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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
年末年始と冬休み

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第1101話 新年の抱負とスペシャルなお年玉

「「「「あけましておめでとう!」」」」


 朝からラグナロッツァの屋敷の広間に集まったライト達。

 ライトとレオニス、ラウルとマキシ、そしてライトの肩にはフォル。皆揃って新年一番の挨拶を交わす。

 今日は一月一日、ラグナ暦814年の始まりの日である。


「皆、今年もよろしくな」

「こっちこそよろしくね!」

「フィィィ♪」

「正月は人族ならではの慣習だが、こうして気持ちも新たに新年を迎えるというのもなかなかいいもんだよな」

「だね!妖精や八咫烏にはない独特の文化は、知れば知る程楽しいです!」


 新年の挨拶に、ライトやレオニスはもちろんのこと、フォルにラウルにマキシも嬉しそうに微笑んでいる。

 そしてここで、ライトが新年ならではの話題『今年の抱負』を皆に尋ねる。


「じゃあ、今年も皆でそれぞれ抱負を語りましょう!今年はどんなことをしたい? はい、レオ兄ちゃんからどうぞ!」

「ンー、そうだなぁ……まずは邪竜の島の殲滅作戦を間近に控えてるから、それを無事完遂させるのが当面の目標かな」

「うん、素晴らしい目標だね!ぼく達にもできることなら、何でも協力するからね!はい、次はラウルね」

「俺は、新しい食材の干し肉を極めようと思う。今までの俺は干し肉を使う意味が分からなかったが、実際に食してみてそれは酷い間違いで傲慢だったと思い知った。やっぱ食わず嫌いはダメだな」

「ラウルの料理はまだまだ進化するんだね!新たな境地を目指して頑張ってね!はい、次はマキシ君ね」

「僕は、これからもアイギスで日々修行して、立派な装飾職人になりたいです!」

「マキシ君はフェルトでマスコット作ったりして、とても手先が器用だからきっと良い職人さんになれるよ!カイさん達のところで頑張ってね!」


 レオニス、ラウル、マキシの順で新年の抱負を述べていく。

 それぞれに新たな目標を据えて、それに向けて邁進していくのはとても良いことだ。

 そして最後はライト。締めの大トリを務めるべく、コホン、と一つ咳払いをしてから抱負を語り始める。


「最後はぼくの抱負ね!まずはラグーン学園での勉強を頑張って、でもって十歳になったらすぐに冒険者登録をすること!これがぼくの今年の一番の目標!」

「あー、ライトも今年十歳になるもんなぁ。……本当に、月日が経つのは早いもんだ」

「そういや人族の子供は、十歳から冒険者になれるんだったか? そしたら小さなご主人様も、俺達の仲間入りだな」

「ライト君、もうすぐ念願の冒険者になれるんですね!」


 ライトの抱負『冒険者登録する!』という決意表明に、レオニス達も大いに頷いている。

 特にレオニスなどは、実に感慨深い思いを抱いていた。


「ついこないだまで、俺がおしめを変えてやらなきゃならん赤ん坊だったような気がするのになぁ……そうか、ライトもももう冒険者になれる歳になるんだな……」

「うぐッ……さ、さすがにおしめはもうとっくに卒業したよ? おねしょなんてもう何年もしてないし!」


 万感の思いに浸るレオニスに、ライトも反発こそしないものの言い返す。

 ライトは母と国外で生活中に生後四ヶ月で孤児となり、あわや他国の豪商の養子となる寸前にレオニスに引き取られた。

 それ以来、レオニスのもとで養育されて今日に至る。

 育児経験どころか結婚すらしていない十代後半の若い男性が、男手一つで赤ん坊を育てることがどれだけ大変だったことだろう。


 このサイサクス世界、アクシーディア公国では十四歳で成人と見做される。

 ライトが十歳になって冒険者登録できるようになっても、十四歳まではまだ未成年として保護者レオニスの養育は続く。

 だが、冒険者登録はある意味大人への階段の第一歩でもある。

 もうすぐ大人になる準備を始めるライトに、レオニスはいつになく真剣な眼差しで語りかける。


「ライトはグラン兄とレミ姉の子だし、お前なら絶対に冒険者として大成できると俺は思っている。これは親の欲目ではなく、先輩冒険者としての忌憚無い意見だ」

「うん」

「だけどな、この世に絶対なんてことは何一つない。一寸先は闇、なんて言葉もあるように、冒険者という稼業には常に危険がつきまとう。ほんのちょっとの油断が本当に命取りになることもザラだ」

「うん」


 静かに語るレオニスの言葉を、ライトも真剣な眼差しで聞き入る。

 冒険者の仕事というのは、どんなに低ランクのものでも油断はできない。

 薬草採取に出かけたら、そこには本来いるはずのない魔物に襲われたりすることも往々にしてある。

 実際ラウルがかつて請け負った下水道清掃依頼も、当時は低ランクでも引き受け可能な依頼だった。

 そうした事例をライトも知っているだけに、レオニスの話は決して誇張されたり大袈裟なものではないことが分かる。


「だからな、ライト。例え冒険者になっても、なるべく危険な橋は渡るな。絶対に長生きして、グラン兄の分まで幸せに生きろ。大事な人達を残して逝くような真似は、この俺が絶対に許さん」

「分かってるよ!ぼくだって、冒険者になった後のことだっていろいろ考えてるんだから!」

「ほう、それはどんなものか聞いてもいいか?」


 ライトが既に冒険者になってからの将来設計をしているという話に、レオニスが興味を示した。

 そんなレオニスを安心させるべく、ライトは己の描く将来設計図を語り始めた。


「まずね、冒険者で四十歳くらいまで働いて、体力に自信がなくなってきたら解体師になるの!」

「あー、確かに冒険者を長年やってりゃ魔物の解体はお手のもになるわな」

「でしょ!でね、五十歳くらいになったら薬師に転向するの!ほら、薬師ならそこまで体力使わないから、歳をとっても続けられるし」

「薬師か……まぁな、冒険者なら薬草やポーション類の知識も一通り覚えておかなきゃならんしな」

「でね、もし万が一そこら辺で採用されなくても、ナヌスの結界術で就職目指すから大丈夫!」

「…………思った以上にガッチガチに手堅い将来設計だな…………」


 ライトが語る就活計画に、思わずレオニスの頬が引き攣る。

 ここまで綿密な人生設計を立てる九歳児とは、一体何者であろうか。

 環境によっては十歳になる前から必死に働かなければならないこのサイサクス世界であっても、ライトの就活に対する執念は尋常ではない。

 もっともそれは、過去世におけるトラウマに近い就職氷河期世代故の悲しい性なのだが。


 そんなライトに対し、レオニスがズボンのポケットをガサゴソとさせて何かを取り出した。


「そしたらライトには、今年のお年玉は最も役立つだろうな」

「ン? 今年のお年玉?」

「ほら、開けてみな」

「うん……」


 レオニスが取り出したものは、小さな封筒。

 ライトが毎年もらうお年玉はいわゆるポチ袋で、その中に大銀貨一枚がポツンと入っでいるのが常だ。

 だが、今年のお年玉はポチ袋ではない。大銀貨以外の何かも入れられているようだ。


 レオニスに促されて、封筒の中身を検めるライト。

 そこには大銀貨一枚の他にも、何か紙切れのようなものが入っていた。

 その紙切れを取り出し、折り畳まれた状態を開いてみると―――


「……え、これ、何?」

「ファングの包丁職人に、お前専用のオリハルコン製小刀を注文しておいた。その控えだ」

「オリハルコン小刀!? そんな良い物もらっちゃっていいの!?」

「もちろんだ。ほら、ライトだって俺に素晴らしいクリスマスプレゼントをくれただろう? そのお返しだ。……つっても、クリスマス以降に注文したやつだから、とてもじゃないが正月には間に合わなくてな。今は控えしか渡せんが、すまんな」

「そんな!謝ることないよ!オリハルコン製の小刀なんて、すっごく嬉しい!ありがとう、レオ兄ちゃん!」


 レオニスがライトに渡したスペシャルなお年玉、それは職人の街ファングでオーダーメイドされたオリハルコン製小刀。

 ライトがクリスマスにレオニスにプレゼントした、銀碧狼の毛で作ったミサンガ式のブレスレットの礼だという。

 しかもそのオーダーメイド先は、ラウルのオリハルコン包丁を作った包丁職人バーナードの工房。ラウルのオリハルコン包丁の切れ味を知るライトにしてみたら、それはものすごく嬉しいお年玉だった。


 大喜びでレオニスに抱きつくライトに、ラウルとマキシも声をかける。


「ライト、俺からも一応ライトにお年玉があるぞ」

「え、何ナニ、ラウルも何かくれるの?」

「ああ、俺からのお年玉はこれだ」


 ラウルが空間魔法陣を開き、一つの大きなバスケットを取り出す。

 そのバスケットに入っていたのは、色とりどりのマカロンだった。


「うわぁー、ラウルのマカロンもらえるなんて、すっごく久しぶりだー!」

「最近はずっとドライアド達にばかりやってたからな。ライトもこないだマカロン欲しいっていってたし、久々にライトのためだけに作ったんだ」

「ありがとう、ラウル!すっごく嬉しい!」


 篭の中に綺麗に並べられているカラフルなマカロン。

 イチゴ、メロン、桃、ブドウ、ミルク、カフェオレ、オレンジ、レモン、抹茶、キャラメル、十種類のフレーバーが各十個づつ、計百個のマカロンを見るライトの目がうっとりしている。


「最後が僕なのが何か恥ずかしいんですが……ライト君、もしよければ僕のももらってやってください」

「マキシ君までぼくにお年玉くれるの!?」

「はい。だって僕はアイギスで働いていてお給料を得ているし、何より僕はラウルより年上ですからね!」


 照れ臭そうに笑いながら、空間魔法陣を開いて何かを取り出すマキシ。

 マキシの手には、アイギスで使用しているアクセサリー用の小箱があった。

 マキシから小箱を受け取ったライトが、早速その小箱を開けて中身を見る。

 箱の中には、八咫烏の羽根のストラップがあった。


「これは……マキシ君の羽根?」

「はい、そうです。僕達八咫烏の羽根は、人族にとって幸運のお守りになるそうなので……いえ、ライト君にはフェネセンさんとお揃いのラペルピンがあることは知ってますが……幸運のお守りなら、いつくあってもいいかな、と思って……」

「マキシ君、ありがとう!後ですぐにアイテムリュックに付けさせてもらうね!」


 黒々とした艶やかな漆黒の羽根、その根元に革製の紐で輪っかが作られていて、リュックや鞄などに取り付けられるようになっている。

 いわゆるストラップというやつで、これならライトのアイテムリュックに付けることもできそうだ。


「レオ兄ちゃん、ラウル、マキシ君、皆ありがとう!ぼく、冒険者になって一番最初にもらった報酬で、また皆にお返しするからね!」

「ハハハ、そんなこと気にしなくていいさ。お年玉をもらえるのなんて、今のうちだけだからな」

「そうそう。子供しか得られない特権なんだから、特権に恩返しなんて考えなくていいぞ」

「ですね!僕はこの、お年玉という制度もすごく素敵な文化だと思います!ライト君が喜んでくれたことが、僕にとっては既にお返しなんですよ!」


 こんなにもたくさんのスペシャルなお年玉をもらえたライト。

 皆の温かい心遣いや気持ちに、ライトは無性に嬉しくなった。

 よーし、これからBCOのシステムもガンガン使いまくって立派な冒険者になるぞ!

 自分のためだけでなく、大事な人達のためにも立派な冒険者になろう―――改めてライトは心に誓ったのだった。

 今話から、ラグナ暦814年の始まりです。

 新年の抱負とお年玉話、どちらを先に出すか構成で結構悩んだりして。

 新年の抱負はともかく、お年玉というのは子供にとってはものすごーく楽しみな行事でしたよねぇ( ´ω` )

 その分裏で、親達があれこれ苦労したり談合してたりする訳ですがwww

 少子化が進んだ今の時代はお年玉もそこまで苦労しなさそうですが、子沢山なご家庭だとその親戚回りまで何かと大変そう。

 でも、その分賑やかなお正月になるだろうなー。物事ってのは何事も一長一短ですよねぇ( ´ω` )

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