05話 モモコの才能
「た、とぉ~~、やぁあ~~」
「な、なにをするの!?」
突然殴りかかった私に、おばあさんは驚いた様子で私のパンチを受け止めました。
私のパンチ軽すぎ問題! 強い! ここは交渉でなんとか……。
「ごめんなさい、おばあさん! おばあさんのことは大好きですけど、鬼は退治しなければいけないんです! そうすればきっと私はこの世界の役割を果たしたことになって、あとはゴロゴロし放題です! そういうことですよね!? おばあさん! 痛くしないから退治されちゃってください! 退治されたフリでいいんです、フリで。毎日一回お願いします」
「バカな子ね! あなたほんとに怠け者ね! そんなことして魔王と戦うなんの助けにもならないわよ! 第一、もし鬼を退治したら役割を果たしたっていうことだったとしても誰も見てないじゃない!」
私ははっとしました。確かに誰も見てないんじゃ責任を果たしたってそれを証明できません。報酬とかがあるにしても受け取ることもできないです。……でも勝手に判定してくれる世界のシステムかもしれないですし……。
私が迷っていると、おばあさんがはーっと溜息をついて言いました。
「いい? あなたの物語がどうであろと、この世界の勇者の目的は魔王に対抗すること、魔王を倒すことなの。あなたの世界での鬼のイメージがどうなのかは知らないけど、この世界では鬼というのはただの種族の一つなのよ?」
おばあさんは続けます。
「桃太郎っていうのは、鬼を倒したんでしょう? つまり鬼の力を手に入れたってわけ。おそらく、あなたはこの世界の鬼が持つ技術の才能があって、だから私達のところで生まれてたんだと思うの。多分鬼の力を手に入れろってことだと私は思うわ」
「そうなんですか……。私とんでもないことを……。ごめんなさいおばあさん!」
そういうことだったんですか……。一応反省した私は謝りました。ついでに瞳をウルウルさせてみました。
「ま、まあいいわ。勘違いとはいえ、あなたがすぐさま勇者の役割を果たそうとしたことはむしろ褒めてあげてもいいくらいよ!」
おばあさんはちょっと赤くなっていました。可愛いとお得ですね(笑)
「とりあえず、モモコ。あなたには私の鬼の力を教えるよ! しばらくそれでいいかな、おじいさん?」
「ああ、そうしよう。しばらくはおばあさんに任せるわい。わしも準備しておくのでの。モモコがんばるんじゃぞ」
鬼の修業が始まることになりました。