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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
年末年始と冬休み

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第1110話 オーガ族の狩り

 オーガの里の出入口で、オーガの若者三人と合流したライト達。

 ライト達一行とラキ達オーガ族、計六人で早速出かけた。

 狩場は彼ら独自のポイントがあるそうで、そこに向けてのんびりと歩いていく。といっても、人族とオーガ族では歩幅が違うので、ライト達は軽いジョギング状態なのだが。


「オーガの皆さんは、いつもどんな魔物を狩っているんですか?」

「熊、鳥、蛇、猪あたりが多いな。ま、とにかく肉が取れる獲物なら何でもござれだ」

「肉だけじゃないぞ。皮も服や小物なんかに使うから、なるべく傷がつかないように仕留めるのが大事なんだ」

「物によっては血も薬に用いたりするから、血抜きは獲物を里に持ち帰ってからするのが原則なんだぜ!」


 ライトの質問に、オーガの若者三人が快く答えている。

 彼らの名は、ガイ、テオ、ノア。ガイは短髪で切れ長の目、テオは右目が隠れるワンレン、ノアは後ろで一つに縛っている。

 三人ともラキより少し若い世代で、背丈こそラキより小さいものの皆がっしりと引き締まったオーガ族らしい体格をしている。


 そして、三人はそれぞれの手に木製の棍棒、石斧、鉄剣を所持している。

 オーガとは基本拳で戦う種族だが、全く武器を扱わない訳ではない。狩りに際しては、こうした武器も使うのだ。


 そうして彼らの狩場の一つに近づいてきた頃。

 一頭の灰牙闘熊(グレイファングベア)を発見した。

 ラキ達は即時臨戦態勢に入る。


「レオニス、ライト、我らの狩りをそこでよく見ておれ」

「おう、頑張れよ」

「はい!」

「皆の者、行くぞ」

「「「はいッ!」」」


 ラキはライト達に声をかけた後、一斉に四人で動き出す。

 まずラキが灰牙闘熊の真正面に立ち、他の三人とともに獲物を取り囲んだ。

 ラキ達オーガの存在に気づいた灰牙闘熊も、四つ足から二本足で立ち上がり巨大な身体で威嚇する。


 立ち上がった灰牙闘熊はとても大きく、その背丈はラキの倍近くありそうだ。

 そんな巨大な灰牙闘熊を相手に、一歩も怯まぬラキ達。それどころか、ラキは不敵な笑みすら浮かべているではないか。


 灰牙闘熊は右手を高く掲げ、ラキ目がけて振り下ろす。

 普通の生き物なら、この時点で既に絶体絶命のピンチになるところだ。

 だがラキは、その灰牙闘熊の右手を左手一つで受け止めてしまった。

 渾身の一撃のはずの右手を、ガシッ!と悠々止められてしまった灰牙闘熊は「!?!?!?」という驚愕の顔になる。


 そうしてラキが灰牙闘熊の気を引いている隙に、左右と後ろに回り込んでいたガイ、テオ、ノアが一斉に襲いかかる。


「おりゃああぁぁッ!」

「ハーーーーッ!」

「キエエェェイッ!」


 オーガの若者三人のうち、まずガイとテオの二人が灰牙闘熊の両足の腱を叩き立ち姿勢を崩す。

 そして灰牙闘熊が倒れたところで、その(うなじ)にノアの鉄剣が猛烈な勢いで垂直に振り下ろされた。


 如何に巨大な灰牙闘熊といえど、怪力を誇るオーガが振り下ろす鉄剣を延髄に直撃されては敵わない。

 灰牙闘熊はなす術無くその場にズズン……と倒れ、白目を剥き泡を噴きながら絶命した。


 灰牙闘熊の脅威が去り、狩りが無事完了したことを見届けたライトとレオニス。

 ライトは興奮気味の顔でラキのもとに駆け寄り、レオニスは悠々とした足取りで拍手を送る。


「お見事!」

「これしきのこと、余裕でこなせねばな」

「こんな簡単に灰牙闘熊を倒しちゃうなんて、ラキさんすごい!ガイさんもテオさんもノアさんも、皆すっごくカッコよかったです!」

「フフフ、今日はライトも我らの雄姿を存分に見ていってくれ」

「はい!」


 レオニスの拍手にライトの大絶賛を受けたラキ、誇らしげな顔でライトの頭をそっと撫でる。

 自分の膝丈にも満たない人族の幼子を撫でるために、前屈みになりながらライトを見つめるラキの眼差しは、狩りの時と全く違い限りなく優しい。


 そしてラキとともにライトに大絶賛されたガイ、テオ、ノアも照れ臭そうにしていたが、そのうちの一人のガイがはたとした顔で灰牙闘熊の方に駆けていった。

 ガイが腰にかけていた鞄を外し、鞄の蓋を開けてその入口に灰牙闘熊の手の先の爪を入れる。

 すると、巨大な灰牙闘熊の身体がスルスルッ……と鞄の中に入っていったではないか。

 そう、これはレオニスがラキに頼まれて作った二つ目のアイテムバッグである。


 かつてレオニスは、オーガの里でナヌスの結界運用開始を祝う宴が開かれた時に、ラキにアイテムバッグを祝いの品として贈った。

 そのアイテムバッグは今行商に出ている者達が使っていて、その有用性を実感したラキに『狩りの獲物を入れて持ち帰るために、是非とももう一つ同じものが欲しい』と製作を頼まれたのだ。


「ぃゃー、この鞄のおかげで狩りが捗るわー」

「全く全く。それまでは、一頭仕留める度にいちいち里に持ち帰らなきゃならなかったもんなー」

「それが今じゃ、連続で何匹狩っても全部これに入れておきゃいいんだもんな!」

「「「ありがたやー、ありがたやー」」」


 三人のオーガの若者達が、アイテムバッグの素晴らしさに感謝感激雨あられの賛辞を送っている。

 自分達の倍以上は大きい灰牙闘熊を、手のひら二つ分程度の鞄が事も無げにスルッ☆と飲み込んでしまうのだから、彼らがその恩恵に感謝するのも自然の流れである。


 そんな若者達に、チームリーダーであるラキが声をかける。


「さ、そしたらさっさと二匹目、三匹目を狩るぞ。今日もたくさんの獲物を持ち帰らねばならんからな」

「「「はいッ!!」」」


 ラキの檄に、ガイ、テオ、ノアも威勢よく返事をする。

 そうしてラキ達の狩りは続いていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 一頭目の灰牙闘熊を仕留めてから、二時間程経過しただろうか。

 その後ラキ達は、時折徒歩で移動して狩場を変えながら数多の獲物を仕留めていった。

 その結果、灰牙闘熊を十五頭、短首駝鳥ショートネックオーストリッチを十六頭、ジュエルスネークを十五匹、ジャイアントボアを十四頭狩った。それらはもちろん全てアイテムバッグに収納されている。


「……さて。今日はこれくらい狩ればいいか」

「そうッスね!これだけありゃ三日分は余裕で食えるかと!」

「じゃ、ぼちぼち帰ります?」

「そうだな」


 かなりの数の獲物を仕留めたラキ達。

 そろそろ里に帰るか、というところで、ラキがふと何かを思いついたようにレオニスに声をかけた。


「……おお、そうだ。レオニスよ、一つ頼みがあるのだが」

「ン? 何だ?」

「これだけ我らの狩りを堪能したのだ、その見返りという訳ではないが、帰りの途中で獲物に出食わしたら今度はレオニスに狩ってもらいたい」

「おう、いいぞ、任せとけ」


 ラキの申し出に、レオニスもニヤリ……と不敵な笑みを浮かべながら承諾する。

 ラキが言外に仄めかしているのは『今度はお前の狩りの腕を見せろ』ということであり、もちろんレオニスもそのことに即時気づいていた。

 しかし、レオニスの狩りの仕方はラキ達のそれとは全く異なる。そこら辺の了承も事前に得ておかねばならない。


「ただし、俺の狩り方はお前らとは全然違うぞ? 剣を使って頭を切り落としたり、あるいは胴体を真っ二つにすることもあるが。それでもいいか?」

「もちろん。火や雷を使って黒焦げにしたりしなければ問題ない」

「森の中で火魔法や雷魔法を使う程、俺も馬鹿じゃねぇぞ……?」


 レオニスの事前申告に、ラキも二つ返事で頷く。

 レオニスがカタポレンの森の中で狩りをする場合、さすがにラキ達のような素手&殴打ではなく得物の大剣を駆使する。

 基本的には頭を切り落とすが、ジュエルスネークのような長い蛇相手の場合は胴体を真っ二つに斬って仕留めることもある。

 もちろんそれは獲物の皮の損傷を最小限に抑えるためではあるが、それでもラキ達の狩り方に比べたらどうしても損傷は大きくなる。

 そのため、レオニスは先んじて狩り方の違いを告げておいたのだ。


「よーし、そしたら今度は俺の番だな!ラキもライトも、俺の狩りをよーく見とけよ?」

「うん!レオ兄ちゃん、頑張ってー!」

「カタポレンの森の番人、その腕を確と見せてもらおうぞ」


 レオニスは腕を回しながら、ライト達の前を歩き始める。

 思わぬところでレオニスの狩りまで生で見れることになり、ライトが嬉々としてレオニスに声援を贈る。

 こうして帰り道はレオニスが狩りの先頭に立ち、オーガの里に向けて帰路に就いた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ライト達が帰路に就いてから、三十分程過ぎただろうか。

 ライト達は無事オーガの里に帰還した。


 レオニスが帰路で狩ったのは、ジャイアントボア二頭にジュエルスネーク三匹、灰牙闘熊二頭。

 ラキ達のようにしばらく狩場に留まっていた訳ではなく、オーガの里に向けて一直線に帰還したため狩った数そのものは少ない。

 だが、ラキ達のように四人がかりではなく、レオニス一人だけでそれらを仕留めてみせたことにラキ以外の若者達は驚きを隠せない。

 愛用の大剣を右肩に担ぎながら、フッフーン☆と鼻歌交じりで悠々帰還するレオニス。その後ろで、ガイ達三人がボソボソと呟いている。


「なぁ……アレ、ホントに人族か?」

「いくら剣使いだからって、俺らが四人で仕留める熊や蛇をああもあっさり仕留めるとか……」

「あいつ、絶対に身体のどこかに角生えてるだろ……」


 年寄りオーガ並みに失敬なことを呟くガイ達を、ラキがさり気なく窘める。


「お前達、あれがここで何と呼ばれているか知っているであろう?」

「ぁ、はい……【角なしの鬼】、ですよね……?」

「そう。レオニスにはそう呼ばれるだけの資格があるのだ。お前達も今日、身を以ってそれを思い知ったであろう」

「「「……はい……」」」


 ラキの言葉に、ガイ達三人が俯きながらも認める。

 端から見たらなかなかに酷い言われようではあるが、それはオーガ族がレオニスの力を認め受け入れたことの裏返しでもある。


「オーガの名にかけて、あれに負けぬよう日々精進せねばならんぞ。もちろんそれはお前達だけでなく、我にも言えることだがな」

「「「……はいッ!」」」


 ラキの励ましに、三人の若者も顔を上げて大きな声で返事をする。

 彼らの数歩前を歩くレオニスが、スーン……とした顔で「お前らな……全部聞こえてるからな?」と呟いているような気がするが。多分気のせいだろう。キニシナイ!


 狩りを終えて、意気揚々と帰宅するライト達。

 ラキ宅に到着し、今度はラキが先頭に立ち家の中に入っていった。


「ただいま戻ったぞ!」

「…………はぁーい」


 ラキが家の中に向けて大きな声で呼びかけると、しばらくして小さな声が返ってきた。

 ラキ達はそのまま一直線に厨房に向かう。ラキ宅の厨房では、ラウル主催の料理教室が開催されているはずだからだ。

 そうして厨房に入ると、ラウルとオーガの奥様方がのんびりとお茶をしていた。


「あなた、おかえりなさい!」

「おう、ご主人様達もおかえりー」

「族長、お疲れさまでした!」

「狩りからの無事のご帰還、誠におめでとうございます!」


 オーガの奥様方の熱烈な歓迎に、ラキも満足そうに頷いている。

 そんなラキ達に、ラウルが嬉しい言葉をかける。


「出掛けに頼まれた、ご主人様やラキさん達の分の料理もとっておいてあるぞ」

「おお、ラウル先生!それはありがたい!皆狩りで腹が減っております故、早速いただいてよろしいですかな!?」

「もちろん。ただし、おしぼりで手をよく拭くくらいはしてからな?」

「承知いたしました!」


 早速料理を食べないと言うラキに、ラウルがせめて手をよく拭いてから、と注意を促す。

 散々外で働いてお腹が空いた連中に、手を洗いに洗い場に行け!とか言うのは酷だと思ったのだろう。

 そんなラウルの気遣いをサポートするかのように、ラキの妻リーネがラキ達四人分のおしぼりを手渡す。

 ちなみにライトとレオニスは、ラウルからおしぼりを渡されていた。


「さ、そしたらご主人様達にも今日の料理教室の成果を味わってもらうとしようか」

「貴方やガイ君達の分も、ちゃーんとたくさんとっておいてありますからね!」

「ありがとう。ガイ、テオ、ノア、お前達もご苦労だった。さあ、皆で美味しいものを食べて疲れを癒そうぞ」

「「「はいッ!」」」


 それまで椅子に座っていた何人かの奥様方が席を立ち、帰還したラキ達に席を譲る。

 テーブルの上に乗せられた、数多のご馳走。イチゴ大福やバター餅、ミルク餅に餅のベーコン巻き。

 ラキ達はそれらを早速頬張り、「おお、これは美味しい!」「疲れた身体に甘いものはよく効くなぁ!」「甘いのとしょっぱいの、交互に食うとすんげー美味ぇー!」「いくらでも食べられるー!」等々、大絶賛の嵐がラキ宅厨房に響き渡る。

 美味しいものを食べて綻ぶ男達の顔を、オーガの女達は優しい眼差しで愛おしそうに見守っていた。

 ラキ達オーガ族の狩りの風景です。

 ラキ達は魔法を一切使わない(というか使えない)腕力オンリー種族なので、どうしても狩りの仕方が限られてくるのですが。それでも棍棒やら鉄剣などの道具を駆使して狩りをしています。


 ちなみにこの鉄剣、レオニスが使うような切れ味鋭い武器ではなく、鈍器のように叩きつける使い方をしています。

 それまでオーガ族はこれといった特産品がなく、行商=貿易で儲けを出すことは不可能だったので、武器となるような良い剣を外部から手に入れることもできなかったせいでもあります。

 しかしこれからは、アイテムバッグなどのライト達がもたらした様々な恩恵により、オーガの里も徐々に発展していくことでしょう( ´ω` )

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