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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
年末年始と冬休み

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【投稿開始三周年記念SS】第1077話 小さな剣士の未来(後編)

 前話、前々話に続き、バッカニア達が主役のSS後編をお送りします。

 予想以上に大長編となってしまった三周年記念SSですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。

 それから半日が経過した、夕暮れ時の午後五時頃。

 スパイキーの父グイドの危機を知ったバッカニアとヨーキャは、冒険者ギルドホド支部の建物の中に入った。

 中は想像以上に混雑していて、十三歳や十一歳の子供が紛れていい場とは到底思えない様相を呈している。

 これも商隊が魔物の群れに襲われた事件のせいであろう。


 だが、ここまで来て引き返す訳にはいかない。

 バッカニアはヨーキャと逸れないようしっかり手を握り、建物内にいるたくさんの大人達の隙間を縫って前に進んでいく。

 そうしてようやく見えてきた、受付窓口と思しきカウンター。そこにいたラベンダー色の美人のお姉さんに、バッカニアは声をかけた。


「あの!今朝起きたっていう、魔物に襲われた商隊のことなんですが!」

「ン? もしかして、君は……ヴァイキング道場の最高師範のお子さん、ですか?」

「はい!……って、俺のことなんてどーでもいいんです!その商隊の中に、俺の友達のお父さんがいたらしいんです!」

「……ああ、それで心配になってここまで来たんですね?」

「はい!!」


 バッカニアの懸命に訴える姿に、子供だからといって馬鹿にしたり邪険に扱うことなく、真摯に受け答えする受付嬢(クレヒ)

 ちなみにバッカニアとクレヒはこれが初対面で、それまで互いに顔を合わせたことは一度もない。

 ならば何故クレヒがバッカニアのことを知っていたのか?というと、バッカニアのオッドアイのせいである。

 彼の薄花色と本紫の美しいオッドアイは、ホドの街でもかなり有名だった。


 クレヒは優しく微笑みながら、バッカニアが聞きたいであろうことに答える。


「商隊の人は何人もいらっしゃるので、どの方が君のお友達のお父さんかは分かりませんが。商人さんとそのご家族の方は、この廊下の突き当たりの仮眠室とその右の休憩室にいらっしゃいます」

「ありがとうございます!……って、中に入ってもいいですか?」

「もちろん。ただし、くれぐれも大声を上げたり騒いだりしないでくださいね? 皆さん大なり小なり怪我を負われてますので」

「分かりました!……ヨーキャ、行くぞ!」

「うん!」


 受付嬢のお姉さんに言われた先に、急いで駆けていくバッカニアとヨーキャ。

 まず突き当たりの仮眠室に行ってみたが、そこにはスパイキー一家の姿はなかった。中では大怪我を負った四人が、ベッドで寝ながら回復術師の治療を受けている。

 冒険者ギルドの仮眠室には、緊急時に使用する治療用も兼ねた仮眠用ベッドがあるので、そこでは主に重傷者が寝かされているようだ。


 仮眠室のドアをそっと開け、スパイキー達がいないことを確認したバッカニアはそっとドアを閉める。

 そしてその右側にある休憩室のドアをそっと開くバッカニア。するとそこには、見慣れた深藍色の髪の大きな子供の背中が見えた。


「!!ス!!……パイ、キー……」


 スパイキーの後ろ姿を見つけたバッカニア。一瞬大声を出しそうになるも、慌てて先程のクレヒの忠告を思い出して己の口を両手で閉じて無理矢理小声にする。

 そして足音を立てないよう、そーっと歩きながらスパイキーのもとに近づいていった。


「……スパイキー」

「あ、バッカニア兄!」

「ちょ、おま、大声を出すなって……」

「……あ、ごめん、つい……」


 バッカニアとヨーキャの思わぬ登場に、スパイキーがびっくりしながら振り返る。


「ヨーキャから聞いたぞ。おじさんは大丈夫なのか?」

「あ、ああ。山狼に何度も襲われそうになったところを、護衛の人や駆けつけてくれた冒険者の人達が退治してくれたって……怪我は足を挫いただけなんだけど、ものすごく疲れたようで……今はここで寝てるんだ」

「おじさん、無事だったんだね……本当に良かったね」

「……(コクリ)……」


 騒がしくならないよう、小声でモショモショと会話する三人。

 ヨーキャの喜びの言葉に、スパイキーも涙を滲ませながらコクリと頷く。

 そんな子供達の姿を見たスパイキーの母アグネスが、子供達に小さな声で話しかける。


「バッカニア君、ヨーキャ君、二人とも心配してくれてありがとうね」

「「……(コクリ)……」」

「スパイキー、お父さんはまだ寝てるし、あんたも向こうでバッカニア君達といっしょに休んでおいで。ここはお母さんが見ているから」

「分かった。バッカニア兄、ヨーキャ、行こう」

「おう」「うん」


 アグネスの勧めを受けて、バッカニア達は休憩室から出て広間に移動した。

 広間はまだ大勢の冒険者達でごった返している。だが、バッカニア達が入った時よりは若干落ち着いた空気のように思える。

 一方受付窓口は、カウンター内のギルド職員達が総出で動いている。これは、事件解決に動いた冒険者達への報酬のやり取りで忙しいのだ。


 広間内ではスパイキーが先頭を歩き、その後ろをバッカニアとヨーキャがついていく。その行き先は、ギルド内売店である。

 大人顔負けの巨体のおかげで混雑の中でも歩きやすい、というのもあるが、スパイキーは朝からホド支部にいたので売店の位置を知っている、ということもあった。


 人混みを掻き分けつつ、ギルド内売店の前まで辿り着いたバッカニア達。

 するとここで、バッカニアが売店の入口横にいた一人の若い男に声をかけた。


「フェリ兄!」

「……ン? ……おお、バッカニアじゃねぇか!」

「フェリ兄、いつこっちに帰ってきてたんだ?」

「あー、一昨日帰ってきたばっかでな。道場にも顔を出そうと思ってたんだが、その矢先に今日の事件が起きてここにいるって訳だ」


 売店入口横で、エクスポーションをぐい飲みしていた男とバッカニアが親しげに話をしている。

 男の名はフェリックス。後ろで一つに縛った鉛色の長髪に青碧色の瞳が印象的で、身長180cmくらいの引き締まった細マッチョ体型。

 背中に二本の長剣を背負い、金属製の胸当などを身にまとっているのを見るに、現役冒険者と察せられる。


 そしてこのフェリックスという男、バッカニアより十歳年上のヴァイキング道場卒業生である。

 十六歳までヴァイキング道場で剣術を習い修行し、その後冒険者として身を立てるべく道場を卒業して専業の冒険者となった。

 今は首都ラグナロッツァを拠点としつつ、全国各地を転々と移動しているという。


 バッカニアとフェリックスは年齢差があるため、二人が同じ稽古場で修行したことはない。しかしバッカニアは道場主の子なので、他の普通の子と違い三歳くらいから稽古場に出入りしていた。

 また、門下生も卒業後に道場を度々訪れるため、バッカニアは年上の門下生達ともたくさんの面識がある。フェリックスもそうした先輩の一人だった。


「てゆか、バッカニアは何でまたこんなところにいるんだ? 見ての通り、今日は街の外で事件が起きて混雑が酷いから、早く家に帰った方がいいぞ?」

「それが……俺の幼馴染のお父さんが、魔物の群れに襲われた商隊の中にいたんだ。この、スパイキーってやつのお父さんなんだけど」

「そうなのか!?……そっか、そりゃ大変だったな」


 思わぬ邂逅に喜んだ二人だが、フェリックスの方はバッカニアの身を案じて早々に帰宅するよう促す。

 実際こんなに混雑している場所で、子供三人があちこち彷徨くのは感心できることではない。

 だが、バッカニアの連れが今回の事件の被害者家族だと知り、フェリックスも驚きつつスパイキーを労る。


「……あ、スパイキーも今俺といっしょにヴァイキング道場で剣を習ってるんだぜ!」

「おお、なら俺の後輩でもあるのか!……って、俺の同期やちょい下で、こんな大きな体格のヤツはいなかったぞ? 君、今何歳なんだ?」

「十二歳です」

「何だと……バッカニアより下なのか……道理で全く見覚えがない訳だ」


 自分と目線がほぼ同じのスパイキーが、バッカニアより年下の十二歳と知ったフェリックス。呆然としながら呟く。

 スパイキーは、フェリックスがヴァイキング道場を卒業した直後に幼年部に入部してきた。二人は入れ違いで全く顔を合わせることもなかったため、互いに面識は全くなかった。


 だが、スパイキーもヴァイキング道場の後輩となればフェリックスも気になるようで、スパイキーに向かって声をかけた。


「君のお父さんは、商人なのか?」

「いえ、商人というかヴァイキング道場近くで花屋をしてます。今回は三ヶ月に一度の花の種の仕入れで、商隊といっしょに出かけてたんです」

「ああ、あの花屋さんか!そうかそうか、君はグイドさんの息子なんだな!」

「はい……って、父さんのことを知っているんですか?」

「そりゃもちろん!」


 スパイキーの話に、フェリックスも明るい顔になる。

 スパイキーの実家である花屋のことは、もちろんフェリックスも知っていた。長年通ったヴァイキング道場の近所の花屋だ、フェリックスだってその存在を知っていて当然である。


「俺は、最近白銀級になったばかりなんだがな? 久しぶりに故郷に帰った途端に事件が起きて、白銀級以上に招集がかかって現場に向かったら、顔見知りのグイドさんがいてびっくりしたぜ」

「お兄さんが、父さんを助けてくれたんですね……ありがとうございます!」


 フェリックスが父を助けてくれたことを知り、スパイキーが即座に深々と頭を下げる。

 そんな真面目なスパイキーに、フェリックスは少し慌てながらスパイキーの肩に手を乗せる。


「おいおい、そんな改まって頭を下げることなんてねぇんだぞ? 魔物に襲われた人達を冒険者が救いに出るのは当たり前のことだし、それで金もらって稼いでるんだから」

「それでも、お兄さんは俺の父さんを救ってくれた恩人です。お兄さんがいなかったら、俺の父さんは……今頃山狼に食われて……戻ってこれな、かった、かも……」


 父親が生還できたことに、感極まったスパイキーが頭を下げたまま声を震わせる。

 朝に商隊襲撃の報せを受けてから、午後三時過ぎにグイドが冒険者ギルドに運ばれてくるまでスパイキーはずっと生きた心地がしなかった。

 このまま父さんが帰ってこなかったら、どうしよう……父さんが死んじゃうかもしれない……そんなの嫌だ……

 強烈な胸の痛みと不安に苛まれていたスパイキーだったが、父の生還によりようやく解放された。

 父を助けてくれたフェリックスは、直接助けられたグイドだけでなくスパイキーにとっても大恩人だった。


 頭を下げたままポロポロと涙をこぼすスパイキーに、フェリックスはさらに慌てながら言い募る。


「わ、分かった、分かったからとにかく頭を上げてくれ。俺は子供に泣かれるのが一番困るんだ、どうやって泣き止ませりゃいいのかさっぱり分からん」

「…………はい」

「スパイキー、といったか? 君は本当に良い子だなぁ。バッカニアにも見習ってほしいくらいだ」

「フェリ兄、酷ッ!」


 フェリックスに促されて、懸命に涙を止めるべく右の手の甲で両目をゴシゴシと擦るスパイキー。

 素直に言うことを聞いてくれるスパイキーに対し、フェリックスは手放しで褒める。

 その際にバッカニアが何気にディスられているが、それはバッカニアとフェリックスが親しい間柄であることの証左である。


 とはいえ、ディスられたバッカニアとしては悔しいことこの上ない。

 ぷくーっ!と頬を膨らませながら、両手でポコスカとフェリックスの脇腹を叩くバッカニアに、フェリックスはカラカラと笑う。


「おお、すまんすまん、バッカニアだって稽古やエイリークの散歩は真面目にやってたもんなぁ?」

「そうだよ!つーか、俺はそれ以外だっていつも真面目だぞ!」

「え? だってお前、夏休みの宿題とか洗濯や皿洗いの手伝いとか、いっつも逃げてたじゃねぇか?」

「うぐッ……そそそそれとこれは、べべべ別だろー!?」

「いやいや、手伝いや嫌いなことから逃げてるうちは真面目とは言わんぞ?」

「ぐぬぬぬぬ」


 兄貴分と慕うフェリックスの諭しに、バッカニアはぐうの音も出ない。

 するとここで、受付窓口の方からフェリックスの名を呼ぶ声が聞こえてきた。


「フェリックスさーん、いらっしゃいますかー? 報酬お支払いの手続きが完了しましたー、いらっしゃいましたら窓口にお越しくださーい」

「……お、呼ばれたからもう行くわ」


 クレヒからの呼び声に、フェリックスは飲んでいたエクスポーションの空き瓶を備え付けのゴミ箱に放り込んだ。

 すぐに受付窓口に向かおうとするフェリックスに、バッカニアが慌てるように声をかけた。


「……あ、フェリ兄!また道場にも遊びに来てくれる!?」

「おう、明日か明後日にはハンザ師のところに顔を出しに行くつもりだ」

「俺が行くまで、絶対に先に帰らないでよ!」

「ああ、そしたら夕方に行くわ」

「絶対に絶対に、約束だからね!」

「はいよー」


 懸命に会う約束を訴えるバッカニアの頭を、優しい笑顔とともにくしゃくしゃと撫でるフェリックス。

 その後フェリックスは右手をひらひらと翳しながら、バッカニア達の前から立ち去った。


 フェリックスと別れた後のバッカニア達。

 本来の目的であるギルド内売店に入り、スパイキーが母からもらった小遣いでぬるぬるドリンクを三本購入し、バッカニアとヨーキャに渡した。

 ちなみにバッカニアはぬるぬるドリンク紫、スパイキーはぬるぬるドリンク薄黄色、ヨーキャはぬるぬるドリンク水色である。


 三人は偶然空いていたベンチを見つけて座り、ぬるぬるドリンクを飲みながら広間をぼんやりと眺める。

 広間内はまだたくさんの冒険者がいたが、フェリックスのように報酬を受け取って建物を出ていく者も増え、次第に喧騒が収まっていく。

 そんな中、スパイキーがバッカニアに問うた。


「……なぁ、バッカニア兄。さっきのお兄さんは、冒険者なんだよな?」

「ン? ああ、フェリ兄……フェリックスって人なんだが、うちの道場で修行してた人でさ。十年前くらいに冒険者になって、七年前くらいかな? 世界中を旅したいって言って、ホドを出ていったんだ」

「そうなんだ……白銀級?とか言ってたけど、すっげー強いんだろうな」

「そりゃあな、うちの父さんやコルセア兄ちゃんも『あいつはいつかすごい剣士になるぞ』って、ずっと言ってたくらいだし」

「…………」


 バッカニアが語るフェリックスの話に、スパイキーは静かに聞き入っている。

 そして俯いたまましばし無言になったかと思うと、キッ!と顔を上げたスパイキー。

 意を決したように、徐に口を開いた。


「……俺、将来冒険者になる」

「「!?!?!?」」


 スパイキーの突然の宣言に、バッカニアもヨーキャも驚愕する。

 これまでスパイキーは、将来に関して『いつか実家の花屋を継ぐ』ということしか言ってこなかった。

 それなのに、ここへきて花屋とは似ても似つかぬ冒険者になると言い出すとは、全く予想だにしないことだった。

 そんなバッカニア達の驚きなど、どこ吹く風とばかりにスパイキーは前を見据えて語り続ける。


「俺もフェリックスさんのように、人を助けることができる人間になりたい。もちろん花屋を継ぐという夢だって捨てない。だって花屋のことなら、父さん母さんが元気なうちは俺の出番はすぐに必要な訳じゃないし。……だから俺は、若いうちにしかできない冒険者を先にやって、冒険者を引退したら花屋になる」

「じゃあ、スパイキーは十歳になったらすぐにジョブ適性判断を受けて、ホド学院を卒業してすぐに冒険者になるのか?」

「今はまだそこまで考えてないし、細かいことも決めてもいないけど……それもいいかな、と思ってる」

「そっか……」


 幼馴染の強い決意表明に、バッカニアもヨーキャも無言になる。

 三人とも、これまで明確な将来設計はしていなかった。

 バッカニアは漠然と『流離いの剣士にでもなろうかなー』程度しか考えてなかったし、ヨーキャも『大工は無理だから、魔法使いになれたらいいなー』くらいしか思っていなかった。


 そんな中、親友のスパイキーは己の目指す新たな夢を見つけた。しかも『花屋を継ぐ』という今までの夢も捨てずに、二つの夢を持ち続けるという。

 真っ直ぐに前だけを見つめるスパイキーの顔は清々しさに溢れていて、バッカニアとヨーキャにはそれがとても眩しいものに思えた。


「……しゃあねぇなぁ。そしたら俺も剣士になって、冒険者になるか」

「!?」

「そだねー。ボクも魔法使いになって、皆と同じ冒険者になろうっと」

「!?!?」


 親友二人の突然の冒険者になる!宣言に、今度はスパイキーが目を丸くして固まる。

 バッカニアとヨーキャもまた、スパイキーの仰天顔などどこ吹く風で話を続ける。


「お、ヨーキャも冒険者になるのか? そしたら俺とスパイキーとヨーキャの三人で、パーティーを組もうぜ!」

「いいねぇ、いいねぇ♪ バッカ兄とスパイキー君とボク、この三人で組めば絶対に有名なパーティーになれるヨ!ウキョキョ☆」

「そのためには、やっぱ強いジョブが必要だよな!……よし、俺は明日教会に行って、ジョブをもらってくるわ!」

「え? 明日は絶対にフェリックスさんに会うんじゃなかったのん?」

「あ、そうだった。……そしたらしゃあない、ジョブをもらうのは明後日だ!」


 将来設計に大いに盛り上がるバッカニアとヨーキャに、固まっていたスパイキーも徐々に解れて自然と笑みが溢れる。


「ククク……バッカニア兄はそそっかしいなぁ」

「うっせー!ちょっと忘れてただけだ!それに、ジョブ適性判断の答えの期限は明後日までだし!明後日行きゃ問題ねぇ!」

「バッカニア兄、そしたら明日俺もフェリックスさんに会いに行っていいか?」

「そりゃもちろん!会っちゃダメなんて理由はねぇぜ!」

「ありがとう、バッカニア兄」


 バッカニアのそそっかしさを揶揄うスパイキーに、バッカニアが懸命に反論する。

 スパイキーとヨーキャがバッカニアにツッコミを入れて、バッカニアがそれに猛然と反論する―――三人のこの定番のスタイルは、この時既に出来上がっているようだ。


「あ、バッカ兄、そしたらボクもいっしょにいていい!?」

「ン? スパイキーがフェリ兄に会いたがるのは分かるけど、何でヨーキャも会いてぇの?」

「そりゃフェリックスさんは冒険者の先輩だもの!先輩からいろんなお話を聞くことで、将来皆で冒険者になるための準備や勉強もできるでしょ? デショ?」

「ンー、言われてみりゃそうだな…………よし、明日は皆でフェリ兄に会おうな!」

「「うん!!」」


 ヨーキャの紛うことなき正論に、バッカニアも素直に頷き認める。

 明日はフェリックスに会い、明後日はバッカニアのジョブ【天下無双の剣豪】を得ることが決まった。

 明るい未来を夢見る子供達の笑顔は、限りなく希望に満ち満ちている。


 ホド生まれのバッカニアとスパイキーとヨーキャ、三人が組むパーティー『天翔るビコルヌ』が正式に結成されるのは、この時から三年後のこと。ヨーキャのホド学院卒業後すぐのことだ。

 そしてこの日の出来事は、彼らのパーティー『天翔るビコルヌ』の原点が生まれた日でもあった。

 三話にも渡る大長編SS、ようやくこれにて完結です。

 つか、今話も7000字超えという大ボリューム……前後編で収まる訳なかった><


 というか、投稿時間もかなり遅くなってしまったのは、書いても書いても終わらない上に新キャラの名付けまでしなきゃならなかったのが主な原因です……

 前話はワンコの名付けで悩み、今話はバッカニアの先輩とスパイキーの父ちゃんの名付けで苦戦。ホント作者は名付け作業が苦手なんですよぅぉぅぉぅ(TдT)


 しかし。何はともあれ、拙作三歳のお誕生日を祝うSSを書き上げることができて、作者はホッとしております。つか、SSは当分いいや……ぃゃ、そもそもSSを出すような機会自体当分ないんですけど。


 明日からまた本編の方に話は戻ります。

 これまで誕生日SSにお付き合いくださり、ありがとうございました。

 またSSを書けるような機会にいつか恵まれることを願いつつ、明日からまた本編執筆に頑張ります!

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