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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
最後の聖遺物

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第1038話 ラウルと闇の女王達の初顔合わせ

 暗黒の洞窟の一層から最奥の間まで移動したレオニスとラウル。

 紫炎の明かりに照らされた独特な空間、初めて見る光景にラウルは思わず見惚れている。


 するとそこに、ノワール・メデューサのクロエが駆け寄ってきた。

 もちろんその斜め後ろに、闇の女王がついてきている。

 レオニス達が暗黒の洞窟に入った時点で、クロエ達には誰が入ってきたか分かっているのだ。


『パパー!』

「おお、ココ、久しぶりだな」

『会いたかったー!』

「俺もだ。ココ、また大きくなったか?」

『うん♪』


 両手を上げてレオニスの胸にバフッ!と勢いよく飛び込むクロエに、レオニスも微笑みながら両手を広げてクロエのダイレクトアタックをしっかりと受けとめる。

 父娘の抱擁にしては娘のクロエの方が巨大で、殆どレオニスに覆い被さるような格好で抱きついているが、本当に嬉しそうに破顔するクロエはまだまだ幼子のようだ。


 まるで実の子をあやすように、クロエの頭を優しく撫でるレオニス。

 そんなレオニスを見たラウルが、それはもうものすごい顔で驚愕している。

 ラウルはその黄金色の瞳を極限まで見開きつつ、おそるおそるレオニスに声をかけた。


「ご、ご主人様よ……一体いつ子供ができたんだ?」

「ン? ココが生まれたのは今年の春だから……八ヶ月くらい前か?」

「つーか、嫁はどこよ? ……まさか、闇の女王との子供か?」

「人間と精霊の女王との間に、子供ができる訳ねぇだろ……」


 盛大な勘違いをしている様子のラウル。

 というか、闇の女王を嫁扱いするとは、ラウルもいい度胸である。

 ひたすら驚愕するラウルに、レオニスは呆れたように速攻で子持ち疑惑を否定する。


「この子はな、ココという愛称で暗黒神殿の守護神だ。神殿の卵の孵化の際に俺とライトが少しばかり手を貸して、孵化する瞬間に立ち会ってたってだけのことだ」

「……ぁ、そゆこと?……要は雛の刷り込みみたいなもんか?」

「そうそう」


 目玉をひん剥いて驚いていたラウル、レオニスの説明にホッとしている。どうやらラウルはクロエがレオニスを『パパ!』と呼んだのを、そっくりそのままの意味で受け取っていたようだ。

 レオニスはますます呆れ返りながら、ラウルにダメ出しを続けた。


「つーか、ココの姿をよく見てみろ。この子はメデューサ族で、世界で唯一のノワール・メデューサだ。決して人族と異種族の(あい)の子で生まれるような存在じゃない」

「……おお、本当だ。メデューサという名は聞いたことはあるが、実際に間近で会うのは初めてだ」

「ようやく理解できたか?」

「ああ、俺の早とちりだったようだな」

「お前な……早とちりの一言で済ませていいと思ってんの?」


 レオニスに促されて、クロエの姿を改めてよく見たラウル。クロエの下半身の大蛇姿を見て納得している。

 下半身大蛇の美女=メデューサというのは、妖精であるラウルも知識として知っていたらしい。

 というか、メデューサ云々以前に生後八ヶ月の子供がレオニスより大きくなるなんてことは、まず普通に考えてあり得ないことなのだが。

 そこら辺の常識的な判断ができなくなってしまうくらいに、クロエのパパ!発言に動揺してしまったのだろう。


 そうしてレオニスがラウルのとんでもない誤解を懸命に解いている間、クロエはレオニスの横でずっときょとんとした顔をしている。

 すると、クロエの横に来た闇の女王がレオニスに話しかけた。


『レオニス、よう来たの』

「ああ、闇の女王も久しぶりだな。あんたもクロエも元気そうで何よりだ」

『おかげさまでな。……ところで、今日のその連れは誰だ?』

「こいつはラウルといってな、人里にある俺の家に住んでる妖精だ」

『ほう、妖精が人里に住んでいるのか? それはまた珍しいこともあるものよの』


 レオニスへの挨拶がてら、見慣れぬ顔のラウルが何者かを問う闇の女王。

 レオニスの連れてきた者だから然程警戒はしていないが、それでも何者かを問うのは当然の流れだ。

 そしてその正体が妖精と聞き、闇の女王は意外そうな顔をしている。

 このサイサクス世界では、精霊や妖精が人族と積極的に関わることはあまりない。闇の女王が珍しがるのも不思議はなかった。


 ラウルを興味深そうに見つめる闇の女王に、ラウルが自ら自己紹介に進んで出る。


「闇の女王に会えて光栄だ。俺の名はラウル、カタポレンの森に住むプーリアという妖精族だ。訳あって今は、このご主人様達の家に住まわせてもらっている」

『ラウル、か。レオニスやライトの仲間とあらば、吾も其の方を歓迎しよう』

「ありがとう」


 先程の失態などなかったかのように、シレッと紳士的に振る舞うラウル。

 その横でレオニスが『コイツめ……』という目でジトーーーッ……とラウルを睨みつけているような気がするが。多分気のせいだろう。キニシナイ!


 レオニスの連れということで、快くラウルを受け入れた闇の女王。

 するとここで、闇の女王がラウルの顔をまじまじと見つめつつ呟く。


『……というか、其の方の顔に見覚えがあるな?…………ああ、もしかして、夏に神樹が襲われたあの事件の時に其の方もいたか?』

「ン? あー、ツィちゃんの事件のことか? 確かに闇の女王の言う通り、俺もあの現場にいた」

『そうか……其の方も森と神樹の安寧のために働いていたのだな』


 闇の女王がラウルの顔に見覚えがあったのは、闇の女王も闇の精霊達の目を通して神樹襲撃事件を見守っていたからだ。

 あの時闇の女王は、生まれたばかりのクロエの身や怯えた闇の精霊達を守ることを最優先したため、神樹の救援に向かうことができなかった。

 その選択に後悔はしていないが、それでもやはり心のどこかに引っかかっていたのだろう。闇の女王がラウルに改めて礼を言う。


『吾はあの時、ココ様と精霊達を守るのに精一杯で……神樹に対して何もしてやれなかった。その代わり、其の方がレオニス達とともに献身的に働き動いてくれたことで、この森の平和と神樹の御身は無事守られた。心から礼を言う、ありがとう』

「そんな大層なもんじゃないがな。ツィちゃんは俺の大事な友達だから助けたかった、ただそれだけだ」

『そうか……』


 闇の女王からの礼に、ラウルは事も無げに返す。

 それは一見謙遜しているように聞こえる言葉だが、ラウルにしてみればそれは謙遜でも何でもなく嘘偽りない本音だ。

 そんな控えめ(に見える)ラウルに、闇の女王は小さく笑う。


『其の方、レオニス達とともに住んでいると言うだけあって、性格も似ておるようだの』

「何ッ!? このご主人様と俺の性格が似てるってのか!?」

『ン? 何か問題でもあるのか?』


 闇の女王の言葉に、ラウルがガビーン!顔になっている。

 闇の女王にしてみたら、それは『困っている者を決して見捨てることなく、全力で救う』『友と認めた者には無条件で力を貸す』といった意味であり、どちらかというと褒め言葉寄りだったのだが。ラウルにとっては衝撃の言葉だったようだ。


 そんなラウルに、レオニスがニヤリ……と笑いながらラウルの肩に腕を回して一方的に肩を組む。


「別に問題なんてないよなぁ、ラウル?」

「いや……俺はご主人様ほど脳筋じゃねぇぞ……?」

「馬鹿言え、お前の料理に対する情熱は俺の脳筋と大差ねぇわ」

「何ッ!? ……ぁー、ぃゃ、まぁ、確かにそうかもしれんがな……」


 レオニスの脳筋と自分の料理に対する情熱は大差ない、と一蹴されたことにラウルが一瞬だけ反論しかける。

 だが、確かに言われて見ればその通りで、レオニスが『力こそ全て!』な脳筋だとしたら、ラウルは『料理こそ全て!』な料理馬鹿である。

 熱を入れる対象こそ違えど、その方向性やのめり込み具合は似たようなもの。ラウルもそこは否定できないので、ここは素直に受け取る方が得策である。


 上手いことラウルを丸め込んだレオニスが、ラウルと肩を組んだままラウルに話しかける。


「さ、そしたら午後の茶会と洒落込もうじゃないか!闇の女王にココ、俺やライトがいつも皆に振る舞う美味しいスイーツは、実はこのラウルが全部作ってんだぜ?」

『何ッ、そうなのか!?』

『ライトお兄ちゃんがいつもご馳走してくれる、あの美味しいスイーツ? この黒いお兄ちゃんが、作ってくれてるの?』

「そうそう。ブラウニーやシュークリーム、プリンにアップルパイも全部ラウルの渾身作だ!」


 いつもお茶会でご馳走になっている、あの美味しい食べ物たち。

 それを作っているのがラウルと知り、闇の女王が驚くだけでなくクロエもその顔が綻ぶ。

 クロエがラウルの前にズズイッ!と寄り、ラウルの両手を取り握りしめながら嬉しそうに微笑みかける。


『ラウルお兄ちゃん、いつも美味しいものを作ってくれてありがとう!』

「ぉ、ぉぅ……俺の料理でそんなに喜んでもらえているとは、夢にも思わなかった」

『ココねぇ、あのシュークリームというのがすっごく大好きなのー♪』

『実は吾も、ライト達が出してくれる甘味類がとても楽しみでな。今日はそれを作ってくれている者に会えて、とても嬉しいぞ』

「そうか、そりゃ良かった」


 思いの外喜んでいるクロエと闇の女王に、ラウルも若干戸惑いつつはにかんでいる。

 ライト達が行く先々でラウルのスイーツを振る舞っている、というのは話に聞いていたのだが、実際に高位の存在からこうして面と向かって喜ばれたことは実はあまりない。

 そしてそれ以上に、ラウルは女の子から『お兄ちゃん!』と呼ばれたことなどまず皆無に等しい。


 クロエ達に褒められて、気を良くしているラウル。

 その横で、レオニスがさっさと歩き出した。


「そしたら、神殿の横に置いてあるテーブルでおやつにしようぜ!」

『ヤッター♪』

「ラウル、ココ達が大喜びしそうなスイーツを出してやってくれ」

「おう、任せとけ」


 ラウルと闇の女王達の顔合わせが無事済んだところで、レオニスがお茶会開催の提案をする。

 三時のおやつにはまだ少々早いが、久しぶりの再会を喜びがてら近況を話し合うのにお茶会はもってこいの場だ。


 そしておやつという言葉を聞いたクロエは、それだけでもう大喜びしている。

 クロエのお兄ちゃん認定を受けたラウルの方も、自分の料理でクロエや闇の女王が喜んでくれるならこれ程嬉しいことはない。

 四人は早速テーブルの方に移動し、お茶会の準備を進めていった。

 暗黒の洞窟の主、闇の女王とノワール・メデューサのクロエの登場です。

 クロエ達が出てきたのは第823話以来で、200話ちょいぶりですか。

 クロエも作者お気に入りの子なので、ホントはもうちょい出番を増やしたいところなのですが。なかなか思うようにはいかず(=ω=)

 ていうか、作者にはお気に入りの子が多過ぎて、全ての子にたくさんの出番を設けてやることなど不可能にも等しいんですけど(´^ω^`)


 そして、クロエのパパ呼びにまたも未婚の父疑惑を持たれるレオニス。

 まぁねー、言葉通りに受け取ったらラウルでなくとも「レオニスってば、いつパパになったのん!?」とかびっくり仰天しちゃいますやねー(´^ω^`)

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