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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
邪竜の島討滅戦に向けて

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第1168話 推し活と強い決意

 パレンと分かれた後、改めて冒険者ギルドの出店の物販コーナーで買い物を再開し始めたライト達。

 中でも様々なマスターパレングッズを大量購入し、最も興奮していたのはシャーリィである。


「キャーーーッ!何て格好良いのかしら!」

「ああッ、これ素敵!あ、こっちのも欲しい!あら、あっちにも格好良いマスターパレン様が!」

「ああン、どれもこれも素敵過ぎる!ここにある物全部買い占めたーーーいッ!」


 ブロマイドに直筆サイン色紙、パレンが可愛らしくデフォルメされた手のひらサイズのぬいぐるみ、1/10から1/3スケールの銅像、抱き枕等々、数多のグッズに大興奮のシャーリィ。いつもの妖艶な絶世の美女はどこへやら、ただただひたすら喜びの悲鳴を上げながら、ほぼ全種類のパレングッズを買い物カゴにザックザックと入れ続けている。

 ブロマイドに至っては、全二十種類を各三枚づつ確保しているではないか。

 そんなシャーリィの謎行動に、ラウルが呆れながら問うた。


「シャーリィ、お前……そんなにブロマイドを買い込んで、一体どうすんだ?」

「ンもう、ラウルってばファン心理というものをちっとも分かってないわねぇ。この際だから、貴方にもこの『ファン心理』というものをよーく教えてあげるわ。 いいこと? 一枚は普段から眺めるための『鑑賞用』、一枚は綺麗にとっておく『保存用』、そしてもう一枚はマスターパレン様の素晴らしさを周りの皆に説く『布教用』よ!」

「さいですか……そりゃ確かに三枚は必要だな……」

「でしょでしょ!? ああ、これでどこを旅していてもマスターパレン様とともにいられるわ!」


 シャーリィが熱く解説する『ファン心理』とやらに、ラウルは終始圧倒されながら最後は折れた。

 ラウルに言わせれば『何だかよく分からんが、本人がこんなに喜んでんだからいいことなんだろ』といったところか。


 そしてこの『鑑賞用』『保存用』『布教用』という買い方は、シャーリィが所属する『暁紅の明星』の興行中の土産コーナーでも常時見られる光景だ。

 シャーリィの熱狂的なファン達は、シャーリィの新しいブロマイドやグッズが発売される度にそうやって購入していた。

 そんなファン達の行動を、シャーリィも不思議に思いながらよく眺めていたものだ。


 しかし、まさか自分がそれと全く同じ行動を取る日が来ようとは、正直シャーリィ自身でさえも夢にも思わなかった。

 だが実際に自分がそうなってみると、これ程楽しいことはない。

 自分がイチ押しする大好きな人を応援する―――これがどれ程心躍ることなのかを、シャーリィは身を以って深く実感していた。


 そしてこのパレングッズ購入者には、パレンが直々に様々な礼をするという特典がある。

 シャーリィがいっぱいになった買い物カゴを持って精算する毎に、パレンからの握手やハグなどをしてもらっていた。

 その度に、シャーリィは「……はゎゎゎゎ……」と声を漏らしながら顔を真っ赤にし、頭から何やら煙のような蒸気がシュウシュウと立ち昇っている。


 そのうち三つ目と四つ目の買い物カゴ、『マスターパレン特製プロテイン・大袋』各種が大量に詰め込まれたカゴを精算する。

 マスターパレン特製プロテインは、先程シャーリィが飲んだココア味以外にも様々な種類がある。カフェオレ味やミックスベリー味、バナナ味に抹茶味、きな粉味、黒ごま味等々、バラエティに富んだラインナップが売りの逸品である。

 シャーリィはこれを各三袋づつ購入していた。


 これでシャーリィの買い物は一通り済んだ。

 最後にプロテイン大量購入のお礼のハグを、パレンから受けるシャーリィ。

 シャーリィはパレンの腕の中で、目を閉じうっとりとしている。


「シャーリィ、こんなにもたくさんの買い物をしていってくれてありがとう。特にこのプロテインは、私も日々愛用している逸品でな。味はもちろん品質も私が保証する。君の体型維持に、必ずや役立つであろう」

「世界中のどこを旅していようとも、いつでも貴方様と同じプロテインを飲めるなんて……私は世界一幸せな踊り子ですわ……」


 パレンがシャーリィの耳元で、甘く優しく囁く。

 ハスキーボイスの甘美な囁きは、それまでシャーリィが経験したことのない夢心地の世界に(いざな)う。

 そしてシャーリィもパレンの背中に手を回し、その細い腕でギュッ……と抱きしめていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 そうして全ての買い物を終えて、冒険者ギルドの出店を後にしたライト達。

 今日の目的は一通り達成したので、ラグナロッツァの屋敷に帰ることにした。

 ちなみにシャーリィのとんでもない量の買い物は、一旦ラウルが空間魔法陣に入れて持ち帰りを引き受けている。

 そしてそれらの戦利品を、シャーリィはどうやって『暁紅の明星』に持ち帰るかと言うと―――


「シャルさんのそのウエストポーチ、アイテムバッグだったんですね!」

「そうよー、まだあまり出回ってない貴重品なんだけどね? 私のファンの人が『暁紅の明星』の三十周年特別記念公演の時に、皆で使ってくださいって特別にプレゼントしてくれたの!」

「そんな高価な物をプレゼントしてくれるファンが、この世に本当にいるんですね……シャルさんってやっぱりすごいスターなんですね!」


 シャルが腰に着けているウエストポーチ。これが何とアイテムバッグだと言うではないか。

 つまりシャーリィは、ラグナロッツァの屋敷に帰った後にラウルの空間魔法陣から自分のアイテムバッグに移し替えるつもりなのだ。


 その話を聞いたライトとマキシが、心から感嘆している。

 そう言われてよくよく見てみると、ポーチの前面にたくさんの魔宝石が縫い付けられている。

 それは花を模したデザインになっていて、花弁がルビーとサファイア、茎や葉っぱにはエメラルドが用いられているようだ。

 兎にも角にもものすごく贅沢な仕様で、財力が有り余る豪商向けに作られた品であることが分かる。


 思わぬところでアイテムバッグの普及事例を知ることができたライト。その顔にも笑顔が浮かぶ。

 そのアイテムバッグはね、実はレオ兄ちゃんとフェネぴょんの渾身の合作で、魔宝石はぼくがカタポレンの森で仕込んで回収したものなんだよ!という真実は、決してライトの口からシャーリィに明かされることはない。

 だが、こうしてアイテムバッグが人々の生活に役立っている場面を目の当たりにすると、何とも嬉しくなってくるものだ。


 空は茜色から宵闇が強くなっていく。

 それまでずっとご機嫌で、ルンルンステップで歩いていたシャーリィ。

 ライト達より数歩前に踊り出たかと思うと、クルッ!と振り返ってライト達に語りかけた。


「私、決めたわ!」

「ン? 何を決めたんだ?」

「さっきも言ったけど……私、今から五年後に冒険者になる!」


 輝くような明るい顔で、将来冒険者になる!と宣言したシャーリィ。

 確かに先程シャーリィは、冒険者ギルドの出店の簡易医務室でそんなようなことを呟いていた。

 そしてラウルの説得により、一旦はシャーリィも思い留まったはずだった。

 だがしかし、その決意は揺るぐことはなかったようだ。


「五年後、か? そりゃまぁお前の一生だから、好きに生きればいいとは俺も言ったが……どうしてまた五年後に決めたんだんだ?」

「今から五年間、私の跡継ぎを育てるためよ。私の後進がしっかり育てば、私がいなくなっても『暁紅の明星』は安泰でしょ?」

「まぁなぁ、確かに五年もありゃ後輩も立派に育つだろうが……お前、そこまでして冒険者になりたいのか?」

「ええ。どうしても、どーーーしても……絶対に冒険者になりたいの」


 不思議そうにその理由を問うラウルに、シャーリィも真面目に答える。

 今すぐシャーリィが『暁紅の明星』を脱退することはできない。そんなことをすれば、屋台骨を失った『暁紅の明星』はお先真っ暗だからだ。

 だがしかし、自分の後継者をちゃんと育て上げてから円満退団すれば、恩を仇で返すような裏切り者にはならない。

 『立つ鳥跡を濁さず』という諺通り、シャーリィは自分を受け入れてくれた『暁紅の明星』に恩返しをしてから冒険者になるつもりなのだ。


 しかし、既に冒険者として活動しているラウルにしてみたら、シャーリィが冒険者になるということ自体が心配で仕方がない。

 確かに逃げ足だけなら早いだろうが、それだけでは冒険者になったところで頭打ちになるのは見えている。

 どうしても冒険者になりたいと言うシャーリィに、ラウルが改めて真剣に問うた。


「つーか、お前、冒険者になるなら飛行能力よりも攻撃魔法とか身体強化魔法が使えないと厳しいぞ? お前、そこら辺とか使えたか?」

「今は敏捷強化くらいしか使えないけど、五年の間にいろんな魔法を覚えていくつもりよ!」

「そうか……それはいい心がけだな」


 老婆心で警告するラウルに、シャーリィは臆することなくきっぱりと答える。

 シャーリィの答えは『今は使えないけど、後継者を育てる五年の間に並行して修行する』というもの。

 それはシャーリィの強い決意の現れだった。


 シャーリィの強固な意思をを知ったラウル。

 思わずはぁ……と小さなため息をつきながらも、吹っ切れたような声で答えた。


「俺も冒険者になってまだ日も浅いし、あれこれどうこう言えるような立場じゃないが……ま、お前ならやれるんじゃねぇか?」

「そう!? 冒険者の先輩のラウルからそう言ってもらえると、すっごく心強いわ!」


 ラウルのお墨付き?を得られたことに、シャーリィの顔がパァッ!と明るくなる。

 ご機嫌になったシャーリィは、ラウルに向けてさらに頼み事をし始めた。


「ねぇ、ラウル。そしたら、私が冒険者になったら私とパーティーを組んでくれる?」

「お前と俺が、か? つーか、お前ならどこに行っても誰からも歓迎されると思うぞ?」

「ンもー、ラウルってばホンットつれないわねぇ。幼馴染が新しい世界に飛び込もうとしているのよ? 最初のうちくらいは、顔馴染みで気心の知れた人と組みたいと思うのは当然のことでしょ?」

「ンー……そりゃまぁ、そう言われればそんな気もするが……」


 ラウルとパーティーを組みたいというシャーリィに、特に深く考えることなく却下しかけるラウル。

 だがシャーリィの言うことも尤もで、冒険者になったばかりの新人の頃は不慣れな世界で何かと心細いことも多いだろう。

 最初の一年くらいなら頼りにされてもいいし、慣れるまでいろいろと教えてやるのもありかな、とは思うのでラウルも前向きに考える。


「しゃあないな……そしたらお前が本当に冒険者登録できるようになったら、また俺のところに来い。その時にまた考えてやるから」

「ホント!? ラウルのことを一番に頼りにしてるからね、よろしくね!」


 ラウルに受け入れてもらえたことに、シャーリィは文字通り飛び上がりながら喜ぶ。

 飛び上がりついでにガバッ!とラウルの首っ玉に抱きついてきた。

 シャーリィの不意をついたような抱きつく勢いに、ラウルが少しだけ後ろに蹌踉めく。

 だがそこは、男の意地にかけて倒れる訳にはいかない。すぐに足腰に力を入れて何とか踏ん張り耐える。


 そんなラウルの頑張りなどなかったかのように、シャーリィはパッ!とすぐに離れて今度はライトに声をかける。


「ライト君、君も今年冒険者になるのよね?」

「はい、夏にぼくの誕生日が来て十歳になったら、すぐに冒険者登録するつもりです」

「そしたらライト君も、私の先輩ということになるのよね。ライト君も、私が冒険者登録できたらその時はどうぞよろしくね!」

「はい!ぼくもその日を楽しみにしています!」


 ライトとシャーリィ、冒険者になる日を心待ちにする者同士だけにすぐに意気投合している。

 夕暮れ時のラグナロッツァの空の下、未来を夢見る者達の賑やかで楽しそうな話し声が途切れることはなかった。

 完全回復したシャーリィの推し活&決意を固めた回です。

 この『推し活』という便利な言葉?がいつ頃出てきたのかはよく分かんないんですが。今話でシャーリィのやってることは、まんま推し活そのものですよねぇ(´^ω^`)


 作者自身は、これといった推し活をしたことは今まで一度もないのですが。好きなものがあるのは、とても良いことだと思います。

 己の情熱を惜しみなく注ぐ相手やものがあるというのは、それだけでもう心躍る瞬間を生み出してくれる。そしてその情熱の発露こそ、人生をより豊かに彩ってくれますから(*´・∀・)(・∀・`*)ネー♪

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