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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
年末年始と冬休み

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第1088話 神殿の宝の行方

 かつて慕っていた先代女王を想い、さめざめと泣きじゃくる風の女王。

 そんな彼女に、ライト達は何と言葉をかけていいものやら分からず言葉に詰まる。


 とりあえず、風の女王の無事は一応確認できた。なのでライト達は、ここでとっととケセドの街に帰ることだってできる。

 だが、こんな状態の風の女王を一人きりに放置して帰ることなどできない。

 この辻風神殿に何日も泊まり込む訳にはいかないが、それでも何とか風の女王の気持ちを少しでも軽くすることはできないものか―――二人は懸命に考えていた。


 風の女王がここまで絶望に苛まれているのは、周囲に誰もいないのが最も大きな要因だろう。

 風の精霊はこの辻風神殿の中に一体もいないようだし、神殿守護神と思しき存在も見当たらない。風の精霊だけに、自由きままにあちこちを飛び回っていると思われる。


 また、この時点ではライト達は与り知らぬことだが、精神的に不安定な風の女王が風の精霊達をも寄せつけなかった、という事情もある。

 ライト達の侵入を拒絶した時ほどではないが、それでも何度か強風を起こし精霊達を追い返したことで、もはや風の精霊は女王を遠巻きに様子を窺うしかなかったのだ。


 風の女王の周囲に誰もいない、だから孤独に陥ってますます負の感情を抱え込んでしまうのだ。このことを危惧したライトは、懸命に思案する。

 同族の精霊や神殿守護神でなくても、例えば目覚めの湖のイードやウィカ、天空島のドライアドや天空樹のような種族を超えた友達が近くにいれば、少しは心の支えになるかもしれないのに―――

 ここまでライトは考えて、はたと気づいたように顔を上げてとある方向を見遣る。

 そしてその後、風の女王におずおずと話しかけた。


「あのー……風の女王様、一つ聞いてもいいですか?」

『…………何よ』

「ここには、神殿守護神はいないんですか?」

『……神殿守護神? 何ソレ、そんなの知らない』


 ライトの問いかけに、風の女王は不機嫌そうな低音ボイスながらもきちんと答える。

 ライトが気になったのは、神殿守護神の存在だ。

 属性の女王がいる場所には必ず神殿があり、その神殿とともに属性の女王を守るための守護神がいる。そしてそれは、この辻風神殿も例外ではないはずである。


 ライトが顔を上げて見たのは、玉座の後ろにある祭壇。神殿守護神の卵が安置されている場所だ。

 だが、祭壇を見たところ卵はない。目覚めの湖の湖底神殿や暗黒の洞窟の暗黒神殿のように、目に見える大きな卵はぱっと見では見当たらなかった。


 もちろんそこに必ずしも卵が安置されている訳ではない。

 エリトナ山のガンヅェラや海底神殿のディープシーサーペントのように、とっくの昔に孵化済みの場合もある。

 とはいえ、先日の氷の洞窟の玄武のように、下から見上げただけでは分からないような極小の卵があるかもしれない。

 ライトはレオニスに小声で話しかけた。


「レオ兄ちゃん、あの祭壇に卵があるかどうか見てきてくれない? もしかして玄武の時のように、ちっちゃい卵があるかもしれないし」

「了解。風の女王、後ろの祭壇をちょっと覗かせてもらうぞ」


 ライトの頼みを聞いたレオニス、早速ふわりと浮いたかと思うとあっという間に祭壇の高さまで飛んでいく。

 祭壇には降りず、飛んだまましばらく祭壇の上を隅々まで見て、座布団のようなクッションを持ち上げてみたりしている。

 そうして一通り祭壇の上を見たレオニスは、ライトのもとに戻っていった。


「祭壇の上には、卵のようなものはどこにもなかったぞ」

「じゃあ、辻風神殿の守護神はもうとっくに孵化してて、どこかに出かけているのかな?」

「こんな状態の風の女王を放っといてか? さすがにそれは、いくら何でも薄情過ぎると思うが……」

「だよねぇ……ていうか、そもそも風の女王様は神殿守護神の存在自体知らないようだし……一体どうなってんだろ?」


 ライトとしては、神殿守護神が風の女王の傍にいてくれれば、彼女の慰めになって元気を取り戻してくれるかも!と考えていた。今の彼女には、寄り添ってくれる仲間が必要なのだ。

 もし万が一神殿守護神がまだ生まれていないとしても、これまでしてきたようにライト達が孵化を手伝ってやればいいだけのことだ―――そう思っていたのに。

 聞けば風の女王は神殿守護神の存在を全く知らず、しかも孵化前の卵も見当たらないというではないか。


 早々に手詰まりを迎えた想定外の展開に、ライトは戸惑いを隠せない。

 そんな中、今度はレオニスの方から風の女王に問うた。


「風の女王、俺も聞きたいことがあるんだが、いいか?」

『……何よ』

「あの祭壇の上に、白い卵が置かれていたことはないか?」

『………………あるわよ』

「「!!!!!」」


 レオニスの質問に、風の女王はかなり長い沈黙し思考する。

 そして何とか思い出したのか、卵の存在を肯定した。

 ムスッとしたままの風の女王の答えだったが、ライトとレオニスは目を大きく見開く。

 神殿守護神という存在は知らなくても、孵化前の卵のことは知っているようだ。

 未だ所在不明の風の神殿守護神。その手がかりを得たことに、レオニスは興奮気味に再び問いかける。


「その卵はどうなった!? 孵化して何か生まれたのか!?」

『…………分からない』

「分からない? そりゃ一体どういうことだ?」

『確か五代くらい前の風の女王が、ある時卵を外に放り投げて捨てちゃった。これまでの女王の記憶で覚えてるだけで、ワタシが直接見た訳ではないのだけど。あの女王はすっごく癇癪持ちだったみたい』

「「……(ぇぇぇぇ)……」」


 これまたあまりの想定外の答えに、ライト達はただただ絶句する。

 神殿の宝にも等しい守護神の卵を、よりによって外に捨てるとは正真正銘前代未聞の事件だ。

 この思いがけない事態に、ライトとレオニスは困惑する。


 当代から遡ること五代前ということは、神殿の外に捨てられてから少なくとも百年以上は経過しているだろう。

 百年以上も野晒しにされてきた卵が、無事でいられるとは到底思えない。

 もしかしたら外に投げ捨てられた時点で割れてしまったかもしれないし、運良く割れてなくても自然孵化するとも思えない。

 一億歩譲って自然孵化したとしても、この辻風神殿に戻ってきていない時点で絶望的だ。それは神殿守護神の方から神殿と風の女王を見捨てた、ということに他ならないのだから。


 何をどう考えても絶望的な結果しか予想できないライトとレオニス。

 だが、ここでライト達まで絶望に暮れる訳にはいかない。

 とりあえず卵の痕跡だけでも探すべきだ。


「……レオ兄ちゃん、とりあえずこの近辺を探してみる?」

「そうだな。幸いにもこの神殿のすぐ下は川だし、もしかしたら卵の殻の一欠片だけでも見つかるかもしれん」

「もし自力で孵化してたとしても、卵の中から何が生まれたのかは分かんないけど……どこかで生きていてくれれば、いつかは会えるかもしれないもんね」

「そゆこと」


 二人だけのひそひそ話を終えた後、レオニスが改めて風の女王に声をかける。


「風の女王、俺達は今から祭壇にあった卵を探してくる」

『……あの卵に、探すだけの価値なんかあるの?』

「ああ。神殿の祭壇にある卵からは、神殿と女王を守るための守護神が必ず生まれる。もし卵が無事ならば、俺達の手で孵化させたい」

『…………そんなの、きっと無理よ。だって女王の記憶では、あの卵を外に捨てたのはずっとずっと昔のことだもの』


 レオニス達がこれからやろうとすることを、暗い顔で俯きながら否定する風の女王。

 彼女が言うことは尤もで、そんな大昔に打ち捨てられた卵が今でも現存するとは到底思えない。それはライトもレオニスも重々承知している。


 だが、何もしないうちから諦めるのは二人の性に合わない。

 まず何事も、自分達で出来ることをやらないことには始まらない。駄目だと諦めるのは、あらゆる手や方策を尽してからでいい。


「卵が見つからなければ、それはその時さ」

『もし、割れてぐしゃぐしゃになった卵の殻が見つかったら……どうするの?』

「それはそれで全く希望がない訳じゃない。もしかしたら自力で孵化して、今もどこかで生きているかもしれんしな」

『…………』


 レオニスの言葉に、風の女王は押し黙る。

 非常に楽観的な希望的観測と言ってしまえばそれまでだが、希望を捨てたまま生きていくことはかなりしんどい。そのことは、彼女自身痛いほどよく分かる。

 それまで俯いてばかりだった風の女王。つい、と顔を上げてレオニスの顔を見ながら話しかけた。


『……ワタシも、いっしょに行く』

「お、俺達といっしょに卵探しをしてくれるのか? そりゃありがたい。じゃ、早速外に出るか」

「うん!」


 風の女王の気が変わらないうちに、とばかりに早速行こうと誘うレオニス。もちろんライトも速攻で同意している。

 床にペタリと座り込んでいる風の女王に向けて、レオニスが右手をそっと差し出す。


 彼女が望まぬ女王の座に就いてから、これまで真正面から手を差し伸べてくれる者などいなかった。

 思いもよらないレオニスの仕草に、何故か胸が高鳴る風の女王。おとなしくレオニスの右手を取り、ふわりと宙に浮いた。

 そうしてライト達は、三人で辻風神殿の外に出ていった。

 風の女王の苦悩を何とか和らげようと思案する回です。

 最後の締めまで全部書いたら絶対に長くなりそうなので、とりあえずキリの良いところで一旦分割。


 リアルでもそうですが、一人でずっと悩みを抱えていると次第に精神的にも参って病んでいきますよねぇ(=ω=)

 当代の風の女王も決して悪い子ではないのですが、先代女王を失った悲しみや突然の女王就任に対する戸惑い、不安等々、やり場のない感情を長いこと持て余してしまっていて、風の精霊達も近寄れなくなってしまっています。

 ていうか、神殿の卵を放り投げて捨てちゃうって展開、作者でもびっくりですよ!五代前の風の女王ちゃん、どんだけヒステリーだったんだろ(;ω;)


 そして本日のリアルでは一月の末日。

 え、何、あけおめからもう一ヶ月経っちゃうのん!?Σ( ゜д゜)ウソーン!

 これをあともう十一回繰り返したら、2024年が終わってしまうのか…( ̄ω ̄)… ←気が早過ぎ

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