表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/32

5


 気づけば彼女は地面に大の字でみっともなく倒れていた。青空が眩しく輝いている。何が起きたかさっぱりわからなかった。


「勉強熱心な人間は好きだぜ、頑張りなよ」


 眼前にギルドへ戻る選択画面が現れていた。彼女はスノーから背を向けて手をふる。会話をする気が無いという意思表示だろう。

 スノーは今すぐ訓練場からギルドへ戻るのがみっともないため、画面を開いたまま上半身を起こして息を整える。


 先程起こったことを必死で考えるが、実際にスノーの目で追いきれるものではなかった。

 攻撃を受けなかったのが余計にどんな現象が起こっているのか実感が乏わなかったのかもしれない。

 暴風で完全に動きを止められたと思っていたが、あの瞬間スノーの正面にいたはずの教官の姿はすでにスノーの目の前から消え去った。

 衝撃さえ含んだ巨大な音が何度も響いて、暴風が何度も彼女の体のそばを通り抜けていた。

 その間彼女は体を微塵も動かすことが出来ず、固定されたと行っても良い状態だった。

 実際に技のようなものを発動した場所を見れば、靴の形と衝撃があったのか浅い穴を作っていた。

 周囲を見れば同じような穴が周囲いくつか存在しており、その数はスノーが聞いた巨大な音の数と一致している。


「つまりあれは私のすぐ横を駆け抜けてたの?」

 

 どんなスキルを使ったのだろう。とりあえず覚えた槍スキルだったが、この時スノーはとてもわくわくした気持ちでいっぱいだった。サモナーばかりに気を取られていたが、案外探してみたら面白いものが見つかるのかもしれない。

 レアンとティグリーがお気楽にとことことスノーのそばへやってきて、じっとその姿を見つめていた。彼女は二匹の背中をわしゃわしゃと撫でる。


「癒やされるー悩んだけど頑張ってみるよー」


 くすぐったそうにする二匹に癒やされる時間を堪能してから、彼女はギルドへ戻る選択肢の「はい」を押した。

 ギルドにはちらほら人が降り、これからスキルを覚えるプレイヤーたちだと思われた。スノーは思わぬ疲労を抱えながらも受付の男性にお礼を告げて、すぐに立ち去ろうとしたところで呼び止められる。


「おいおい、待ちな。槍術を覚えたんだろ? ならこの初心者用の槍を持っていけ。全員にちゃんと配ってるんだぜ、武器が無いまま死なれちゃ困るからな!」


 まるで照れ隠しのような言い回しをするおっさんに、苦笑いを浮かべながら初心者の槍を受け取る。訓練場で使った木槍とほぼ同じ重さだ。あれは一体どんな素材を使ったんだと思いながら、スノーはアイテムストレージに初心者の槍を保管しタッチする。


*****************

名称:初心者の槍

ランク:G 耐久度:1000/1000

攻撃力+5

説明:とても壊れにくい初心者用の基本的な槍。いつまでもこれで戦うものではない。

******************


 この耐久度の数値がどれほどのものか、全然装備について調べていないのでスノーはわからなかったが、説明文にあるようにきっととても壊れにくいということは、かなり高い数値だと思われた。


「まあ、初心者用だからっていうシステム的な理由かな? とても壊れにくいって普通に戦う以外に便利な使い方があるのかな?

 おじさんありがとう!」


 受付カウンターの男性へお礼を言ってギルドを出る。

 すっかり昼になっており、日差しは強い。二匹は腹が減ったと言うように何度も鳴いてスノーを呼んでいた。


「わがままストマックだねー。一旦オーサさんの家に行こう。ご飯はオーサさんと一緒にどこか食べに行くか確認しないとね。あと、文句を言わなきゃ。帰りながら槍の装備についても見て回ろうかな」


 すぐに帰ろうというような不満げな声を上げる二匹に、手を合わせながら少々ゆっくりと歩き回る。そして、考えていた街の武器屋はマップで確認すればすぐに見つかった。

 オーサの家に向かう途中にちょうど立地していて、ルートを大幅に変更する必要がない。


「良かったー。帰り道にあるからちょっと寄らせてね」


 すれ違うプレイヤーたちが彼女と二匹がじゃれながら歩くのを奇異を見つけたような視線を送った。

 武器屋の中はたくさんの武器が壁に並べられている。彼女はその中で槍が並んでいる場所へ向かった。仕方がないなという具合で二匹たちもスノーの背後をとことこと付いてきてくれる。

 壁に近づけば自動で画面が立ち上がって現在この店の槍装備一覧リストが出された。

 当然安い順からしても初心者の槍よりも攻撃力が高いものから並んでいる。


「うーん、アイコンだけでもこれとかデザインカッコイイかも? でも、本当にお金稼がないとなぁ。

 お昼戻ったらスキルも覚えたし一回レベリングも考えて外出たほうが良いのかも」


 いくつか武器を見回ってそのお値段にがっくりとしたスノーを、二匹が満足したか? というように足元でペシペシと急かすためか前足で叩いてくる。


「ごめんごめん。じゃあ、行こうか? 午後は外でレベリングとお金稼ぎも兼ねた狩りした方が良いよね。オーサさんに相談してみよ」


次話は明日19時更新です。

お読みいただきありがとうございました。よろしければブクマ評価感想いただけますと嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i456393

イラスト作成:詰め木様(@tumeki_kou)
ユキナとホノカをお描きいただいたものです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ