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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
邪竜の島討滅戦に向けて

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第1131話 ラウルが得た新たなる力

 ログハウスから出て、天使達の野菜焼きバーベキュー大会に合流したライト達。

 外で和気藹々と食べていた天使達、二人の女王が来たのを見て一斉に取り囲んだ。


「光の女王様、雷の女王様、ようこそいらっしゃいました!」

「今日の野菜は特に美味しいですよ!」

「女王様方も是非ともお召し上がりください!」


 花咲くような笑顔の天使達に、女王達も『私達まで招いてくれて、ありがとう』『まあ、それは素敵ね!』『ええ、是非ともご馳走になりたいわ』等々にこやかに返事をしている。

 そして、天使達に囲まれるのは女王達ばかりではない。

 ライトやラウルもまた、速攻で多数の天使達に囲まれていた。


「まあ!可愛らしい人族ね!」

「君、初めてのバーベキュー大会の時にもいたよね?」

「名前は何ていうの? お姉さん達に教えて!」


 これはライトを取り囲んだ天使達。

 自分達より背丈も体格も小さい人族のライトのことが、とても珍しく感じられるようだ。

 一方のラウルはというと―――


「ラウル先生!私達の作った野菜、どうでしょう!?」

「大きさ、艶、張り、どれも素晴らしく向上したと思うのですが!」

「見てください、このトウモロコシの三番果!三番果とは思えない美味しさなんですよ!」

「こちらのピーマンも見てください!」

「私が担当したアスパラガスも絶品ですよ!」


 ライトや二人の女王達以上にもみくちゃにされていた。

 それにしても、ここでもラウルは先生呼ばわりされているとは驚きだ。

 いや、実際天使達に野菜栽培を直接指導したのはラウルだし、その流れで先生呼びとなったのだろうが。

 オーガの料理教室に続き、天空島でもこんなにたくさんの生徒や弟子に囲まれるとは。プーリアの里にいた頃には、絶対に絶対に想像もできなかっただろう。


 そんな愛弟子達の熱意を受けて、ラウルが天使達に声をかける。


「分かった分かった、お前らの熱意はこれでもかというくらいに伝わってきた。よし、そしたら今から俺の野菜もバーベキューに提供しよう」

「「「ホントですか!?」」」

「おう、俺は嘘はつかんぞ。つーか、バーベキュー台三つじゃ足りんな。俺が持ってる三台も今から出すから、何人か手伝え」

「「「はいッ!」」」


 バーベキュー台追加を申し出たラウルの言葉に、天使達が勢いよく返事をする。

 この天空島の天使達、天空島警備隊という組織に属しているため何気に体育会系だったりする。

 先生という上役のラウルの指示に従うのが当然!という空気である。


 ラウルが早速空間魔法陣を開き、大型バーベキュー台を三つ取り出した。

 天使達に貸し出しているバーベキュー台よりも大きく、しかも新品同様の品に天使達が「ほぅ……」と見入っている。

 何故新品同様かというと、ラウルの手持ちのバーベキュー台を全部天使達に貸し出してしまったので自分用に新しく購入した、というオチである。


「俺はあっちの焼却炉で炭に火を着けるから、バーベキュー台の組み立てはお前らに任せたぞ」

「「「はいッ!」」」


 追加のバーベキュー台を素早く稼働させるため、台の組み立てと炭の着火を分業にしたラウル。ラウルは畑の肥料の殻を焼くための焼却炉に向かい、天使達は追加のバーベキュー台の組み立てに取りかかる。

 ラウルは焼却炉の中に大量の炭を放り込み、右手を翳して火魔法で炭に着火する。

 その火の勢いは凄まじく、ものの一、二分で真っ赤な炭になった。


 そして着火した炭を、ラウルは何と手掴みで金属バットに無造作に積んでいくではないか。

 この光景に、たまたまラウルの方を見ていた数人の天使がギョッ!とした顔になる。

 その中の一人、パラスが慌ててすっ飛んできた。


「ちょ、ちょちょちょ、ラウル!お、お前、火がついてる最中の焼却炉に手を突っ込むとか、正気か!?」

「ン? ……あ、これか?」

「これもそれもあるか!お前は木から生まれた妖精なのだろう!? いくら料理のために火を克服したといっても、無謀が過ぎるだろう!?」


 ラウルの身を案じ、あばばばば!と慌てふためくパラス。何と心優しい天使なのだろう。

 その気遣いに、ラウルが謝りつつ事情を話していく。


「心配かけてすまんな。実は俺、先日炎の女王と火の女王の加護をもらってな。そのおかげで火は全然怖くなくなったし、火で怪我を負うことも全くないんだ」

「そ、そうなのか!? た、確かに……火属性の女王、しかも火と炎の二種類もの加護を得られたのならば、お前のその無茶苦茶な行動も無茶ではなくなるのか……」


 未だに熱々の炭を手で握りながら、パラスに説明をするラウル。

 びっくりドッキリなラウルの種明かしに、パラスはますます驚きを隠せない。

 ラウルが木から生まれた妖精であることは、パラス達天使も知っている。そのおかげでドライアド達からはものすごく懐かれているし、ラウルがドライアド塗れになったのも一度や二度ではない。


 そんなラウルが、料理したさに火への恐怖を克服していた、このことだけでもパラスはラウルのことを内心で尊敬していた。

 属性的な弱点を克服するというのは、口で言う程簡単なことではない。

 身の内から無限に沸き起こる恐怖心、これを抑え込むことがどれ程厳しく難しいことであるか―――パラスにも容易に想像できた。


 例えばもしこれがドライアド達なら、遠目に火を見ただけで大慌てで逃げ出すだろう。顔を真っ青に青褪めさせながら、キャーキャーと右往左往しつつ大パニックになるのは明白だ。

 なのにこのラウルという妖精は、美味しいものを自ら作り食べたいという願いを叶えるためだけに、火への恐怖を乗り越えて完全に操る術を得た。これはパラスにとって、十分に賞賛に値する偉業だった。

 その偉業がさらにパワーアップし、着火済みの炭を手掴みするまでに至るとは、如何にパラスでも完全に予想外だったが。


 半ば呆然としていたパラスの目に、焼却炉の中で業火の如き燃え盛る火が映る。

 この火魔法の強力さも、以前ラウルが操っていた火魔法とは違う。

 その威力は明らかに数倍は上がっていることは、それこそ火を見るよりも明らかだった。


「はぁ……ラウル、お前のそのド根性は真に賞賛に値する。そのド根性は、我々天使も見習わなければな」

「お褒めに与り光栄だ。……つっても、加護を得るために炎の洞窟に突入した時には、すんげーキツかったがな?」

「だろうなぁ……私だって、飛べない海や湖の中に墜落したら……と想像しただけでも身震いが止まらんわ」


 ラウルを見習いたいというパラスに、ラウルが炎の洞窟での苦労を語る。

 火中の栗を拾う、そのリスクは得たいものの大きさに比例して大きくなる。

 ラウルにとっての恐怖の対象が火ならば、パラスにとってのそれは水。海や湖などの大きな水場は、翼を持つパラスにとって数少ない苦手な場所の一つであった。

 パラスの意外な弱点?を知ったラウルが、意外そうな顔でパラスに問いかけた。


「あー、もしかして天使ってのは、皆泳げないもんなのか?」

「空を駆る翼を持つ者が、水の中を泳げる訳がなかろう……できてもせいぜい水の上で仰向けに浮かぶくらいだ」

「そりゃまぁそうだよな。……っと、そろそろ炭を移動させるぞ」


 パラスと雑談しているうちに、焼却炉に放り込んだ炭が全部真っ赤っ赤になっている。

 ここまで熱々になれば、バーベキュー台に放り込んですぐに野菜焼きに取りかかれるだろう。

 パラスはラウルの行動を阻んでいたことに気づき、慌てて横に退いた。


「おお、そうか、邪魔してすまなかった」

「ぃゃぃゃ、俺の手の心配をしてすっ飛んできてくれたんだろ? ありがとうな」

「ッ!!!」


 謝るパラスに、ラウルがニカッ!と笑いながら逆に礼を言う。

 その人懐っこい笑顔に、パラスは不意打ちを食らったように赤面している。

 そして照れ隠しのためか、パラスが慌ててラウルに背を向けて咳払いをした。


「コホン……ぁー、ラウルよ……属性の女王達の加護を得たからと言っても、あまり無茶をしてはいけないぞ? 世の中に絶対などというものはないのだからな」

「そうだな、パラスの言う通りだ。俺もこれからはもう少し慎重になるとしよう。ただ、火に関しては全く心配は要らないから安心してくれ。エリトナ山という、火の女王が住む火山があるんだが。そのマグマの中でも、自由に泳げるようになったくらいだからな」

「何ッ!? マグマの中を泳ぐ、だとぅッ!?」


 照れ隠しで一度はラウルに背を向けたパラス。

 ラウルのあまりのびっくり仰天話に、パラスは慌ててガバッ!と振り返り、またも驚愕の顔でラウルを見つめる。

 実際マグマの中で自由自在に泳ぐなど、火属性の精霊か魔物くらいにしかできない芸当なので、パラスがあんぐりと口を開けて驚くのも無理はない。


「ラウル、お前……どんどんレオニスに似ていくな」

「度重なるお褒めの言葉、誠に光栄だ。あのご主人様に似るというのは、個人的にはともかく冒険者としては最上級の褒め言葉だからな」

「……まぁな。この世界、強くなければ生き残ることは叶わぬからな」


 レオニスに似ている、とパラスに言われたラウル。それを素直に褒め言葉として捉えていた。


 かつてラウルは、レオニスに似ていると言われることに少なからず抵抗があった。それは人外代表レオニスの規格外の強さもさることながら、二人の間には人族と妖精族という厳然たる種族の違いがあるからだ。

 カタポレンの森で生まれた妖精の俺が、人族に似る訳がないだろう―――

 ラウルの中で無意識の内にあった、ラウルとレオニスの間に横たわる種族の壁。それが崩れ始めたのは、ラウルが冒険者になってからだ。


 お金稼ぎのためにラウルが冒険者となり、ラウルやレオニス、そして市場の人達以外の様々な人々と前にも増して触れ合う機会が増えた。

 その上でラウルが一番強く感じたのは、レオニスの偉大さだった。


 目に見える強さだけでなく、たくさんの冒険者達から慕われるレオニスの人の良さ、そして仲間が危機に陥った時に躊躇うことなく手を差し伸べてくれる。その懐の深さは、ラウルも大いに認めるところだ。

 そうしてラウルにとって、単なる雇用主に過ぎなかったレオニスという存在が大きくなっていったのだ。


 しかし、レオニスのことを素直に認め、主従が似ることを肯定しつつも『個人的にはともかく』と付け足すあたりがラウルらしい。

 それは『俺個人では本意ではないんだけどね? でも、冒険者として見たらそれはとても光栄なことなんだぜ?』と言っているようで、その照れ隠し具合が何とも微笑ましい。

 パラスにもそれが伝わったのか、くつくつと笑いながらラウルに話しかける。


「……ああ、邪魔ばかりして本当にすまんな。向こうの新しいバーベキュー台の支度もできたようだし、そろそろ燃料の炭を持っていってやらんとな」

「おお、そうだな。俺はこの炭を届け終えたら、今度はカタポレンやラグナロッツァで作った俺の野菜を切る作業に移らなきゃならん」

「いよいよ我ら天空島産の野菜と地上産の野菜の食べ比べだな!」


 パラスの言葉に、ラウルが燃え盛る焼却炉に再び手を突っ込んで、ガッシガッシと炭を無造作に取り出している。

 そしてラウルは立ち上がり、山盛りの炭を積み上げたお盆代わりの金属バットを両手で持ち上げた。


「野菜を焼くのはお前ら天使達に任せるから、よろしく頼むぞ」

「任せとけ!我らの野菜焼きの腕をとくと見せてやる!」

「そりゃ楽しみだ。じゃ、向こうに行くとするか」

「おう!」


 野菜焼きを天使達に任せると宣言したラウルに、パラスが二の腕に手を添えながら力強く応える。

 これからラウルはまた野菜切りに終始するだろう。百人以上もいる天使達の腹を満たすには、一体どれ程野菜を切り続けなければならないことやら。

 だが、その果てしない作業をラウルが厭うことなどない。ラウルの野菜を食べて喜ぶ天使達の笑顔が見られるのだから。


「ラウル先生ー、新しいバーベキュー台の組み立てができましたよー!」

「隊長ー、早くこっちにきて野菜を焼くのを手伝ってくださーい!」

「女王様達もお待ちかねですよー!」


 大きな声で楽しそうに呼びかけてくる天使達の掛け声に、ラウルもパラスも「おお、待たせてすまない!」「今すぐそっち行くぞー!」と答えつつ、天使達のいる賑やかな集まりの中に溶け込んでいった。

 第二回野菜焼きバーベキュー大会 in 天空島、その開始前の一幕です。

 第二回といってもそれはライトとラウル&二人の女王を迎えた上での話で、天使達は自分達だけで頻繁に野菜焼きを楽しんでいるのですが(^ω^)

 てゆか、今回バーベキューの台の追加と炭を用意しただけで5000字超えてもた……ラウル産と天空島産の野菜の食べ比べにまだ入ってないって、どゆこと?( ̄ω ̄)

 これはまぁ、焼却炉に手を突っ込んで炭を取り出したラウルのせいなんですけど。


 普通に考えたら、燃え盛る焼却炉に素手を突っ込むとか、まぁ正気の沙汰じゃねぇですよね!ㄟ( ̄∀ ̄)ㄏ

 でもラウルは先日炎の女王と火の女王から加護を得たので、こんな無謀なこともできるようになったのよー!というお披露目を天空島勢にもしておきたかったのです(・∀・)

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