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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
邪竜の島討滅戦に向けて

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第1133話 風の姉妹

 ラウルがライト達と合流し、パラスとともに焼き野菜の食べ比べを堪能するところから少し時は遡る。

 自前の野菜を相手に一心不乱にカットしまくっている間、ライトは二人の女王とパラスとのんびり話をしていた。


「全く……あの妖精の英雄には驚かされてばかりだ」

『本当にねぇ……木の妖精が火と炎の加護を持つなんて、私達ですら想像もしなかったことだわ』

『エルちゃん様や、特にドライアド達だったら話を聞いただけで卒倒しそうよね……』

「アハハハハ……」


 パラスが先程目撃したラウルの驚きの進化、火属性の加護を二つも得たという話を聞き、女王達も本当にびっくりしている。

 この天空島は、天空樹ユグドラエルを始めとして木の精霊ドライアドが多数住まう。いわば木々の楽園だけに、二人の女王とパラス以外は火そのものを忌避するのだ。


『本当に、よく無事に帰ってこれたわね。火の女王達のところには、いつ行ってきたの?』

「炎の洞窟とエリトナ山には、一昨日出かけたばかりでして。ラウルも強くなりたくて、本当にすっごく頑張ったんですよー。炎の女王様のいる間では、入ろうとした途端に気絶しちゃいましたけど」

『気絶しちゃったの!?……ああ、でもそうね、そこは気絶しただけで済んでまだマシなんでしょうね……』

「はい。でも、ラウルが気を失っている間に炎の女王様が加護を授けてくれたので、逆に良かったですけどね!」


 ライトが語る一昨日の炎の洞窟での冒険譚に、女王達が目を丸くして驚く。

 そんな女王達の横で、パラスが感じ入ったように目を閉じながらうんうん、と頷いている。


「力を得るためにそこまで貪欲になれるというのは、実に素晴らしいことだ。その姿勢は我らも見習わなければな!」

『そうね。力を持たなければ、守りたい者を守ることはできないものね』

「ええ。我らもラウルに負けてはおられません。女王様方やグリン様、ヴィー様、エルちゃん様にドライアド達、天空島の皆を守れるようにますます精進する所存です!」


 ラウルの向上心を褒め称える天空島の高位の存在達。

 ライト達のいる場所から少し離れたところで、野菜をズドドドド……と猛烈な勢いで切り続けているラウル。一心不乱過ぎて、とてもじゃないがライト達の会話など全く聞こえていない。

 しかしライトは、ラウルの直向きさ、常に全力であろうとする姿勢を女王達に褒められたことが、とても嬉しかった。


 そしてこの話の流れで、雷の女王がライトに問いかけた。


『そしたらライト、貴方やレオニスももうかなり強くなっているんじゃない? だってほら、私達以外のたくさんの女王達にも会ってきたでしょう?』

「そうですねー……炎の女王様から始まって、水、火、闇、海、光、雷、氷、地……あ、こないだ風の女王様にも会えました!」

『まあ、風の姉様にも会えたの!? 風の姉様はお元気にしてた!?』


 雷の女王の問いかけに答える応じ、ライトが指折り数えながら対面済みの女王を挙げていった。

 すると、その中で一番最後に出てきた風の女王に、雷の女王が殊の外嬉しそうに反応したではないか。

 雷の女王の話によると、このサイサクス世界では雷属性は風属性の一種に数えられるという。

 風属性の本家本元である風の女王が姉で、その分家筋に当たる雷の女王は妹になる、ということらしい。


 あー、確かにゲームだと雷が風属性に含まれるのはよくある話だよなぁ。浮世絵や屏風のモチーフなんかでよくある風神と雷神だって、セットになっているもんだし……とライトは内心で納得する。

 とはいえ、今の風の女王と雷の女王を並べたら、絶対に雷の女王の方がお姉さんに見えるだろうな、とも思うが。


 風の女王の安否を問う雷の女王の顔はワクテカしていて、姉はきっと元気にしているに違いない!という期待に満ちているのがライトにも伝わってくる。

 だが、先日ライト達が初めて会った風の女王は、雷の女王が思っているような幸せな生活を送ってはいなかった。

 ライトはおずおずとしながらも、その事実を雷の女王に伝える。ここで下手に隠したところで何もいいことはない、と思ったからだ。


 風の女王は一年半ほど前に代替わりしたこと、今の女王は前の女王をとても慕っていたこと、そのため先代女王との別離に毎日悲しみに暮れていたこと。しかし神殿守護神の卵を見つけて無事に孵化させたこと、その卵からは青龍が生まれたこと、これからは辻風神殿で青龍とともに暮らすことなどを話していった。


『そんな……風の姉様が代替わりしたばかりだったなんて……』

「ぼく達も、フラクタル峡谷に行って初めて知ったんです……だけど、辻風神殿の守護神の卵から青龍が生まれたんです。だからきっと、風の女王様はもう寂しくないと思います」

『そうね……ともに生きる守護神がいてくだされば、風の姉様の悲しみも……いつしか薄れてくれる、わよね……』


 姉と慕う風の女王の悲しみを知った雷の女王。

 いつも闊達な彼女の顔は翳り、みるみるうちに悲しみに染まっていった。


 彼女達属性の女王は、高位の存在ではあるが万能ではない。

 彼女達が生成した勲章などからその存在を感知することはできても、普段どこで何をしてるかなどまでは分からない。

 精霊の目を通して外界の出来事を見るにしても、どうしたって知ることに限りがあるのだ。


 ライトの話によれば、それまで悲嘆に暮れていた風の女王の環境も守護神誕生により一変したという。

 確かにそれまで不在だった守護神が無事出現したとなれば、その影響は計り知れない。ひとりぼっちだった風の女王にとって、青龍は心身ともに支えてくれる大事なパートナーとなってくれるだろう。

 明るい未来を感じさせる朗報に、一度は悲しみに染まりかけた雷の女王の瞳が潤む。


『ライト、本当にありがとう。私もいつか、風の姉様と青龍様にお会いしたいわ』

「きっと会えますよ!次に風の女王様にお会いできたら、雷の女王様が会いたがっていたこともお伝えしておきますね!」

『ありがとう!ここにはいないけど、青龍様の孵化に尽力してくれたレオニスにもお礼を言っておいてね!』

「はい!」


 笑顔でライトに礼を言う雷の女王。

 その雷の女王の眦から一粒、また一粒と涙が溢れる。そして彼女の頬を伝い、地面に【雷の乙女の雫】が落ちていった。

 すると、雷の女王の横にいた光の女王が地面に落ちた【雷の乙女の雫】を拾い上げて、ライトに差し出した。


『ライト……次に風の女王に会いに行く時には、この【雷の乙女の雫】を風の女王に届けてくれるかしら?』

「は、はい、もちろんいいですが……これを届けることで、何かを伝えることができるんですか?」

『ええ。私達が生み出す乙女の雫、特に涙でできた雫には他者を労り傷ついた心を癒やす力があるの。風の女王にもきっと―――いえ、絶対に雷の女王の気持ちが伝わるはずよ』

「……この雫には、そんな力があったんですね……」


 乙女の雫の持つ未知の力を知り、ライトが驚いている。

 いつも気軽におねだりしていたのが申し訳なくなってくるくらいだ。

 光の女王から託された三粒の【雷の乙女の雫】を、ライトは急いでアイテムリュックの中に仕舞う。

 そして改めて光の女王と雷の女王に話しかけた。


「次にいつ風の女王様に会いに行くかは、全く決まっていませんが……今お預かりした雫は、必ず風の女王様にお届けします!」

『ありがとう。よろしく頼むわね』

「はい!」


 ライトの快諾に、雷の女王がライトを抱きしめる。

 光の女王もまたライトの頭を撫でて、感謝の意を示している。

 二人の女王からのご褒美?に、ライトは顔を真っ赤にさせつつ内心で歓喜していた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 そしてラウルがライト達と合流し、思う存分焼き野菜の食べ比べをした後、バーベキュー大会のお開きとなった。

 バーベキュー台の片付けを始める天使達に、ライトとラウルも食器類の片付けに勤しんでいる。


 一通り片付けを終えたライトとラウル。

 ログハウス横の転移門近くで、二人の女王やパラス達大勢の天使達に別れの挨拶をする。


「光の女王様、雷の女王様、パラスさん、天使の皆さん、今日はとても楽しかったです!」

『こちらこそ、とても美味しいお野菜を食べさせてもらって楽しかったわ。ラウル、ライト、ありがとう』

『ええ!私も風の姉様のお話を聞けて、本当に嬉しかったわ!ライト、例の件、よろしくね!』

「はい!ラウルを誘って近いうちに行こうと思います!」

「?????」


 感謝の言葉の中に、突然己の名が出てきたことにラウルがきょとんとしている。

 ライトが言う『ラウルを誘って』というのは、風の女王が住まうフラクタル峡谷の最寄りの街ケセドにラウルとともに行く、ということだ。


 ケセドの名産品は、エヴィルヴァイパーの干し肉。

 ラウルは最近干し肉の調理方法の研究をしているので、エヴィパ肉が買えるケセドにお出かけしよう!と誘えば、一も二もなく食いついてくるであろうことは間違いないのである。


 ラウルは今日ここで話題になった風の女王の話は全く聞いていない。なので、後でまたちゃんと説明して、次の週末に早速出かけよう!とライトは内心で画策する。

 そうしてライト達は二人の女王と天使達に見送られながら、転移門で移動していった。

 第二回野菜焼きバーベキュー大会の裏で交わされていた、属性の女王達の新情報です。

 前にもどこかの後書きで書きましたが、同属性の姉妹と呼べる相手がいない女王にも何とかして姉妹を作ってやりたいなぁ……と作者は常々思ってまして。


 今のところ直系の姉妹がいないのは、闇の女王と光の女王、地の女王と風の女王、この四者。

 光と闇は派生が困難&光の女王には雷の女王がいる&闇の女王は性格的にクロエがいるだけでOKそう、てことでひとまず除外。

 そして地の女王はまた後日何とかするとして。今ライト達がいる天空島の雷の女王は、雷属性が風属性の一部としてカウントされることが多いことに気づいた作者。

 この機を逃す手はないでしょう!゜.+(・∀・)+.゜……てな訳で、雷の女王=風の女王と同属性の姉妹関係にあることにしました(^ω^)

 悲しみに暮れていた風の女王にも、いつか雷の女王と会わせてやりたいなぁ( ´ω` )

 ……って、きっと次のライトの週末はこれになるんだろうな。早くも次の週末のネタが確定です♪>∀<

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