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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
邪竜の島討滅戦に向けて

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第1151話 特別稽古後のあれやこれや

 そうして主道場での稽古が一時間を超えた頃。

 最後まで残っていたコルセアが「……参りました」と白旗を挙げた。

 道場入口には、稽古から離脱した者達が死屍累々とばかりに寝転がらされている。


 そして道場中央で一人立つレオニスが「ッしゃ、お疲れー!」と稽古の終了を宣言しつつ、使用していた借り物の竹刀を元の位置に戻す。

 壁際でレオニスが竹刀を返却し終えて振り向くと、ハンザがレオニスのもとに歩いてきていた。


「レオニス君、変わらず見事な腕前だな!」

「いやいや、こっちこそ今日もいい運動させてもらったぜ!やっぱこうしてたまには対人戦もしないとな、腕が鈍っちまうってもんだ」

「うちとしても、若い者達に指導してもらえるのはありがたい。とはいえレオニス君の場合、対人戦より対魔物戦の方が圧倒的に多いんだろうがな」

「そりゃまぁな、仕事柄どうしてもそうなっちまうがな」


 レオニスを讃えるハンザに、呑気にエクスポーションを飲みながら応えるレオニス。

 そしてレオニスがふと目線を横に移すと、入口付近にいるバッカニアの左右に巨体(スパイキー)陰キャ(ヨーキャ)がいるのが見えるではないか。


「おお、スパイキーにヨーキャ!お前らも来てたのか!」

「よう、レオさん、久しぶり!」

「さっきバッカ兄がうちに来てさ、道場でレオニス君が稽古してるからお前らも来い!って連れてこられたんだー、ウヒャヒャ」

「そうかそうか、そしたらお前らも稽古していくか?」

「「遠慮します」」


 レオニスがバッカニア達の近くまで歩いていき、スパイキーとヨーキャに声をかけた。

 久しぶりの再会を喜ぶ三人だったが、レオニスからの稽古の誘いは速攻で断るスパイキーとヨーキャ。

 実に素早いお断りに、バッカニアがブツブツと文句を言っている。


「お前らね……少しは俺の仇を取ろうとか思わないんか?」

「バッカニアの兄貴、無茶言わんでくれ。バッカニアの兄貴でも勝てんものが、俺とヨーキャの二人がかりで挑んだところで勝てる訳ねぇだろ?」

「そうそう。バッカ兄どころか、コルセア師範達だって勝てないんだヨ? そんなん相手にボク達が一万人以上束になったってね、絶対無理ぽぽぽ」

「ホンットお前ら、そういうところはシビアで薄情だよね……」


 バッカニアの無茶振りに、スパイキーは呆れ顔になりヨーキャは両手の手のひらを上に向けて肩を竦めてみせる。

 二人の対応にバッカニアは不満げだが、実際二人の言い分は真っ当な正論なのでどうしようもない。

 バッカニアやコルセアですら勝てない化物(レオニス)に、スパイキーとヨーキャが二人がかりで突撃したところで瞬殺返り討ちされて即終了である。


 そしてハンザはハンザで、床にへばっている門下生達に対し声をかけた。


「まだ昼食には早めの時間だが、午前の稽古はここまでとしよう。午後も含めて各自自由行動とする!」

「「「……はいッ!」」」


 最高師範ハンザの通達に、門下生達は何とか身体を起こして姿勢を正しつつ声を張り上げる。体力的には限界に近いだろうに、それでも稽古の最後の締めである挨拶だけはしっかりとしていて、実に見どころのある若者達だ。

 ちなみに今の時刻は午前十一時少し前。ハンザの言う通り、お昼休みの時間にはまだ早い。

 だが、レオニスによる今日の特別稽古は門下生達にとって壮絶にキツかったはずだ。

 午前の稽古を早めに切り上げて午後も自由としたのは、門下生達の疲労を労うハンザの心遣いだった。


 ハンザの言葉を受けた門下生が一人、また一人と道場から出ていく。

 ハンザだけでなくレオニスやバッカニア、そしてライトにまで軽く会釈しながら退出していく門下生達は、本当に礼儀正しい若者達である。


 そうしてしばらくの後、道場の中には数名だけが残った。

 レオニスとライト、ハンザとバッカニア、スパイキーとヨーキャ、そしてコルセア達師範クラスの達人達五人。

 ハンザが皆に向けて再び声をかける。


「そしたら我らも少し休んでから、どこかに昼飯でも食いに行くか」

「そうだな、俺も結構腹が減ったしな……って、そういやラウルとマキシはどうした? あいつらは確か、厨房の方に行ったよな?」

「何だ、レオニスの旦那、今日はラウルの兄ちゃんも来てんのか?」

「おう、前回もここの特製たまごボーロの作り方を教えてもらっててな、すんげーご機嫌だったぜ」

「そ、そうか、料理好きなラウルの兄ちゃんらしいな」

「今日もここの厨房で何かお料理を作ってるのかな? カナ?」


 レオニスの口からラウルの名が出てきたことに、バッカニア達が驚いている。

 レオニスがこのヴァイキング道場を訪ねてくるのは分かるが、まさかラウルまでついてきているとは思わなかったのだ。


「よし、そしたら俺が厨房を見てくるわ」

「そうだねー、ボクもスパイキー君といっしょに厨房に行ってみるから、バッカ兄達はその間に着替えててヨ!ウヒョヒョ☆」

「おお、そうか、そしたらラウルの兄ちゃんのことはスパイキー達に任せるとするか」


 スパイキーとヨーキャがラウルのお迎え?に立候補し、バッカニアもそれを了承する。

 このヴァイキング道場には様々な施設があり、内部の作りに明るくないレオニス達がラウルを探すよりも、幼い頃からヴァイキング道場に通っていたスパイキーとヨーキャの方が迷わずラウルを探せるだろう、という判断からだ。


 それに、スパイキーとヨーキャは普段着のまま駆けつけたから改めて着替える必要はないが、ハンザ達はガッツリ道着なのでどこかに出かけるならば着替えなければならない、というのもある。

 ちなみにバッカニアは冒険者仕様の格好だが、レオニスとの戦いで散々汗をかいたのでこちらも着替えたいらしい。

 バッカニアが改めてレオニスに話しかける。


「そしたらレオニスの旦那達はどうする?」

「ここでぽけーっと待ってても仕方ないから、スパイキー達についていくとするか」

「そうだな、そしたら待ち合わせは裏門でいいか?」

「おう、俺達はそれでいいぞ」

「じゃあ、スパイキー達といっしょにラウルの兄ちゃん達と合流したら、裏門で待っててくれ。裏門にはうちのわんこやカラスがいるから、そいつらと遊んでてくれりゃいいからよ」

「はいよー。じゃ、また後でな」


 こうしてレオニスとライトはスパイキー達の後をついていき、バッカニア達は各々私服に着替えるべく更衣室に向かっていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 スパイキー達の案内で、厨房のある方向に進むライト達。

 心なしか、香ばしい匂いが漂ってくるような気がする。

 そしてその香ばしい匂いは、厨房に近づくにつれてだんだんと強くなっていき、皆心の中で『あ、これはラウルが何か焼き菓子でも作ったな』と考えていた。


 そして一行の先頭を歩いていたスパイキーが厨房の扉を開くと、中は香ばしいクッキーの匂いに満ちている。

 だがしかし、どういう訳かそこには誰もいなかった。


「……あれ? 誰もいない?」

「どこかに出かけちゃったのかな? カナ?」


 スパイキーとヨーキャがキョロキョロと厨房内を見回すも、そこにはラウルどころか他の道場関係者すらいないではないか。

 てっきりここにいるものだと思っていたのに、宛が外れて戸惑うスパイキー達に、ライトは厨房の調理台を見てレオニスに声をかけた。


「レオ兄ちゃん、これ……」

「ン? こりゃ何だ、クッキーか? ラウルが作ったクッキーにしちゃ、かなり作りが小さいが……まだ温かいな」

「多分裏庭のカラスさん達用に作ったものなんじゃないかな?」

「あー、そうかもな……これを四つくらいに割れば、ちょうどたまごボーロくらいの大きさになりそうだしな」


 調理台の上に置かれているのは、ラウル達が焼いたドングリクッキー。

 皿に乗せられているのは一番新しく焼かれたもので、その上にレオニスが手を翳すと温かさがかなり残っている。

 そのクッキーをスパイキーとヨーキャも覗き見て、ライトの意見に賛同する。


「あー、これ、マムがカラス達のおやつによく作ってたドングリクッキーだ」

「だよね!あー、懐かしい匂いー。ボク達もバッカ兄といっしょに、このドングリクッキーをカラスの皆によくあげてたもんネ!ウヒョヒョ」


 スパイキーとヨーキャがドングリクッキーを一枚づつ手に取り、懐かしそうにその匂いを嗅いでいる。

 バッカニアは実家で飼っているわんこ、エイリークのお世話係だったので、バッカニアのわんこの散歩にスパイキーとヨーキャもよくついていったものだった。

 その時に、わんこと同じく裏庭で飼われているカラス達にもよくおやつを振る舞っていたのだ。


 スパイキー達のそうした話を聞き、レオニスが一つの推測を立てる。


「そっか……ならラウル達は、今頃裏庭でカラス達に出来たてのクッキーを差し入れしてるのかもしれんな」

「あー、そうかも!ラウルの性格なら、出来たてのクッキーをカラスさん達にも食べさせてあげたいって思うはずだもんね!」

「そゆこと。……そしたらスパイキー、ヨーキャ、ひとまず裏庭がある裏門に行くか」


 レオニスの推測に、ライトも明るい声で同意する。

 このクッキーがカラスのために作られたものなら、きっとラウルのことだ、カラス達に出来たての美味しさを味わってもらいたい、と考えるはずだ。

 ラウルの性格や行動を知り尽くした二人だからこそ、導き出せた推測である。

 そしてスパイキー達も、レオニスの言葉に即時頷く。


「そうだな、ここには誰もいないし」

「だねー。ここで待ちぼうけしてるより、ちゃちゃっと裏庭を見に行った方が早いヨね!キシシ」

「もし裏庭にもいなかったら、手分けして探せばいいからな。じゃ、行くか」


 カラス達がいるという裏庭は、ちょうどバッカニア達との待ち合わせ場所にもなっている裏門のすぐ近く。

 こうしてレオニス達は、厨房から裏庭に向かっていった。

 レオニスの出稽古も無事終わり、今度はラウル達との合流です。

 前回はラウルの方から逐一道場の様子を伺っていましたが、毎回毎度そうとは限りません。脳筋のレオニスが戦いに没頭していたら、それこそ終了するまで一体何時間待たされるか分かったもんじゃありませんから(*´・ω・)(・ω・`*)ネー

 かといって、わざわざ調理台の上に置き手紙で行き先を残しておくというのもあまりに不自然なので、無言で出かけさせることに。

 まぁね、如何にヴァイキング道場が広大な敷地でもね、探せないほどの迷宮ではないはずなので(´^ω^`)

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