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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
最後の聖遺物

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第1016話 イヴリンとジョゼのお見舞い

 その後ライトはハリエットとともにリリィの部屋で30分程過ごし、次の目的であるイヴリンの家に向かった。

 向日葵亭での別れ際に、リリィが花咲くような笑顔で「明日また学園で会おうね!」と言ってくれたことに、ライトもハリエットも嬉しかった。


 イヴリンの家は、向日葵亭から子供の足でも歩いて2分程のところにある。

 向日葵亭近くの脇道に入り、少し進んでいくとイヴリンの家に辿り着いた。

 それはこぢんまりとした平屋の一軒家で、平民が住む一般的な住宅が近隣一帯に並ぶ。

 ライトがイヴリン家の扉をノックし、そっと開けながら中に向かって声をかけた。


「ごめんくださーい。イヴリンちゃんのお見舞いにきましたー。イヴリンちゃんはいますかー?」

「…………はーい」


 家の奥の方から、女性と思しき小さな声が聞こえてきた。

 そうしてしばらく後に奥から出てきたのは、イヴリンの母モニカだった。

 モニカはライトとハリエットの姿を見て、嬉しそうな顔で迎えた。


「まぁまぁ、ライト君にハリエットちゃん、いらっしゃい。イヴリンのお見舞いに来てくれたの?」

「はい。今日はイヴリンちゃんもリリィちゃんもジョゼ君も学園をお休みしてたので、心配になってお見舞いにきたんです」

「イヴリンちゃんはどうですか? お元気にしてますか?」

「二人ともありがとうねぇ。もちろんイヴリンは元気よ!」

「そうですか、それは良かったです!」


 玄関先でイヴリンの体調を聞き、リリィ同様元気そうなことにライトもハリエットも安堵の表情を浮かべる。


「ちょうどさっきジョゼ君が来てね、今イヴリンのお部屋でお話しているところなのよ」

「え? ジョゼ君、家の外に出てもいいんですか?」

「ジョゼ君のおうちはお向かいさんだし、それにうちのイヴリンもそうだけど、もう冒険者ギルドの人達がお話を聞きに来たから大丈夫よ」

「そうなんですね!」


 イヴリンのお見舞いの後にジョゼの家にも行くつもりだったが、既にここにジョゼが来ているとなればライト達にとっても好都合だ。

 モニカの案内でイヴリンの部屋に通されたライトとハリエット。

 モニカが扉を開けると、部屋の中にはイヴリンとジョゼがいた。


「イヴリン、ジョゼ君、ライト君とハリエットちゃんがお見舞いに来てくれたわよー」

「あッ、ライト君にハリエットちゃん!」

「やあ、いらっしゃい」

「イヴリンちゃん!ジョゼ君!二人とも大丈夫ですか!?」

「うん、大丈夫よ!」


 イヴリンは勉強机の椅子に座り、ジョゼはベッドに腰掛けている。

 二人の無事な姿を見たハリエットがイヴリンのもとに駆け寄り、ライトもジョゼの前に歩いていく。


「ジョゼ君の家にもお見舞いに行くつもりだったから、ちょうど良かった。ジョゼ君ももう大丈夫なの? 聖堂の中で皆気を失っていたって聞いたよ」

「うん、僕もイヴリンもこの通り大丈夫。心配してくれてありがとう。リリィのところにもお見舞いに行ったの?」

「うん、リリィちゃんも元気そうだったよ。明日は学園に行けるから、また明日ねって約束したし」

「そっか、僕とイヴリンも明日からまた普通にラグーン学園に行けるよ」

「良かったね!」


 ジョゼ達の無事を喜ぶライトに、ジョゼもまたはにかみながら答える。

 ハリエットもイヴリンの手を握りながら、彼女の無事を喜んでいる。

 しかし、ハリエットとライトは手放しで喜べないことがあった。


「皆さんが無事で、本当に良かったです!……でも、イグニスさんのことを思うと……」

「え? イグニスがどうかしたの?」

「あ……イヴリンちゃん達は、まだご存知ないのですね……実は……」


 ライトとハリエットが手放しで喜べない原因、イグニスの現状をイヴリン達にも聞かせた。

 事件に巻き込まれたばかりのイヴリン達に、イグニスが未だ意識不明であると聞かせるのも酷だとは思うのだが、明日ラグーン学園に登校すれば嫌でも知ることになる。

 遅かれ早かれいずれは知ることなのだから、今ここで自分達の口から詳しいことをきちんと話しておいた方がいい、とハリエットは判断したのだ。


 イヴリン達といっしょに聖堂にいたイグニスは、何故かまだ目を覚まさないこと、目を覚まさないのでそのままラグナ神殿の医務室にいること。今後の治療及び経過観察はラグナ教が責任を持って行うことを約束した等々。

 ハリエットの知るイグニスの現状を伝え聞いたイヴリンとジョゼ。

 当然のことながら、二人の顔はどんどん憂いに満ちていった。


「そんな……どうしてイグニスだけ目を覚まさないの……?」

「それは、ラグナ神殿側も全く分からないみたいで……しばらく様子見するしかないようです」

「僕もイヴリンも無事だったから、イグニスだって無事だろうと思ってたのに……」

「回復魔法や浄化魔法もたくさんかけてて、普通なら起きてもいいはずなんだけど……って、うちのレオ兄ちゃんが言ってた」

「「「………………」」」


 ライト達からもたらされた悲しい知らせに、イヴリンもジョゼもしょんぼりとしている。

 しばしの沈黙の後、イヴリンがぽつりぽつりと話し始めた。


「あのね、これ、夢だと思ってたから冒険者ギルドの人達に話してないんだけど……私、聖堂の中ですっごく大きなイグニスを見たんだよね……」

「「!!!!!」」


 イヴリンの話に、ライトだけでなくジョゼも驚いている。

 そしてびっくりした顔のまま、ジョゼがイヴリンに問いかけた。


「え!? イヴリンもアレを見たの!? 僕も夢だと思ってたよ、だってイグニスが急にあんな大きくなるなんて、どう考えてもあり得ないもん!」

「うん……司祭のおじさんとお話をしている時に、何か後ろですっごく眩しい光が出てきて……目が開けられないくらいに眩しくて、それがようやく消えたと思ったら、イグニスにそっくりな何かがいたの」

「うん、確かにあれはイグニスにそっくりだったよね……でも、何というか、今のイグニスとはちょっと違ってて……イグニスのお兄さんとか、そんな感じだったな」

「そうよね。でも、イグニスは一人っ子で兄弟はいないから……親戚の従兄弟のお兄さんとかかな?」

「ていうか、あれ、透けてなかった?」

「うん、何か幽霊みたいな? 全体的に色が薄かったよねー」


 興奮気味に話すジョゼに、イヴリンも相槌を打ちつつ考察している。

 二人とも気絶する前に破壊神イグニスを目撃していたのだが、その巨大さはあまりにも非現実的過ぎて『これは夢だ』と思っていたらしい。

 そしてライトはライトで、二人の話を聞いて心の中で納得していた。



『やっぱり……イグニス君の中に眠る【破壊神イグニス】が顕現したんだな』

『何故破壊神が目覚めたのかは分からんが……祭壇にあった【深淵の魂喰い】に触発されたのか、あるいはジョブ適性判断の水晶がバグでも起こしたのか……』

『そして破壊神は【武帝】と戦って、【深淵の魂喰い】を真っ二つに破壊したんだな』



 それまではライトの憶測でしかなかった『破壊神 vs. 【武帝】』という推論が、より確実なものになっていく。

 イヴリン達が見たという『イグニスそっくりのお兄さん』というのも、イグニスが十五歳くらいに成長した姿と考えれば辻褄が合う。

 何故ならライトが知るBCOの鍛冶師イグニスは、十五歳くらいの少年として描かれていたからだ。


 ひたすら考察に耽るライトを他所に、ハリエットが不思議そうな顔でイヴリン達の話に入っていった。


「とても大きな、幽霊みたいなイグニスさんそっくりのお兄さん……ですか? 不思議なお話ですねぇ。私も是非ともお会いしてみたかったですわ」

「ハリエットちゃん、こんな嘘みたいな話を信じてくれるの?」

「もちろんです。だって、イヴリンちゃんやジョゼさんが嘘をつくなんて思っていませんもの」

「ハリエットちゃん……信じてくれて嬉しい!ありがとう!」

「僕も信じてもらえて嬉しいよ。というか、そもそもこんな嘘をついたところで、誰も得なんてしないしね?」


 イヴリン達の話を疑うことなく信じるハリエットに、イヴリンとジョゼが喜んでいる。

 普通なら信じてもらえなさそうな話なのに、何故ハリエットがイヴリン達の話を無条件で信じるかといえば、それは話の真偽以前にイヴリンやジョゼという人間そのものをハリエットは信じているからだ。

 二人とも無闇矢鱈に嘘をつく人間ではないことを、ハリエットは知っている。だからこそ、イヴリン達が語る『イグニスそっくりの巨大幽霊もどき』をハリエットも信じたのだ。


「その、イグニスさんそっくりの大きな幽霊さん?はともかく、イグニスさんが早く目を覚ましてくれるといいのですが……」

「そうだね……僕達もイグニスのお見舞いに行けたらいいんだけど……」

「まだラグナ神殿にいるなら、今会うのは難しいかなぁ?」


 イヴリン達の話はイグニスのお見舞いの件に移る。

 そこでライトがハッ!と我に返り、三人に声をかけた。


「あ、イグニス君のお見舞いなら、ぼく明後日行く予定だよ。レオ兄ちゃんに、見舞いに行くなら火曜日以降にしとけって言われてるのと、うちのラウルも冒険者ギルドに登録しているから、聖堂以外の場所なら入れるだろうからって」

「ホント!? そしたら明日、学園の授業が終わったら私達もついていっていい!?」

「もちろんだよ!リリィちゃんも誘って、明日の授業が終わったら皆でラグナ神殿にイグニス君のお見舞いに行こう!」

「「うん!」」「はい!」


 ライトのラグナ神殿訪問話に、他の三人が食いつくように聞いてきた。

 もちろんライトに否やはない。イグニスのことを心配しているのはライトだけではない。むしろイグニスの幼馴染であるイヴリン達こそとても心配しているはずだ。

 明日もまだラグナ神殿は厳重警戒中かもしれないが、冒険者ギルドに所属しているラウルがいっしょにいれば大丈夫だろう。


 皆でいっしょにお見舞いに行こう!と言うライトの言葉に、イヴリン達は嬉しそうに頷いていた。

 リリィのお見舞いの後は、イヴリンとジョゼのお見舞いです。

 本当なら イヴリン→ジョゼ の順で回るところなんですが。話をコンパクトにまとめるためにジョゼをイヴリンのおうちに先に来ていたことにしちゃったりなんかして。


 イヴリンとジョゼは、今回の事件の数少ない目撃者。

 もちろんその全貌までは知りようがありませんが、ライトの中ではどんどん確信に近づいています。

 というか、イグニス君よ、早よ無事な姿を見せておくれー><

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