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マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜  作者: 潟湖
最後の聖遺物

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第1006話 眠れる神殿守護神の寝顔と寝言

 レオニスが怒涛の一日を過ごしている間、ライトはあくせくと動いていた。

 先週の土日はドラリシオ事件で手一杯だったから、今週はクエストイベントその他をやり込むぞー!と張り切るライト。

 土曜日などは、早々に朝食を食べた後『今日は炎の女王様のところに遊びに行ってくるねー!』と言い残して、さっさと一人で出かけてしまった。


 本当ならレオニスやラウルが止めるところなのだが、ライトは既に炎の女王と火の女王の加護を持っている。

 しかもどちらとも勲章までもらっているので、もはや火属性魔物に関しては何の心配も要らない。

 年がら年中リポップする通常雑魚魔物など、もはやライトの敵ではない。何せエリトナ山のマグマ溜まりに飛び込んでも、その身体は溶けないどころか呼吸も会話も全てできて自由に動けるのだから。


 そして、レオニスもそのことを知っている(というか、レオニスもライトと同類である)ので、もうライトが属性の女王のもとに遊びに行く程度では引き留めもしない。

「ちゃんと魔物除けの呪符を使えよー」「日が暮れるまでには帰ってこいよー」「女王達によろしく言っといてなー」等々、ライトに向けて数言声をかけて送り出すだけである。


 土曜日の朝から、いそいそとプロステスに出かけるライト。

 この日は炎の洞窟だけでなく、エリトナ山にも足を伸ばす予定なので、正真正銘一日仕事となるからだ。

 そしてライトは、炎の洞窟内やエリトナ山で魔物除けの呪符を使うことは一切ない。何故ならライトのお出かけには、属性の女王と会う以外にも『素材採取』という重要な目的があるからだ。


 炎の洞窟に入ると、クイーンホーネット、極炎茸、レッドスライム、マンティコア等々が時折ライトに襲いかかってくる。

 それらは炎の洞窟の固有魔物で、ライトが炎の勲章をマントの内ポケットに事前に忍ばせるなりして直接所持していれば、魔物達もそれを察知して襲ってくることはない。

 だが、勲章をアイテムリュックに入れたままだと、勲章持ちだということを感知されない。故に固有魔物達はライトを外敵&雑魚人間と判断し、問答無用で襲いかかってくるのである。


 なので、ライトは『女王様にすぐに会いたい時には、勲章を身に着ける』『素材採取をしたい時には、アイテムリュックに仕舞っておく』というように、時と場合によって勲章を使い分けている。

 そして今回の土曜日のお出かけでは、ライトは炎の洞窟ではマンティコアを、エリトナ山では火山蜥蜴をたくさん狩りたい!という目的がある。なので、どちらも魔物除けの呪符は使わずに進んでいく。


 時折出てくる魔物をバッタバッタと倒しては、いそいそとアイテムリュックに収納していくライト。そうしてしばらく進んでいくと、炎の洞窟の最奥に辿り着いた。

 この最奥の広間には炎の女王がいる。この日もライトの訪問に気づいていた炎の女王が、自ら褥から出て立ち上がりライトを出迎えてくれた。


『おお、ライト!よく来たの!』

「炎の女王様、こんにちは!お久しぶりです!」

『ライトも息災そうで何よりだ。……今日は一人で来たのか?』

「はい。レオ兄ちゃんもラウルも忙しそうなので、ぼく一人で女王様のところに遊びに来ちゃいました!」

『そうか、人族は何かと忙しない者が多いようだからな…………って、ライト、今日は妾の勲章は持ってきていないのか?』


 ライトとの挨拶で、再会を喜ぶ炎の女王。

 だが、ライトが今炎の勲章を持っていないことに気づいたようだ。

 不思議そうに問いかける炎の女王に、ライトは元気よく答える。


「いいえ、炎の女王様からいただいた勲章は、ちゃんとこのアイテムリュックに入れて持ってきてます!」

『その、アイテムリュック?なる物に入れたままだと、勲章の存在が感じ取れぬのか……しかし、それではすぐに魔物達に襲われてしまうぞ?』

「あ、それなら大丈夫です!ぼくは『魔物除けの呪符』も持ってますし!」

『魔物除けの呪符、とな……呪符というと、かなり強力な力を持っているのであろうな……』

「はい!魔物除けの呪符は、こういう物でして……」


 ライトは背中に背負ったアイテムリュックを下ろし、中から魔物除けの呪符の実物を一枚取り出して炎の女王に見せた。

 そしてその効能や有効時間等々、アイテム詳細を語り聞かせるライト。

 その説明を聞いた炎の女王は、ますます不思議そうな顔をしている。


『では、もしその効能が切れたら、途端に魔物に襲われるのではないか?』

「そういうことになりますねー。でも、魔物除けの呪符は常に十枚以上持ち歩いていますし、万が一使い切ってしまっても出口に向かって逃げればいいですし」

『うぬぅ……一応この洞窟にも、数多の魔物がおるのだがのぅ……ライトは魔物が怖くはないのか?』


 困惑気味にライトに問いかける炎の女王に、ライトは元気な声でハキハキと答えた。


「はい、この炎の洞窟にいる魔物なら怖くないです!ぼくが住んでいるカタポレンの森にもたくさんの魔物がいて、この洞窟の太さくらいの大蛇とか、この広間の天井より背の高い大きな熊なんかも頻繁に出るので!」

『……そ、そうか……ライトはとても厳しい環境の中で暮らしておるのだな……』

「でも、だからといって決して油断はしません!ぼくでも倒せそうな魔物なら倒して進むけど、絶対に勝てなさそうなヤツに遭遇したら全力で逃げますから!だから、女王様も心配しないでくださいね!」

『そんな強力な魔物にもし遭遇したとして、果たして逃げきれるものなのかのぅ……?』


 頭の上に『???』をたくさん浮かべる炎の女王。

 実際彼女が不可解に思うのも当然のことだ。何故ならライトは、外見だけで言えば本当に普通の人族の子供にしか見えないのだから。


 だが、炎の女王はまだライト達のことを理解しきれていない。

 せいぜい『見た目の幼さに反して、かなりの高魔力を持つ不思議な人族』と思うくらいだ。

 しかし、炎の女王もそのうちにライトとレオニスが『人外ブラザーズ』と呼ばれている理由を徐々に思い知っていくことだろう。

 言ってみれば『この兄にして、この弟あり』なのである。


「ところで炎の女王様。一つお願いがあるんですが」

『ン? 何ぞ?』

「今日はぼく、火の女王様にもお会いしたいんですけど……もし良かったら、エリトナ山に連れていっていただけませんか?」

『エリトナ山に、か? ……そうだな、妾もしばらく火の姉様にお会いしていないし、久しぶりに火の姉様にお会いしたいな』


 ライトのおねだりに、炎の女王も少し考えた後に頷く。

 炎の女王が火の女王と初めて会ったのが、今年の七月末頃のこと。

 そこからもう四ヶ月くらい経っているので、炎の女王も火の女王に会いたい、と思ったようだ。

 炎の女王をエリトナ山への移動手段にするとは、ライトも実に図太いというか大胆不敵である。


 しかし今のライトには、プロステスから近い炎の洞窟ならともかくエリトナ山を自由に行き来する手段がない。ウィカを介して水場を行き来するのとは訳が違うのだ。

 とはいえ、今後も続けていかなければならないであろう素材採取のためにも、いずれはエリトナ山にも自由に行き来できるようになりたいなぁ……とライトは思う。

 炎の女王様の手を煩わせることなくエリトナ山に行きたい!

 そのためには、今よりもっともっと頑張らなくちゃ!

 いつにも増してライトは修行に励む決意をする。


 ちなみに何故ここまでライトがエリトナ山の行き来に拘るのか?と言えば、それはひとえにマキシマスポーションの原材料の一つに『火山蜥蜴の鋭爪』が含まれているためである。

 そう、この日ライトがエリトナ山に行きたかった大きな理由の一つが『マキシマスポーションの原材料を手に入れる!』だった。

 マキシマスポーションが入手できなければ、ライトのクエストイベントはいつまで経っても進まないし完遂することもできない。

 そう、クエストイベントを進めるためならば、図太かろうが大胆不敵だろうが属性の女王の力を借りる一択なのである。


 しかし、ライトの願望はそうした実利的な理由ばかりではない。

 ライトは、前世(むかし)から今世(いま)に至るまでずっと属性の女王のファンなのだ。

 いや、前世の何倍何十倍も今世の方が大好きなのは間違いない。

 前世のBCO時代は画面越しで見ていた美麗女王が、サイサクスの今世では自らの意思で動いて喋り、笑ったり怒ったりなどの様々な喜怒哀楽の表情を見せてくれるのだ。

 これはもう、ライトでなくても骨抜きになるというものである。


 クエストイベントの素材採取だけじゃなく、火の女王様姉妹にも会える!これだけでもう完全に俺得案件だよね!

 でも、俺ばっかり得するのは申し訳ないから、今日も女王様達に美味しいものをご馳走しよう。美味しいお菓子や飲み物があれば、話もより弾んで楽しいひと時を過ごせるってもんだ!

 そんなことを考えながら、ライトは炎の女王に声をかけた。


「炎の女王様、エリトナ山に行ったら火の女王様といっしょにお茶会しましょうね!」

『おお、それは良い。きっと火の姉様も喜んでくださるであろう』


 炎の女王の承諾を得たライト、早速彼女とともにエリトナ山に瞬間移動することにした。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 炎の洞窟の最奥の間、その片隅にある渦巻く炎の中に手を繋ぎながら飛び込む炎の女王とライト。

 明るく温かい炎の空間を通して、エリトナ山のマグマ溜まりに移動する。その光景は何度見ても不思議で、ライトの胸はワクワクする。


 そしてマグマ溜まりに移動した瞬間に、炎の女王がマグマのさらに奥へと向かっていった。

 火口や外に出るには上に行かなければならないはずなのに、下に進んでいくのは何故なのか。ライトが不思議に思っていると、その答えは炎の女王の口から出てきた。


『火の姉様!』

『ン?……おお、炎の女王ではないか!』

『姉様、ご無沙汰しております。姉様もお元気そうで何よりです』

『それは妾の台詞ぞ。其方が元気な姿を見せてくれるのが、妾にとっては最も嬉しい』

『もったいないお言葉、ありがとうございます……』


 炎の女王が一目散にマグマの底に向かっていった理由。それは、下の方に火の女王がいたからだった。

 火の女王も炎の女王の来訪にすぐに気づき、嬉しそうな顔で炎の女王のもとに寄っていく。

 火の女王に両頬を包まれながら歓迎の言葉をかけられた炎の女王は、照れ臭そうにはにかみながら喜んでいた。


 そして火の女王の視線はライトにも注がれる。

 火の女王はライトに向かっても言葉をかけた。


『おお、ライトも来たのか。よう来たの』

「火の女王様、こんにちは!ご無沙汰してます!」

『其方も元気いっぱいで何よりだ』

「ありがとうございます!…………ところで、火の女王様は下で何をしていたんですか? 何だか、ガンヅェラとお話をしているように見えましたが……」


 火の女王と挨拶を交わしたライトが、早々に火の女王に下にいた理由を問うた。

 ライトがエリトナ山到着直後、火の女王の姿を見つけた時に彼女がガンヅェラの横にいて何かを話しているかのように見受けられたからだ。

 そうしたライトの素朴な疑問に、火の女王はフフッ、と笑いながら答えた。


『ほう、其方、なかなかに目敏いの。そう、先程からガンヅェラが何やらムニャムニャと寝言を発しておったのでな。その横で寝言を聞いて、相槌を打っておったのだ』

「ガンヅェラの寝言、ですか!? 何ソレ、ぼくも聞いてみたい!」


 火の女王の思わぬ答えに、ライトが興奮気味に食いつく。

 ガンヅェラは、このエリトナ山の守護神でありながら『禍龍』とも呼ばれる存在。

 目が覚めて起きている間、つまり意識が覚醒している時にはエリトナ山の外に出てしまう。そしてその巨体で全てを踏み潰し、行く先々を悉く燃やし続けて草木一本生えぬ死の大地にしてしまうのだ。


 そんな危険極まりない存在は、絶対に起きて覚醒してはならない。

 覚醒したガンヅェラを放っておけば、サイサクス大陸が滅亡してしまう。

 故にガンヅェラは起きる度に、人族総出で唯一の弱点である角を攻撃される。角を折られることで、角の回復のために自らエリトナ山に戻り長き眠りにつくのだ。


 エリトナ山の中、火口の奥底で眠るガンヅェラ。厄災の塊であるそれは、決して起きていてはいけない存在。

 それは即ち会話できないということなのだが、会話はできなくても時折寝言を呟く、というのはライトも以前火の女王から聞いていた。

 その寝言を聞けるチャンス、激レアな場面に遭遇となれば、ライトが速攻で食いつくもの無理はない。


『では、ライトもガンヅェラの近くに来てみるか? 少し待てば、また寝言を呟くであろう』

「行きます行きます!ガンヅェラの寝言とか、絶対に聞きたい!」

『火の姉様、妾もガンヅェラのお傍に近寄っても良うございますか?』

『もちろん。妾と同じ火属性の女王である其方に、ガンヅェラの傍に近寄れぬ道理などない』

『ありがとうございます!』


 火の女王の快諾を得たライトと炎の女王が、喜び勇んでガンヅェラの近くに寄っていく。

 寝言を聞くなら、顔の近くに行くのがベストだ。

 寝ているガンヅェラの横に早速移動したライトと炎の女王。しばしガンヅェラの寝顔を眺めている。


 こうして寝ている顔を見ていると、可愛らしく思えるんだけどなぁ……でも、起きたらホントに洒落ならんのだよな……どうもガンヅェラ自身には、自身の火を抑えるとかできないっぽいし。

 抑制の効かない火属性の守護神が外を出歩いたら、周囲にあるもの皆焼き尽くして当然だよな……起きて自由に外を出歩けないのは可哀想だけど、こればかりは仕方がない……


 そんなことをライトが考えていると、ガンヅェラが何やらムニャムニャ言っている。


『ン……足の裏がかゆいぃー』

『火の玉どんぶり、おかわりー!』

『甲羅に鳥のフンがついたぁ……拭き取ってー!』


 目を閉じながら、コロコロと表情を変えては寝言を呟くガンヅェラ。甲羅の寝言のくだりでは、モゾモゾと身を捩っている。

 夢の中で火の玉どんぶりなる食事をしたり、甲羅についた汚れを気にして悶えているのだろうか。

 その面白おかしさに、ライトも炎の女王も思わずププッ……と噴き出す。


「あ、足の裏が痒いんだ……掻いてあげようかな」

『火の玉どんぶり……何とも美味しそうなご馳走ですねぇ』

『この大きな甲羅に鳥のフンが一つ二つついたところで、砂粒一つにもならんのになぁ……』

「ガンヅェラって、もしかして実は神経質とか潔癖症なんですか?」

『フフフ、そうかもしれんな』


 時折モゾモゾと動くガンヅェラを眺めながら、ライトも火の姉妹も笑っている。

 ガンヅェラの寝顔と寝言、どちらも超激レアな場面に三人の会話はますます楽しく広がっていった。

 うおおおおッ!今日は十一月三連休初日でお出かけ&話の流れがなかなか思うように決まらず、右往左往で投稿時間ギリギリィ!><

 手直しや誤字脱字の見直しどころか、後書きもろくに書いてないけど、とにかく先に投稿&後程後書き追加しますぅぅぅぅ><



【追記】

 レオニスがラグナ神殿であれこれと奮闘している間の、ライトの過ごし方です。

 破壊神顕現&【武帝】対決事件が起きたのは、作中時間で十一月二十五日の日曜日。この日のライトは、ハリエット達の行き先がラグナ神殿ということでそのお出かけには随行していませんでした。

 ならば日曜日に何をしてたのか?と言えば。そこはやはりBCO関連でしょう!゜.+(・∀・)+.゜

 ……ということで。まずは事件前日の土曜日、クエストイベント進行のための素材集め兼火属性の女王姉妹との親睦会です。


 何を呑気なことを、と思うことなかれ。これは事件前日の土曜日のことであり、日曜日になっても晩御飯直前までライトは事件のことを全く知りませんですからね。 

 ライトが事件のことを知るのは、もう少し先のこと。それまでは大好きな火の姉妹との逢瀬やガンヅェラの寝顔や寝言で、束の間の幸福を堪能させてやってくださいまし。

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