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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
最後の聖遺物

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第1029話 地の女王の役割

「レオ兄ちゃん……この子(・・・)が地の女王様……だよね?」

「多分なぁ……大きさ(・・・)は他の女王達とちと違うが、目鼻立ちは属性の女王そのものだしなぁ……」

「確かに大きさ的にはかなり違うが……これはこれで可愛いんじゃね?」


 白いもふもふのお腹の下から出てきた、地の女王らしき女性型の精霊をライト達は繁々と観察している。

 レオニスの言うように、目鼻立ちは他の属性の女王達と同じなのだが、それ以外がかなり違う。

 この地の女王、何しろとにかく全体的にふくよかなのだ。


 頬の輪郭はふっくらまん丸で、胴体のくびれが全くない。言ってみれば、ドライアドの本体の幼女モードと大差ない体型である。

 これまで出会ってきた属性の女王達の姿は、その属性によって髪型が多少違うところはあったが、体型や顔貌は例外なく同一コピペであった。

 それが、今目の前にいる地の女王には全く当てはまらないことに、ライト達は内心で若干戸惑いつつ眺めている。


 するとここで、ライト達の視線を感じてか地の女王がムニャムニャ言いながら起きた。

 目を擦りながら、もそもそと上半身を起こす地の女王。

 何かを探すように、キョロキョロと周囲を見回している。


『ふぇぇ……シロちゃーん、どこー? 寒いよぅ……』

『…………あ、いたぁー。ンもー……シロちゃんてばー、寝相悪いんだからぁー……』


 ずっとキョロキョロとしていた地の女王が、後ろに転がっていった白いもふもふを見つけてそちらの方に這って移動していく。布団代わりの白いもふもふが突然はだけて、その寒さで一時的に目が覚めたといったところか。

 そして仰向けになった白いもふもふのお腹に、ぽふん、と倒れ込むように埋もれた。

 またそのまま寝てしまうのか?と思いきや。地の女王が突如ガバッ!と身を起こした。


『アナタ達…………誰?』

『……ねぇー、ちょっとー、シロちゃん、起きてぇー!な、何かー、知らない人がたくさんいるぅー!』


 おそるおそる振り返った地の女王。

 ライト達の顔をマジマジと見つめると、慌てて白いもふもふの方に身体を向き直して大きく揺さぶっている。どうやら白いもふもふを起こそうとしているようだ。

 ライト達のことを不審者だ!と思い込んでいる様子の地の女王に、まずライトが声をかける。


「あ、あの!地の女王様ですか!?」

『ヒエッ!…………そ、そうだけどー…………ン? 何ー? アナタ達からー、いろんな精霊の気配がするわねぇー……?』

「は、はい!炎の女王様や水の女王様、他にも闇の女王様や火の女王様、海の女王様に光の女王様に雷の女王様からもらった勲章があります!」

『え、何でそんなにー???』


 地の女王が発した言葉に、ライトがパァッ!と明るくなる。

 さっきまで慌てていた地の女王だったが、ライト達が多数所持する属性の女王の勲章の気配にようやく気づいたようだ。

 しかもようやく振り向いてもらえたライトが、所持している七つの勲章の全部の属性を嬉しそうに並べ立てたものだから、その数の多さに今度は地の女王がびっくりしている。


 何はともあれ、ようやく地の女王と話ができそうだ。

 ここでレオニスとラウルがライトの横に並び立ち、それぞれ自分の持つ属性の女王の勲章を手のひらに乗せて地の女王に見せる。


「俺も同じものを持ってるぜ」

『えぇ? あらー、ホントー、どれも全部本物ねぇー……』

「俺はご主人様達より少ないが、それでもいくつか勲章を持ってるぞ」

『あらま、こっちも全部本物だわぁー……』


 レオニスとラウルが提示した属性の女王達の勲章。それが紛うことなき本物であることを地の女王も認めた。

 ぽけー……と呆気にとられる地の女王に、それらの勲章を得た経緯を説明していく。

 炎の女王の異変から始まり、属性の女王達を害し続ける廃都の魔城の四帝という存在がいること、そして他の属性の女王達の安否を確認して回っていること等々。

 それらの話を聞き終える頃には、地の女王も完全に昼寝から目覚め、真剣な顔で聞き入っていた。


『地上では、そんなことが起きているのねぇー……』

「この地底世界は大丈夫か? ぱっと見た感じでは、特に異変は起きていないようだが……」

『ええ、見ての通りこの地底世界は平穏そのものよー。私もこの通りー、まん丸状態を維持できてるしねぇー』

「その体型には、何か意味があるのか?」


 何気なく呟いた地の女王の言葉に、レオニスが耳聡く反応する。

 今まで見たこともない、地の女王の不思議な体型には何か理由があるようだ。


『ほらー、私って大地を司る地の女王でしょー? 大地が痩せ衰えるとー、私の体型も痩せちゃうのよぅー』

「なら、あんたがふくよかでまん丸な程、大地は肥沃さを保てているってことか?」

『そそそー。飢饉が起きるとー、全ての生き物の生死が脅かされちゃうからねー。そうならないようにー、私は常に大地の栄養をたーーーっぷりと蓄えてー、万が一に備えておかなければならないのよー』

「そうだったのか……」


 エッヘン☆とばかりにふんぞり返り、鼻高々に己の役割を解説する地の女王。

 確かに言われてみればその通りで、大地が痩せ衰えることは人族のみならず生きとし生ける者全てに間違いなく悪影響が出る。


 地の女王の追加説明によると、それでも時折地の女王の身体が痩せて腰のくびれができることがあるという。

 また、地上のどこかで飢饉が起きるレベルの気候変動が起きている時にも、それを補い堪えるために地の女王から大地に栄養分を渡しているのだとか。

 見た目はまん丸でぽよんぽよんな地の女王だが、実は大地を守る地母神の如き崇高な役割を持っていた。


 するとここで、レオニスが疑問に思ったことを口にした。


「その力は、どこから得て蓄えてるんだ?」

『ンーとねぇー、主にランガ君の魔力とー、シロちゃんのもふもふ力ー?』

「シロちゃんってのは、そこで寝ている神殿守護神か?」

『そそそー、アナタ、察しがいいわねぇー。この白いもふもふ、シロちゃんはー、地底神殿の守護神よぅー』

「これ、白虎だよな?」

『うんー、種族名は『白虎』で間違いないわー。…………てゆかー、アナタ、何かいろいろと詳し過ぎなぁーい?』


 地の女王が蓄える栄養分は、冥界樹ユグドランガの魔力と白いもふもふのパワーだという。

 白いもふもふのパワーなるものがどの程度の威力なのかは不明だが、ユグドランガの魔力を得ているというのは納得である。

 ユグドランガは、ただここにいるだけでこの広大な地底世界の一面に星の如き魔力の塊を生み出し続けるくらいだ。地の女王がその時に向けて蓄えなければならない、膨大な量の力を得るに最も相応しい魔力源であろう。


 そして、話の流れのついでに白いもふもふの正体も尋ねるレオニス。

 地の女王があっさりと認めたことで、やはりこの白いもふもふは地底神殿の守護神白虎であることが判明した。

 しかもその愛称が『シロちゃん』とは、実に単純明快にして愛らしい渾名である。


 その見た目から、白いもふもふ=白虎というのはもはや間違いようのない推測ではある。

 だがそれでも、地の女王から回答を得るまでは確定ではない。そこら辺きっちりと確認を取るのは、レオニスの冒険者としての(さが)や習性か。

 もっとも、レオニスの知識の豊富さは逆に地の女王を訝しがらせてしまっているようだが。


「ま、俺は冒険者だからな、探究心旺盛ってことにしといてくれ」

『ボウケンシャ? それ、なぁにー?』

「冒険者ってのはだな……って、その前に俺達も自己紹介していいか?」

『ああ、そうねー。まだアナタ達の名前も聞いてなかったわねぇー。良ければアナタ達の名前を教えてー?』


 冒険者を知らない地の女王に、何たるかを教えようとしたレオニス。

 一旦説明を止めて自己紹介を申し出る。

 確かにライト達は、地の女王が目覚めてからまだ名前を名乗ってもいない。

 互いに親睦を深めるには、まずは互いの名前を知ることが第一歩だ。

 まずはレオニスから名乗りを上げていく。


「俺の名はレオニス。地上に住む人族で、冒険者をしている。冒険者っていうのは、文字通り世界中を冒険して回る者のことだ。例えばこの地底世界を探検しに来たりとかな」

『まぁー、ボウケンシャというのはそういう者達を指して言う言葉なのねー。冒険者、ねー……うん、覚えたわー。……で、そちらの小さな子はー?』

「ぼくの名前はライトといいます!レオ兄ちゃんと同じ人族で、まだ九歳の子供だから冒険者にはなれていませんが……レオ兄ちゃんといっしょに、いろんなところを探検してます!」

『そうなのー……この赤いのー、レオニスだっけー? それよりもっと小さくて弱そうに見えるのにぃー、よくここまで来たわねー。とっても偉いわぁー!』


 レオニスの名乗りを受けた地の女王、次はライトに視線を移す。

 地の女王の視線をご指名と受け取ったライト、早速元気よく自己紹介した。

 子供の身でこの地底世界に来たことに、地の女王は感心しきりと言った様子で讃える。

 そして地の女王の視線が再び移動する。その視線の先は、もちろんラウルである。

 ラウルはコホン、と軽く咳払いをした後、自己紹介を始めた。


「俺の名はラウル。地上のカタポレンの森に住む、プーリア族という妖精だ。いろいろとあって、今はこのご主人様達とともに人里で暮らしている。ご主人様達ともどもよろしくな」

『まぁー、妖精が人族に仕えているのー?』

「仕えるって言っても、奴隷とか隷属関係なんかの一方的なものでは全くないがな。大きなご主人様から金をもらって、その分掃除をしたり飯を作ったりと働いているんだ」

『あぁー、だからご主人様と呼んでいるのねぇー』

「そゆこと」

『とても不思議な関係だけどー……虐げるとか奪うとかではないのならー、それも良いと思うわぁー』


 ライト達を『ご主人様』と呼ぶラウルに、地の女王は最初のうちはとても驚いた顔をしていた。

 地の女王は妖精族のことに精通している訳ではないが、それでも精霊と妖精族は近しい関係にある。故に妖精族が好んで人族に仕えるということが信じられなかったのだ。

 だが、聞けば三者は同等であり、協力関係にあることを知った地の女王はにこやかな笑顔になる。


 するとここで、地の女王の向こう側に寝そべっていた白虎が再びこちら側に寝返りを打った。

 そのおかげで、地の女王は再び白虎のお腹の下に埋もれてしまった。

 地の女王の『ふぎゃッ』という情けない声が白虎のお腹の下から漏れた。


「あッ、おい、地の女王!大丈夫か!? おい、ラウル、白虎を持ち上げるぞ!ライトは地の女王を引っ張り出してくれ!」

「うん、分かった!」

「了解」


 慌てたように指示を出すレオニスに、ライトもラウルもすぐに従う。

 レオニスが白虎の首の下に潜り込み、ラウルが白虎のヘソ辺りに潜り込む。

 二人が同時に力を込めて浮かび上がった後、ライトが素早く白虎の下に潜り込んでうつ伏せ状態の地の女王を引っ張って救出した。


「地の女王様、大丈夫ですか!?」

『う、うんー、大丈夫よー……こんなのいつものことだしー』

「な、ならいいですけど……」


 白虎の不意打ちの寝返りに、ヨレヨレになってしまった地の女王。

 だが、この程度のことなら日常茶飯事らしい。

 しかし、未だにぐーすかと寝こける神殿守護神というのも如何なものか。

 地の女王はただでさえ丸い頬をより丸く膨らませながら、白虎の方に身体を向ける。


『ンもー、シロちゃんってばー、ホンット寝相悪いんだからー!そろそろ起きなさーーーいッ!』

『……ンガ?』


 地の女王がプンスコと怒りながら、レオニスとラウルが持ち上げている白虎の背中に乗ってうなじ辺りをぽこすかと両手で叩く。

 殴りつける力自体はそこまで強くないが、うなじを叩かれたことで白虎が目を覚ましたようだ。


『レオニス、ラウル、シロちゃんを地面に下ろして!』

「「はいよー」」


 地の女王の指示に、レオニスもラウルも素直に従う。

 そのままそっと地面に下ろされた白虎、同時に地面に下りた地の女王の顔を見るなりベロン、ベロン、ベローン!と大きな舌で三回舐めた。

 ニコニコと嬉しそうに舐める白虎の顔は喜びに満ちていて、本当に地の女王を慕っていることが分かる。


『ンもー!シロちゃん!そんなので誤魔化されないんだからねーッ!』

 ベロン♪

『だぁーからぁー!そんなんでー、私を誤魔化そうだなんてー……』

 ベロン♪♪

『…………仕方ない子ねぇー…………』


 地の女王のお小言など全く聞かず、ただただその顔を嬉しそうに舐め続ける白虎。

 その従順さと愛らしさに、結局地の女王が折れてしまった。

 何とチョロい女王様だと思うなかれ。白虎のヨダレでベッタベタになってしまった顔を、白虎の喉元辺りに抱きつきながら拭っている地の女王も大概である。


 仲睦まじい地の女王と白虎の様子に、ライト達はただただ微笑みつつそのやり取りを見守っていた。

 絶賛お昼寝中だった地の女王の目覚めです。

 今回初めて他の女王様とは違う雰囲気の、新タイプの女王様。

 これはまぁ、いくら麗しの女王様でも全部が全部コピペじゃつまんないっつーか、飽きるよなぁー……という作者の感覚を反映しています。

 ライトなら絶対に飽きるなんてことはないでしょうし、むしろ「飽きるなんてとんでもない!」と叫びながら作者に食ってかかってきそうですが(´^ω^`)


 とはいえ、斬新な見た目に反して彼女の持つ役割はかなり重要なもの。

 地の女王、つまりは大地を司る精霊だけあって、生まれながらにして持つ責務もとても重大なものなのです。

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