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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
年末年始と冬休み

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第1069話 奇跡の交流

 ラグナロッツァの屋敷で昼食を食べたライトとレオニスは、カタポレンの家に移動した。

 二人は外に出て家の北西側、四阿のあるエリアに向かう。


 ここは家の周辺で唯一ラウルの畑になっていない平地エリア。ラウルやライト達が一休みできるように、と建てた四阿の他にも天空島への転移門がある。

 そして、このエリアの転移門は実は天空島用だけではない。シュマルリ山脈南方の竜王樹の近くに行ける転移門も設置されていた。


 この竜王樹のもとに行ける転移門は、ユグドラグスの指導を直接受けた白銀の君が設置したものだ。

 神樹襲撃事件の後、ユグドラグスはレオニスに頼み込んで転移門の仕組みや作り方を教えてもらった。それを白銀の君も習得し、主に神樹達のもとに転移門を作ったのだ。


 それは、ユグドラツィの危機に救いの手を差し伸べることができなかったという強い悔恨の念からきている。

 分体を通じて姉の生命の危機を目の当たりにしていながら、何もできなかったことをユグドラグスは痛烈なまでに悔しく思っていた。

 今後二度とそんな悔しい思いをしないよう、ユグドラグスは可能な限り他の神樹同士を結ぶ転移門ネットワークを構築したのである。


 現時点では、竜王樹のもとにある転移門から行ける先は四つ。

 その行き先の内訳は、天空島、八咫烏の里、ユグドラツィ、そしてライト達が住む家の横である。

 ちなみに海樹は水中住まいということで泣く泣く除外してある。


 いや、本当は海樹のところとも繋げようと思えば決して不可能ではない。ライト達のように、水の女王や海の女王の加護を得ることができれば白銀の君が海に出向くこともできるようになる。

 だが、水の抵抗がある世界で巨体の白銀の君が自由自在に動き回れるとは到底思えない。

 万が一海樹のもとで何らかの事件が起きたとして、思うように動けない白銀の君が駆けつけたところで足手まといにしかならないのは明白。

 そうした諸々の事情により、海樹のもとに転移門を作るのは断念したのだ。


 そして、ライト達が住むカタポレンの家にも神樹族ネットワークの一端を設置したのも、竜王樹の強い願いを受けてのことだ。

 ユグドラグスには『万が一のことが起きた場合、絶対にレオニスさん達の助けも必要になるはず』『どうかレオニスさん達の力を貸してほしい』と強く請われた。

 確かに白銀の君や中位ドラゴン達の助力はものすごく強力なものだが、その一方で彼らの巨体では入り難い場所も多々あるだろう。


 神樹襲撃事件を例に取ると、多数の首狩り蟲に襲われたユグドラツィを助けるには、首狩り蟲の完全除去が必須となる。

 この場合、ユグドラツィの枝葉に入り込んだ首狩り蟲を白銀の君や中位ドラゴン達が退治するのは不向きだ。

 まさかユグドラツィの枝葉ごと焼き払う訳にはいかないし、枝葉を無理矢理押しのけて首狩り蟲を追い屠るのも無理がある。

 こうした場面では、白銀の君達が入れないところにも入り込める機動性の高いレオニス達の助力を得る方がいいのは間違いない。


 そんな訳で、ライト達のカタポレンの家の横にも竜王樹特製の転移門が目出度く設置された、という経緯がある。

 もちろんライト達にとっても、ユグドラグスの申し出に否やはない。

 さらには転移門の使用者条件を『神樹族の加護を最低一つは所持している』と指定しているので、見知らぬ他者に悪用される心配はないし、ライト達も条件を満たしているから問題なく使える。

 シュマルリ山脈南方へのより迅速な移動手段として、今ではライト達も活用させてもらっているのである。


 そうしてシュマルリ山脈南方に転移門で移動したライト達。

 竜王樹のすぐ横に現れたライトとレオニスに気づいたユグドラグスが、二人に声をかけた。


『あ、レオニスさんにライト君。いらっしゃい』

「ラグスさん、こんにちは!」

「よう、ラグス。元気にしてたか?」

『はい、おかげさまでこの通り、恙無く過ごしています』

「そっか、そりゃ良かった」


 弾むような声でライト達の来訪を歓迎するユグドラグス。

 その喜びを示すかのように、枝葉がサワサワと揺れる姿は姉のユグドラツィやユグドラシアにそっくりである。


『今日のご用向きは、もしかしてアレ(・・)ですか?』

「正解。……つーか、派手にやってんなぁ」

「???」


 ユグドラグスの問いかけに、レオニスはとある方向を見ながら頷いている。

 はて、アレとは何ぞ?とライトは不思議に思いつつ、レオニスが見遣る方向に自分も目を向けてみる。

 すると、その視線の先で何やら大量の砂埃やらドッカーン!といったけたたましい騒音が鳴り響いている。

 そこは、かつて竜騎士達が研修場所として使用していた野営地だった。


「……あ、もしかして今あそこで竜騎士さん達が修行してるの?」

「そうそう。あいつら研修が終わってからも、ちょくちょくどころか頻繁にあの野営地に通っては獄炎や鋼鉄達と手合わせしているらしい」

「そうなんだー、竜騎士さん達って真面目な人が多いんだね!」

「ぃゃ、あいつらの場合ただ単に竜族が好き過ぎて、竜族と戯れたいがために通ってるだけな気もするがな……」


 遠目にも激しいバトルが繰り広げられているのが分かる野営地方向を眺めながら、ライトとレオニスがのんびりと会話している。

 しかし、それにしても砂埃や煤煙が結構な勢いで出続けている。

 それを見たライト、何の気なしにレオニスに問うた。


「ていうか、竜騎士さん達、いっつもあんな激しい模擬戦?してるの?」

「……ぃゃ、さすがにあれはちょっと激し過ぎるような気が……なぁ、ラグス、もしかしてあれ、白銀も混ざってんのか?」

『あ、はい。ディランさん達の修行に、最近では白銀も参加するようになりまして』

「……マジ?」

『マジです』


 あまりにもけたたましい野営地の様子に、レオニスも藪睨みしながら見ていたのだが。まさか白銀の君まで竜騎士達の修行に付き合っているとは、さすがのレオニスもびっくりである。


「あいつら、白銀の扱きを受けてよく生きてるな……」

『それはまぁ、白銀も一応手加減なり力の調整なりしているでしょうし……でも、それを差し引いてもディランさん達はよく頑張ってると思いますよ』

「だな」


 ほとほと感心したように呟くレオニスに、ユグドラグスも同意している。

 竜の女王たる白銀の君が本気で力を出せば、飛竜乗りの竜騎士などあっという間に蹴散らされてお終いだろう。

 そうならずに善戦?しているように見えるのは、ひとえに白銀の君の絶妙な力加減があってこそ。

 より強くなろうと努力する若人の芽を潰すような真似は、決してしないのだ。


「じゃ、俺達もあっちの様子を見に行くとするか」

『お気をつけていってらっしゃい』

「おう、ありがとよ。ライト、行くぞ」

「うん!ラグスさんも、白銀さんや竜騎士さん達の頑張りをよく見ててくださいね!」

『もちろんです』

「いってきまーす!」


 竜騎士達の野営地に向かってレオニスが駆け出し、ライトもそれに遅れることなく勢いよく山の坂を下っていく。

 二人の人族が走っていく後ろ姿を、ユグドラグスは微笑ましい気持ちで眺めていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 そうしてユグドラグスのいる山から下りて駆けるライト達。

 この近辺は全く木が生えていない岩山、坂の上り下りはあるものの木という障害物がないだけ気楽に走れる。

 ユグドラグスのもとを飛び出してから約一分半、竜騎士達の野営地に到着したライト達。

 目の前では、飛竜に跨った五人の竜騎士達と白銀の君が激しい戦いを繰り広げていた。


「おぉおぉ、こりゃまた盛大にやってんなぁ」

「竜騎士五人を相手にして、まだまだ全然余裕っぽい白銀さんもすごいけど……白銀さんに果敢に挑む竜騎士さん達もすごいね……」

「だなぁ。研修の最初の頃に比べたら、あいつらもすんげー逞しくなってると思うわ」


 激しい空中戦を繰り広げている様子を、ライトもレオニスも感心したように見上げている。

 するとそこに、誰かがのっそりと近づいてきた。獄炎竜である。


「ヨゥ、レオニス」

「おお、獄炎じゃねぇか。お前らは今日は見学か?」

「アア。俺ラハ、アイツラト、朝ニ戦ッタカラナ。今ハ、アッチデ皆デ、白銀ノ君ノ戦イブリヲ、見学シテイルトコロダ」

「そっか。んじゃ俺達もそっちに行くか」


 獄炎竜の話に、ライト達も他の者達と合流すべく移動する。

 のっしのっしと歩く獄炎竜の後を、ライトとレオニスがタッタッタ……と駆けていると、獄炎竜がピタリ、と足を止めた。

 そして徐にライトの身体をヒョイ、と優しく掴んで己の肩にポン、と乗せた。

 思わぬ親切に、ライトは嬉しくなり礼を言う。


「獄炎さん、ありがとうございます!」

「オ、オゥ……ココハ、チッコイ子供ニハ、トテモ危険、ダカラナ」

「獄炎さんって、とっても優しいんですね!」

「オ、俺ガ、優シイ? ソンナン、初メテ言ワレタワ……」


 ライトの嘘偽りない心からの礼の言葉に、獄炎竜が照れ臭そうに己の爪で頬をポリポリと掻く。

 間違ってもライトは普通のちっこい子供ではないのだが、強大な竜族から見たら人族の子供など実に脆く非力な存在。

 特に獄炎竜達は、ウィカをこよなく愛することからも分かる通り、小さくて可愛いものが大好きなのだ。


 そして野営地の隅の隅に移動したライト達。

 獄炎竜の案内で着いた先には、いつもの面子である他の中位ドラゴン三頭と五人の竜騎士がいた。

 獄炎竜が連れてきた飛び入り客に対し、竜騎士達は一斉に立ち上がってレオニス達を出迎えた。


「あッ!レオニス卿!」

「いらっしゃい!我らの修行を見にいらしたのですか?」

「そちらのお子さんは、噂に聞く養い子君ですか?」


 獄炎竜がライトを地面に下ろしている間に、レオニスを一斉に取り囲む竜騎士達。

 レオニスも「よう、修行頑張ってるようじゃねぇか」「ああ、最後の仕上げに入ってると聞いてな、様子を見に来たんだ」「そう、この子は俺の尊敬する人の忘れ形見でな、ライトってんだ」等々、きちんと返事を返している。


 そして会話の中で軽く紹介されたライトの方も「ぼくは、ライトっていいます!レオ兄ちゃんがいつもお世話になってます!」と頭を下げて挨拶をした。

 そんなライトに、竜騎士達は皆「ほう……とても賢いお子ですね」と感心しきりである。


 一方の中位ドラゴン達、鋼鉄竜に氷牙竜に迅雷竜は、地べたにペッタリと座り込んでいる。

 前に脚を放り出してペターッと座る姿は、実にコミカルで可愛らしいものだ。

 そんな間抜けな姿で座っている鋼鉄竜達に、レオニスが声をかけた。


「よう、鋼鉄、氷牙、迅雷。のんびりお休みか?」

「オオ、レオニスカ。我ラハ今、白銀ノ君ノ戦イヲ、見学シテオルノダ」

「ソソソ。デモ多分、ソロソロ交代ノオ声ガ、カカルンジャネェカナー」

「ダナー。ディラン達モ、コッチノ五人ト、交代スル頃合イダヨナー」


 のほほんと休憩する鋼鉄竜達。

 聞けば彼らも獄炎竜同様、午前中から模擬戦を続けていたという。

 するとここで、氷牙竜がはたとした顔でレオニスに声をかけてきた。


「ソウダ、レオニス、チョウドイイトコロニ来タ。エクスポクレ」

「エクスポ? そんなん竜騎士達も大量に持ってきてんだろ?」

「ンナモン、昼ニナル前ニ、全部食ッチマッタ」

「レオニス!エクスポクレ!」

「「「クレーーー!!」」」

「お前らね……俺の顔を見るなりエクスポを強請るその癖、何とかならんの?」

「「「「ナラーン!」」」」


 中位ドラゴン達の中では『レオニス=美味いモノ(エクスポーション)をくれる人族!』という図式が既に完成しているようで、早速エクスポーションのおねだりをしてきたではないか。

 そのことにレオニスがほとほと呆れるも、四頭は全く悪びれることなく笑顔でエクスポーションを待ち侘びている。

 そんな無邪気な四頭に、レオニスはぶつくさ言いながらも空間魔法陣を開く。


「ったく、しゃあねぇなぁ……ほれ、皆口を大きく開けて待ってろ」

「「「「アーーーン♪」」」」


 レオニスの指示に従い、一斉に口を開けた中位ドラゴン達。

 そんな素直な中位ドラゴン達の口に、宙を飛ぶレオニスが一頭につき二十本のエクスポーションを順番に放り込んでいく。

 美味しいおやつを得た中位ドラゴン達は、もっしゃもっしゃとエクスポーションを頬張っている。


「ンー、()()ァーイ」

「戦イノ後ノ、エクスポハ、マジ美ン味ァーイ」

「毎日デモ、食イターイ」

「コンナニ美味イモンハ、コノ世ニネェヨナー」

「お前らな、エクスポってのは飲み物であって食いもんじゃねぇぞ?」


 瓶入りのエクスポーションを、ぽわぽわとした顔で実に美味しそうに頬張る中位ドラゴン達。

 飲み物であるエクスポーションを食い物扱いする中位ドラゴン達も大概だが、結局は彼らの願いを叶えてあげてしまうレオニスも大概甘いのである。


 だがしかし、これは他の者から見れば実に驚異的なことだ。

 取るに足らない非力な人族が、強大な力を持つ竜族と対等に渡り合っている―――これに驚かない者など、いようはずもない。

 竜騎士達も、レオニス達のこのやり取りを何度も見てきているが、未だに慣れない。彼らにとって竜族とは、崇め奉ると言っても過言ではない程に崇敬の対象なのである。


 しかしその一方で、こんな交流も悪くはない、とも思う。

 レオニスが中位ドラゴン達と知己を得たことにより、自分達竜騎士もこうして竜族と交流する千載一遇の機会を得られたのだから。

 人族と竜族、この奇跡の交流を目の当たりにしている竜騎士達の顔にも、自然と笑みが溢れていた。

 ライト達のお出かけ先、シュマルリ山脈南方での竜騎士達の修行の風景です。

 今回移動手段をどうしようかなー、と考えていたんですが。そういやラグスがレオニスに転移門の指南を受けてたよなー、その成果も示さなきゃだし……よーし、ライト達の移動時間短縮も兼ねて、ここで神樹族用転移門ネットワークをお披露目しちゃえー!と相成りました。


 そして、中位ドラゴン達がこよなく愛するエクスポーション。

 ホントにねぇ、中位ドラゴン達の出番が来る度に毎回四頭が「エクスポ食ワセロー!」と作者の脳内で叫ぶのですよ…(=ω=)…

 この食いしん坊どもめ、一体誰に似たんだ!(`ω´) ←唯一の生みの親

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