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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
邪竜の島討滅戦に向けて

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第1132話 第二回野菜焼きバーベキュー大会 in 天空島

 新しいバーベキュー台に炭を運び終えたラウル。

 別の調理台代わりの大きなテーブルを出し、カタポレン産とラグナロッツァ産のの野菜を切り始めた。

 目にも留まらぬ早業で各種野菜を適宜カットしていくラウル。

 ラウルの作業テーブルの前には、早速大勢の天使達が列を成していた。


「ラウル先生のお野菜、すっごく久しぶり!」

「あのお野菜をまた食べられるなんて、今日は何て素敵な日なんでしょう!」

「ラウル先生、たくさんおかわりするのでよろしくお願いしますね!」


 キラキラと輝く笑顔の天使達が、カット済み野菜入りのボウルを持っていく度にラウルに話しかける。

 その実に嬉しそうな顔に、ラウルも野菜を切りながら「おう、皆腹いっぱい食べてくれ」等々笑顔で返事をしている。


 ラウルがカットしているのは、天使達が今焼いて食べているという野菜、トウモロコシ、じゃがいも、玉ねぎ、ピーマン、キャベツ、アスパラガスの他に、ニンジンやパプリカ、そして箸休め用の生野菜としてトマトとキュウリを追加で出している。

 ちなみに焼き野菜の定番の一つであるキノコは、今回出していない。

 何故ならライトに「キノコって、落ち葉や枯れ葉以外にも木から直接栄養をとって育つんだよね。天空島にキノコは存在しないようだし、万が一にもエルちゃん達がいる森に胞子が飛んじゃいけないから、天空島でキノコは出さない方がいいと思うよー」と言われたからだ。


 確かにキノコってのは、森に生えるもんだよな……エルちゃんやドライアド達が大事にしている木々に、俺が持ち込んだキノコの胞子が寄生しようもんなら洒落にならん……こりゃライトの言う通り、キノコ類は今後絶対に出さんようにしよう……とラウルは戦慄しながら心に誓う。

 それはバーベキュー会場に向かう道すがらに聞いた話だったが、ライトの助言のおかげで天空樹ユグドラエルや天空島の木々の平和が守られた。

 うちの小さなご主人様は、本当に先見の明がすごいよな!とつくづく感心するラウルである。


 そんなことを思いつつ、ひたすら野菜を切り続けるラウル。

 何を切ってもすぐに誰かが持っていき、テーブルの上にカット済み野菜のボウルのストックが溜まる気配など一向にない。

 百人以上の胃袋を満たすのは、生半可なことではない。


 そうして三十分ほどが経過しただろうか。

 未だにズババババ……とものすごい勢いで野菜を切り続けるラウルに、数人の天使が声をかけてきた。


「ラウル先生。私達が野菜切りをしますので、ラウル先生も少し休んでください」

「ン? いいのか?」

「ええ。私達はもうたくさん食べました!それに、ラウル先生もお野菜の食べ比べをなさるのでしょう?」

「まぁな、そのつもりではいる」

「ならばそろそろ交代しませんと!ラウル先生の食べ比べするお時間がなくなってしまいますよ?」

「そうか……それもそうだな」


 野菜切りの交代を申し出た天使達の言い分に、ラウルも頷きつつ納得している。

 ラウル自身は野菜切りに終始することに苦はないし、このまま続けていても問題はない。

 傍から見れば働き詰め以外の何物でもないが、料理が趣味どころか生き甲斐のラウルにとって野菜切りは労働のうちにも入らないのだ。


 しかし、自分が作った野菜と天空島産の野菜を食べ比べするなら、ゆっくりと時間をかけて味わいたい、とも思うラウル。

 せっかく良い機会に恵まれたのだ、慌てて口に詰め込んで飲み込むようなことはしたくない。

 それにはやはり、天使達の申し出を受けるのが一番である。


 ラウルは包丁を動かす手を一旦止めて、まな板の上にあるカット済み野菜をボウルに入れた。

 そして空間魔法陣を開き、マイ包丁を仕舞い込んでエプロンも外して軽く畳んでから仕舞う。


「そしたらお言葉に甘えて、俺も今から野菜の食べ比べをしてこよう」

「是非ともそうしてください!」

「私達が丹精込めて作ったお野菜を、お腹いっぱい食べてくださいね!」

「後は私達にお任せください!」

「ありがとう、後はよろしくな」

「「「はいッ!」」」


 天使達の心強い言葉を受けながら、ラウルはライト達がいるバーベキュー台の方に向かっていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「あッ、ラウル!おかえりー!」


 ラウルが近づいてきていることに真っ先に気づいたライト。

 にこやかな笑顔で万能執事を迎え入れる。

 その手にはいくつかの焼き野菜が乗った皿を持っていて、ライト達もまだ食べ比べしている最中のようだ。

 そして、ライトと同じバーベキュー台にいた二人の女王やパラスもラウルを歓迎する。


『おかえりなさい、ラウル』

『私達ばかり食べててごめんなさい、ささ、ラウルもこっちに来ていっしょに食べましょ!』

「ご苦労さまだったな。……よし、ラウルの分は特別にこのパラス様が、今から直々に焼いてやろう!」

『あ、そしたら私も手伝うわね!』


 光の女王や雷の女王、そしてパラスまでもがラウルを労い快く受け入れてくれる。

 絶世の美女達の心からのもてなしに、ラウルの顔も自然と綻ぶ。


 バーベキュー台の上には、様々な野菜が並べられている。

 パラスや女王達が熱心に野菜を焼いている間に、ラウルがライトに話しかけた。


「今焼いているのは、どっちの野菜だ?」

「えーっとねぇ、これはさっきパラスさんが持ってきたやつだから、天空島の畑でできたお野菜だよ」

「おお、そうか。ライト達ももう食べ比べしたのか?」

「うん!ラウルのお野菜と天空島のお野菜、両方とも食べたよ!どっちもすっごく美味しかったよ!」


 ラウルの質問に、ライトが適宜答えていく。

 ラウルが野菜切りを始めてから既に三十分が過ぎているのだ、ラウル以外の全員がもう野菜の食べ比べを終えたとみて間違いないだろう。

 今のラウルが最も気になるのはその味、そしてその評価だ。

 ラウルは若干ドキドキしながら、ライトに問いかけ続ける。


「味の方はどうだ? どっちが美味いとか不味いとかあるか?」

「ンー……どっちがどうってのは言えないかな。何しろどっちも美味しいし!」

「そ、そうか……」

「うん、ラウルも実際に両方食べてみれば分かるよ!」


 玉虫色の言葉で明言は避けるライト。

 するとここで、パラスがラウルに声をかけた。


「ラウルー、そろそろ第一陣が焼き終わるぞー。皿をこっちに持ってこーい」

「はいよー」


 パラスの呼び声に、ラウルがいそいそとパラスの横につき皿を渡した。

 ラウルから皿を受け取り、トングで次々と焼き上がった野菜を乗せていく。

 パラスのトング捌きも見事なもので、テキパキとした所作は実に堂に入っている。


「今焼いているのは、我ら天使達が育てた天空島産の野菜だ。まずは我らの野菜をとくと味わってくれ」

「ありがとう。パラス達の日頃の成果を見せてもらおう」


 湯気がほかほかと立ち上る、焼きたての野菜達。

 トウモロコシにじゃがいも、玉ねぎ、パプリカ、アスパラガス等々色とりどりの野菜を、ラウルは調味料を一切かけずに食べ始めた。

 目を閉じ無言のまま、もくもくと咀嚼するラウル。本当にじっくりと、一口一口を味わっているようだ。


 そしてラウルの表情が全く読めないことに、パラスが非常にやきもきとした様子で見守っている。

 しばらくして、ラウルの目がパッ!と開かれた。


「これは美味いな!俺やライトが育てる野菜ももちろん美味いが、天空島の野菜はそれとはまた違う美味さ、そして味わい深さがある」

「おお、それは本当か!?」

「もちろんだとも。もともと俺は嘘はつかんが、こと食べ物に関しては絶対に世辞は言わん」


 天空島産の野菜の味を絶賛するラウルに、パラスの顔が一気に明るくなる。

 そんなパラスの表情の変化に構うことなく、ラウルはさらに言葉を続ける。


「何と言うか、天空島産の野菜には鮮烈な清廉さを感じる。旨味で言えばあっさり寄りなんだが、噛めば噛む程に心地良い香りと美味さで全身が満たされていくようだ」

「そうだろうとも!この野菜達には、アクアの泉の水を毎日たっぷりと注いできたからな!それに、アクアの泉の水だけではないぞ? 我ら天使達の植物魔法だって、欠かさずかけ続けているのだ」


 ラウルの一流評論家ばりの論説に、パラスもますます目をキラキラと輝かせながらうんうん!と頷いている。

 野菜を育てるというのは、何気に大変なことが多い。

 毎日の水遣りはもちろんのこと、肥料を与えたり野菜を食い荒らす害虫や雑草の駆除をしたり、世話をしなければならないことがたくさんあるのだ。


 そしてそうした苦労は、他ならぬラウルが一番よく知っている。

 ラウルは野菜栽培の先達であり、この天空島に野菜栽培を広め定着させた伝道師でもあるのだから。

 パラス達の日々の苦労を、ここにいる誰よりも知るラウル。

 ラウルもまた大いに納得しつつ一口、また一口と野菜を食べていく。


「そうか……そんだけ愛情たっぷりに育てられた野菜だ、美味くならない訳がないよな」

「ああ!だが……今日改めて食べ比べをしてみて思った。やはりラウルの作る野菜は別格だ、とな」

「そうか? まあ、俺の作る野菜が美味いのは事実だが」

「ハハハハ!さすがラウル、そこら辺の自信は全く揺るがぬか!」


 改めてラウルの野菜を褒めるパラスに、ラウルは事も無げに認める。

 シレッとした顔で、さも当然のことのように宣うラウルの何と小憎らしいことよ。

 しかしそれは、ある意味ラウルらしいとも言える。

 常に自信に満ちたラウルはとても頼もしいし、特に料理に関しては絶対の自信を誇る。

 そんなラウルのことがライトは大好きだし、ラウルにはいつも自信たっぷりでいてほしいと思う。


 そしてそれはパラスも同じようで、自信満々のラウルを厭うことなくむしろ好感を持って高笑いしている。

 一頻り大笑いしたパラスは、再びトングを用いてラウルの皿に焼き上がった野菜をどんどん乗せていった。


「そしたら今度はこっちだ。これはラウルが出してくれた野菜だぞ」

「おお、俺がさっき切ったばかりの野菜か」

「我ら天使達も食べ比べしたが、ラウルが作る地上の野菜は何というか……味が濃く感じるのだよな」

「……(もくもく)……確かに。同じじゃがいもでも、こっちの方がさっきのものより味も風味も濃く感じるな」


 ラウルの皿にじゃんじゃん追加されたのは、ラウルが持ち込んだカタポレン産の野菜。

 オーガ族や神鶏達に向けて栽培されているので、その大きさは天空島産のものと大差ない程に大きく実ったものだ。

 しかし、同じ野菜でもその味はかなり違う。


 先程の天空島産のものがあっさりめだとすると、カタポレン産のものは風味が濃く感じる。

 その違いや差は、一体どこから来るのか―――ずっと野菜を切り続けていたラウルは気づかなかったが、今日の野菜焼きバーベキュー大会のあちこちでその議論が交わされていた。


「でな、天使達とも話した結果、これはやはりその土地や水遣りの水が含む魔力の差だろう、ということに落ち着いたんだ」

「やはりそういうことなんだろうなぁ……この野菜を育てたカタポレンの森は、もともと『魔の森』と呼ばれるくらいには常に濃い魔力が満ちているからな」

「だろう? それに、我らが日々与えている水、アクアの泉の水の魔力が桁違いなのはラウルも知っての通りだが。ラウルが地上で与えている水にも、何やら秘訣があると聞いたぞ?」

「ああ、エクスポーションとアークエーテルのことか。確かにそこら辺も、野菜の味に良い影響を与えている」


 パラスの推察に、ラウルも真剣な顔で聞き入る。

 一体どこの農業シンポジウムか?と思う程の熱い議論に、横にいるライトや二人の女王は苦笑いするしかない。


「ラウルもパラスさんも、すっかり野菜作りの虜ですねぇ……」

『そうねぇ……私達もパラス達がこんなに野菜作りにのめり込むとは、思ってもいなかったわ』

『もともとは、ヴィーちゃんやグリンちゃんのために始めたことなんだけどね。でも……』


 野菜作りを熱く語るラウルとパラス、二人を見守るライト達だったが、光の女王が嬉しそうに口を開く。


『これまであの子達は、天空島を守るという使命にのみ生きてきたわ。そんなあの子達が……警備隊の仕事だけでなく、他にも夢中になれるものを見つけられたということが、私にとってはとても嬉しいの』

『そうね!あの子達ってば、天空島周辺の警邏以外にすることなどないって言い切ってたものね!』

『ええ。でも今は、畑の世話をとても楽しそうにしている……これはすごく喜ばしいことよ』


 嬉しそうに語る光の女王に、雷の女王もまた大いに賛同する。

 これまで仕事一辺倒だった天使達に、野菜作りという新たな使命が加わった。

 それは神鶏のパワーアップという重大な使命を帯びているが、同時に趣味を持たない天使達の初めて楽しめる趣味ともなっていた。


 食べ比べと称した盛大な野菜焼きバーベキュー大会、そのあちこちで溢れるような笑顔と笑い声で満ちている。

 温かくも平和に満ちたひと時に、ライトもまた自然と笑みが溢れるのだった。

 第二回野菜焼きバーベキュー大会 in 天空島、その本番です。

 何というか、いつにも増して奇天烈味がアップしてる気が…( ̄ω ̄)…

 まぁ、作者は本格的な農業をしたことは一度もないので、野菜栽培なんかに関してもggrksで得た知識でそれっぽいことを書いているだけなのですが。


 あ、ちなみに鶏にはダメとされる玉ねぎやキャベツなんかも野菜焼きラインナップに含まれていますが。ここら辺は『天使達専用野菜』として育てていて、ヴィーちゃんやグリンちゃんには一切与えていません。

 それらを栽培する際にも場所を分けて、天使達の宿舎の横に花壇もどきを新設して栽培しています。

 野菜栽培に勤しむ天使達……何だか想像するだけで和みますね( ´ω` )

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