーヴニルとグリンカムビのもとに残ったのは、下準備中のピースを除いてレオニスと闇の精霊だけになった。


「ココ、今の邪竜の島の様子はどうだ?」

『今のところ、ものすごく大きな変化は起きてないと思うけど……幼体の身体が少しづつ、大きくなっていってる、と思う……』

「そうか……」


 一分どころか一秒も無駄にできない今、ココの目を通した邪竜の島のリアルタイム情報はとても貴重だ。

 しかし、それにはマードンが邪竜の島の近くにいなければならない。

 いくらマードンが途轍もなく煩いウザキャラであっても、さすがに使い捨ての駒扱いするのは忍びない。


「ココ、もう少ししたらマードンも邪竜の島から離れるように言っておいてくれ」

『え、そんなことしていいの? そしたらもうココも、邪竜の島の様子を見れなくなっちゃうよ?』

「でも、マードンまで浄化砲に巻き込んで諸共吹き飛ばして死なせるってのは、さすがに可哀想だろう?」

『それはー……』


 レオニスの指示に、一旦は難色を示したクロエ。

 だがレオニスの言うことももっともで、クロエもマードンのことはただただ『ウザい!煩い!しつこい!』とは思うが、ここで死んでも構わないとまではさすがに思わないし、そこまで薄情でもない。


『……分かった。後でマードンに言っておくね』

「分かってくれてありがとうな。ココは本当に良い子だな」

『うん♪♪♪』


 不承不承ながらもマードンの引き上げに同意したクロエ。

 レオニスに褒められて、瞬時にご機嫌になる。

 だが、そのご機嫌もすぐに収まり、クロエが心配そうにレオニスに問うた。


『でも……そしたら、邪竜の島のある方向とか分かる? ココ達は暗闇の中でも何があるかとか見えるし分かるけど、パパ達にはかなり見え難いよね?』

「そうだな……でも、そこら辺も問題ないかな。ピースが出す浄化砲の魔法陣はものすごく明るいからな」

『そっか。パパがそう言うなら安心ね!』


 クロエが口にした不安に、レオニスは闇の精霊の頭を優しく撫でながら諭すように答える。

 レオニスが大丈夫と言うのなら、それは絶対に大丈夫―――レオニスをパパと慕うクロエにとって、彼の言葉は絶対なのだ。


「さて……そしたら俺も、ここでできることをするとしよう」


 レオニスが徐に空間魔法陣を開き、そこから巨大な林檎を取り出した。

 それは、カタポレンの畑でラウルが丹精込めて作った林檎。

 その中でも特に選りすぐりの逸品で、レオニスの胴体分は軽く超えるという何しろ巨大な実だ。

 これから大事な使命を果たすべく、膨大なエネルギーを使う神鶏達の腹拵えになれば、というレオニスのささやかな配慮である。


 赤々とした美味しそうな超巨大林檎を見た、ヴィゾーヴニルとグリンカムビの目がキラキラと光る。

 二羽とも既にラウルから巨大林檎をご馳走してもらったことがあるので、それがとても甘くて美味しい果実だということを知っていた。


 あーん♪とばかりに嘴を大きく開けている神鶏達に、レオニスが巨大な林檎を惜しみなく与える。

 まず一個目はヴィゾーヴニルに、そして間を置かずに空間魔法陣から取り出した二個目の林檎をグリンカムビに与えた。

 神鶏達が美味しそうにもっしゃもっしゃと林檎を頬張り、ゴクン☆と飲み込む。

 これをレオニスは十回繰り返した。


 超巨大林檎を十個づつ食べた神鶏達は、実に満足そうな顔をしている。

 大仕事の前のエネルギー補給としては、最高に美味しいおやつだったに違いない。

 より一層ご機嫌になった神鶏達。二羽揃ってレオニスに頬ずりをしだした。

 ふわもふな二羽の羽毛に埋もれながら、レオニスがくすぐったそうに笑う。


「おお、ヴィーちゃんもグリンちゃんも、そんなにカタポレンの林檎が気に入ってくれたか。そりゃ良かった」

「そしたらまたラウルに、ヴィーちゃん達用の林檎をたくさん作るように頼んでおくから……」

「この件が無事済んだら、また皆でいっしょに……天空島でお茶会とバーベキュー大会しような」

『コケコケ♪』

『クエケコ♪』


 世界の命運を担う緊張感故か、ところどころで言葉に詰まるレオニスの語りかけに、ヴィゾーヴニルもグリンカムビも元気良く応える。

 天空島とサイサクス世界の平和を賭けた決戦の時は、刻一刻と近づいてきていた。

 相変わらずレオニス達のピンチは続きます。

 作者は基本スローライフの平和な日々が好きなので、事件の渦中が続くと『あー、早よ日常生活風景に戻りたい……』と思ってしまうのですが。なかなか思うようにはいかず日々苦戦しております(;ω;)


 ……って、作者の苦戦ぶりなど横に置いといてですね。

 最後の方の神鶏二羽の頬ずりについて、ちょいと補足。

 言葉を語らない動物達からの親愛の情の表現として、最もお手頃で分かりやすいのが頬ずりな訳ですが。鶏は、頭に毛があるのとないのがあるようで。

 特に烏骨鶏なんか、頭ももふもふのふさふさで撫でるとすんげー気持ち良さそう♪゜.+(・∀・)+.゜

 一応拙作の神鶏達も、ほっぺたふわもふな種類として今回新たに外見設定しちゃいました。

 ふわもふなヴィーちゃんにグリンちゃん、絶対に可愛いヴィジュアルなはず。

 そう、可愛いは正義!なのです!(`・ω・´)

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その卵は自分達が駆逐した邪竜の卵を吸収して成長しているらしいこと。 邪竜の魂、かと。
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