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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
年末年始と冬休み

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第1117話 ラウルの決死の覚悟

 冒険者ギルドプロステス支部を出て、炎の洞窟に向かうライト達。

 外壁の門を潜り、街の外に出た。

 しばらく三人で歩いていたが、レオニスが感慨深げに呟く。


「去年に比べたら、冬らしい寒さになったよなぁ」

「だよねー。ラグナロッツァに比べたらまだ暖かいけど、それでもちゃんと冬だと思うくらいには寒いよねー」

「そうなのか? これでも結構暖かい方だと思うが……」


 ライトとレオニスの会話に、ラウルがびっくりしたような顔で問い返す。

 実際ライトが言うように、普段彼らが住んでいるラグナロッツァに比べたら、ここプロステスの気温はかなり暖かい方だ。

 なのに、ライトもレオニスもこの暖かさでも寒いと言う。

 ラグナロッツァと普段足繁く通うツェリザーク、この二都市くらいしか陽気の寒暖を知らないラウルにとっては、かなり不思議に思えるようだ。


 そんなラウルに、ライトがプロステスに関する補足説明をし始めた。


「去年炎の洞窟の調査に来た時なんて、そりゃもう春どころか夏手前かってくらいに暖かくてね。プロステスの街の中では、半袖で歩いている人もたくさんいたくらいなんだよー」

「冬に半袖って……どんだけ暖かかったんだって話だよな」

「うん。冬でさえそんなだから、夏なんてもうノーヴェ砂漠と同じくらい酷い暑さだったらしいよ」

「ノーヴェ砂漠、だとぅ……そんなにか」


 ライトの解説に、ラウルも思わず絶句する。

 ラウルはノーヴェ砂漠のことはあまりよく知らないが、それでも先日のドラリシオ・ブルーム達の事件でノーヴェ砂漠に行ったことがある。

 あの時は季節的には秋だったが、それでも昼下がりのノーヴェ砂漠は茹だるかのような暑さだったことをラウルも覚えている。


「でね、何でプロステスがそんな異常気象だったかっていうとね? 廃都の魔城の四帝が、炎の女王様に無理矢理植えつけた穢れのせいだったんだ。そのせいで、炎の洞窟には禍精霊【炎】っていうとても強い炎の精霊が大繁殖してて、洞窟の外にも煮えるような熱気が大量に漏れて異常高温になってたって訳」

「そうか……その穢れをご主人様達が取っ払って、炎の女王を救ったからプロステスも本来の陽気に戻ったんだな」

「そゆこと」


 ライトの話にラウルも頷きつつ納得している。

 穢れのことは、ラウルもよく知っている。それはラウルの幼馴染にして大親友であるマキシにも植えつけられていて、百年以上もの間マキシを苦しめ続けてきた元凶だ。

 そのことを思うと、今でもラウルは(はらわた)が煮えくり返る思いだ。


「ったく……フェネセンが言ってたように、廃都の魔城の四帝って奴等は世界中に穢れをばら撒いているんだな。本当にろくでもねぇ奴等だ」

「うん。四帝はぼくの父さんの敵でもあるし、いつか絶対に滅ぼさなくちゃならない敵なんだ」

「俺で手伝えることがあったら、遠慮なく何でも言ってくれ。そいつらはマキシとツィちゃんの敵でもあるんだからな」

「ありがとう!ラウルも手伝ってくれるなら、すっごく心強いよ!」


 忌々しげに四帝を扱き下ろすラウルに、ライトも真剣な顔で頷く。

 廃都の魔城と言えば、神樹ユグドラツィを襲い瀕死の重傷を追わせた襲撃事件の黒幕でもある。

 ラウルの親しい者達を狙い襲いかかる輩は、もはやラウルにとっても決して見過ごすことのできない怨敵となっていた。


 そしてラウルの四帝殲滅協力の申し出に、ライトが嬉しそうに破顔する。

 さすがにラウル自身も廃都の魔城に乗り込むかどうかは分からないが、それでも今のラウルなら魔城に入る前の魔物達を退ける露払いくらいは余裕でできるだろう。

 こうして廃都の魔城の四帝打倒を目指す仲間が増えることは、ライトにとっても非常に心強いことだ。


 そんな話をしているうちに、炎の洞窟の入口が見えてきた。

 ここまで来ると、炎の洞窟から漏れる熱気がライト達にも感じられてくる。

 炎の洞窟の入口に立ったラウルは、大きな口を開けているかのような入口をしばし呆然と見上げていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「……ここが、炎の洞窟か……」

「ラウル……大丈夫?」

「……ああ。ここまで来て怖気づく訳にはいかんからな」


 圧倒的な存在感を放つ炎の洞窟入口の前で、ラウルはただただ立ち尽くす。

 その顔は見るからに青褪めていて、よく見るとその手も小刻みに震えている。

 そんなラウルのただならぬ様子に、ライトが心配そうにその顔を覗き込む。


 ラウルが如何に料理したさに火を克服したと言っても、料理で使う火などほんの僅かな局所的なもの。

 それに比べてこの炎の洞窟は、その名の通り炎の塊そのもの。洞窟内の至るところで炎が渦巻き、火を噴き出し続けている。

 木から生まれた妖精のラウルにとって、炎の洞窟はかつてない程壮絶な恐怖を抱かせる難敵だった。


 そんなラウルに、レオニスがその背中をぽん、と軽く叩いた。


「大丈夫、心配すんな。炎の女王のもとに行くまで魔物除けの呪符を使うし、俺もライトもついているしな」

「そうだよ!もしラウルに何かあったら、ぼくとレオ兄ちゃんが絶対にラウルを助けるから!」

「…………二人とも、ありがとう」


 レオニスとライト、大小二人の主人から力強い励ましを受けたラウル。

 それまでガッチガチに緊張していたラウルの気持ちが、どんどん解れていく。

 そんなラウルに、レオニスは空間魔法陣を開きながら発破をかける。


「ほれ、洞窟入る前に景気づけのエクスポ飲んどけ」

「おう、ありがたくいただくとしよう」


 レオニスが空間魔法陣から取り出したのは、一本のエクスポーション。

 それをラウルに差し出し、ラウルもレオニスから受け取ってすぐさま開封してゴキュゴキュと一気に飲み干していった。

 ラッパ飲みで一気に飲み干すラウル、その勢いはこれから炎の洞窟を絶対に走破する!という彼の意気込みを表しているようだ。


「……ぷはー!よーし、そしたら一気に行くか!」

「おう、その前に魔物除けの呪符を使うぞー」


 ラウルが飲み干したエクスポーションの空き瓶を、レオニスに返す。

 レオニスはその空き瓶を空間魔法陣に放り込み、続けて魔物除けの呪符を数枚取り出した。

 まず深紅のロングジャケットの内ポケットに呪符を無造作に突っ込み、そのうちの一枚を取り出しながらライト達に声をかける。


「先頭は俺、ラウルは真ん中、殿(しんがり)はライトな。一気に走れば十分もしないうちに最奥につくだろ。ラウル、そこまで何とか頑張れよ」

「おう、任せとけ」

「ラウル、後ろはぼくが守るから安心してね!」

「ライトもありがとうな。お前にまで心配かけてすまん」

「大丈夫だよ!皆でいっしょに頑張ろうね!」


 火に弱いラウルを真ん中で守りながら進むというレオニスに、もちろんライトも快諾する。

 ライトもレオニスも炎の勲章を所持しているし、炎の洞窟に出る通常雑魚魔物など二人の敵ではない。

 だが、ラウルは正真正銘炎の洞窟の初心者。本能レベルで忌避する炎の渦中に飛び込むなど、本当ならこの場で失神してもおかしくないくらいに怖いはずだ。


 それでもラウルは炎の洞窟に挑む。本来なら木の妖精には決して得られないような、さらなる強大な力を得て大事な人達を守るために。

 ラウルは決死の覚悟を決め、目の前にある炎の洞窟を真っ直ぐに見据えていた。


 ラウルに火の姉妹の加護を授けてもらうためには、三人で一致団結して事を進めなければならない。

 レオニスが魔物除けの呪符を真ん中から破り、その効力を発動させた。


「よし、行くぞ。二人とも遅れずについてこいよ?」

「おう!」

「うん!」


 レオニスの掛け声に、ラウルもライトも勢いよく応じる。

 覚悟を決めたラウルに、もう怖いものなどない。ラウルの前にはレオニス、後ろにはライトがいてともに支えてくれるのだから。

 炎の洞窟の中に、飛び込むようにして駆け出したレオニス。

 先陣を切って走り出したレオニスの後ろを、ラウルとライトも追いかけるようにして駆け出していった。

 前話で行きそびれた、炎の洞窟の突入本番前です。

 ラウルの生まれ=木から生まれた妖精であることを考えると、今回の冒険は本当に怖くて仕方がないと思います。

 言うなれば、高所恐怖症の人にスカイダイビングさせるようなもんですね(´^ω^`)


 でも、ここさえ乗り越えればラウルにも火の姉妹の加護という強力な力が手に入ります。

 今のラウルには守りたい人達がたくさんいて、守るためのさらなる力を得るためだと思えばこそ、ラウルも奮起するのです(`・ω・´)

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