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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
年末年始と冬休み

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第1063話 調べ物三昧の日々

 翌日からのライトは、ひたすら調べ物に励む日々が続いた。

 ラグーン学園での昼休みはもちろんのこと、放課後にも中等部の図書室通いに勤しむ。

 調べる内容は、もちろん神威鋼の交換素材の入手関連だ。

 未入手素材の海蜈蚣、赤小鬼、黄大河蟹などの出没場所、ドラゴタイラントの生態、そして『呪われた聖廟』のある場所。


 海蜈蚣は小さな港町センチネルの浜辺、赤小鬼はナディアという村の郊外にある山、黄大河蟹は黄大河の中流に出ることが分かった。

 一方でドラゴタイラントの詳細な資料は、中等部の図書室では見つけることができなかった。だがその生息地はシュマルリ山脈であることは分かっている。

 ならば白銀の君や中位ドラゴン達に話を聞く方が早い。『餅は餅屋』の諺通り、同一地域に棲むドラゴンのことはドラゴンに聞くのが早道なのである。


 そして、最も謎に包まれた『呪われた聖廟』。

 これが一番の難関で、こちらもラグーン学園の中等部図書室では一切見かけることができなかった。

 行き詰まったかに思えた調べ物だったが、水曜日の夕方に解決の糸口を発見した。

 レオニスの書斎の奥の片隅にあったとある本を見つけたことで、ようやくその一端を知ることができたのだ。


 その本のタイトルは『世界不可思議発見!呪われた遺跡大特集!』。壮絶に胡散臭いタイトルだが、ライトはとりあえずその本を読み進めてみた。

 その結果、どうやらこの本は『オカルトマニアが編纂した書籍』の類いだということが分かった。

 後にレオニスにその本のことを聞いてみたところ、『一見胡散臭い本だが、架空の夢物語ではなく全て実在する場所のことを書いてあるので、一応資料用として持っている』とのこと。

 だから本棚の中でも隅の隅に置いてあったのかー、とライトも納得の話である。


 その本によると、ライトが知る『呪われた聖廟』という名の遺跡は実在する。それは海に浮かぶ『ブリーキー』という名の孤島にあるのだという。

 孤島と言う通り、そこは完全な無人島。だが、サイサクス大陸側からもそこに島がある、と分かる程度には目視可能な範囲にある。

 地図を見ても、陸地からそこまで遠くない島のようだ。


 そしてサイサクス大陸からの最寄りの街は、センチネルという小さな港町。そう、奇しくも海蜈蚣が出るとされる浜辺のある街だ。

 『世界不可思議発見!呪われた遺跡大特集!』に書かれた『呪われた聖廟』に関する記述を一通り読み終えたライト、思わず破顔する。


「お、そしたら海蜈蚣を採取したついでに『呪われた聖廟』に行けばいいんじゃーん!ラッキー!」

「……って、このセンチネルって街に行く口実はどうしよう? この街に何か名産品とか観光名所とかないかな?」

「えーっと、各地の観光資料はどれだっけ…………あ、これか!」


 目下の最大の目的地『呪われた聖廟』の場所が分かったところで、次はその隣接地域であるセンチネルの情報を集めるライト。

 センチネルの観光名所や名産品、特に食べ物関係の特産品が一つでもあればラウルに『センチネルに行こうよ!』と持ちかけられる!という目論見である。


 そうしてライトが探した当てたのは『アクシーディア公国・全国津々浦々グルメの旅』という本。これもレオニスの書斎内で見つけたものだ。

 これは文字通り、アクシーディア公国の全国各地のグルメ情報を網羅した、いわゆるグルメ情報雑誌のようなものである。

 全国津々浦々のグルメを紹介しているならば、きっとセンチネルのご当地グルメも載っているに違いない!という期待を胸に、ライトはパラパラと本のページを捲っていく。


「……お、あったあった」

「ほほう……センチネルの浜辺に出るシーファルコンの肉や羽飾りが名産品なのかー。何ナニ、シーファルコンの肉はそのままでは硬くて美味しくない?ので、ジャーキーにして食べるのが一般的である?」

「センチネルでは、このシーファルコンのジャーキーを使ったスープや炊き込みご飯も名物として地元の人に愛されている、と……」


 ライトの狙い通り、本の中で紹介されていたセンチネルの特産品情報に目を通していく。

 センチネルの浜辺に出没する、シーファルコンという雑魚魔物。どうやらこれがセンチネルにおけるご当地グルメの役割を果たしているらしい。


「ジャーキーって、要は干し肉ってことだよな。スープの具や炊き込みご飯にも使えるってんなら、絶対にラウルもレオ兄も好きなヤツだな!」

「よし、今度の土日にラウルを誘ってセンチネルに行こうっと!」

「てゆか、一応レオ兄にもセンチネル行きの許可をもらっておこう……まだ一度も行ったことのない街だし」

「あ、ついでに『呪われた聖廟』のことも知っているかどうか、今日の晩御飯の時に聞いてみるかー」


 シーファルコンのジャーキーを知ったライト、センチネル行きが確定したことを確信しガッツポーズを取る。

 そう、一般的に干し肉と言えば冒険者の主食!と言われるくらいには冒険者御用達の食糧である。

 現にジョージ商会の三階『冒険者用品売場』には、様々な種類の干し肉が販売されていたのをライトも覚えている。


 いや、ライト自身はいつもラウルが作ってくれる食事とアイテムリュックがあるから、干し肉など今まで一度も食べたことがない。

 そしてそれはレオニスも同じで、ライトはレオニスが干し肉を食べているところを一度も見たことがない。

 だが、レオニスとて昔は普通に干し肉を食べていたに違いない。少なくとも駆け出しの頃、ラウルと出会う前までは他の冒険者達同様の食生活を送っていたはずだ。


 そしてそれはレオニスだけでなく、ラウルにも同じことが言える。

 ラウルの料理で、これまで干し肉を使ったメニューが出てきたことはただの一度もない。何故ならわざわざ干し肉を使う必要性がなかったからだ。

 肉は牛豚鶏の他にも、パイア肉やペリュトン肉などの美味しいものがいくらでもすぐに手に入る。そんな環境の中で、わざわざ干し肉を使う理由などラウルには皆無だったのである。


 そんなラウルの耳元で『シーファルコンのジャーキーを使えば、お料理の幅が広がるよ♪』と囁やけば、一体どうなるか。

 絶対に「センチネルに行く!」となること請け合いである。


 ライトは本棚に本を仕舞い、レオニスの書斎から出てラグナロッツァの屋敷に向かっていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 その日の晩御飯も、ライトとレオニス、ラウルとマキシの四人で食べる。

 食事の間に、皆それぞれ今日一日あったことを話している。

 レオニスは新しく建てているラグナロッツァ孤児院がもうすぐ完成しそうなこと、ラウルは昼間に行っている呪いの鉄鍋の実験模様、マキシはアイギスの仕事がクリスマスも大詰めで超多忙ながらも、とても楽しいこと等々。


 どの話も楽しく聞いていたライト。

 今度は自分の番!とばかりに話を切り出した。


「あ、ねぇ、ラウル、今度センチネルって街に行ってみない?」

「ン? 初めて聞く名前の街だな。そこには何かいいもんでもあんのか?」

「うん、今日レオ兄ちゃんの書斎にあった本を読んでたらね? センチネルって街にはシーファルコンのジャーキーっていう、とっても美味しい干し肉があるんだって!」

「干し肉、か? 干し肉って、要は乾燥させた肉だよな?」

「うん、そうだよー。冒険者も遠征の時によく食べるものだよー」

「ンーーー……干し肉、ねぇ……」


 ライトが持ちかけた話なのに、イマイチな反応のラウル。

 これは一体どうしたことだろう。


「俺に言わせれば、わざわざ乾燥させた肉を食う意味が分からないんだよな。肉なら生で美味しいものがいくらでもあるし、鮮度も空間魔法陣に入れときゃずっと新鮮さを保てるし」

「……ぁー……」


 ラウルの言葉に、彼の反応がイマイチだった理由が分かったライト。

 空間魔法陣持ちのラウルには、肉を乾燥させて携帯する意味が分からないのだ。

 そもそも干し肉とは、保存性と携帯性を兼ね備えたもの。その存在意義は非常食としての意味合いが強い。

 だが、空間魔法陣があれば鮮度維持はもちろんのこと、持ち運びだって全く問題ない。故にこれまでのラウルは、干し肉の意味を理解する必要すらなかったのだ。


 しかし、ここで引き下がるライトではない。

 ラウルの理解を得るべく、干し肉の有用性を懸命に説き始めた。


「えー、ラウルってば、乾物は生の時よりも干して乾かした方が旨味が増すこと、知らないの?」

「……言われてみれば、昆布とか鰹節、シイタケなんかは乾燥させたもので出汁を取るが……」

「そうそう、それそれ!あと、干し貝柱とかドライトマトなんかもあるし、魚の干物も同じ原理なんだよ!」

「何? 貝柱やトマトも乾燥させたものの方が美味いのか?」

「うん!トマトは種類にもよるけどね。……あ、あとね、ラウルがたまにスイーツに使う干しぶどう、あれも乾物だし。ドライフルーツも立派な乾物で、干し肉の仲間なんだよ!」

「そうなのか……食べ物を乾燥させるのは、ただ単に長持ちさせるためだけかと思ってたわ」


 ライトの懸命の説得に、ラウルも興味を示し始めている。

 昆布や鰹節はラウルも旨味調味料としてよく使うし、干しぶどうやドライフルーツもスイーツ作りに度々使用したことがある。

 ドライフルーツを干し肉の仲間!と言い切るのはどうかと思うが、食材を乾燥させて日持ちを良くして旨味成分を増すという意味では確かに同類に違いない。

 ライトとラウルがそんなやり取りをしていると、そこにレオニスも話に加わってきた。


「そういやラウルの料理に、干し肉が使われているものって一つもないよな」

「まぁな。今まで干し肉を買う機会もなかったしな」

「しかしラウルよ。お前も今や冒険者となったんだから、一度は干し肉というものを知るべきじゃねぇか?」

「そうなのか?」


 レオニスの言葉に、ラウルが目を見開きつつ不思議そうな顔をしている。

 そんなラウルに、レオニスが先輩冒険者として語る。


「俺達はラウルと空間魔法陣のおかげで、どこに遠征しても美味い飯を食える。だが、他の冒険者達はそうじゃない。干し肉ってのはな、冒険者なら絶対に一度は食う主食みたいなもんだ」

「主食……何故干し肉が主食になるんだ?」

「肉を干す、つまりは水分を抜くことで重さを減らし、嵩張る荷物の容量を減らす。でもって、水分の少ない食糧は腐りにくい。つまり日持ちがよくなるってことだ」

「干し肉には、そういう利点があるんだな……」

「そう、俺達のように空間魔法陣を使えない冒険者パーティーにとって、干し肉は理想の食糧なんだ。その味の良し悪しはともかくな」

「…………」


 レオニスが語る干し肉の存在意義に、ラウルも真剣な顔で聞き入る。

 ラウルは冒険者になったばかりなので、そういった先達の歩んできた歴史もまだよく知らない。

 冒険者の大先輩であるレオニスから聞く話は、全てが新鮮で驚きに満ちていた。


「ラウル、お前は冒険者になったばかりだし、今まで干し肉に触れる必要も機会もなかったから知らないのも無理はない。だが、お前も正規の冒険者として活動するようになったんだ、これを機に干し肉というちょっと変わった食材を極めてみるのもいいんじゃないか?」

「……そうだな。ご主人様達の言う通りだ」

「つーか、干し肉の味を知らん冒険者なんて前代未聞だぞ? 他の冒険者達が食糧として愛用する必需品だ、お前もその味を知っておいて損はなかろう」

「ああ。俺も冒険者の端くれとして、干し肉の美味い食い方や調理方法を研究しなくちゃな」


 さり気ないレオニスの勧めに、ラウルも力強く頷く。

 ラウルがこのラグナロッツァの屋敷を守る執事だけをしていた頃なら、干し肉を知らずに過ごしてきても問題はなかっただろう。

 だが、ラウルがラグナロッツァの冒険者ギルド総本部に冒険者登録してから早十ヶ月。もうすぐ一年が経とうとしている。

 階級も異例の早さで黒鉄級になり、今や押しも押されぬ立派な中堅冒険者となった。

 そんなラウルだからこそ、同業他者が必需品として愛用する干し肉を知るべきなのだ。


 そのことを自覚したラウル。

 改めてライトの方に向き直って声をかけた。


「ライト、その美味い干し肉?がある街は何だっけ、センチネル?」

「あ、うん、そうだよ」

「今度の休みの日に、俺といっしょにセンチネルに行って買い物に付き合ってくれるか?」

「……うん!」


 センチネルの話を切り出した最初の時は、ライトがラウルを誘う格好だったのに、今度はラウルがライトに買い物の同行を願い出ている。

 経緯はどうあれ、センチネルの街に行く!というライトの計画は無事成就しそうだ。

 次のお出かけが決まり、嬉しそうに頷くライト。

 その屈託のない笑顔に、ラウルも静かに微笑んでいた。

 ライトが神威鋼を入手するために奮闘する回です。

 序盤でドラゴタイラントの生息地がシュマルリ山脈だという話は、第541話にてラウルが語っています。

 というか、今回も新しい地名を複数捻り出すのに苦心してました_| ̄|●

 人名も地名も、名前が決まらないうちは『●●』という暫定の仮名で下書きを書き進めているのですが。そのうち『●●』のままうっかり投下しそうでコワイ・゜(゜^ω^゜)゜・

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