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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
邪竜の島討滅戦に向けて

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第1130話 パラスからの招待と挑戦状

 天空島のログハウス二階から一階に下りたライトと二人の女王。

 一階のテーブルには、ラウルが用意したお茶とスイーツが綺麗に並べられている。

 ちなみにログハウスの外でも、パラス達がおやつタイムの野菜バーベキュー集会を楽しんでいる最中だ。

 バーベキューの道具類は全てラウルからの貸し出しで、大好物の野菜焼きを食べながらキャッキャウフフしている天使達の姦しくも楽しげな笑い声が聞こえてくる。


『まあまあ、パラス達も楽しそうねぇ』

『ホントね!あの子達も毎日頑張ってくれているし、皆でああして親睦を深めるのはとても良いことよね!』

「さ、そしたら俺達も楽しいお茶会を始めるか」

「うん!」

「「『『いッただッきまーーーす!』』」」


 パラス達の楽しげな笑い声につられるように、ライト達もログハウス内での優雅なお茶会を始める。

 食事の挨拶の唱和後、各々好きな茶菓子を手に取り紅茶やぬるぬるドリンクとともに味わう。

 テーブルの上には、今日もたくさんのラウル特製スイーツが並ぶ。

 そして話は自然と互いの近況報告になっていった。


「もうすぐ例の作戦決行ですねぇ……邪竜の島は、この天空島にかなり近づいてきているんですか?」

『ええ。でも、最も近づくと言っても貴方達人族の目では目視できない距離なのだけど』

「こっちから仕掛けるんだよな? ここから邪竜の島までの移動時間は、どれくらいかかるんだ?」

『グリンちゃんなら、それこそひとっ飛びよ。ただ、グリンちゃんが先行すると天使達が追いつけないから、天使達の飛行速度に合わせなくちゃいけないけど』

『それでもここ最近の天使達もかなり強靭さを増してきているから、そこまで遅れは取らないはずよ』


 ライトやラウルの問いかけに、女王達が適宜答える。

 今ライト達が最も気になるのは、近々決行される予定の邪竜の島討滅戦。

 ライト達人族と天空島勢の初の共同作戦で、アクシーディア公国生誕祭終了後に行われる手筈になっている。

 二週間後に迫る世紀の決戦は、何としても勝たねばならない。


 作戦の大まかな流れは、既にレオニスと二人の女王、そして天空島警備隊隊長のパラスの四者によって決まっている。

 まず、邪竜の島に討って出るのは、光の女王と天空神殿守護神グリンカムビ。天使はパラスが三分の二の約七十体を率いて出陣する。

 雷の女王と雷光神殿ヴィゾーヴニルは、残りの天使約三十体とともに天空島守備に回る。

 雷の女王達は守備だけでなく、邪竜の島から逃げた邪竜や討ち漏らしの殲滅も兼任する。雷の女王なら、その強力な(いかづち)を降らせることで遠距離からでも敵を確実に撃ち落とせるだろう。


 人族からの直接参戦は、レオニスと魔術師ギルドマスターのピースの二人。光の女王やグリンカムビ、パラス達とともに出陣する予定だ。

 本当はもっと人員を出せればいいのだが、天空島勢からの絶対的な信頼を得ている者でなければならないので、今のところはこの二人くらいしか出せないというのが実情だ。

 もっとも、この二人は人族の中でも屈指の人外代表格なので、この二人だけで十分な戦力になるのだが。


 そしてライトは天空島で留守番という名の守備側人員、ラウルは邪龍の残穢の大量出現という万が一に備えてツェリザーク近郊で待機。

 以上が邪竜島討滅戦の大まかな作戦である。

 するとここで、今度は女王達がライト達に問いかけた。


『人族の方は、確か貴方達が住む国の生誕祭?があるのよね?』

「はい。生誕祭は今から九日後に始まって、三日間お祝いをするんです」

『冬に行われる三日間のお祝いなら、私達も精霊達の目を通して何度か見たことがあるわ。とても盛大な催し物よね!』

「そうですねー、一応国の誕生日ですからねー」


 何と女王達は、アクシーディア公国の生誕祭のことを知っていた。

 天空島に居ながらにして、地上の祭りを知っているとはかなり意外だ。

 だが彼女達は、普段あちこち動けない代わりに精霊達の目を通して外の世界の景色を見ることができる。

 光の精霊は日中活動できるし、雷の精霊も極少数だが人里に紛れていたりする。

 例えば、金属製のドアノブなどでたまに起こる静電気。あれはこのサイサクス世界では『雷の精霊のイタズラ』と考えられているのだ。


『九日後に地上で生誕祭があるなら、今年は精霊を多めに遣わしてじっくりと見物しようかしら』

『それ、いいわね!私の子達は目立つから、あまり大っぴらに人里に下りられないけど……少し上の上空から眺める分には問題ないわよね!』

「そうですね、日中ならいろんなお店や出し物も出てるし、遠くから見るだけでも楽しいと思いますよ!」


 近々開催されるアクシーディア公国生誕祭に、二人の女王はかなり興味が湧いているようだ。

 特に雷の女王はどうしても公国生誕祭を見たいようで、人目につきにくい上空から見るつもりらしい。

 実際雷の精霊が人混みに紛れたら、何が起こるか分からない危険性がある。ならば上空の晴天に紛れてしまえば大丈夫だろう!という訳だ。


 するとここで、ログハウスの玄関扉が開いた。

 何事かと思い全員が玄関を注視すると、そこにはパラスが立っていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ログハウスの中で、ライト達四人がいることを目視で確認したパラス。

 二人の女王の前に進み出て、跪きながら女王達に進言する。


「女王様方、もしよろしければ我らとともに野菜焼きバーベキューを致しませんか?」

『まあ、パラス達のお野菜をご馳走してくれるの?』

『お野菜は貴女達の大好物でしょ? 私達も食べていいの?』

「もちろんです!天空島の主たる女王様方に食べていただくは、我らが本望にございます!」


 パラスの誘いに、光の女王も雷の女王も嬉しそうな顔をしている。

 そういえば、このログハウス完成時に行われた初めての野菜焼きバーベキュー大会?でも、二人の女王達は天使達に混じって実に美味しそうに野菜焼きを食べていた。

 きっとその時楽しかったことをパラスも覚えていて、また女王達もいっしょに食べようと誘ってくれたに違いない。

 その証拠に、パラスはなおも熱心に女王達を口説く。


「せっかくですから、女王様方にも我らの日々の鍛錬の成果をご覧になっていただきたくてですね……グリン様やヴィー様に捧げる野菜と同じものなので、本当に本当に、それはもうとても美味しいのです!」

『ふふふ、貴女がそこまで熱心に言うなら、本当にとても美味しいお野菜なんでしょうね』

「それはもう!ラウルが地上で作る野菜にも負けません!」

『まあ、それは楽しみだわ!』


 パラスの熱弁に、思わず微笑む女王達。

 天空島警備隊隊長を務めるパラスは、いつも生真面目で何事にも全力で取り組む超勤勉な天使だ。

 そのパラスが自信満々に言い放つのだから、きっとものすごく出来の良い野菜ができたに違いない。

 そしてパラスの熱弁は、女王達だけでなくライト達にも向けられる。


「ラウル、ライト、是非ともお前達にも我らが育てた野菜を食べていってもらいたい。女王様方のみならず、絶対にお前達も唸らせる自信がある」

「そうか、そりゃ楽しみだ。というか、俺の舌は長年人里で暮らしてきて肥えまくってるからな。中途半端なものじゃ、唸るどころか鼻で笑うだけだぞ? それでもこの俺の舌に挑むか?」


 二人の女王だけでなく、ライトとラウルも野菜焼きバーベキューに誘うパラス。ちゃんと二人のことも思い遣るパラスだが、同時にラウルへの挑戦状?もしっかりと突きつけてきた。

 そんなパラスの挑戦に、ラウルが不敵な笑みで挑み返す。


 ラウルが野菜栽培を初めてから、八ヶ月とちょっと。まだ一年未満という、初心者に毛が生えたような浅い経歴だ。

 だが、この天空島の天使達に野菜栽培のいろはを伝授したのは、他ならぬラウルだ。

 言ってみればラウルは野菜栽培の師匠で、パラスはその弟子である。


 そしてラウルは、辣腕農家である以前に超一流の料理人。

 彼が扱う食材はどれも品質の良いものばかりで、素材の良し悪しや味にだって人一倍うるさいし強いこだわりだってある。

 そのラウルを唸らせる程の野菜―――ラウルでなくとも俄然興味が湧くというものだ。


 不敵な笑みで問い返すラウルに、パラスもフフン☆という自信満々な顔つきで答える。


「そりゃもちろん。味に自信があるからこそ挑むに決まっているだろう?」

「そうか、そしたら早速外でご馳走になろうじゃないか。……あ、言っとくが俺は料理や食材に関して一切手心は加えんぞ? 本当に美味ければもちろん認めるが、少しでも不味いと思ったら遠慮なくダメ出しするからな?」

「上等だ。そうこなくては、師匠に挑む意味がない」


 パラスの熱い挑戦を受け、ラウルが徐に椅子から立ち上がる。

 野菜栽培の師であるラウルを唸らせる程の野菜を作り、己が師を越えようと努力するパラス達の心意気は実に素晴らしいものだ。

 その素晴らしい心意気に、ラウルが手加減することなど一切ない。

 というか、もともとラウルは一切嘘をつかない妖精なのだが。普段以上に厳しい目と舌で、パラス達の野菜を品評する心積もりなのだろう。


 ラウルに続き、ライトや二人の女王も席を立つ。

 ライトとラウルは、まずお茶会の片付けから先に始めた。

 テーブルの上の食器類や手つかずのスイーツを仕舞ったり、テーブルを軽く拭いてきっちりと片付け終えてから皆で外に向かった。


 外に出て天使達のバーベキュー場所に向かう道すがら、ラウルとパラスが会話をしている。


「今日は何を焼いてるんだ?」

「トウモロコシにじゃがいも、玉ねぎ、ピーマン、キャベツ、アスパラガスなどだ」

「おお、ラインナップもかなり豊富じゃねぇか、ますます楽しみだな。なら俺も同じものを出そう」

「おお、それはいい!食べ比べという訳だな!」

「ああ。どっちが美味い野菜か、存分に食べ比べしようぜ」

「望むところだ!」


 ラウルとパラス、どちらも負けず嫌いで自信家なので、自分の野菜の方が絶対に美味しい!と思っているようだ。

 そんな野菜栽培の師弟が交わす会話は、笑顔でバチバチと火花を散らしながらもどこか楽しげだ。

 見えない火花を散らす彼らの後ろで、ライトと二人の女王がニコニコしながら見守っていた。

 天空島の女王達との楽しいお茶会です。

 ……が、何故か終盤でラウル vs. パラスの野菜食べ比べバトルに変容してしまいました…( ̄ω ̄)…ナゼ?

 少なくとも今日の夕方頃までは、そんな予定全くなかったのに_| ̄|●


 パラスが二人の女王&ライト達を野菜焼きバーベキューに招待した、まではいいんですよ。実際日頃の成果を女王様方に見てもらいたい!と思うパラスの気持ちは十分に分かりますし。

 ただ、この場に野菜栽培の師匠であるラウルもいたのが運の尽き。

 弟子の成果をみるだけでは納得いかん!第一俺が育てた野菜が味で負ける訳ねぇだろ!?……と、作者の脳内でラウルが強く主張しましてですね(´^ω^`)

 ホンットにこの妖精は、雇い主に似て負けず嫌いなんだから_| ̄|●

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