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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
邪竜の島討滅戦

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第1187話 各所への根回し

 レオニスがピースを伴い、畑の島に降り立った。

 ここは天使達の住まう場所で、いつもは誰かしらいるのだが、今は邪竜の群れと交戦しているため一人もいない。

 無人島状態の島に、天使達の宿舎と並んで建つログハウスの前で、ピースが口をあんぐりと開けながら建物を見上げる。


「うひょー……天空島にこんなもんがあるなんて、誰も想像しないよねー」

「主に俺達人族やラウルが天空島に立ち寄った時に使うために、ラウルがここに建てたんだ。それが今、こんなところで役に立つとは夢にも思わなんだがな」


 レオニスがログハウスの玄関の扉を開けて、ピースを中に案内する。

 中は広々とした空間で、部屋の中央には二脚のテーブルと椅子が設置されている。


「おおー、中は結構広いんだね!もしかして、二階もあんの?」

「もちろん。二階には四人分のベッドが設えてあって、床で雑魚寝もできるぞ」

「大人数での寝泊まりもできちゃうんだ!すごッ!」


 予想以上にしっかりとした作りのログハウスに、ピースが心底感心した様子で中を見回している。

 そして早速テーブルのもとに行き、椅子に座って呪符作成の準備を始める。


「じゃ、小生早速呪符作りに取りかかるねん!」

「よろしくな」


 ピースが空間魔法陣を開きながら、筆や紙、文鎮、下敷き、インク壺等々、呪符作成用道具を次々と取り出しては綺麗に配置していく。

 テキパキと準備を進めながら、ピースがレオニスに問うた。


「そしたらさ、何をどれくらい作ればいい?」

「そうだな……まずはさっきも言った、魔法攻撃力を上げる呪符。これをとにかくたくさん作ってもらいたい。できれば竜騎士達だけでなく、天使達にも渡したいからな」

「了解ー。てゆか、浄化魔法の『究極』は描かなくてもいいのん?」

「そっちはまだ俺の手持ちがあるから問題ない。天使達に一人三枚は配れるくらいの余裕はあるからな」


 ピースの質問に、レオニスが適宜答えている。

 テーブルの上には着々とピース愛用の道具類が置かれ、最後にピースはローブを脱いでスモックを着込んだ。

 このスモックは、ピースが呪符作成する時に必ず着用する作業着である。

 腹部と腰の左右に大きなポケットがついていて、様々な小物を収納できるスグレモノなのだ。


 ピースは腹部のポケットから幅広のリボンと三角巾を取り出し、リボンで長い髪をしっかりと一つに結わえてから頭に三角巾を装着する。

 これでピースの準備が整った。


「レオちん、出来上がった呪符はいつ誰に渡せばいい?」

「そうだな……そしたら天空樹の島にいるラウルに、三十分毎にここを訪れるよう頼んでおこう。ラウルがここに来たら、その都度出来上がった分を渡してやってくれ」

「らじゃー!」

「じゃ、よろしくな」

「うぃうぃ、任せてー!」


 出来上がった呪符の受け渡し方法も決まったことで、ピースが早速テーブルに向かって呪符を描き始めた。

 いつもは軽い言動が多いピースだが、本業である魔導具作成作業ではものすごく真面目になる。

 背筋を伸ばして筆を握り、筆の毛先にインクをつけるピース。紙に向かって真っ直ぐな眼差しで筆を動かすピースは真剣そのものだ。


 猛烈な勢いで筆を動かすピースに、もうレオニスの声は届かない。

 レオニスもピースの作業の邪魔にならないよう、それ以上声をかけずにそっと玄関の扉を開けて静かに外に出ていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 畑の島のログハウスを後にしたレオニス。次はライト達がいる天空樹の島に向かう。

 空を飛ぶレオニスがユグドラエルのもとにいるライト達の姿を見つけ、島に降り立つ。

 そこでは天空樹や天使達、そしてシュマルリの竜達の回復を手伝うライトとラウルがいた。


「ライト、ラウル、ご苦労さん」

「あッ、レオ兄ちゃん!」

「おう、ご主人様、戦況はどうだ?」


 空から降りてきたレオニスの来訪に気づいたライトとラウル。

 早速レオニスのもとに駆けつけて話しかけた。


「思った以上に邪竜の数が多くてな。いくら倒しても一向に減らんところを見ると、おそらくツィちゃんの時の蟲のように邪竜を送り出す転送用魔法陣が邪竜の島にあるんじゃないか、と睨んでいる」

「え!? じゃあその魔法陣を潰さなきゃいけないんじゃないの!?」

「ああ。邪竜の供給源を大元から絶たないと、俺達に勝ち目はない」

「そんな……」


 思った以上に芳しくない戦況に、ライトが愕然とした顔で呟く。

 確かにレオニスの言う通り、邪竜を倒しても後から後からキリがない程に涌き続けるのであれば、天空島側はジリ貧一方となりいつかは敗れるだろう。

 そんな敗北の未来を回避するには、邪竜の島そのものを落とさなければならない。

 そのことをレオニスはユグドラエルに告げた。


「エルちゃん、そんな訳で申し訳ないんだが、邪竜の島は『奪還』ではなく『完全殲滅』しなきゃならん。本当は島を取り戻せたら良かったんだが……すまん」

『レオニス、貴方が謝ることではありませんよ。それは仕方のないことです』

「そう言ってもらえると助かる……」


 本当なら奪い返すはずだった邪竜の島。

 それが叶わず殲滅させなければならないことを謝るレオニスに、ユグドラエルは静かな声でそれを受け入れる。


『あの島は……邪竜達に奪われた時から、既にその命運は尽きていたのです。今回あの島を消すことになろうとも、それはあの島を救うことに繋がります。これ以上あの島を、害悪と悲劇を生み出す地にはさせません』

「そうだな。これ以上廃都の魔城の奴等の好きにはさせん」

『そうですとも。そのためにも手段は問いません。他の天空島の守備は私に任せて、レオニス達も遠慮なくやってください』

「エルちゃんが守ってくれてるなら、何があっても安全だな!」


 レオニスを鼓舞するユグドラエル。

 その声はいつも通り物静かだが、言葉の端々から内に秘めた怒りが感じられる。

 ユグドラエルの了承が得られたレオニス、今度はラウルに声をかけた。


「ラウル、すまんが一つ仕事を頼まれてくれるか」

「ン? 何だ?」

「今畑の島のログハウスで、ピースに呪符を作ってもらっている。竜騎士や天使達に使わせる予定の、魔法攻撃力上昇の呪符なんだがな。ラウルには三十分毎にログハウスに行って、出来上がった呪符をピースから受け取ってもらいたい」

「了解。ピースから受け取った呪符は、ご主人様に渡せばいいのか?」

「そうだな……俺かもしくは竜騎士の誰でもいいから、適当にとっ捕まえて渡してくれ。竜騎士達には俺の方から話を通しておく」


 レオニスから託された新しい仕事を快く引き受けるラウル。

 今ラウルはライトとともに、ユグドラエルやシュマルリの竜、天使達相手に回復支援に回っているが、そこまでてんてこ舞いな状態でもない。

 その程度の仕事なら十分こなせるだろう。


「じゃ、俺は光の女王のところに行くわ。ライト、ラウル、後はよろしくな」

「うん!レオ兄ちゃんも気をつけて頑張ってね!」

「ご主人様も、腹が減ったらここに来いよ。ちょうど今から畑の島で、美味い干し肉のスープでも作りに行こうと思ってたところだったんだ」

「おお、そうか、そりゃ楽しみだ!俺の分もとっといてくれよ」

「はいよー」


 ユグドラエルへの挨拶も済み、早々に次の目的遂行に移るレオニス。

 ふわり……と宙に浮き始めたレオニスに、ライトとラウルがそれぞれ激励の言葉をかける。


 ちなみにラウルが言った、畑の島でスープを作るという話は本当のことである。

 この真夜中の厳寒の中で戦う天使達に、何か温かいスープでも出してやりたいな……という話を先程からライトとしていた。

 しかし、ユグドラエルのすぐ傍で湯を沸かすための火を使うのは、さすがに憚られる。

 そしたら今誰もいないであろう畑の島の方で、巨大寸胴を使って干し肉のスープでも作ってからこっちに運ぶか……と二人で話し合っていたところに、ちょうどレオニスが来たのだ。


 レオニスが飛び去った後、ライトとラウルは空を見上げながらぽつりと呟く。


「レオ兄ちゃんのあの様子だと、邪竜の島の近くでかなり厳しい戦いが続いているんだろうね……」

「だろうな。だが、俺達が負けることはないさ。ご主人様だけでなく、天使達やシュマルリの竜に竜騎士達もいるし、何よりここにはエルちゃんがいて皆を守ってくれてるからな」

「……だよね!ぼく達も、レオ兄ちゃん達に負けないくらい頑張らないとね!」

「その意気だ」


 不安そうに呟くライトに、ラウルが事も無げに返す。

 それは決して楽観しているのではなく、矢面で戦っているレオニス達のことを心から信頼しているからこそ勝利を確信しているのだ。

 ラウルの言葉に励まされたライト、パァッ!と明るい顔になり己を鼓舞し奮起する。

 そうして二人は再び己の持ち場に戻っていった。

 相変わらず忙しく立ち回るレオニス。

 現代日本のように、電話やメール、スマホのメッセージアプリなどのようにリアルタイムで密に連絡を取れる環境にはないですからねー(゜ω゜)

 いや、現代日本でもこんなに便利な連絡手段が増えたのは、ここ二十年くらいですかね?

 それまでは、目の前にいない他者への連絡手段といえば電話オンリーで、その電話すらない時代はもっともっと不便だったことを思うと、文明の利器のものすごい発展と進歩は本当はにありがたいことです(-人-)

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