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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
最後の聖遺物

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第1024話 奈落の谷の探検

 上空から深い渓谷に降り始めてから、二分か三分くらいは経過したたろうか。

 急降下ではなく様子見をしながらなので、多少時間がかかるのは仕方がない。だがそれにしても、一向に底の地面に辿り着かない。

 そのうち周囲は暗くなっていき、完全に洞穴に潜り込んだかのようになる。上に見える青空も、どんどん小さくなっていった。


「レオ兄ちゃん、これ……底無しじゃないよね……?」

「多分なー。……お、そろそろ地面が見えてきたぞ」

「……あ、ホントだ!」


 不安に駆られたライトがレオニスにおそるおそる問うも、レオニスは気にした様子もなくあっけらかんとした口調で答える。この胆力の強さと差は、やはり冒険者としての経験の差が如実に表れているのだろう。

 ようやく見えてきた谷の底に、ストッ、と降り立つレオニスとラウル。三人は早速頭の上のハイパーゴーグルを目に装着した。

 ライトもレオニスの背中から下りて、三人で周囲をキョロキョロと見回す。

 すると、レオニスが何かを見つけたようだ。


「……あっちに穴っつーか洞窟があるな」

「あ、ホントだー。……他には進める道がなさそうだし、あの洞窟を進んでいけばいいのかな?」

「だろうな。じゃ、早速行くか」


 レオニスはライトを下ろして早々に魔物除けの呪符を使用した。

 レベル500超えのレオニスが使用すれば、大抵の魔物は除けることができる。これで魔物に邪魔をされずに、じっくりと探索できるというものだ。


 そうして下り坂の洞窟を進んでいくライト達。

 レオニスが先頭を進み、ライトが真ん中を歩いてラウルが最後尾で一列になって歩いていく。

 しかし、ライトとレオニスはスタスタと進んでいくのに対し、ラウルだけが若干もたついている。

 その様子にライトが気づき、一旦歩みを止めてラウルに問いかけた。


「レオ兄ちゃん、ちょっと待ってー」

「ン? どうした?」

「ラウル、どうしたの? もしかして暗くて歩きにくい?」

「おう、一応このゴーグルで視界は確保できているが……白黒の視界に慣れないのと、何しろこんな真っ暗闇は初めてなんでな……」

「あー、そっかー、そういやそうだねー」

「つーか、何でご主人様達はそんなにさっさと歩けるんだ?」

「「………………」」


 何でこの暗闇でそんなにとっとと歩けるんだ?というラウルの疑問に、ライトとレオニスが顔を見合わせる。

 実際この地底に向かう道中も、灯り一つない真っ暗闇には違いない。だがしかし、ライトとレオニスはそれよりもっと暗い真の闇を知っている。それは、暗黒の洞窟の最奥である。


 そこには闇の女王が住まうだけあって、暗さで言えばブラックホールにも等しい闇が広がっていた。

 かつてライトがレオニスとともに初めて暗黒の洞窟に潜った時、目の前3cmまで近づけた己の手が見えなかったことに戦慄したものだった。

 それに比べたら、この地底はまだ明るい方だとさえ思えるライトだった。


「えーとねぇ、多分ぼくとレオ兄ちゃんは闇の女王様の加護をもらってるから、じゃないかな?」

「だろうな。ここにもちらほらと闇の精霊がいるっぽいのが見えるし。……ていうか、よく見たら闇の精霊がラウルに憑いて目隠ししてんじゃねーか」

「……あ、ホントだ」


 ライトとレオニスが言うように、二人は闇の女王の加護により夜目がかなり効くようになっていた。

 それはハイパーゴーグルをしている状態でも変化していて、以前暗黒の洞窟に潜った時にはハイパーゴーグルの視界はモノクロ状態だった。だが今のライトとレオニスは、フルカラーの景色で見えていた。

 もっともそれは、さすがに昼間程の明るさはなく、夕暮れ時くらいの暗さは伴っていたが。


 そしてラウルの顔を見たライトとレオニスが、ラウルの肩に数体乗っかっていた闇の精霊を発見した。

 闇の精霊達はクスクスと笑いながら、ラウルの目を手で隠しているではないか。

 精霊達は得てしていたずら好きという逸話が多いが、どうやらサイサクス世界の精霊達もいたずら好きな者がぼちぼちいるようだ。


 しかし、いたずらされるラウルにしてみたらたまったものではない。

 ライト達の言葉に、ラウルは慌てている。


「え、ちょ、マジ?」

「うん。小さな闇の精霊さんが、ラウルのハイパーゴーグルにくっついてて目隠ししてるー」

「待て待て待て、こんな暗闇の中で目隠しとか洒落ならん!早いとこ精霊を取っ払ってくれ!」

「はーい。レオ兄ちゃん、取ってあげてー」

「おう、ちょっと待ってろよー」


 ラウルの要請をライトが受けて、そのままレオニスに丸投げする。

 ライトの身長はラウルより低いので、背丈がほぼ同じのレオニスに除去担当してもらうのが最善なのである。

 レオニスがラウルの前に進み出て、肩に乗っている闇の精霊達を一体づつペリッ☆と剥がしていく。


 身体の大きさからすると、この闇の精霊達は下級精霊のようだ。

 ライトとレオニスにはくっつかずに、ラウルにだけちょっかいを出したのは、ライトとレオニスには闇の女王の加護があるからだろう。

 闇の精霊の頂点たる闇の女王、その加護を受けた者にいたずらする程の度胸はさすがになかったと見える。


 そうした闇の精霊達の意図に、レオニスが気づかない訳がない。

 レオニスはわざとしかめっ面をしながら、ちょっぴり脅しつつ闇の精霊を剥ぎ取る。


「闇のおチビちゃん達よ、あんまりいたずらが過ぎると取って食っちまうぞ?」

「「「キャーーー♪」」」


 ラウルの顔の周りにいる闇の精霊を、レオニスが指でそっと摘んで剥がしてはポイ、ポイポイー、と空中に放り投げていく。

 放り投げられた闇の精霊達も、キャーキャーと笑いながら空中を浮遊していて実に楽しそうである。

 レオニスの脅し文句が全く効かないのは、それが本気で言っている訳ではないことが精霊達にも分かっているからだろう。


 五体ほど取り憑いていた闇の精霊が全て剥がされて、ラウルが己の手で肩を揉みながら首を動かし解している。

 闇の精霊が乗っかっていたせいで、何やら肩が凝っていたようだ。


「あー、肩が軽くなったわ……」

「何だ、ラウル、闇の精霊が乗っかっていたのに全く気づかなかったのか?」

「ああ……冒険者ギルドでの魔力測定の時に分かったんだが、俺には闇属性が全くないらしいんだよな」

「ぁー、まぁなぁ……お前ってもともと木の妖精だし、闇よりは光の方がまだ適性ありそうだもんなぁ」

「光属性もほぼなかったがな」


 ラウルが闇の精霊に気づけなかったのは、どうやらラウルに魔法方面で闇属性の適性がなかったせいらしい。

 今のラウルが持っている魔力の属性は、火、水、風、地の四つ。

 火属性は料理したさに根性で適性を会得したし、水や風、地などはプーリア族なら皆普通に持っている適性だ。

 しかし、これまでラウルは闇や光の適性の有無まで考えたことはなかった。


「そしたら、近いうちに闇の女王に会いに行くか?」

「俺は闇の女王とは特に接点がないが……会いに行ってもいいのか?」

「接点ならあるぜ。なぁ、ライト?」

「うん!」

「そうなのか?」


 今回張り切って出張ってきた神樹族ならいざ知らず、属性の女王達に関してはラウルはあまり積極的に関わってきていない。

 強いて言えば、氷の女王とはかなり密接な関係があるが、他には目覚めの湖の水の女王と海樹ユグドライアの近くに住む海の女王、天空島の光の女王、雷の女王くらいしか会ったことがない。

 そんな自分が、闇の女王に会いに行ってもいいものなのか?とラウルが疑問を持つのも当然である。


 そんなラウルの思惑に反して、ライトもレオニスも『接点がある』と断言するではないか。

 全く心当たりがなくて首を傾げるラウルに、ライトがその理由を説明した。


「闇の女王様達とも、もう何度もお茶会をしててさ。その時にラウル特製のスイーツを出してるんだよね。もちろん闇の女王様もラウルのスイーツは大好きだし、それ以外のところでもいっつもすごく大好評なんだよ!」

「お褒めに与り光栄だ」

「だからね、スイーツを作ったラウルを連れて行って紹介すれば、闇の女王様もきっと喜んで迎えてくれると思うよ!」

「そうか……なら、近いうちに闇の女王にも会わせてもらうとしよう」

「うん!」


 ライトの解説に、ラウルが少し嬉しそうな顔をしている。

 自分が作った料理やスイーツが大好評と聞けば、ラウルでなくとも内心嬉しくなるというものだ。

 ライトやレオニスが、初対面の相手に対していつも繰り出す交流手段『お茶会』。そのお茶会に欠かせないのが、ラウルが作る極上スイーツだ。

 今やライト達にとって欠かせない外交手段、その立役者は間違いなくラウル。縁の下の力持ちとして、常にライト達を支えてきてくれたラウルに、属性の女王達に会う資格がないなんてことは絶対にないのである。


「さ、じゃあぼちぼち先に進むぞ」

「はーい」「おう」


 ラウルの視界が悪かった原因も取り除けたところで、再び探索を再開するライト達。

 今度はライトとラウルが手を繋いでレオニスの後ろを歩いていく。

 そうして三十分弱程歩いた頃、先頭を歩いていたレオニスが足を止めた。

 突然立ち止まったレオニスに、ライトが不思議そうに声をかけた。


「ン? レオ兄ちゃん、どしたの?」

「……先がない」

「え? 先がないって、どゆこと?…………ヒョエッ」


 レオニスの言葉がよく分からなかったライト。

 レオニスの横に行き、その先の地面を見ると―――何とそこには、断崖絶壁の如き光景が広がっていた。


 コオオォォ……という謎の音が響き渡るその谷は、これまたぱっと見では底が見えない。夜目が効くライト達でもよく見えないということは、かなり深い亀裂のようだ。

 再び現れた深い谷、その底知れない不気味さにライトは思わず変な声が出てしまう。


「レ、レオ兄ちゃん……これ、また下に行かなきゃなんないヤツ?」

「だろうなぁ。ここまでずっと一本道だったから、他に進む道なんかねぇし。この先に冥界樹や地底神殿があるなら、行かなきゃならんな」

「だよね……」

「よし、そしたらラウル、俺が先に下に下りるからお前はライトを負ぶってついてきてくれ」

「了解」

「ぅぅぅ……ラウル、よろしくね」

「おう、任せとけ」


 おっかなびっくりで亀裂を覗き込むライト。

 実はこの『奈落の谷』という場所、ライトもよく知っていた。何故ならそこは、BCOでもよく出かけていた場所だったからだ。

 BCOではシュマルリ山脈の中の(いち)フィールドだった、この奈落の谷。それが実際にその目で見ると、よもやこんなにも不気味で怖さ満点の場所だとは思わなかった。

 お化け屋敷も斯くやといった様相に、ライトは冗談抜きで震え上がる。


 そんなライトを他所に、レオニスはサクッと進む判断を出してテキパキと指示を出す。

 確かにこの先に進まなければ、今回のお目当ての冥界樹や地底神殿には辿り着くことはできない。それはライトにもよく分かっていた。

 ライトは意を決してラウルの背中に飛び込む。

 ラウルの広い背中におんぶされながら、ライトはレオニスとともに再び地中深くに潜っていった。

 奈落の谷の探検風景です。

 ライト達に全く新しい場所を冒険させるのって、すっごく久しぶりな気がする作者。

 こんなのいつぶりかしらー?と思いつつサルベージしたら。ドラリシオ事件で夜の目覚めの湖とかノーヴェ砂漠とか、結構直近でもそこそこ新舞台出てきてました…( ̄ω ̄)…

 そうか、久しぶりな気がしたのは、冥界樹や地底神殿=地の女王に会うという『高位の存在との新しい出会い』の方だったのね><

 属性の女王は第631話の光の女王&雷の女王以来の400話ぶりでした。


 そしてここで精霊達についてちと補足。

 途中ラウルにちょっかいを出してきた闇の精霊は、住処こそ真っ暗闇の地底ですが、精霊の本能はやはり闇属性を持っていて闇の女王の配下にあります。

 闇の精霊というくらいだから、闇あるところならどこであろうと闇の精霊がいるのは当然のこと。でもって、地底という光が届かない場所は、暗黒の洞窟と同じくらい闇属性の精霊達には最適な住処なのです(・∀・)

 縄張りとしては地の女王の管轄ですが、その親和性の高さ故に闇の精霊の混在も許されているのです(^ω^)

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