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21月夜の眠花・ノスピネル


 ホノカとの約束よりもかなり早くログインする。理由としてはゲーム内のアクセサリー装備の充実を検討したためだ。特に氷狼を倒した際に入手したドロップで何かしらのアイテムに変更出来ないかの相談も検討していた。

 ゆらゆらと歩きながら遠くからでもわかるきらびやかなアクセサリーショップへ近寄ると、近くを歩いていた少年が彼女へ声をかけた。プレイヤーのようでスノーが首をかしげる。


「どうかしました?」

「そのショップに入ろうとしたんだろ? プレイヤーは断られるみたいだから諦めたほうが良いぜ」

「ご忠告ありがとうございます。それでは」

「変な目だな」


 最後にボソリと言った少年からのアドバイスに礼をして、そのショップまで進んでいく。少年はやれやれと言った具合で、彼女が追い返されるのを待つ気のようだった。

 入り口近くに守衛はいたが特に何の反応も見せず、スノーは大開になっている扉をくぐって店の中に足を進む。

 従業員と思われる女性がカウンターにおり、スノーは彼女の一人に声をかけた。


「ここはアクセサリーを取り扱うお店で良いですか?」

「はい、その通りです。何かご入用ですか? それともドロップ品の加工依頼でしょうか?」

「追い出されるかと思いましたが、普通に受付してもらえるんですね。入り口で男の子に断られるって助言されましたが」

「冥の女神と約定を取り交わしてアクセサリー効果を拡張済みの方は問題ありませんよ。先程カウンターに手を置かれた鉱石も色がそのままでしょう?」

「なるほど。希望としては、こちらの品で何ができるか相談したいです」


 スノーはアイテムストレージにある氷狼のドロップで爪、牙、毛皮を数個取り出す。女性は驚いてじっくりとそのドロップを観察する。


「氷狼ネージュと戦われたのですね」

「有名なんですか?」

「アイルリューネ様が遣わしたといわれる狼ですからね。人に試練を課すものと言われています。アイルリューネの瞳を持たれているので旅人さんは奇縁に振り回されそうですね」


 楽しそうに笑う女性へスノーは首をかしげた。


「良いものでは?」

「縁を良い物にするかどうかは人次第です。その瞳を持って生まれ縁に振り回された物語もこの大陸ではよく語られていますよ。子供の頃の読み物としても良く話されるんです。その瞳を持つものがネージュに倒されて亡くなる話も稀なことではないんです」

「気をつけますね。それでどんなものに加工できるか事前に分かりますか?」

「あっと、失礼いたしました。そうですね、基本的に氷狼の素材については武器や防具の素材の一つとして使うのが一般的なので、アクセサリーは珍しいんです。

 爪を素材にしてイヤリングはどうでしょうか」


 コンソールが立ち上がり、完成アイテムの予想が表示される。

 見た目もスノーの好みの造形をしており、効果もさすがに初期の能力のためあまり強いものでもないが付与されており不満はない。


「綺麗でいいですね。これでお願いします!」

「了解いたしました。それでは作業費とアイテムをお預かりしますね」


 オーサさんからのお小遣いとアイテムが減少して、メニュー上にアイテム作成中の表示が追加され経過時間は表示される。

(あ、お小遣いじゃなくて自分で稼ぎますって言ったのに使っちゃった……)

 少しばかり反省し、これから稼ぎますとスノーは頭の中で誓う。

 少々待てば受け取るようでスノーは安堵し、完成まで何かしようかと考えていたところに、アイテムを預かりカウンターから離れていた女性がスノーへ声をかけた。


「申し訳ありません。当店の代表がスノー様にお会いしたいということですので、よろしいでしょうか?」

「私になんの用があるかわかりませんが、完成まで待たせてもらおうかと思っていたので大丈夫です」

「良かったです、それではこちらへどうぞ」


 女性に案内されてカウンターから離れた場所に作られている大きな階段を登り3階へと上がる。落ち着いた雰囲気でフロアのインテリアが構成されており、静謐な空気が満ちていた。

 案内された部屋へ通され、女性が飲み物を置き代表を呼んでくるためと部屋から離れる。

 姿を表した男はほっそりとした見た目でアクセサリーを扱う店の代表と言われてもピンとこない見た目をしていた。


「スノー様、お待たせして申し訳ありません。私はルドウェンと申します」

「ありがとうございます。それで私に何かようでしょうか? まだ駆け出しの人間なので協力できることなんて無いように思いますが」

「スノー様はオーサ様のお弟子さんとお噂ですよ」

「はぁ、まあ、そう言われてるみたいです」

「そして縁を呼ぶアイルリューネの瞳をお持ちである」

「そう言われるみたいです。自覚は無いんですが。ただスカイブルーの瞳なだけですよね」


 ルドウェンは目を見開いて珍しい物を見るように彼女を見つめた。


「……鏡は見られてないのですか?」

「自分の顔なんでそんなに見ないですね」

「アイルリューネの瞳はただのスカイブルーの目ではないですよ。目の中にアイルリューネ様を表す何かしらの文様がありますからね」

「うぇ、知りませんでした……。怖くないですか?」

「いいえ、その瞳を見てそのような感情を持つ人間はこの大陸にはおりませんよ」

「そう、ですか。ありがとうございます」

「さて、それでお願いとしては近くにある薄暗い森でとある花を取ってきていただきたい」

「花ですか? 珍しいものなんですか?」

「そうです。冥の女神と縁のある花なのですが、夜の間に森の最奥にある泉で摘み取らねばならないのです。しかし、よほど運が良い人でないとそも咲いているのを見つけられず」


 スノーは記憶にある自分のステータスの幸運は1なんだけどと思いつつクエストの概要を聞けば、ちょうどオーサが提案してきた狩り場でもあるし、受けてもいいかと思いスノーはクエストを受注する。


【月夜の眠花・ノスピネルの採取】


 クエスト受注後、ちょうど時間になったのかアクセサリーがスノーの手元に届けられる。

 アイテムの効果を見て、完成予想図にはなかった効果が付与されておりスノーが驚いているとルドウェンが口を開いた。


「細工師に話したところ、久々のアイルリューネの縁あるものと言うことで気合を入れたということです。職人側のやる気なので追加費用はございません」

「ありがとうございます! 大事に使っていきますね」


 目の前のルドウェンへお礼を述べて、スノーは両耳に狼の爪とは思えない宝石のような輝きを持つイヤリングを身につけた。

 蒼を基調にしたイヤリングが揺れる。

 クエストの確認も終わり、スノーがアクセサリーショップをあとにすれば入り口にヤキモキした表情の少年がまだ突っ立っていた。

(この人は何をしているんだろう? ゲームなんだから攻略進めれば良いのに)

 まだ居たのかと思いながら、スノーが無視してオーサの家へ向かおうとすれば声が掛けられスノーは足をとめた。


「あんた、教えてくれ! どうやったらアクセサリーショップに入れるんだよ! ってか、それもアクセサリー? 装備できるのか?」

「神殿で偶然知りました。それじゃあ」


 それだけ告げて少年が追いかけてくるのも無視して、スノーは走り出す。

 朝晴の空から吹き下ろす風が駆け抜ける彼女とともに踊り、爽やかに走り抜けていく。

次話は明日18時更新予定です。

お読みいただきありがとうございます。ブクマ評価していただいた方、まことにありがとうございます。

また、よろしければブクマ評価感想いただければ嬉しいです。

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イラスト作成:詰め木様(@tumeki_kou)
ユキナとホノカをお描きいただいたものです。
― 新着の感想 ―
[一言] 何かしつこそうなガキだなオンラインゲームでただ自分の体験談で知ったかぶりして違う結果に知りたがるなんて正直これでストーカーでもやったらペナルティでまず出禁、下手すればアカバンだってあり得るの…
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