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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
大魔導師フェネセン

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第111話 大魔導師の深謀遠慮

 マキシに用いる魔導具の足輪の製作依頼に目処がついたところで、ライトとレオニスはアイギスを後にした。

 ラグナロッツァの屋敷に戻り、事の顛末をラウルとフェネセンに報告する。

 もちろんその席には四人分のおやつが用意されており、報告会以外にもティータイムを兼ねている。

 ちなみに本日のおやつは『チョコレートムースのオレンジマーマレードソース添え』である。


「ヒヒイロカネの確保ができたから、大まかな話もカイ姉としておいた。足輪の細かい設計や仕様は、明日フェネセンにアイギスに出向いてもらって、カイ姉と打ち合わせして進めるということで、話はつけてある」

「ほええ、足輪10個分のヒヒイロカネをもう用意できたの?レオぽん、さすがだねぃ」

「ああ、ヒヒイロカネについてはライトのお手柄だ」

「ん?ライトのお手柄って、どういうことだ?」


 フェネセンが感心する中、レオニスの言う『ライトのお手柄』という意味が分からず、ラウルが聞き返す。

 ライトは自分が褒められたのが照れくさいのか、もじもじしながら無言でおやつを食べている。


「先日魔石用水晶の採掘のために、ライトといっしょに久しぶりに幻の鉱山に行ったんだ。その時に、ライトが細かい金属類まで丁寧に掻き集めてくれててな」

「その中に、結構な量のヒヒイロカネがあったんだ」

「おかげで、今回使うに足るヒヒイロカネが十分に確保できたって訳だ」

「おお、それはたしかにライトのお手柄だな!」

「ホントだね!ライト君すごいよ!」


 レオニスの説明に、ラウルもフェネセンも完全同意でライトを褒めちぎる。


「いやー、俺今まで幻の鉱山は主に魔石用の水晶を採掘しに行ってたからなぁ。水晶以外に集めやすい大きな塊とか金銀銅、他にはダイヤやルビー、サファイア、エメラルドとかの分かりやすい宝石類くらいしか拾ってなかったんだが」

「今回の件で、細かい金属類も見逃さずに積極的に拾っておくべきだってことがよーく分かったわ。ま、それには人手が要るけどな」

「ライト、ありがとうな。お前のおかげで、ヒヒイロカネの産地に出向かずに済んだよ」


 ライトのお手柄を事細かに話しながら、レオニスは改めてライトに礼を言った。

 ライトはまだ少しもじもじしながらも、自分のしたことでレオニスやラウルの役に立てたことがとても嬉しいようだ。

 そんなライトに向かって、ラウルも礼を述べる。


「ライト、俺からも礼を言わせてくれ。俺とマキシのために、ありがとう」

「ううん、あれは偶然拾い集めてただけで、改めてそんなお礼を言われるほどのことでもないよ。でも……皆の役に立てたなら、ぼくとっても嬉しい」

「ああ、お前のお手柄で皆が助かっている。思わぬところで自分の仕事以上の良い成果が出たんだ、誇っていいぞ」


 はにかみながら言うライトに、レオニスもまた誇りを持つように助言する。

 そこにフェネセンも加わり、ライトを褒める。


「そうだよぅ、ライト君。ヒヒイロカネってものすごーく稀少性が高くて、なかなか手に入らない貴重な素材だからね?」

「フェネセン、お前ね……それを堂々と純度高めでリクエストしたのは、どこの誰だ?」

「はぁーい!このフェネぴょんでぇーッす!キャハ!」


 ウィンクしながらテヘペロ顔で敬礼するフェネセン。

『殴りたい、この笑顔』

 そんな魂の声が聞こえてきそうなレオニスの背後から、羽交い締めにして必死に止めるラウル。

 ラウルとしても、マキシの目覚めにこれから大いに関与するであろうフェネセンに、こんなことで怪我を負わせられない!と理解しているようだ。


「しっかし、幻の鉱山ってヒヒイロカネも採掘できるんだねぇ。他にもミスリルとかオリハルコンとか、アダマントなんてのもあったりするのん?」

「そこら辺はまだ確認してないが、多分あるだろうな」

「じゃあさ、じゃあさ、レオぽん。今度幻の鉱山行く時には、吾輩も連れてってくれない?」

「おう、それは別にいいが、こないだ行ったばかりだから早くても半年は先になるぞ?」

「うん、それでもいいよー。吾輩も幻の鉱山行ってみたいし、魔導具作る実験にもいろんな素材が欲しいからさぁ、行けるようになるまで待つから行く時教えてー」

「しゃあないな……半年後にはお前、どうせまた別の国とかほっつき歩いてんだろうから、前に貰った使い切りの水晶玉以外の連絡手段も置いていけよ?」

「はぁーい!」


 レオニスから次回の幻の鉱山行きの同行権の言質を得たフェネセン、ご機嫌そうに両手を挙げて万歳する。


「ま、そんな訳だからフェネセン。明日アイギスで足輪の設計や仕様の打ち合わせをしてきてくれ」

「了解ー。カイにゃんとこに行くの、ひっさしぶりー!」


 おおぅ、アイギスのカイさんのことを本当に『カイにゃん』と呼んでいるぅ。

 これはセイさんの『セイみょん』やメイさんの『メイぽよ』も向こうで直に炸裂するのか?……間違いなくするんだろうな……

 これはちょっとヤバいかもしれない。

 ライトは脳内で危惧を抱いた。


「レオ兄ちゃん、フェネぴょん。明日のアイギス、ぼくもついていっていい?」

「ん?そりゃいいが、何か用事でもあんのか?」

「ううん、特に用事とかじゃないけど……明日も日曜日でお休みだし、せっかくだからまたアイギスのお姉さん達に会いに行きたいなぁ、と思って。ほら、それこそ特別な用事でもなきゃなかなか行かないからさ」


 明日アイギスでフェネセンと三姉妹が衝突したら困るから、自分が見張り兼万が一の時には仲裁役になろう、という心積もりで同行を願い出たライト。

 だが、さすがにそれをここで全部ブチまけるのもどうかと思うので、それらしい理由をつけて言い募る。


「そうだなぁ、まぁライトが行けばあの三人も喜ぶしな……フェネセン、ライトもいっしょに連れて行ってくれ」

「うぃうぃ、ライトきゅんと初めていっしょにお出かけなんて、嬉しいな!吾輩更に明日が楽しみぃー!」

「「……ライトきゅん……」」


 頬に手を当て、高速でクネクネしながら全身で喜びを表すフェネセン。

 そのフェネセンのライトに対する呼び方が、いつの間にやら「ライトきゅん」になっている。

 普通ならこっ恥ずかしくて速攻で猛抗議するところだが、如何せん本来の候補『ライざえもん』があまりにも強烈過ぎて『ライトきゅん』なんて可愛いもんだよね?と思えてしまう。


 だが、もしそう思われることさえもフェネセンの計画のうち、だとしたら―――このフェネセンという大魔導師の巡らせるその深謀遠慮は、途轍もないレベルである、ということになる。

 もっとも、当人にそこまでの深い考えがあるのかどうかは、全く以て定かではない。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 翌日、ライトとフェネセンは予定通りアイギスに出向いた。

 道すがら、ライトとフェネセンはいろんな話をしながら、徒歩でアイギスに向かう。

 時には笑い、時には眉を顰め、難しい顔をしながら、でもやっぱり最後には笑顔になり、きゃらきゃらと楽しげに歩いていく二人。

 その姿は、傍から見たら長年の親友のようだ。


 そんなこんなしているうちに、二人はアイギスに到着した。

 そしたら何と、入口の扉に【臨時休業】の札がかけられているではないか。

 これは一体どうしたことだろうか。


「あれー?お店、お休み?そんなの聞いてないけどなぁ……」


 ライトは戸惑いながらも、一応扉に手をかけてみた。

 すると、扉はすんなりと開き、店の中にはアイギス三姉妹が待っていた。

 前日にフェネセンを向かわせる、とレオニスが話をつけておいたせいか、珍しいことにメイだけでなくカイやセイも揃って二人を出迎えてくれた。


「お二人とも、ようこそいらっしゃいました。フェネセン閣下、お久しぶりです」

「あッ!カイにゃーん!おっ久しぶりぃー!」

「あらあら、フェネセン閣下ったら……」


 カイの顔を見た途端、飛びつくように抱きついたフェネセン。

 その図は『小さな子が近所の大好きなお姉さんを見つけて、喜び勇んで勢いよく抱きつく図』にしか見えないのだが。

 喜色満面の笑顔で抱きつくフェネセンと、困ったような顔をしつつも優しい笑みを浮かべながらフェネセンを受けとめるカイ。

 何とも微笑ましい光景である。

 ちなみに背丈はカイの方が若干高いくらい、である。


「さ、店の中で立ち話も何ですから、奥の方へいらしてくださいな」

「はぁーい!あ、今日は手土産もあるんだよ!ね、ライトきゅん?」

「あ、はい。今日はうちのラウルからアイギスの皆さんに、是非ともお食べください、と預ってきました。後でお茶の時間にでもどうぞお食べください」


 ライトはフェネセンに促されて、手に持っていた箱をカイの横にいたセイに手渡す。


「あらまぁ、ご丁寧にどうもありがとう。じゃあ、後で皆でお茶する時にいただきましょうね!」


 セイはライトから受け取った箱を大事そうに抱えて、奥の部屋に向かっていく。

 フェネセンはカイの横にぴったりとくっつき、ライトはメイとともに奥の部屋に向かう。


「メイさん、今日はお店お休みだったんですか?」

「ああ、本当は別に休む予定じゃなかったんだけどね?今日はフェネセンが打ち合わせに来るって話だったから、急遽臨時休業にしたの」

「そうなんですか……わざわざぼく達のために、お店をお休みさせてしまってすみません」

「いいえ、ライト君が謝ることじゃないのよ?ただ……」

「……?」


 メイが半目になりながら、何やら言いにくそうにライトにだけ聞こえるように小声で呟いた。


「フェネセンってほら、その言動が予測不能っていうか。あまりにも突然かつ斜め上のことを、シレッと平気な顔してかますのよね」

「今日もここでもし何かやらかしたら、お客さんとか無関係の人にとばっちりがいっちゃうかもしれないでしょ?」

「まぁアレよ、転ばぬ先の杖というか……『混ぜるな危険』?」

「ま、とにかくね、何かあってからじゃ遅いのよ。だからもう今日は思い切ってお店を一日お休みすることにしたの」

「ハハハ……そうですね……」


 確かにフェネセンの言動は、凡人には理解しがたいものがあるのかもしれない。

 実際ライトも、先日自室の転移門から突如現れたフェネセンに心底驚かされて、半ばパニック状態に陥ったばかりである。

 そう、天才と凡人を同じ場所に混在させて万が一何か異変でも起こされたりしたら、確実に凡人の方が被害を被る羽目になるのだ。


 今日もそんなことにならなきゃいいなぁ、と気が気でないライトだった。

 タイトルや文中にはフェネセンの深謀遠慮疑惑?を語りましたが。

 実はそんなもん全然ありません。フェネセンはただただ己の思うがままに生きているだけです。

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