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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
年末年始と冬休み

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第1056話 玄武の成長促進計画

 氷の洞窟最奥の間にて、早めの昼食兼お茶会を始めたライト達。

 昼食を食べるライトとラウルはハンバーガー、ウィカにはジャイアントホタテの刺身、アル親子と氷の女王には練乳がけのかき氷を出している。

 そして玄武には、氷の女王が己に出されたかき氷を手ずから分け与えていた。


『玄武様、美味しゅうございますか?』

「クアッ!」

『それはようございました』

「♪♪♪」


 ともにかき氷を交互に食べる氷の女王と玄武。

 その仲睦まじさに、ライト達もほっこりしている。

 だがその一方で、ライトは玄武の小ささが気になっていた。


 ライトは神殿守護神がどのようにして成長していくのか、そこまで詳しい訳ではない。

 だが、これまでライトがその手で孵化してきた目覚めの湖のアクアや暗黒の洞窟のクロエはその成長が著しく早く、ほんの一ヶ月二ヶ月で見違える程に体格が大きくなっていった。

 それに比べて、玄武の成長がかなり緩やかなのは間違いない。

 テーブルの向かい側でかき氷を食べる玄武を見ながら、ライトは頭の中で思案する。



『アクアやココに比べて、どうして玄武はこんなに成長が遅いんだろう?』

『そりゃ神殿守護神にだって、多少の個体差や住環境の違いなんかはあるだろうけど……それでもゲーム内で言えば『神殿守護神』という括りがあるんだから、その成長に関してもある程度は共通してると思うんだが……』

『…………もしかして、餌が足りない、とかか?』



 思案中に浮かんだ『環境の違い』という点から、ライトはふと思い当たる節があった。

 それは『成長の糧となる餌が、周囲に豊富にあるかどうか』という環境面の問題である。


 アクアが住む目覚めの湖には、湖だけに餌となる魚介類や水藻類などが豊富にある。また、クロエのいる場所にも木の実が成っていたり花もたくさん咲いていた。

 だが、この氷の洞窟には氷以外に何もない。強いて言えば最奥の間を出れば魔物が出るが、氷の女王が洞窟の魔物を狩って玄武に与えている様子はない。


 ラウルが作る野菜が大好物のヴィゾーヴニルやグリンカムビを見れば分かる通り、神殿守護神達も何かしらの食物を食べることで成長が促進される。それは使い魔の卵を孵化させるのと同じく、食物を摂取することで彼らは経験値を得てレベルアップしているのだ。


 そしてこの神殿守護神のレベルアップ方法は、実は食物摂取以外にももう一つある。それは『属性の女王が放つ魔力を少しづつ取り込んで成長する』というものだ。

 例えば火山神殿とも呼べるエリトナ山のガンヅェラ、天空神殿のグリンカムビ、雷光神殿のヴィゾーヴニルなどがこの方法によって成長していった。


 これらの守護神達は、どれも齢数百年を超える強者。

 そして共通するのは『簡単に直接摂取できる餌が周囲になかった』ということ。

 今でこそ彼らは皆立派な巨躯を誇るが、それは少しづつを魔力を取り込み数百年という長き時をかけて獲得していった結果なのである。


 だが、属性の女王達や神殿守護神達は何百年と生きていられるが、ただの人族であるライトはそこまで長く生きられない。

 できれば自分の目が黒いうちに、立派に成長した彼らを見たい!とライトは思う。

 アクアやクロエだけでなく、玄武や朱雀が大きくなった姿も絶対に見届けたい。そのためには、彼らの栄養摂取をサポートする必要がありそうだ。


 このことに考えが至ったライトは、早速ラウルに話しかけた。


「ねぇ、ラウル。玄武にも何か他の食べ物をあげてみてもいいかな?」

「ン? そりゃ別に構わんが……ライトは玄武に何をあげたいんだ?」

「ンー、そうだなぁ……とりあえず温室で育てたニンジンと、ジャイアントホタテの刺身の小さいのがあったら出してくれる?」

「了解ー」


 ライトのお願いに、ラウルが快く応じる。

 ライトがニンジンとジャイアントホタテの刺身の二種類を指定したのには、一応理由がある。

 まず一つ目は、ニンジンなどの野菜類を食べるかどうかの確認。そしてもう一つは、亀の食性に合わせてのチョイスである。


 いや、ライトも決して四神の一柱である玄武と亀を混同している訳ではない。

 だがしかし、玄武とはそもそも亀をモチーフとした伝説の生き物。見た目的にもまんま亀なので、もしかしたら水棲生物である亀が好むとされる魚介類が口に合うかも?とライトは考えたのである。


 そして何より、ライトは気づいていた。氷の女王達の横、テーブルの上でウィカがジャイアントホタテを美味しそうに食べるのを、玄武が横目でチラッ、チラッ、と見ていたのを。

 これはもしかして、玄武はウィカが食べているホタテの刺身が気になるのかも?とライトは思ったのだ。


 ラウルが出してくれた、ラグナロッツァ産の通常サイズのニンジンと、エンデアン産ジャイアントホタテの刺身を乗せた皿。それをライトが玄武の前に差し出しつつ声をかけた。


「玄武、もしよかったらこれも食べてみる?」

「ンァ?」


 氷の女王の腕の中で、玄武は『コレ、何ー?』という顔をしながら小首を傾げている。

 そしてライトは続けて氷の女王にも話しかけた。


「氷の女王様、玄武に食べ物をあげてもいいですか? もちろん安心安全な無農薬野菜ですし、水属性の玄武が好きそうな新鮮な魚介類なんかです!」

『ムノーヤクヤサイ? ギョカイルイ? それは何ぞ?』

「えーとですね、無農薬野菜というのは『毒など全くなくてとても美味しい植物』で、魚介類というのは水神アープのアクアも好んで食べるものです」

『ほほう、それは我としても気になるのぅ。しかし……まだ幼き玄武様に、洞窟の外の食べ物を食べさせてもよいものなのかのぅ?』


 ライトの話に氷の女王は興味津々の様子だが、同時に不安も感じているようだ。

 確かに氷の女王の不安も分かる。洞窟産のものではなく、洞窟外の訳の分からないものを食べさせてよいかどうか。判断に迷うのも当然である。

 だが、そこはラウルが育てた野菜にエンデアンで直接買い付けた海鮮類。絶対に間違いなく美味しいことは保証できる。

 ライトはそこを強調することにした。


「ニンジンはラウルが自ら育てた野菜で、ホタテも鮮度抜群の新鮮なものをラウルが選んだものなんですよ!」

『何? ラウルが育て選んだ品々なのか? ラウル、それは真か?』


 ライトの自信満々のプレゼンに、氷の女王の目も瞬時に輝く。

 ライトが話すだけなら、氷の女王もそこまで心動かされることはないだろう。だが、氷の女王が愛して止まないラウルが手ずから作り選んだ品々と聞けば、話は俄然変わってくる。

 キラッキラに輝く瞳でラウルを見つめる氷の女王。その視線に気づいたラウルが、微笑みながら小さく頷く。


「ああ、小さなご主人様が言ってるのは本当のことだぞ。このニンジンは俺が種から育てた野菜だし、ジャイアントホタテも俺が海鮮市場で買い付けて、それを俺が包丁で捌いたものだ」

『ラウルがその手で作りしものならば、間違いなく美味であろうの!』


 氷の女王が話している間に、ラウルは玄武用に出したニンジンをマイ包丁で手早く切って一口サイズにしている。

 改めて皿の上に乗せられた、ラウル謹製のラグナロッツァ産ニンジン。その瑞々しさに、玄武は興味津々で眺めている。


『玄武様、ラウル達が用意したニンジン?と、ジャイアントホタテの刺身?を食べてみますか?』

「ンッ!」


 氷の女王の問いかけに、玄武はコクン!と頭を力強く縦に振る。どうやら玄武自身もニンジンとジャイアントホタテを食べてみたいようだ。

 氷の女王が玄武をテーブルの上にそっと起き、玄武はまずジャイアントホタテの皿の方に歩いていく。やはりライトの読み通り、余程ホタテが気になっているようだ。


 ジャイアントホタテの皿の前に辿り着いた玄武、早速首を伸ばして刺身を食む。

 もちろんこのジャイアントホタテも、一口サイズにカットされている。もともとウィカ用に用意してあったものなので、玄武でも食べられる小口にカット済みだったのだ。


 そうしてジャイアントホタテの刺身を、パクッ!と一口食べた玄武。

 次の瞬時、くりくりとした愛らしい瞳をさらに大きくして目を見張っている。

 玄武の顔がパァッ!と明るくなったかと思うと、ものすごい勢いでジャイアントホタテの刺身を食べ始めた。どうやらジャイアントホタテは玄武のお気に召したようだ。


 そのまま玄武は、まくまくまくまく!とジャイアントホタテを食べ進め、あっという間に完食してしまった。

 そこから間を置かずに、今度はニンジンの皿にいそいそと歩く玄武。ジャイアントホタテだけでなく、ニンジンも食べる気満々である。

 そして二皿目であるニンジンも、みるみるうちにペロリ☆と食べ尽くしてしまった。

 満足そうな顔で「ケプー☆」と軽いゲップをする玄武を見て、氷の女王が感激の面持ちで呟く。


『おおお……こんなにも食欲旺盛な玄武様は、ご降臨されて以来初めてのことぞ……』

「クアッ!……ケプー」

『まぁまぁ、玄武様、そのニンジンとホタテ?はそんなに美味でしたか。ようございましたねぇ』

「ンキュッ!……ゴフー」


 玄武の甲羅を愛おしそうに撫でる氷の女王に、玄武もまた超ご機嫌な様子で応える。

 応える度にゲップが漏れ出ているのは、満腹になった満足感に満ちている証か。

 そんな仲睦まじい氷の女王達の横で、ライトとラウルが何やらゴニョゴニョと囁きあっている。


「…………てゆか、玄武、大きくなってる……よね?」

「ああ……ホタテとニンジンを食う前より、間違いなく大きくなってるな」

「これってやっぱり、卵の孵化だけじゃなくて生まれた後も食べ物で大きくなるってことだよね? だってほら、天空島のヴィーちゃんやグリンちゃんも、ラウルの作る野菜を食べるようになってから大きくなってるし……」

「そういうこと、なんだろうなぁ……」


 テーブルの上でゲップを繰り返している玄武を、じーっ……と見ながら囁くライトとラウル。

 そう、玄武の身体の大きさがニンジンとジャイアントホタテを食べる前と後で明らかに違うのだ。

 そしてそのことは、玄武の甲羅を撫でていた氷の女王も気づいたようで、不思議そうに玄武に話しかけている。


『……あら? 玄武様、何やら身体が大きくなりましたか?』

「ンキャッ!」

『ちょっと失礼いたしますね…………あ"あ"ッ、玄武様の体重が明らかに増えているわッ』

「モキェ?」


 玄武の甲羅を撫でる手を止め、ヒョイ、と玄武の身体を持ち上げた氷の女王。玄武の体重が増えてずっしりと重たくなったことに、氷の女王が動揺を隠せないでいる。

 「え、え、何ナニ、これはどゆこと?」と呟きながら、オロオロとした様子で周囲をキョロキョロと見回している氷の女王。

 その過程で、ライトと目がバチッ!と合ったことで、氷の女王の助けを求める矛先がライトに向かった。


『ラ、ライト、これは一体どういうことだ? 玄武様の身に、一体何が起こったというのだ?』

「あ、えーとですね……これは多分、食べ物をたくさん食べたことで玄武が大きくなったんだと思います」

『……つまり、食べ物をたくさん食べれば、玄武様はこれからもっともっと大きくなられるのか?』

「はい、きっとそうだと思います。天空島にいる神殿守護神の二羽も、ラウルが作る大きな野菜を食べてどんどん大きくなってますし」

『そうなのか……』


 ライトの答えに、半ば茫然自失になる氷の女王。

 こんな短い間に、玄武が大きく成長することなど一度もなかったことだ。

 もちろん氷の女王だって、玄武がより大きく、より強く成長してくれることを常に願っている。

 その秘訣が食物の摂取であることを、今回氷の女王は身を以って学んだのだ。

 そして氷の女王はしばし無言で考え込んだ後、改めてラウルに向かって声をかけた。


『……なぁ、ラウルよ。これからも玄武様に大きくなっていただくために、其方の作る野菜や魚介類?が欲しいのだが……どうすれば譲ってもらえるだろうか?』

「……ン? どうすればってのは、どういう意味だ?」

『そのままの意味だ。ラウルが苦心して手に入れた物を譲ってもらうとしたら、それに相応しい対価が必要であろう?』

「ああ、そういう意味か」


 氷の女王の問いかけの意味がよく分からなかったラウル。

 その意味は『野菜や魚介類を譲ってもらう代わりに、自分は何をラウルに差し出せばいいか』ということだった。

 確かに何かを求め、それを他者から譲ってもらうとしたら、そこに対価が必要になるのは当たり前のことだ。それくらいのことは、氷の女王にだって分かる。

 だが、ラウルに対して何を差し出せばいいのかが氷の女王には分からない。できることならラウルの欲するものを与えたいと思うのだが、ラウルが欲しいと思うものが何かが彼女には全く思いつかないのだ。


 氷の女王のそんな悩みに対し、当のラウルは事も無げに答える。


「別に改まって対価なんて要らんさ。氷の女王からは、先日も融けない氷をたくさんもらったばかりだしな」

『融けない氷……?……ああ、我の氷の槍のことか?』

「そうそう、それそれ」


 ラウルの思いがけない言葉に、氷の女王が拍子抜けしたような顔をしている。

 だが、ラウルからしてみればここで対価を求めないのは当然のことだ。氷の女王からは、以前にもたくさんの貴重な氷を既にもらっているのだから。


「それに、もらったのは氷の槍だけじゃない。氷の洞窟の壁の氷も好きなだけ採らせてもらってるし、もっと言えば冬の間は洞窟の外の雪だって氷の女王のおかげで採り放題させてもらってる。これ以上氷の女王から対価なんてもらったら、それこそ俺の方がもらい過ぎで罰が当たるってもんだ」

『ラウル……其方という妖精は、本当に欲がないのだな……』


 微笑みながらも決して対価を求めないラウルに、氷の女王が熱っぽい眼差しでラウルを見つめる。

 いつにも増して男前なラウルの言動に、またもや氷の女王はさらに惚れ直したこと確定か。

 この自覚のない女王たらしの万能執事、無欲に見えて実はどこまでも罪深い妖精である。


 そんな氷の女王の熱っぽい眼差しなど全く気づかないラウル、早速話を進め始める。


「よし、そしたら俺の方から野菜や魚介類を玄武のご飯として進呈しよう。ライト、どの品を玄武に上げればいいと思う?」

「ンーとねぇ、さっき食べたジャイアントホタテとニンジンは確定として、野菜だったら凍ってもあまり問題ない白菜やキャベツとかいいと思うよー。あと、魚介類と言っていいのか分かんないけど、氷蟹なんかが最も手近でいいかも?」

「そうだな。そしたら玄武が孵化した隠し部屋?に、白菜とキャベツ、ジャイアントホタテの貝柱とカット済みの氷蟹を、ひとまずいくつか置いていくか」

「それがいいと思うよ!」


 玄武向けの野菜や魚介類として、何を進呈するかを話し合うライトとラウル。その置き場所は、玄武の卵が隠されていた隠し部屋に決定した。

 玄武生誕の地を倉庫代わりにするというのも、なかなかに不遜な気がしないでもないが。この最奥の間に巨大野菜をデデーン!と置きっ放しにするよりかは幾分マシだろう。


 こうして玄武の成長促進計画は、とんとん拍子で進んでいった。

 氷の洞窟でのお茶会を通しての、玄武レベルアップ計画始動です。

 実際のところ、神殿守護神の成長具合はそれぞれに違います。

 その原因は作中でも書いた通り、住環境の違いによって大きく左右されています。


 目覚めの湖や海などの水中は、それこそ水産物が豊富にあって食べ物に困りませんが、そうなると火属性や天空島界隈はかなり不利なんですよねぇ( ̄ω ̄)

 そして、基本的に食べ物に困らない水属性でも唯一氷の洞窟だけは不利というか、湖や海に比べて食べ物が得られにくいという難点があります。


 しかしそこら辺は、ツェリザーク&氷の洞窟の氷雪に常にお世話になっているラウルが、その恩返しとして何とかするでしょう。

 うん、ラウルの仕事がまた一つ増えた気がしますが。多分気のせいでしょう。キニシナイ!(º∀º) ←鬼

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