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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
最後の聖遺物

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第1039話 クロエの活躍と家族の絆

 暗黒神殿の庭園にあるテーブルで、早速午後のお茶会を楽しむレオニス達。

 特に初めての来客であるラウルに対して、闇の女王達から様々な質問がなされていた。

 闇の女王が、テーブルの上に出されたバニラクッキーを摘みながらラウルに尋ねる。


『プーリアと言えば、絶対に里の外には一歩も出ないことで有名な妖精族だが……其の方は、里の外どころか人里にまで出て人族と暮らしておるとはなぁ……何故にそのようなことになったのだ?』

「俺がただ単に、プーリアの気質に合わない偏屈者だったってだけの話さ」

『ふむ……突然変異種のようなものか』

「ま、そんなところだ」


 闇の女王もプーリアのことは知っていて、何故あのプーリアが里の外に出ているのかが不思議だったようだ。

 ラウルの答えに、闇の女王は『突然変異種』ということで納得している。かなり失敬な例え方ではあるが、ラウル自身もその自覚があるので特に反論などない。

 実際それが最もしっくりくる答えなので、問題なしなのである。


 そして闇の女王の横の席にいるクロエは、大好きなカスタードシュークリームをご機嫌で頬張っている。

 ラウル特製シュークリームは、クロエの一番お気に入りのスイーツ。しかも今回出されたものは、いつも以上にカスタードクリームがたっぷり入ったスペシャルバージョンである。


『シュークリーム、すっごく美味しいー♪』

『ココ様、また口の端にクリームがついておりますぞ?』

『ママもいっしょにシュークリーム食べようよー♪』

『ええ、後でちゃんといただきます故ご安心くださいませ』


 クロエの口の端っこから溢れかけたカスタードクリームを、闇の女王がその手で拭い取る。

 それは幼い子供におやつを食べさせる母親そのもの。今日も闇の女王はクロエの育児に奮闘中である。


 そうして皆で美味しいスイーツを一頻り食べ終え、テーブルの上を片付けた後、レオニスは本日のもう一つの目的を遂行すべく闇の女王に話しかけた。


「ところで今日は、闇の女王に見てもらいたい物を一つ持ってきたんだが」

『ン? 何ぞ?』

「…………これだ」


 レオニスは己の足元に置いてあった魚籠を手に取り、闇の女王の前に置いた。

 闇の女王は、目の前に差し出された魚籠の中を覗き込んだ。


『ふむ……これが、ライトが言っていた例のヤツか?』

「そう。廃都の魔城の四帝【愚帝】の配下のゾルディス、その部下のマードンってヤツだ」


 レオニスが持ってきたもの、それはカタポレンの家の武器庫にずっと置きっ放しだったマードンである。

 以前ライトが闇の女王達のもとを訪れた時に、このマードンのことを話していた。その時に闇の女王が、今度自分のところに来る時にはそれを連れてくるように、と言っていたのだ。

 レオニスもそのことはライトから聞いていて、そのため今日は闇の女王の訪問ついでにマードン入りの魚籠も持ってきた、という訳である。


 魚籠の中には、相変わらずスヤッスヤに寝こけているマードンが入れられている。

 その神経の図太さには、もはや呆れを通り越して感心するばかりである。

 魚籠の中のそれを見た闇の女王、一旦顔を離してレオニスに話しかけた。


『このままではよく分からんな、籠から出して蔓も解いてもらえるか?』

「承知した。ラウル、コイツの蔓を解いてやってくれ」

「了解」


 闇の女王の要請に、レオニス達は快く応じる。

 まずレオニスが魚籠から簀巻状態のマードンをテーブルの上に出し、その身体をぐるぐる巻きにしていた蔓をラウルが植物魔法を用いて解く。

 その間マードンは、何をどう動かしても目を覚ます様子はない。

 これは、マードンの額に浄化魔法の呪符を貼り付けているせいである。


 スヤァ……スピピピピィー……マードンが鼻息を鳴らす度に、顔の前にある浄化魔法の呪符もふよふよとそよぐ。

 蔓が解かれて全身が顕になったマードンを見て、闇の女王が呟く。


『ふむ……此奴の特徴を見る限りでは、確かにこの暗黒の洞窟にいる暗黒蝙蝠の同族ではあるようだ。ただ、体格だけは此奴の方が異様なまでに大きいがな』

「確かにコイツの大きさは、普通の暗黒蝙蝠とは比べ物にならんよな……こうなるような理由や原因が、何かあるんだろうか?」

『それは当事者に聞いた方が早かろうな。レオニスよ、此奴を起こすことはできるか?』

「おう、ちょっと待っててくれ」


 マードンを見た闇の女王が、マードン=暗黒蝙蝠であることを認めた。

 胴体のわりには頭でっかちなバランスの悪い体型に、頭の天辺には三角形の二つの耳と豚のような鼻、そして大きな一対の皮膜型の翼。

 そのどれもが真っ黒で、暗黒の洞窟の三層にいる暗黒蝙蝠の特徴と一致している。


 しかし、唯一異なるのがその体格だ。

 暗黒の洞窟三層にいる暗黒蝙蝠と比べたら、マードンの体格は二倍以上は大きい。というか、レオニスがマードンを捕獲して以降、捕獲当時より肥え太った感すらある。

 浄化魔法の呪符で眠らされているとはいえ、今のマードンの環境はある意味『食っちゃ寝三昧』の贅沢な日々だ。

 生命維持のために魚籠に入れてある良質な魔石のおかげで太るとは、実にふてぶてしい捕虜である。


 闇の女王の希望により、マードンを起こすことにしたレオニス。

 額に貼り付けてあった呪符をベリッ!と剥がし、先程まで捕縛のために使用していた蔓の先端でマードンの頬を突ついた。


「ほれ、マードン、起きろ」

『……スヤァ……』

「闇の女王様直々のお出ましだぞ」

『……ムンニャァ……』

「………………」


 相変わらず寝起きの悪いマードンに、レオニスがイラッとしている。

 本来なら、浄化魔法の呪符を引っ剥がした時点で目が覚めるところなのだが。このマードンだけは、起こそうとする度に毎回毎度時間がかかって仕方がない。

 するとここで、闇の女王の横にいるクロエがレオニスに声をかけた。


『パパ、コレを起こせばいいの? それならココが起こそうか?』

「ン? ココが起こしてくれるのか? コイツはばっちいから、なるべく触らん方がいいぞ?」

『うん、触らないで起こすから大丈夫よー』

「そうか、じゃあやってみてくれるか?」

『はーい♪』


 クロエの申し出を受けて、レオニスはマードンの処置を彼女に委ねる。

 するとクロエは、己の髪の毛を一本引っこ抜いた。

 そしてその髪を、マードンの頭に近づけていく。


 クロエはメデューサ族の一人で、その髪は全て蛇でできている。

 当然クロエが今引っこ抜いた髪も蛇であり、髪の先端には蛇の頭がついている。

 クロエが持つ蛇髪が大きな口を開けて、マードンの左耳にガブリ!と思いっきり噛みついた。

 これならクロエも己の手を使うことなく、マードンを叩き起こすことができる♪という訳である。


 クロエの蛇髪に耳を噛まれたマードン、突然発生した痛みに思わず飛び起きた。


『ンギャガガガッ!痛ッテテテテッ!』

「よう、マードン。ようやく起きたか?」

『痛ッテェェェェ!何ナニ、何でェ!?』

「おめーの寝起きが悪過ぎるせいだ」

『ピエェ……貴ッ様ァ、何ッてしどいことヲ……』

「そう思うなら、次からは呪符を剥がされたら三秒で起きろ。そうすりゃこんな目には遭わん」

『ぐぬぬぬぬ…………ン?』


 寝起きの悪さをレオニスに指摘されたマードン、ぐうの音も出ない。

 だが、今の自分は蔓に縛られていない自由な状態であることに気づき、ニヤリ……と醜悪な笑みを浮かべながらバッ!と上に飛んだ。

 突然のことに、ラウルが座っていた椅子から慌てて立ち上がる。


『ヌぇーーーッハッハッハッハ!油ッ断したなァー!こンの、(ブヮ)ーーーッ鹿()メーーー!』

「あッ!こいつ、逃げる気か!?」

「………………」

『クックックック……空さえ飛べれェバ、コッチのもんだもんぬぇーーーィ!貴ッ様の捕虜などトいう、屈ッ辱の日々ィーも!ココで終わァりダーーー!』

「てめー、ふざけんなよ!すぐにとっ捕まえてやる!」

「………………」

『じゃ、そゆコトで。貴ッ様だけハ、いずれコノ手ェで!葬ッてくれェるわ!じゃあの、アデューーー♪』

「コラ、待ちやがれ!」

「………………」


 解放された翼で上空に浮くマードン。久々に空を飛べたせいか、実に生き生きとした顔でレオニスを罵っている。

 そんなウッキウキのマードンにラウルが懸命に牽制しているが、何故かレオニスは反論することなくスーン……とした顔をしている。

 そしてマードンは、意気揚々とその場を飛び去っていった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 マードンが飛び去った直後、ラウルが心配そうにレオニスに尋ねる。


「ご主人様よ、何故あいつを捕まえないんだ? こんな簡単に、あいつをみすみす逃がして良かったのか?」

「何、心配はいらん。ここがどこだか忘れたのか?」

「???…………あ、そういうことか」

「そゆこと」


 レオニスは悠々と椅子に腰掛けたまま、すまし顔でラウルの問いかけに答える。

 そう、ここは暗黒の洞窟の最深部にある最奥の間。

 ここの出入りは闇の女王が認めた者にだけ許されることであり、転移能力を持たない暗黒蝙蝠のマードン如きが単身でどこかに逃げられる訳がないのだ。


 ラウルもそれに納得し、拍子抜けしたように再び椅子に座る。

 ラウルが納得して落ち着いたところで、今度はレオニスがクロエに声をかける。


「そんなことより、ココ。ココの大事な髪の毛を、あんな奴のために抜かせてしまった。本当にすまない」

『ン? ココは大丈夫だよ? それに、ココがパパの役に立てる方が嬉しいし!』

「いや、それでもだ。ココの綺麗な髪の毛が台無しになったら困る。こんなことなら、俺かラウルがさっさと雷魔法でも何でも使って、奴を叩き起こすべきだった」


 マードンを起こすためだけに、クロエに髪蛇を抜かせて使役してしまったことを謝るレオニス。

 実際マードンを起こすだけなら、テーブルから離れた場所で魔法を使うなり何なり、いくらでも他の方法はあった。

 レオニスは今更ながらにそのことに気づき、目を閉じしかめっ面をしながらクゥーッ!と歯軋りし、拳を握りしめ後悔していた。


 しかし、ラウルならともかくレオニスが雷魔法をマードンに向けて使用したら、間違いなくマードンはその威力で感電死してしまうところなのだが。

 ある意味マードンは、ここでも命拾いしていた、という訳だ。本当に、悪運の強いヤツである。


 そんな後悔しきりのレオニスに、クロエは何だか嬉しそうな顔をしている。

 クロエは椅子から立ち上がり、レオニスが座る椅子の後ろにスススー……と来た。

 そしてクロエは椅子の後ろから、レオニスをそっと抱きしめた。


『パパ、そんなにココの心配をしてくれるんだ……ありがとう、パパ!』

「ココの身体を心配するのは、当たり前のことだろ?」

『うん……だけど、すっごく嬉しい!ママがね、『嬉しい時も、悲しい時も、いつでもちゃんと言葉に出しなさい』ってね、ココに教えてくれてるの!』

「そうか……ココのママはとても優しいもんな」

『うん!』


 後ろからレオニスの首っ玉に抱きつき、花咲くような笑顔で頬ずりしてくる(クロエ)に、レオニスも微笑みながらクロエの頭を優しく撫でる。

 クロエは鋼鉄の包帯目隠しに下半身大蛇という、一目見ただけで人族からかなりかけ離れた姿形をしている。

 しかし、レオニスを父と慕う異形の娘をレオニスが厭うことなど絶対にない。

 レオニスとクロエは、血の繋がりどころか種族さえも全く異なる者同士。だがそこには、間違いなく家族としての強く温かい絆が繋がっていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 その後闇の女王から聞いた話では、クロエの頭から抜けた蛇髪は、本体であるクロエから離れた後も蛇のまま生き続けるのだという。

 ラウルやマキシ同様、周囲に魔力が満ちている環境ならば大気中の魔力を取り込んで生きていけるらしい。


 先程クロエが抜いた髪蛇も、マードンを叩き起こすという大役を果たした後はテーブルの上で蜷局(とぐろ)を巻いてのんびりと寛いでいたし、よく見ると庭園の木々や花壇のところどころにも生きた髪蛇が動いているのが見え隠れしている。

 本体がノワール・メデューサだけあって、その頭皮にいる蛇髪も只者ではないということか。


 和やかな空気のもと、レオニス達が様々な会話をしていると、暗黒神殿に向かってくる何者かが現れた。

 それは、小一時間程前にレオニス達の前から逃げ去ったばかりの大型暗黒蝙蝠、マードンだった。

 屍鬼将ゾルディスの自称側近中の側近、マードンの再登場です。

 前々話の第1037話にて、既に『魚籠』という単語=マードン再登場のフラグはこっそり仕込んでおいてありまして。そう、魚籠と言えばマードン、マードンと言えば魚籠!みたいな?(・∀・)

 果たしてどれだけの方が、この『マードン再登場のフラグ』を察知してくださっていたかは分かりませんが(´^ω^`)


 そして、今話もクロエが可愛いー。マードンの濃いぃキャラにも負けてない、ハズ!

 ホントは見た目妖艶なボン!キュッ!ボーン!な絶世の美女なんですが、中身はまだ生後八ヶ月の幼子。そのギャップが可愛く思えて仕方がない作者。

 えぇはい、立派な親バカですぅ(´^ω^`) ←自覚あり

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