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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
邪竜の島討滅戦に向けて

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第1145話 ヴァイキング道場の慶事

 ウルスとケリオンの歓迎会の翌日。

 この日もライト達は朝早くから出かけていた。

 行き先はもちろん、前日の夜に話し合いで決まったホドの街である。


 ライトとレオニス、ラウルとマキシ、四人に加えてミニサイズに変化したウルスとケリオン、総勢六名で冒険者ギルド総本部に向かう。

 ウルスはレオニスの右肩に、ケリオンはライトの左肩にそれぞれ留まっている。

 他の八咫烏達同様、ミニサイズになって三本足さえ隠せばほぼほぼ文鳥にしか見えない。


 そうして冒険者ギルド総本部に入ったライト達。

 朝イチの喧騒程ではないものの、そこそこの人がいて結構賑わっている。アクシーディア公国生誕祭が近いためか、早めにラグナロッツァ入りする冒険者達も多いようだ。

 そうした賑わいの中、ライト達はあっという間に馴染みの冒険者達に囲まれた。


「よう、レオニス、久しぶりじゃねぇか!」

「ラウルの兄ちゃんも相変わらずカッコいいな!」

「お、今日は坊っちゃんもいっしょにお出かけか?」

「こっちのちっこいのは坊っちゃんの友達か?」


 ライト達に向けて、気軽に声をかけてくる冒険者達。

 それらの言葉に「おう、久しぶりー」「お前らの装備だって結構いいじゃねぇか」「はい、今日は皆でお出かけなんです!」「ぼくだけじゃなくて、レオ兄ちゃんやラウルともお友達なんですよー」等々、適宜答えている。

 そして冒険者の誰かが、ウルスとケリオンのことも目敏く見つけた。


「お、今日も黒い文鳥をお連れか?」

「ああ、今日連れてるのはこれまでの文鳥達の父親と兄弟だ」

「そうか……相変わらずレオニスの周りは野郎パラダイスなんだな」

「うッせーよ」


 レオニスの肩に手を置きながら、目を閉じフッ……とニヒルな笑みを浮かべる冒険者仲間達。

 レオニスの周辺に色気のイの字もないことを憐れんでいる訳だが、実はそういう彼らも全く同じ境遇だったりする。

 いわゆる『同類相憐れむ』というやつだ。

 しかし、レオニスやライトの肩に乗っている文鳥もどきを眺めては「文鳥、可愛いよなー」「俺も今度飼おうかなー」と口々に言うあたり、根は決して悪くない連中なのである。


 そうして冒険者仲間と一頻り戯れた後、ライト達は冒険者ギルド所有の転移門でラグナロッツァからホドに移動していった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ホドの街に移動し、早速ヴァイキング道場に向かうライト達。

 その道中で、ライト達はウルス達に今向かっている場所の説明をしていた。


「これから行くヴァイキング道場ってのは、人々に剣術を教える場所なんですよー。でもって、レオ兄ちゃんの冒険者仲間の実家でもあるんです」

「ほう、剣術ですか。我ら八咫烏には基本的に無縁のものですが、人化の術を会得すれば学ぶ価値は大いにありましょう」

「ですよねー。鳥の時は別に剣術なんてなくても問題ないですけど。人化の術で人里に出てこれるようになったら、護身のためにも剣術を覚えておいて損はないですよねー」

「ですね。ならば我らも、今日は人族の顔をただ眺めるだけでなく、達人達の剣術を(つぶさ)に見て学ばせていただきましょう!」


 ライトとケリオンが会話している傍で、レオニスとウルスもまた話をしていた。


「ヴァイキング道場は、八咫烏を祀っていてな。一門の家紋に三本足のカラスを用いているくらい崇めているんだ」

「ほう、それは我らにとって実に光栄なことですな」

「でな、こないだフギンやムニン達の人化の術の成果を俺達の前で見せてもらっただろ? あの時のムニンの人化の術の参考になった人物が、ヴァイキング道場の跡取り息子なんだ」

「おお、ムニンの人化の術の元となった人物がいるのですか!」

「ああ、せっかくだから今日そいつとも会っていくといい。ムニンがそいつを手本とした理由がよく分かるだろう」


 今から行く先にムニンの人化の術のモデルがいると聞き、ウルスの顔が驚きに満ちる。

 そのモデルであるコルセアに実際に会えば、ムニンの人化の術の元であることがすぐに分かるだろう。

 そしてラウルとマキシも二人で話していた。


「そのヴァイキング道場ってのは、カラスを番で三組飼っていてな。道場の裏庭にいるから、マキシもカラス達と会っていくといい。前回ムニンとトリスといっしょにヴァイキング道場に行った時に、カラス達が頭を垂れてたぞ」

「そうなの!? 人里に住んでいるカラスでも、僕達の正体が分かるんだ……」

「そこら辺はきっと、本能的に感じ取ることができるんだろうな」


 ヴァイキング道場でカラスの番を三組飼っていることを、ラウルから聞いたマキシがびっくりしている。

 人里で長らく飼われている動物は、野性を失うものなのではないか。そう思われがちだが、少なくともヴァイキング道場のカラス達にはそれは当て嵌まらないらしい。


 それぞれが道中で会話しているうちに、ヴァイキング道場の長い塀が見えてきた。

 その長い塀の先にある正門に辿り着き、レオニスが先頭を歩き全員で中に入っていった。


 門を潜ると、道場がある方向から「やーーーッ!」「ハァァァァッ!」という気合いの入った掛け声が多数聞こえてくる。

 日曜日の午前中だというのに、このヴァイキング道場は朝から多くの門下生達の稽古で大賑わいしているようだ。


 ひとまず本館のある方に向かって歩いていくと、数人の門下生が駆け寄ってきた。

 レオニス達の姿を見つけて、慌ててすっ飛んできたのだ。


「レ、レオニスさん!こ、こんにちは!」

「ようこそヴァイキング道場へお越しくださいました!」

「ハンザ先生やコルセア師範達は、レオニスさんのご来訪をご存知なので!?」


 次々にレオニスに挨拶と質問を浴びせかける門下生達。

 レオニスがこのヴァイキング道場で特別稽古をつけたのは、去年の八月下旬。ライトの夏休みが終わる直前のことだった。

 そして今すっ飛んできた門下生は、その時にレオニスの稽古を受けた者達らしい。

 あの特別稽古からまだ半年も経っていないだけに、レオニスの顔や存在感は未だに強烈に残っていると見える。


「あー、実はこないだと同じでな、今日もフラッと来たんだ。だからハンザ達には全く事前連絡とかしてないんだ、すまんな」

「いいえ、大丈夫です!」

「そうですよ!ハンザ先生も師範達も喜んでくれると思います!」

「俺、今すぐハンザ先生達にレオニスさん達が来たことを知らせてきます!」

「おう、よろしくな」


 アポナシ訪問にも拘わらず、レオニス達を大歓迎すると言う門下生達。そのうちの一人など、レオニス達の来訪をハンザに知らせてくると言い、すぐさま猛ダッシュで駆け出していった。

 確かにこの場にハンザやコルセア達がいれば、きっと門下生達と同じことを言うだろう。

 自分達の訪問を歓迎するという門下生達の申し出を、ありがたく受けるレオニス。

 そしてレオニス達は、門下生達とともに本館に向かっていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 程なくして、ライト達はヴァイキング道場本館に入った。

 こぢんまりとした建物だが、質実剛健を思わせる風格と佇まいである。

 この本館は和風の建物なので、ライト達は全員玄関で靴を脱ぎスリッパに履き替える。

 ライトやマキシはともかく、レオニスとラウルはロングブーツを履いているので着脱に手間取りそうなものだが、そこは外側側面の金属製ファスナーでちゃちゃっとブーツを脱いでいた。


 そして正面玄関や道場の入口など、本館内の至るところに八咫烏を象った家紋があしらわれているのを、ケリオンはもとよりウルスも感じ入った様子で見入っていた。


 そして応接間に通されたライト達。

 応接間の中には、ハンザがソファに座っていた。


「おお、レオニス君!久しぶりだな!」

「去年の夏以来か。ハンザも変わらず元気そうで何よりだ」


 レオニスの姿を見た途端、ハンザがソファから立ち上がり来客達を歓迎する。

 立ち上がったハンザの背丈は、レオニスとほぼ変わらない。

 だが、ヴァイキング流剣術を極めた武道の達人の見事な体躯は圧がすごく、普通の人間ならハンザと正面で対峙しただけで怖気づいてしまいそうだ。


 しかし、レオニスがその圧に怯えることはない。

 旧知の友の笑顔の出迎えに、レオニスも笑顔で応える。


「コルセア達も元気にしてるか?」

「おかげさまでな、今日も年若い門下生達に熱心に指導してくれておる」

「そっか、そりゃ良かった。立派な跡取りがいて、ヴァイキング流剣術も安泰だな」

「ああ。しかも次男のアマロがもうすぐ結婚式を控えていてな。そっちの準備もそこそこ忙しいのだ」

「そうなのか!? アマロが結婚すんのか、そりゃ目出度いな!」


 ハンザがもたらした吉報に、レオニスも破顔しつつ喜ぶ。

 バッカニア達四兄弟は、これまで全員独身だった。その一抜けを果たしたのが、次男のアマロだという。

 兎にも角にも目出度い話に、レオニスが喜びながら言葉を続ける。


「そしたら俺も、アマロに何か結婚祝いをやらなきゃな!」

「おお、それはありがたい。天下の金剛級冒険者からの祝福とは、アマロにとってこれ以上の栄誉はなかろうて」

「後で何が欲しいか、アマロに直接聞くとするか!」

「レオニス君からの祝いなら、何でも喜ぶと思うぞ?」

「そこはほら、気持ちというかより喜んでもらえるものにしたいだろ?」


 アマロの結婚祝いで盛り上がるレオニスとハンザ。

 するとここで、ハンザがふと何かを思いついたような顔になる。

 そして徐にレオニスに話しかけた。


「……ああ、そうだ、今のアマロの話で思い出したんだが。ちょうど今、道場に珍しい人物が来ていてな。もし良ければ、レオニス君もそいつに会ってやってくれないか?」

「ン? 珍しい人物? そりゃ一体誰だ?」


 ハンザの話に、レオニスが首を捻りながら問い返す。

 レオニスに引き合わせたいと言うからには、全く対面したことのない者ではないのだろう。

 訝しがるレオニスに、ハンザが悪戯っぽく笑いながらさらに頼み事を重ねる。


「まぁ、行けば分かるさ。コルセア達にも道場で待つように言ってあるし、そのついでと言っちゃ何だがまたうちの連中を扱いてやってくれるとありがたい」

「そうか、コルセア達をあっちで待たせてんのか。なら早速行かんとな」


 ハンザの誘いを快く受けたレオニス。

 そしてすぐさまライト達に声をかけた。


「俺はここの道場でしばらく稽古をしてくるが、ライト達はどうする?」

「ぼくもまたレオ兄ちゃんの稽古が見たーい!ウルスさんとケリオンさんも道場の稽古を見たいだろうし!」

「おお、そうだな。ラウルとマキシはどうする?」

「俺はここの厨房で二回か三回、たまごボーロを焼かせてもらってから裏庭のカラス達に会いに行くかな」

「僕もラウルといっしょに、お料理と裏庭のカラスさん達に会いたいです!」

「そっか、それもいいな」


 ライト達の要望を聞いたレオニス、どの意見にも賛同し頷く。

 ライトの言葉を聞いたウルスは、レオニスの肩から離れてライトの右肩に移動した。

 その様子を見て「おお!この黒い文鳥達はレオニス君の言葉が分かるようだな!実に賢い子達だ!」と大絶賛している。


「そしたらラウル、マキシ、料理と裏庭散策が終わったらまた道場に来てくれ。前みたいにあまり時間が過ぎてたら、一声かけてくれていいからな」

「了承」

「分かりました!」


 こうして各自の行き先が決まり、ライトとレオニス、そしてウルスとケリオンはハンザとともに道場に向かい、ラウルとマキシは厨房にそれぞれ分かれていった。

 ホドの街、そしてヴァイキング道場の二度目の訪問です。

 ホドの街が初めて拙作に登場したのは第764話、そしてヴァイキング道場が出てきたのは第765話のこと。

 どちらも去年の二月末のことで、あれからもう丸一年以上が経過したのねー……と思う作者。これはまぁ、たまーにしか出番のないキャラや場所が再登場する度に思うことなのですが。

 こうして拙作とともに作者も歳を重ねていくのですねぇ…( ´д` )…


 嗚呼でも、サブタイにもなってる慶事、バッカニアの次兄の結婚は拙作でも珍しい祝い事なのでちょっぴり嬉しかったりします(・∀・)

 これを機に、拙作にも恋愛ムーヴメントが!!……って、絶対に来ないんだろうなぁ_| ̄|●

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