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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
最後の聖遺物

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第1047話 凄絶な光景

 レオニスが復元魔法を唱えた直後から、大教皇執務室の中の空気が何やらざわつく。

 そしてレオニスの右手の下にある【晶瑩玲瓏】が、徐々にその発光を強めていく。

 レオニスを中心にして風が起き、その風も【晶瑩玲瓏】の発光に呼応するように次第に強風になっていった。


 窓も開いていない密室の中で、荒れ狂うような暴風になるのに然程時間はかからなかった。

 執務室の書棚がガタガタと大きな音を立てて揺れる。

 それに対し、外に通じる窓は頑強な防御結果が貼られているせいかほとんど揺れていない。だがそれでも、少しづつカタカタという音が時折発生していた。


 室内に発生した暴風が強まるにつれて、レオニスの金髪はバサバサと逆立ち後方に靡き、その端正な顔がじわじわと苦痛に染まる。

 そんなレオニスを、周囲にいる者達はただただ見守るしかない。


 ライトがこの光景を目にするのは、スレイド書肆で購入した謎の本の修復以来二度目。だが、ライト以外の者達は初めて見る。

 レオニスやライトから、かなりの強風が巻き起こるというのを皆事前に聞いてはいた。だがそれでも、ここまで凄絶なものだとは正直思っていなかった。

 想像をはるかに上回る壮絶な様相に、皆驚愕している。


 そして、復元魔法目撃二回目のライトであっても、実は内心で驚いていた。暴風の威力や発光量が、謎の本修復時よりも格段に今回の方が強烈だったからだ。

 やはりライトの予想通り、謎の本の修復よりも聖なる聖遺物修復の方がはるかに難易度が高いようである。


 あまりにも強烈な暴風に、レオニス以外の全員が部屋の壁に押し付けられ続ける。

 この風の檻の中では、普通に息をすることすらままならない。

 そしてそれ以上に、眩しい光に、オラシオン達は目を開けていられない。

 腕を額に当てて目元に影を作ってなお、薄目を開けるくらいしかできない強烈な発光に、オラシオン達は戸惑うばかりだ。


 一方ライト、ラウル、マキシ、そしてレオニスは、普段通りに目を開けられていた。それはこの四人には光の女王の加護があり、なおかつレオニスの呼び出しに呼応した光の上級精霊達が、ライト達四人の目を手で包むようにして保護してくれているおかげである。


 そうして復元魔法を開始してから、二分か三分経過したであろうか。

 レオニスが最初に握っていた【水の宝珠】が、レオニスの手のひらの中で尽きようとしていた。

 あれだけ大きかった【水の宝珠】が、その下位アイテムである【水の乙女の雫】と同じくらいの大きさにまで小さくなってしまっている。

 レオニスはそれを手早く深紅のロングジャケットの左側ポケットに仕舞うと、同じポケット内に入れてあった【光の宝珠】を取り出して握りしめた。


 オラシオン達は眩し過ぎて全然見えていないが、ライト達にはレオニスが宝珠を交換したのが分かる。

 あの宝珠一つだけでもかなり膨大な魔力を有していたはずなのに、それでも足りないとは―――【晶瑩玲瓏】を修復するのに、一体どれだけの魔力が必要なのだろう。


 まるで底無し沼のように、レオニスの魔力は【晶瑩玲瓏】に吸い取られ続けている。

 そしてレオニスの体内では、聖なる聖遺物に奪われていく魔力と宝珠から得る魔力、二つの巨大な流れが絶えず渦巻いていた。


 これ程激しい魔力の増減は、普通の人間にはとても耐えきれるものではない。良くて内臓破裂、悪ければ内側から爆発四散である。

 この復元魔法の負荷に耐えられるのは、執行者がレオニスだからこそ。

 しかし、今回はレオニス以外の者達の力添えもあった。


 レオニスの両肩には光の上級精霊が留まり、背後には闇の上級精霊がその背を支えるようにして手を当て、水の上級精霊達は【晶瑩玲瓏】に触れているレオニスの右手に手を添えている。

 種族を超えた三つの属性の精霊達が、総出で一人の人族を支える姿にライト達は感動を覚えていた。


 そうしてレオニスが二個目の宝珠を手に取ってから、しばらくしてのこと。

 あれ程猛り狂っていた暴風が、少しづつ収まり始めた。

 風が収まるにつれ、剣から発する白光も徐々に薄れていく。

 やがてそれらが全て収まり、大教皇執務室の中に静寂が訪れる。

 そしてレオニスの口から、終わりの言葉が告げられた。


「…………終わったぞ」


 レオニスはその言葉を発した途端、崩れるように横に倒れた。


「レオ兄ちゃん!!」


 倒れたレオニスを見たライト、真っ先にレオニスのもとに駆け寄る。

 駆け出すライトに触発されてか、ラウルにマキシ、オラシオン達も堰を切ったように部屋の中央に向かって走る。


「レオ兄ちゃん!大丈夫!?」

「ご主人様!生きてるか!?」

「レオニス卿!」


 横に倒れた後、すぐに仰向けになって床で大の字になるレオニス。

 レオニスの顔中に玉のような汗が流れ、その雫が頬を伝って床にぽたぽたと落ちる。

 ライト達が心配そうにレオニスの周りを取り囲む中、レオニスが徐に再び口を開いた。


「………………腹減った」


 大仕事を終えた後で気が緩んだのか、気の抜けた言葉の後にすぐさまレオニスの腹から「ぐーーーきゅるるるる」という腹の虫の鳴き声まで聞こえてきたではないか。

 レオニスにしては何とも間抜けな姿に、ライト達は呆気にとられる。


「…………何か、大丈夫そうだね」

「ああ。魔力を使い過ぎて腹ペコなんだろう」

「気絶したりするよりはマシですよ!ラウル、何かすぐに食べられるものをレオニスさんに出してあげて!」

「おう、ちょっと待ってろよ」


 ライトとラウル、マキシがレオニスの腹の虫の機嫌を直すべく動く横で、オラシオンがレオニスの身体を抱き起こし、エンディが最上級回復魔法をレオニスに向けてかけている。


「レオニス卿、お疲れさまでした」

「レオニス卿がご無事で何よりです」

「おう……オラシオンもエンディありがとうな。……って、聖遺物の方はどうだ?」

「こちらにございます」


 エンディの最上級回復魔法をかけられている間、レオニスが聖遺物の行く末を気にしている。

 そんなレオニスの気持ちを察してか、誰よりも先んじて【晶瑩玲瓏】のもとに駆けつけて、手に取りレオニスのもとに持ってきた。


 ホロの両手には、白銀に輝く一本の細身の剣が乗せられている。

 レオニスは自力で身体を起こし、ホロから恭しく差し出された剣を受け取った。

 その輝きと形状は、紛うことなき本物の【晶瑩玲瓏】。

 そして先程まで二つに折れていた剣が、今はちゃんとくっついて一本の剣になっている。


 レオニスは剣が折れていた辺りを、扉をノックするかのようにコンコン、と二度ほど軽く叩く。

 レオニスから与えられた衝撃に、剣が再び折れたりすることはない。

 剣の両面を見ても罅は入っていないし、見た目だけで言えば完全な一本の剣に見える。


 その後レオニスは、無言で剣をオラシオンに渡した。

 オラシオンもレオニス同様、剣を指でコツコツと叩いたり、表裏何度もひっくり返しては柄の根元から剣の先端までじっくりと眺める。


 ここまで修復できれば上等だ。

 そもそもこの剣に戦闘的な性能は求めていない。

 聖なる聖遺物【晶瑩玲瓏】は、廃都の魔城の四帝の本体に辿り着くための通行手形なのだから。

 そのことを知っているオラシオンは、レオニスの代わりに結論を出した。


「聖遺物は、完全に剣としての姿を取り戻したようです」


 オラシオンの修復完了宣言に、レオニスを除く全員がワッ!と大いに湧いた瞬間だった。

 聖なる聖遺物【晶瑩玲瓏】の修復完了です。

 レオニスが復元魔法を実行するのは第82話以来ですか。965話ぶりとか、ほぼ1000話ぶりじゃん!Σ( ゜д゜)

 作者時間で二年八ヶ月半ぶりに再登場した、レオニスの持つ切り札の一つ。今回もいつものように、復元魔法初回の第82話を何度も繰り返し見返しつつ書いてました(´^ω^`)


 そしてリアルの本日は12月15日。もう師走の半分が終わっちゃうの!?と作者愕然。

 ちなみに昨日拗ねてストライキを起こした我が愛車は、今日の夕方に無バッテリー交換の後戻ってきました。

 愛車が無事帰還してくれたのは嬉しいのですが。バッテリー交換費用1万5千円発生は、地味ーにお財布に痛い…_| ̄|●…

 パレンサンタさんや、作者へのクリスマスプレゼントに新車ちょうだいッ!(うω´)

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