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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
年末年始と冬休み

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第1098話 二回目の餅拾い

 レオニス達と分かれ、ラグナロッツァの屋敷の自室でベッドに潜り込んだライト。

 いつも以上にしっかりぴっちりに閉めた窓のカーテン。見えない窓の向こう側の景色に思いを馳せる。


 去年の餅拾い、すっごく楽しかったなぁ……

 ていうか、あのカガー・ミ・モッチがこのサイサクス世界では餅の精霊ってのが未だによく分からん……ホント謎いよね。

 今もどこかで餅を降らせてる最中なのかな。街を回る順番とか決まってんのかな?

 絶対にその姿を見てはいけないって言われてるけど、晦日以外の日なら見ても問題ないんだろうか? いや、それ以前にカガー・ミ・モッチが晦日以外の日にどこに住んでいるかなんて、さっぱり分かんないけど。

 でも……いつか一目だけでも見てみたいなぁ……


 そんなことを布団の中で考えているうちに、ライトの瞼が重くなっていく。今日も昨日も一昨日も、ずーっと出かけっぱなしなのでさすがに疲労が蓄積してきているようだ。

 ここで早めに寝るのは、間違ってもカガー・ミ・モッチを見ないように回避するだけでなく、それまでの疲れを癒やすのにももってこいだ。

 ライトは温かい布団の中で、早々に眠りに落ちていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 そうして迎えた翌日の朝、時刻は午前六時頃。

 パチッ!と目を覚ましたライトは、真っ先に窓のカーテンを開けるために動く。今年はカガー・ミ・モッチに伸し掛かられる悪夢は見なかったようだ。

 窓のカーテンをシャッ!と開けたライト。目の前に広がる輝く世界に、思わず感嘆の声を上げる。


「うわぁー……今年も結構降ったなぁ!」


 窓を開けると、ライトの吐く息が途端に白くなり周囲に拡散していく。

 見渡す限りの餅一面の世界は、この世の汚いものを全て浄化してくれるかのような神々しさだ。

 ううー、寒ッ!と小さく呟きながら、早々に窓を閉めるライト。ベッドから飛び出して、普段着に着替えて洗面所で顔を洗い階下に下りていく。

 食堂には、朝食を優雅に摂るラウルとマキシがいた。


「ラウル、マキシ君、おはよー」

「おう、おはよー」

「ライト君、おはようございます!」


 ライトはラウル達に朝の挨拶をしながら、空いている席に適当に座る。

 ライトが席に就くのと入れ替わりにラウルが立ち上がり、ライトの目の前に空間魔法陣から取り出したトーストやサラダなどの皿をいくつか置いていく。


「ありがとう、ラウル」

「どういたしまして」

「レオ兄ちゃんはもう出かけたの?」

「ああ、明け方すぐに出かけていったわ」

「そっかー」


 ラウル特製目玉焼き乗せトーストを頬張りながら、ラウルと会話するライト。

 レオニスは今年も冒険者ギルド総本部で待機要員として出かけたようだ。

 そんなライト達の会話に、マキシもサラダを食べながら会話に加わる。


「レオニスさんも朝から大変ですねぇ」

「今日は大半の冒険者さんが、道路や公園なんかの餅拾いに駆り出されて出払う日だからねー。レオ兄ちゃんは餅拾いには参加しないけど、その分後詰めとして総本部に待機しなきゃならないんだって」

「そうなんですねー。そしたら将来、ラウルもそういう仕事をしなくちゃならない日が来るかもよ?」

「え? 俺は大晦日には絶対に仕事なんてしねぇぞ? だって一日中餅拾いしなきゃならんし」

「「…………」」


 マキシの言葉に速攻でガツンと否定するラウル。

 確かに本人の言う通りで、レオニス邸のご近所さんの貴族邸宅の餅拾いは一日かけて行うラウルの仕事であり、聖なる餅という貴重な食材を得られる日。

 年に一度しかないこのビッグイベントは、ラウルの中では何よりも最優先される。この日ばかりは、余程のことでもない限り浮気などする訳がないのだ。


「ま、ラウルだもん、しょうがないよねー」

「ですねぇ。……あ、ラウル、もうそろそろ餅拾いに行く?」

「そうだな、ぼちぼち行くとするか」


 朝食を録り終えたラウルとマキシが、いよいよ餅拾いに行くべく動き出す。

 漬かった食器を流しに置き、ラウルが洗浄魔法でササッと洗い物を片付けていく。


「じゃ、俺達は先に出る。ライトはゆっくり飯食ってからでいいからな」

「うん!ラウルもマキシ君も頑張ってね!……あ、マキシ君、うちの敷地内の木と屋根の上の餅だけ下に落としておいてね」

「任せてください!ライト君も頑張ってくださいね!」


 片付けを終えて食堂を出ていくラウルとマキシを、まだ朝食を食べ終えていないライトが手を小さく振りながら見送っている。

 去年はライトとマキシの二人で、レオニス邸の敷地内及び敷地前の道路の餅拾いをしていた。だが、今年のマキシはラウルの頼みでラウル側の手伝いをすることになっている。


 それは、ラウルが餅拾いの了承を得た邸宅が増えたことに加え、マキシも空間魔法陣を習得したことで餅拾いの十分な戦力になったことが大きい。

 その分ライトは一人でレオニス邸の敷地内の餅拾いをしなければならないが、レオニス邸一軒分だけならライトだけでも拾いきれるだろう。

 飛べないライトが手の届かない屋根や木の上の餅も、マキシに先に下に落としてもらえば取りこぼす心配もない、という訳である。


 ラウルとマキシが退出してから、しばらくしてライトも朝食を食べ終えた。

 食器を流しに下ろし、二階の自室でアイギス特製マントなどを着込んで支度を整える。

 そして一階に下り、玄関の扉を開けて外に出た。


「はぁぁぁぁ……今年もたくさん降ったけど、去年よりは少し少なめ、かな?」


 外に出て早速餅拾いを始めるライト。

 今年の餅は、敷地内の芝生が見えない程度には降り積もっていた。だが、積雪量ならぬ積餅量?の厚さは去年程ではないように感じる。

 そうなると、収穫量の方も去年より落ちるだろうが、そこまで激減することもないはずだ。


 ライトは水採取用の木製バケツに餅をどんどん放り込んでは、一旦玄関前に置いておく。

 そうして餅で満杯になったバケツが十杯分貯まったところで、それらを玄関内側に入れてからアイテムリュックに仕舞い込んでいく。

 これは、万が一にもアイテムリュックを使っているところを他人に見られてはいけないからである。


 その程度の作業なら、玄関先でやっても問題なさそうではあるが。外でアイテムリュックを使うということは、誰かに見られる可能性は決してゼロではない。

 普段のライトはキニシナイ!大魔神の眷属だが、この手のリスク管理に関しては別!なのである。


 そうして三時間程も餅拾いを続けただろうか。

 レオニス邸の敷地内の餅は、ほぼ全て拾い終えた。

 レオニス邸はそこそこ広いが、それでも他の貴族邸宅に比べたら敷地面積も邸宅自体も小規模の部類に入る。

 去年は初めての餅拾いとあって、全てが新鮮で物珍しくて驚きの連続だったが、二度目ともなれば作業ペースもアップするというものだ。


 餅入りバケツから、餅をザラザラザラー……とアイテムリュックに移すライト。

 最後のバケツの餅を移し終えて、全ての木製バケツをアイテムリュックに仕舞い込む。これにてライトの餅拾い仕事は完了だ。

 それからライトは屋敷の屋上に出て、ラウル達が今どこにいるか様子を窺う。


 すると、左側の三軒向こうのお屋敷の屋根の上にラウルがいるのが見えた。

 去年と同じく、非常に手際よく餅を空間魔法陣に放り込むラウル。遠過ぎてさすがにその表情まではよく見えないが、きっと嬉々とした笑顔で拾っているに違いない。


 ふとライトが懐中時計で時刻を見ると、時計の針は十時と十五分を指している。

 積餅量がそこまで多くなかったので、予想以上に早く作業が終了してしまった。

 お昼ご飯にはまだ早いし、ラウルもマキシも屋敷に戻ってくるのは正午過ぎだろう。

 手持ち無沙汰になったライトは、ラウル達が帰ってくるまで何をするかを考え始めた。


「ンーーー……お昼になるまでどうしよう?」

「絵日記を書いてもいいけど……まだもうちょっと餅拾いしたいなぁ。でも、飛べない俺じゃラウルの手伝いはできないしなぁ……」

「うーーーん………………ぁ」


 しばし顰めっ面でうんうんと唸り続けていたライト。

 何かを閃いたようだ。

 ライトは急いで外に出て、ラウルがいる邸宅の前まで走っていった。


「ラウルー、ちょっといいー?」


 大きな声でラウルを呼ぶライト。

 その呼び声にラウルが応じ、門扉の前まで飛んできた。

 ラウルはすぐに門扉を開けて、ライトの前に立ってからその真意を問うた。


「ライト、どうした? 何かあったのか?」

「ううん、何かあった訳じゃないんだけど、うちの餅拾いがもう終わっちゃったんだ」

「そうか、そりゃご苦労さん。面白い形のやつは拾えたか?」

「うん、いくつかあったよ!また後で、レオ兄ちゃんが帰ってきたら皆に見せてあげるね!」

「そりゃ楽しみだ」


 ライトから突如呼び出されたことに、少し心配そうな顔で何事かを尋ねたラウル。困った事態が起きた訳ではないことを知り、ホッとした様子で仕事を終えたライトを労う。

 そんなラウルに、ライトが本題を切り出した。


「でね、まだお昼ご飯まで結構時間があるから、ちょっとお出かけしようと思ってさ。それをラウルに言いに来たんだ」

「これから外に出かけるのか? 一体どこに行くつもりなんだ」

「ディーノ村!ほら、向こうにぼくの父さんと母さんの家がまだあるからさ」

「ああ、そういうことか」


 ライトの言葉に、ラウルも頷く。

 そう、ライトが出かけようと思いついた行き先はディーノ村にある父母の家だった。


 そこは無人の空き家だが、ライトの父母が生前借りて二人で住んでいた家。その思い出を手放したくないレオニスが、未だに借り続けている家である。

 もはやディーノ村は立派な限界集落ではあるが、それでもまだ一応村という集落の形を残している。

 もしかしたら、あの家にも恵みの聖なる餅が降っているかも!とライトは思いついたのだ。


「もしかしたらあの家の周りにも餅が降ったかもしれないし、一度ちゃんと見に行っておきたいんだ。降っていたらもちろん拾ってくるし、降っていなくても掃除だけでもしておきたいし」

「そうだな、この際ちゃんと確認しておくのもいいだろうな」

「うん。そんなに時間もかからないだろうし、お昼ご飯までには帰ってくるから」

「おう、気をつけて行ってこいよ」

「うん!ラウルも餅拾い頑張ってね!」


 ラウルにもお出かけ許可をもらったライトは、パァッ!と明るい顔になる。

 そして早速レオニス邸に駆け出していくライト。時折後ろを振り返りながら、ラウルに向けて大きく手を振る。

 レオニス邸の門扉の前に到着したライトが、中に入る前に再びラウルに向かって大きく手を振ってからサッ!と中に入っていった。

 そんなライトの姿を、ラウルは小さく微笑みながら見守っていた。

 さあ、いよいよやってきました、サイサクス名物大晦日の餅拾い!

 前回の餅拾いの話は、第304話と第305話にて書いていますね。

 あれから800話弱が経ち、作中時間も一年が経過しました。……なのにリアルは二年と三ヶ月も経過してるという…( ̄ω ̄)…

 でもねー、拙作は亀の歩みどころかもはやアリンコの歩みであることはもはや周知の事実。なのでキニシナイ!(º∀º)


 そして、作中では様々な場面で役に立ってくれた聖なる餅。今年もそれなりの収穫量が見込めそうで何よりです( ´ω` )

 というか、今回は久々に元祖何でもできるスーパーウルトラファンタスティックパーフェクトレディーが作者の脳内に降臨いたしました。

 作者の耳元で『グランさん達のおうちにも、餅が降っているかもしれませんよ?』と囁くクレア嬢。その蕩けるような甘い誘惑に、作者は到底抗えませんでした・゜(゜^ω^゜)゜・

 いずれにしても久々の登場となる次回が楽しみです( ´ω` )


 でもって、前回はヒトデ型のレア餅をお絵かきしたのですが。今年も何かお絵かきしようかな!と思いつつも、事前に用意する余裕がなくまだ描けていません_| ̄|●

 後日追加しよう!とは思っているので、追加できたらその日の更新話の後書きにてお知らせいたします♪(^∀^)

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