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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
邪竜の島討滅戦に向けて

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第1136話 賑わうケセドの街

 ライトがスレイド書肆に寄り道した翌日。

 ライトのラグーン学園三学期が始まってから、初めての土曜日を迎えた。

 ライトは朝早くに起きてルーティンワークを早々に終え、鼻歌交じりのウッキウキで出かける支度をしている。


 もちろん今日出かける行き先は決まっている。

 先日雷の女王から託された『風の女王に【雷の乙女の雫】を渡す』という任務を遂行するため、フラクタル峡谷に行くのだ。

 今日のお出かけメンバーは三人。ライト、レオニス、そしてラウルである。


 ライトはまず最初に、ラウルを釣ることにした。

 フラクタル峡谷最寄りの街ケセドには、蛇型魔物エヴィルヴァイパーの干し肉という名産品があるのだ。


「ねぇラウル、今度の土曜日に風の女王様に会いに行きたいんだー。そのためにはケセドの街を経由しなきゃならないから、ラウルもいっしょに行こうよ!」


 ライトのこの誘い文句は、食材マニアのラウルにとって一撃必殺のイチコロ確定。一も二もなく「おう、いいぞ」という了承の言葉をラウルの口から引き出すことに成功していた。


 そしてレオニスの場合は、風の女王と青龍の様子を知りたくて同行に賛同した。

 というか、この日は一月十二日。四日後にはアクシーディア公国生誕祭が始まる。

 そうなったらレオニスはしばらく冒険者ギルド総本部に詰めなきゃならないし、出かけるならその前に!という訳である。


 三人はラグナロッツァの屋敷で朝食を摂った後、程なくして冒険者ギルド総本部に向かった。


「風の女王様と青龍、あれから元気にしているかなぁ。辻風神殿で仲良く暮らしてるといいけどなぁ」

「まぁなぁ、前回の様子だと大丈夫だろうとは思うがな。それに、雷の女王から預かったアレを渡せば、風の女王もきっと喜んでくれるさ」

「……だよね!」


 道中で風の女王と青龍がどうしているか、心配するライト。

 ライトとレオニスがフラクタル峡谷を訪ねたのは、今からちょうど二週間前のこと。

 それから二週間が経ち、双方仲良く親睦を深めていてくれるといいなぁ、と思うライト。


 そんなライトの呟きに、レオニスが呑気な口調で答える。

 レオニスの楽観的な答えに、心配そうにしていたライトも励まされて明るい顔になっていく。

 こういう時、レオニスの楽観的な性格に救われる者も多い。


 そしてラウルはラウルで、釣られた餌のことが今から気になって仕方がないようだ。


「風の女王と青龍がいる、そのフラクタル峡谷?からケセドに戻ってから昼飯にするんだよな?」

「うん、そうだねー。そしたらフラクタル峡谷に行く前に、受付嬢のクレスさんにお昼ご飯のオススメのお店を聞こうか」

「おお、それいいな!」


 ライトの提案に、ラウルの顔がパァッ!と明るくなる。

 地元住民代表である冒険者ギルド受付嬢のオススメならば、絶対に外すことはない。この手の情報は、地元住民に聞き込みするに限る。


 そんな話をしているうちに、三人は冒険者ギルド総本部に到着した。

 三人はいつものように切符代わりの魔石を支払い、奥の事務室にある転移門でケセドの街に移動していった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 そうしてラグナロッツァからケセドに移動したライト達。

 事務室から出て表の広間に行くと、先日訪ねた時より明らかに賑わっていた。

 多くの人で賑わう広間の中を、ライト達は泳ぐようにして窓口に進んでいく。

 常時二つ開いている窓口のうち、クレスの窓口に並んだライト達。しばらくして、ライト達の番になった。

 先頭に立っていたレオニスが、クレスに向けて声をかける。


「よう、クレス。二週間ぶり」

「あ、レオニスさん!二週間前のその節には、大変お世話になりましたぁ!」

「クレスさん、こんにちは!」

「あらあら、ライト君もいらしてたんですかぁ。ようこそケセドへ!……って、そちらの黒尽くめの御仁は……?」


 二週間ぶりに再会するレオニスとライトに、クレスが嬉しそうに微笑む。

 だがその二人の恩人以外にもう一人、冒険者の出で立ちっぽい黒尽くめの衣装を着た者がいることに気づいたクレス。

 それが何者かを把握するべく、早速レオニスに視線を遣り無言のうちに解説を求めた。

 クレスの視線を受けたレオニス、早速彼女にラウルを紹介し始めた。


「ああ、こいつの名はラウルと言ってな。もとは俺のラグナロッツァの屋敷の執事をしてたんだが、先日冒険者登録もして今じゃ俺の立派な同業者だ」

「ラウル……ああええ、はいはい!貴方がクレエ姉さん達が崇拝して止まない『殻処理貴公子様』なのですね!」


 レオニスにラウルの紹介をされたクレス。

 ラウルの面白二つ名を口にしながら、実に朗らかな表情でラウルを見つめている。

 クレア十二姉妹の間では、ラウルはもうすっかり『殻処理貴公子様』として名を馳せているようだ。


 冒険者につけられる二つ名とは、普通ならそれなりに格好良い響きや威厳ある言葉が用いられるはずなのだが。ラウルの二つ名に限っては全く当て嵌まらない。

 とはいえ、その由来が各地の殻処理問題を積極的に解消し続ける活躍ぶりからきているので、どう転んでも格好良い二つ名になる訳がないのだが。


 そしてこの『殻処理貴公子様』という面白二つ名が、ほぼ定着してしまっていることにレオニスがくつくつと笑う。


「ラウル……お前にも早々に二つ名がつけられるとはなぁ。冒険者として着実に成長しているようで何よりだ」

「お褒めに与り光栄だ。エンデアンやツェリザーク、ネツァクの殻処理依頼では俺も散々稼がせてもらってるし、何より皆の役に立ててるのが一番デカいからな」

「その意気だ。その調子でこれからも頑張れよ」

「おう、任せとけ」


 ラウルの著しい成長に、レオニスも思わず頬が緩む。

 冒険者の大先輩であるレオニスの激励をもらったラウルは、クールな表情そのままにクレスに問いかけた。


「受付の姉ちゃんに、一つ聞きたいことがあるんだが」

「はい、何でしょう?」

「このケセド名物、エヴィルヴァイパーの干し肉を食える美味い店を教えてもらいたい。是非とも昼飯に食っていきたいんだ」

「エヴィパ肉の美味しい定食屋さんですねー、少々お待ちくださいねぇー」


 ラウルのリクエストを聞いたクレスが、窓口の席の引き出しから『ケセドの見どころ満載!観光マップ』を取り出した。

 そしてベレー帽からスチャッ!とペンだけを取り出し、観光マップの地図の中にいくつか印をつけていく。


「こちらが私のオススメのお店ですぅ。どこもボリューム満点で、お味もとても美味しい人気のお店ばかりなんですよー」

「おお、こんなにあるのか。こりゃ何度もこの街に足を運ばなきゃならんな」

「ええ、是非とも全部のお店を制覇してくださいねぇー♪」


 観光アドバイザーと化したクレス、実に見事な営業トークでラウルの心を鷲掴みにしている。

 ラウルが観光マップに見入っている間、今度はレオニスがクレスに話しかけた。


「ところでクレスよ、今日は何だかかなり賑やかなようだが。何かあったのか?」

「あ、それがですねぇ、ここ最近コルルカ高原で青龍様の御姿が何度か目撃されてまして。その噂を聞きつけたのか、新たに出現した青龍様を一目見たい!という冒険者が急増しているんですぅ」

「そうなのか……一目見るだけで済めばいいがな?」


 ケセドが以前より賑やかになった理由。それは辻風神殿の守護神、青龍の出現によるものだった。

 もちろんケセドの街が賑わって活気が出るのはいいことだ。

 しかし、レオニスとしては手放しでそれを喜ぶことはできない。青龍を一目見たい、という者の中には、あわよくば青龍を狩って大儲けしよう!と考える不届き者がいないとも限らないからだ。


 そうした懸念により、少しだけ険しい顔になるレオニス。

 そんなレオニスに、クレスが努めて明るい声で答える。


「レオニスさん、青龍様のことを心配してくださっているのですか?」

「そりゃあな。氷の洞窟の女王の件もあるし、青龍を素材扱いして生け捕りにしようと考える輩が出てこないとも限らんだろ?」

「確かにそうなんですが……しかし今のコルルカ高原、特にフラクタル峡谷は常時ものすごい強風が吹いていてですね。腕に覚えのある冒険者でも、とてもじゃないけど峡谷内に入るのは至難の業だそうです」

「そうなのか?」

「はい。これは私個人の推測なのですが……その強風は、風の女王が青龍様をお守りするために吹かせているのではないかと」

「ああ……確かにそうかもな」


 クレスの解説に、レオニスも頷きながら納得する。

 辻風神殿の守護神、青龍は二週間前に生まれたばかり。そしてその生まれたばかりの守護神のことを、風の女王は殊の外喜び歓迎していた。

 そんな風の女王なら、きっと青龍を全身全霊全力で守るだろう。


「レオニスさん達も、これからフラクタル峡谷に向かうのですか?」

「ああ。風の女王に会う用事ができたんでな、今から辻風神殿に行くところだ」

「そうでしたか。そしたら是非とも風の女王と青龍様に、よろしくお伝えくださいますか? そして、此度青龍様が生誕しましたことを……ケセド住民一同、心よりお慶び申し上げます、ともお伝えいただけると嬉しいです」

「おう、ちゃんと伝えよう」


 青龍の生誕を心より喜んでいるクレスからの伝言依頼を、レオニスは快く引き受ける。

 長らく不在だった辻風神殿守護神の誕生は、ケセドの街にとっても歓迎すべき慶事だ。相棒である風の女王の精神的な安定ももたらされるし、青龍の姿を見たさに人々が集うのも地域活性化に繋がるのだから。


「風の女王や青龍様と知己を得たレオニスさん達なら、フラクタル峡谷に行っても大丈夫だとは思いますが……それでも決して無理はなさらないでくださいね?」

「ああ、心配してくれてありがとうな。じゃ、早速行ってくるわ」

「言ってらっしゃーい、お気をつけてー!」


 聞きたいことを一通り聞き終えたレオニスが、窓口に背を向けて出口に向かう。

 ライトもクレスに「いってきまーす!」と挨拶をしながら出口に向かい、ラウルは無言のままレオニスの後を追う。

 ライト達の背が見えなくなるまで、クレスは席から立ち上がったまま受付窓口でずっと見送り続けていた。

 ライトの二年生三学期初の週末到来です。

 作中時間では一月十二日。もうすぐ迫るアクシーディア公国生誕祭は十六日から始まるので、その四日前という超直近なんですが。

 そんなの関係ねー!とばかりに土日は冒険三昧なのです(^ω^)


 今回の行き先はフラクタル峡谷の辻風神殿。第1091話以来で45話ぶりという、拙作にしてはかなり早めの再登場です。

 初めて会った時にはかなーりやさぐれていた風の女王ちゃん。今はどんな生活を送っているのでしょう?

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