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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
邪竜の島討滅戦に向けて

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第1164話 アクシーディア公国生誕祭初日

 その後ライト達は、予定通り午前九時半に玄関ホールに集合して皆で出かけた。

 街を歩くと既にたくさんの露店や出店ができていて、多くの人々で賑わっている。


 しかし、この大混雑の人混みの中にあって人々の注目を浴びている者がいる。

 それはラウルとシャーリィである。


 今日のラウルは皆の引率者として、何が起きても対処できるよう黒の天空竜革装備をフル着用している。

 レオニスのような大剣こそ持たないものの、艶やかな黒の燕尾服はいつも以上に紳士然としていて実に眩い。

 そしてシャーリィの方はというと、オレンジ色のビキニのトップスに同じくオレンジ色のゆったりとしたボトム、そして肩出しの両腕に水色のシースルーの長袖と同生地のオーバースカートが何とも美しい。

 いわゆる『アラビアンプリンセス』と呼ばれるファッションだ。

 首にもオレンジ色のチョーカーを着けていて、頭にはカチューシャサイズのシンプルなダイヤモンドティアラを被り、そこから後ろに流れるようなミドルヴェールを着けている。

 キュッとくびれた腰のラインとヘソ出しが如何にも踊り子らしく、壮絶なまでの美麗オーラを醸し出していた。


 ただでさえプーリアは、もとより容姿端麗な美男美女揃いの種族。

 ラウル一人だけでも眩いのに、そこに同じプーリアのシャーリィが並んだらさぁ大変だ。

 それはまるで、ハリウッドのレッドカーペットを歩いているかのような超ゴージャスな空間。

 ラウルとシャーリィ、二人の周りにだけ『シャラララ~ン☆』というキラキラエフェクト&効果音が流れているような気さえしてくる。


 行き交う人々の目は、嫌でも二人のプーリアに釘付けになり、チラ見どころか何度も振り返りながら見つめる人までいる始末だ。

 そんなキラッキラな二人の姿を、ライトとマキシは数歩後ろで眺めていた。


「ぃゃー、この二人が並んで歩くとホンットすごいねぇ……」

「ですね……あの眩しさは、破壊力抜群ですよねぇ……」

「なのに、本人達は全く動じてないってのがまたすごいよね」

「全くです」


 たくさんの人で大混雑している道の中を、悠々と歩くラウルとシャーリィ。

 美男美女が醸し出す圧倒的な美のオーラに、自然と二人の周りの人が道を譲るように隙間を空けるのが何とも不思議である。

 あまりにも美し過ぎると、近寄りがたいオーラをもまとうようである。


 ちなみにラウルの右肩にはウルス、シャーリィの左肩にはケリオンが文鳥サイズになってちょこん、と留まっている。

 二人の肩に留まることで、この人混みをよく観察して人化の術の学習に活かそうとしているのだ。


 そうしてしばらく歩いていると、ラウルがふと足を止めて後ろを振り返る。


「ライト、マキシ、人が増えてきたから気をつけろ。この混雑ではぐれたら大変なことになる」

「ああ、そうね。そしたら離れ離れにならないように、皆で手を繋ぎましょう」


 後ろを振り返ってライト達に向けて手を差し伸べるラウルに、シャーリィも同じく立ち止まってライト達に手を差し伸べる。

 ほぼ同時に手を差し伸べた二人は、ライト達の方からはちょうど逆光になっていてさらに眩しく輝いて見える。


 しかし、見た目の美しさ以上に二人のライト達を思い遣る気持ちが何より温かい。

 ライトもマキシも嬉しそうに手を伸ばし、二人と手を繋いだ。

 ライトはラウルと手を繋ぎ、マキシはシャーリィと手を繋ぐ。

 そうして四人は、人混みの中を泳ぐようにして歩いていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 その後様々な店で買い物を楽しんだライト達。

 特にシャーリィが大はしゃぎで、様々な店を覗いては「あ、これ買って!」「あれも美味しそうー♪」「あっちからいい匂いがする!」等々、その都度ラウルの手を掴んで引っ張っては連れ回している。

 その度にラウルは「しゃあねぇなぁ……」とぼやきつつ、結局はシャーリィの全ての要望を叶えていた。


 串焼きやタコ焼き、焼きそばにケバブ、お好み焼きにチョコバナナ、チュロス等々、数多のお祭りフードを山ほど買ってはラウルの空間魔法陣に仕舞っていく。

 ちなみに今回の買い物資金は、レオニスから預かった金貨一枚とラウルの持ち出しで賄う予定だ。

 今のところレオニスからの小遣いで足りているが、金貨一枚を使いきったらそれ以降はラウルの財布からの支払いとなる。


 そうして祭りを楽しんでいる間に、いつしか太陽は上に上り昼になっていた。

 ラウルがりんご飴を十本買ったところで、シャーリィがラウルに声をかけた。


「ねぇ、ラウル、そろそろお昼にしない?」

「そうだな……ちょうど昼飯の時間になるし、公園で皆で昼飯にするか」

「「賛成ー!」」


 お昼にしようというラウルの言葉に、ライトとマキシも速攻で大賛成する。

 そうして四人で公園に向かい、芝生広場で空いている場所に敷物を敷いてお昼ご飯にした。


「「「「いッただッきまーーーす!」」」」


 敷物の上に出された皿の上には、先程まで買い込んでいたお祭りフードが並ぶ。

 持ち運び係のラウルが空間魔法陣から次々とお祭りフードを取り出し、ライトが飲み物を人数分用意したり、マキシがウルスとケリオンのために串焼きの串を取り除いたり等々、思い思いの行動をしながらお昼ご飯を楽しむ。


「ンーーー、美味しーい!お祭りの食べ物って、何でこんなに美味しいのかしら!?」

「ですよねー!お祭りという特別な時間に食べるからこそ、より一層美味しく感じるんでしょうねー」

「そうね、ライト君の言う通りね!きっと皆で楽しくお外で食べるからこそ、いつもとは違う美味しさを感じられるのよね♪」


 ほっぺたを押さえながら串焼きを頬張るシャーリィに、ライトも同意しつつお好み焼きを食べている。

 そんなシャーリィを見ながら、ラウルが心配そうに声をかけた。


「シャーリィ、お前、そんなに勢いよくバクバク食っていいのか?」

「いいの!今日と明日はダイエットはお休み!っていうか、ラウル、そういうつまんないことは言わないの!」

「ぃゃ、だってお前、昨日俺の料理を『美味し過ぎて太るから困る!』って言ってたじゃねぇか……」

「それはそれ、これはこれよ!……ったくもう、ラウルってばホンットそういうところが野暮よねぇ。お祭り気分が台無しになっちゃうじゃない」

「……すまん」


 シャーリィの食べっぷりに心配したラウルが忠言するも、シャーリィはプイッ!とそっぽを向きながらプンスコと怒る。

 頬を膨らませて怒るシャーリィ、右手人差し指でラウルの鳩尾(みぞおち)あたりをツン、ツン!と突ついている。

 そんなシャーリィの勢いに、ラウルはタジタジになりながら謝る。

 シャーリィに『お祭り気分が台無し』と言われれば確かにその通りで、普段節制しているのだからお祭りの時くらい心置きなく楽しみたい、という気持ちも分からなくもない。


 珍しく素直に謝るラウルに、シャーリィはしかめっ面を一転させて笑顔になる。


「分かってくれればいいわ。それに、ラウルも私のために気を遣ってくれたのよね。ありがとう、ラウル」

「お、おう、シャーリィの機嫌が直ったならそれでいいさ」

「じゃあ仲直りの印に、この串焼きを半分こしましょ!」

「おう、いいぞ」


 シャーリィが一本のタレ味の串焼きを新しく手に取り、先に串肉を二個もっしゃもっしゃと食べる。そしてその後、残りの二個を串ごとラウルに渡した。

 ラウルはその串を受け取り、横から肉に(かぶ)り付いて串から肉を外す。

 そうして一本の串焼きを二人で仲良く分け合うことで、シャーリィは仲直りの印としたのだ。


 仲直りの串焼きの肉を、無言でもっしゃもっしゃと食べるラウル。

 そんなラウルの顔を、シャーリィはニコニコとした笑顔でずっと嬉しそうに見つめていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 お昼ご飯を食べた後は、食べ物以外の買い物を楽しむライト達。

 ラウルは主に食器類や包丁、カトラリー等の料理関係の品、ライトとマキシは帽子やマフラー、コートなどのファッション小物、そしてシャーリィはネックレスや腕輪、イヤリングなどの服飾小物に夢中だ。


 そうして一通り欲しいものを手に入れた後、ライト達は冒険者ギルド総本部に向かう。

 去年と同じく、レオニスと他の冒険者達に差し入れするためだ。

 祭りのメイン通りから離れたが、それでも出店はそこかしこにあるのでまだ人混みが絶えない。

 そんな中、シャーリィがのんびりと語る。


「冒険者ギルド総本部かー。私、冒険者ギルドってほとんど入ったことないのよねぇ」

「シャーリィがいる『暁紅の明星』だっけ? 街と街を移動する時に、護衛を雇ったりはしないのか?」

「『暁紅の明星』には専属の護衛が常時いるから、冒険者ギルドに改めて護衛を依頼することってないのよね」

「ああ、そうか……人気の一座ならそれくらいの財力があるんだろうな」

「そゆこと。……ああ、でも冒険者ギルドと全く関わらない訳ではないのよね、旅先でトラブルが起きた場合は仲介を依頼することもあるし」


 意外なことに、シャーリィのいる『暁紅の明星』は冒険者ギルドとあまり関わりを持たないらしい。

 それもそのはず、護衛は外注ではなく自前で専属を雇っているという。

 確かにそれなら、わざわざ冒険者ギルドに頼ることもないだろう。


 そんな話をしているうちに、冒険者ギルド総本部に辿り着いたライト達。

 入口の扉をそっと開けると、中は閑散とした空間となっていた。

 いつもは多くの冒険者達で賑わう総本部も、公国生誕祭の間だけは人の出入りが激減するのだ。


 しかし、そんな中でも受付窓口はきちんと開いている。

 ライト達は真っ直ぐ受付窓口に向かい、席に座っているクレナに声をかけた。


「クレナさん、こんにちは!」

「あら、ライト君ではないですか、こんにちは」

「クレナさん、今日もお仕事お疲れさまです!今年もレオ兄ちゃんと皆さんに、差し入れを持ってきました!」

「ンまぁぁぁぁ、お気遣いいただきありがとうございますぅー!」


 ライトの言葉を聞き、クレナが嬉しそうに破顔する。

 そしてライトの後ろにいたラウルが空間魔法陣を開き、レオニスへの差し入れを次々と出す。

 それは大きなバスケット十個にも及んだ。


「お仕事お疲れさん。これをうちのご主人様達に渡してやってくれ」

「去年に続き、今年もラウルさんの差し入れをいただけるなんて、本当に嬉しいですぅー♪」

「もちろんうちのご主人様だけでなく、他の皆と分け合ってくれ。こんだけ大量にありゃ、今日明日の二日分になるだろ」

「ええ、こんなにたくさんいただければ十分ですぅー!」


 ラウルと和やかに会話しつつ、大きなバスケットを次々と後ろの机に運んでいくクレナ。

 大きなバスケットにこれでもか!という量のごちそうが詰め込まれているので、バスケット一個だけでもかなりの重量があるはずなのだが。クレナは軽々と持ち上げては、ヒョイ、ヒョヒョイ、と後ろの机に運んでいく。


 終始ご機嫌そうなクレナ、差し入れ全てを後ろの机に移動させて窓口に戻ってきた。

 そして改めて深々と頭を下げて礼を言う。


「ライトさんとラウルさんの心尽くしの差し入れ、確とお受け取りいたしました。皆でありがたく頂戴します」

「レオ兄ちゃんにも、お仕事頑張ってね!と伝えてください」

「分かりました。レオニスさんは今仮眠室にいらっしゃるので、後ほどまた私からお伝えしておきますぅ」


 ライトの言伝を快く引き受けたクレナ。

 その視線はラウルにも向けられ、ラウルの横にいたシャーリィの存在に気づいた。


「……おや、そこにいらっしゃるのは……『暁紅の明星』のシャルさん、ですか?」

「え、クレナさん、シャルさんのことを知ってるんですか?」

「もちろんですとも!『暁紅の明星』は、毎年アクシーディア公国生誕祭を華やかに彩ってくれる一大スター劇団ですもの!」


 シャルを一目見てその正体を看破したクレナに、ライトが驚いている。

 確かにシャーリィがいる『暁紅の明星』は有名な踊り子集団だが、クレナまで知っているとは正直驚きだ。

 そんなクレナに、シャーリィも嬉しそうに名乗りを上げた。


「初めまして、こんにちは。私のことを知っていてくださるなんて、とても嬉しいわ!」

「はわわわわ……本物のシャルさんだぁ……遠くから見ても綺麗なのに、実物はその百倍は綺麗なんですねぇ……」

「うふふ、遠くで見ても近くで見ても、私は私で何も変わらないわよ?」


 シャーリィを間近で見て感動しているクレナに、シャーリィがニッコリと微笑む。

 それは如何にも手慣れたファンサービスの笑顔だが、煌めくような美しさにクレナはぽーっ……と見入っている。


 だがしかし、ここで何故かクレナがハッ!とした顔になり狼狽え始めた。

 そしてオロオロとした口調で、突如謝りだした。


「あ、あの……ほ、本当に、本当にシャルさんには申し訳ございませんですぅ……」

「え? 何ナニ、いきなりどうしたの?」

「ぃゃ、もう本当に……ごめんなさい、私の口からはとても言えませんですぅ……」


 ペコペコと頭を下げ続け、懸命に謝るクレナ。その眦には薄っすらと涙まで浮かんでいるではないか。

 そして思い余ったように、後ろの机に積んだバスケット十個を一気に持ち上げてからライト達に声をかけた。


「では!先程いただいたこちらの差し入れを、レオニスさん達冒険者のもとに届けておきます!このご馳走は、皆でありがたく頂戴いたしますので!ありがとうございましたぁー!」

「え、ちょ、待、クレナさん!?」

「「「………………」」」


 クレナは大量の大型バスケットを一気に持ち上げながら、ピューッ!とすっ飛んで奥の方に消えていった。

 ライトが慌ててクレナに声をかけるも、その声はクレナに届くことなくあっという間に走り去ってしまった。

 クレナの謝罪と涙の理由が分からないライト達は、全員呆気にとられていた。


「……何だかよく分かんないけど、とりあえず出よっか……」

「そうだな……一応届けるもんは届けたしな」

「そうね……まだ見てない店でも見に行きましょ」

「そうしましょう……」


 クレナの謎の行動に、全く以て何が何だかさっぱり分からないといった様子のライト達。

 一体クレナは何に対して謝っていたのだろう。

 シャーリィに対してひたすら謝っていたが、クレナとシャーリィは初対面同士。今まで一度も会ったことのないクレナに、シャーリィは謝られる謂れは全くない。

 何が何だか全く分からないまま、全員狐に抓まれたような顔をしながらひとまず四人は冒険者ギルド総本部を後にした。

 公国生誕祭初日のお祭りの風景です。

 前回と違うのは、言わずもがなシャーリィの存在。綺麗なお姉さんがいる空間というのは、作者も書いてて楽しーい♪( ´ω` )


 というか、作中でも書きましたが、お祭りフードってホントに格別ですよね!(・∀・)

 特にその場で食べる味の美味しさたるや!言葉では言い表わせないくらいに美味しく感じる不思議。

 値段は普段の倍以上なんだけど、ついつい買い食いしたくなるのは、お祭りという非日常空間、プライスレスならではのなせる技なんでしょうねぇ( ´ω` )

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