02話 回想
この世界に私が転生してきたのは、ちょうど今から1週間くらい前になります。
それまで私は、ごく普通の日本人男性として生活していました。
とはいっても、ばっちり全部しっかり覚えているわけではなく、なんとなく曖昧な記憶なんですけどね。
なぜ転生することになったのか、そのあたりもあんまり覚えてないんです。
ただ、転生した先が大きな桃の中で、川に洗濯しに来たおばあさんがその桃を拾って、家でおじいさんと中を開けてみたら私がいたって感じです。
その場で、桃から生まれたから、モモコって名前を付けられました。
14、5歳くらいの真っ裸の女の子だったので、それを見たおじいさんは、おばあさんに目潰しを喰らわされてましたけどね。
私は、日本人の頃から超ポジティブシンキングな人間でした。
そんな私でも、転生した当初はかなりショックを受けました。
なにしろ、せっかく転生したのに女の子になっているじゃないですか!
ということは、せっかく転生したのに、よくある転生もののお話のように、たくさんの可愛い女の子とあんなことや、こんなことができないっていうことですよね!
でも、最初に鏡を見た瞬間、ポジティブな私はすぐに考えを改めました。その時の思考がこんな感じです。
――あれ!? せっかく異世界転生したんだから、可愛い女の子と仲良くしたいと思っていたけど、これ僕超美少女じゃない?
まさに僕の理想の女の子! 決めた! この世界で僕は可愛いヒロインを探して仲良くるんじゃなくて、自分自身が超絶可愛いヒロインとしてこの世界を楽しもう! 僕が理想とするような、清楚で謙虚で優しくて強くてかっこいい、色気たっぷりなスーパーヒロインに!
そしたら、毎日鏡を見るだけでもきっと満足できる!
あと、女の子とも友達としてなら仲良くなれるしね!
どうせ今までだって男なのに女の子みたいって言われて、男女の仲になんてなったことなかったしね!
よし、今日から内面から、性格から成りきっていこう!
……桃から生まれたけど別に鬼退治とか行かなくていいですよね? 私女子ですし。