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04話 桃太郎

 おじいさんにはゴロゴロしたいって言ったものの、私にはこのままニートを決め込むなんて勇気はありませんでした。

 完全に養ってもらってるのに、大きな顔はできないですもんね。パートやバイトくらいならやってもいいかなと。

 勇者って響きはたいそうなものだけど、実際は何万人もいるうちの一人だし、そんな強大な力を持った人は少数派で、たいていはそれぞれ自分のできる範囲で、戦いやそれ以外の雑務を行っているのだとか。

 まあ、転生ものだと、勇者というより冒険者ですね!

 たいした力にはなれないかもしれませんが、危険が身にかからない程度には働きますよーと伝えたところ、おじいさんとおばあさんはとても喜んでくれました。


「そうか。ではモモコの才能を見つけてやらんといかんの。モモコはどんな物語に導かれたのかの? 心当たりはあるじゃろう? 自分の知らない物語に対して適正もくそもないからの」

「そうねぇ、その物語から才能の適性を探っていくのが王道ねぇ。私達が昔育てたキンタという勇者が知っていた物語は金太郎と言ってね、とても力持ちの男の人の物語なんだけど、キンタ自身は最初ヒョロヒョロの男の子だったけど筋トレしたらものすごく力持ちになったわ」


 才能ですかー。まあ、心当たりがある物語なんて一つしかないんですけど……。


「まあ、あるといえばありますね……。桃から生まれた桃太郎という話なんですけど……」

「「それだ!!!」」


 二人の声がハモりました。さすが長年連れ添っただけあって仲がよろしいですね。


「いやぁ幸先がいいのぅ。普通はなんの物語に導かれたのかを突き当てることから始めるのじゃが。一瞬でわかってしまうとはの」

「モモコ。その話を私達に教えて頂戴」


 おばあさんに促され、私は桃太郎のお話を伝えました。

 桃から生まれた桃太郎、彼はおじいさんとおばあさんに育てられ、やがて鬼退治に出かけます。途中、出会った犬、猿、雉に黍団子を渡して仲間にし、見事鬼を退治しました。


「でも、桃太郎一切特殊な能力を使ってないですよね? これは私の才能は特にない感じですかね? 毎日お団子作る仕事でもすればいいんですかね!?」


 なるべく怠けていたい私は、一応そんなことを聞いてみました。


「何を言っとるか! 時に平和的に、時には武力を持って! 全てを従え目的を達成する! 王の道じゃぞ! 王の中の王! 勇者王の誕生じゃ! ひゃっほい!」


 桃太郎の話を聞いたおじいさんはテンション上がりっぱなしでした。そんなおじいさんの頭をおばあさんがスパーンとはたきます。


「モモコ。物語の主人公の強さと、あなたたち勇者の強さは別物よ。でも才能のヒントは必ずそこにある。私はなぜあなたがこの村で生まれたかが分かった気がする。そしてあなたの才能の一つも多分分かったわ」


 そう言って、おばあさんはにやりと笑います。


「なぜなら、私は鬼だからよ」


 笑ったおばあさんの口には、鋭い牙が覗いていました。

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