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13スノー初戦闘!

 レアンをオーサの元へ返し、スノーは改めて準備を整えていた。道具屋で回復ポーションを10本ずつ購入する。お金は当然オーサさんからのお小遣いだ。

 しかし、ポーションは使用条件と使用モーション時間および使用感覚にクールタイムが存在するなど、かなり使いにくい代物だった。

 ポーションを飲むモーションが存在するため完飲まで他モーションが不可であり、回避のステップスキルなどが出来ない。さらに1本使用後同一ステータス回復ポーションは2分間のクールタイムが存在している。

 この同一ステータスというのはHP、MP、SPとそれぞれのステータスのことをさしており、例えば体力回復ポーションを使用しHPを回復させクールタイムが発生していても、SPを回復させるスタミナ回復ポーションは使用可能というものだ。


「使いにくいなぁ」


 ポーションの条件の厳しさに思わずそんな感情がスノーの口から吐き出された。スノーは用意を整え、町の外へ向かう。

 このゲームのAIはとても優秀でありスノーが街の門をもう一度くぐり抜ける際に、門番を担当するNPCがなんとも言えない表情でスノーを見ていた。

 スノーは少々足早に門を通り抜け、街の外に出る。

 先ほどとは違い、高揚しつつも走り出すのを抑える。

 風がおかえりと言うようにスノーの肌を心地よく撫でて髪が肌にサラサラと触れる感触がくすぐったく感じられた。思い切り深呼吸して、今度は最低限武器と防具である槍と小型盾を装備した。比較的細かく装備位置は変更できるようで、小型盾は何度か調整して装備位置を記録させる。

 槍は標準的な長さで片手で扱うには取り回しにくいサイズであった。ここはもっと検討が必要な点だろうとスノーはメモしておく。

 確認のためにスキルなしで槍を振れば、スキル習得のために繰り返した動作が自然と繰り返されて風を裂く音が鳴る。


「よし」


 静かに頷き狐の面からのぞく瞳は力強く草原を見て、慎重にモンスターを探して歩き回る。

 周りにはmobモンスターをパーティで狩るグループがいくつもおり、手短な位置には当然空いているモンスターはいなかった。

 そのためスノーは慎重にパーティ狩りの邪魔をしないように迂回しつつ、他のPTの狩りも観察しながら歩いていく。

 ちょうど左手でうさぎモンスターを狙ったPTが声をあげた。


「挑発、ガード。よし、俺が釣ったからカマルは背中から攻撃してくれ! シュララはデバフお願いする」

「了解です。アーマーダウン!」

「オッケー! スラッシュ!」


 手際よくタンク役がmobを挑発で釣り上げ、回復とバフデバフ担当であろう女性が距離を取りつつデバフを掛ける。それをしっかりと確認して斧で攻撃を行う。野良よりは手際がよく、前からPTを組んでいるメンツだろうか。

 しっかりと観察すれば、うさぎmobは結局都合デバフを受けて魔法2回と物理攻撃役が多くのレベル1スキルを繰り返したところで倒れた。

 やはりかなり戦闘として厳しいと思われて、スノーは自分はどうやって戦うか考えながらPTから離れて歩いていく。

 しばらくはいろんなPTが狩りをしていたが、ようやく周りから人が減りだした場所を見つけたスノーはmobモンスターに向かって槍を構えた。先程とは違ううさぎモンスターだ。

 数メートル距離を取る。


「さあ、行くよ! チャージ!」


 槍を振り声を上げる。槍スキルのレベル1で次の槍スキル攻撃に威力アップを付けるスキルだ。このスキルは発動に任意の言葉を発する条件があるが、スノーはまだ設定していないため初期設定のチャージを発した。

 初心者の槍が淡いミドリの輝きを付与される。

 一歩力強く踏み込み、数メートルの距離を一気に詰め寄る。うさぎはしっかりとスノーを睨んで待ち構えていた。

 瞬間、スノーは槍のレベル2スキルであるスラスト1を発動する。

 スラスト1に突進効果は無いため飛び込んだ動作は一気に急制動がかかるが、スキルによって動く腕には先程の突進の勢いが乗せられた突きが放たれる。

 ミドリの残光を世界に刻み速度の乗った突きはうさぎに突き刺さる。


「ピギッ」

「よし! 追加のスラスト!」

 

(SP100にスキル1と2の発動で30残り70。同じ行動で2回しか攻撃出来ない。

 先程のPT狩りを参考にすれば、SP10しか残っていない状態で距離を取ってスタポを飲むか、相手から距離を取って数秒間静止しなければSPの回復が始まらない)

 こちらがチャージスキルを取る時間を見込まず、もう一度スキル2を叩き込む。

 その攻撃の反動でうさぎは後方に飛ばされる。

 スノーはそこで距離が空いた有利を生かしてSPを回復させるための算段をつけようとして、目の前の光景に失敗を悟った。


「嘘、わざと!?」

「ピギュギュ!」


 うさぎモンスターはスノーの2度めのスラストを確かにまともに食らったが、後方に行ったのはうさぎ自身の意思によるものだった。

 素早く体勢を立て直したうさぎモンスターは、気合の声を上げて鍛えられた後ろ足を起点とした鋭いタックルをスノーへ放つ。

 慌てて回避スキルのステップを発動すれば、SPが20も減らされる。残りは30。しかもステップはクールタイムで30秒後だ。ひねって避けたスノーの視界の端でうさぎモンスターはプレイヤーよりも達者に早く体勢を立て直してタックルを放つ。

 左腕の盾を動かせば、攻撃線がまっすぐスノーのひねった体に向けて伸びていた。


(パリィは間に合わない、なら。ガード! くぅっ、残り20)


 うさぎの攻撃をスノーは盾でしっかりと受け止める。体勢はスキル発動によるシステム補正でしっかりと体勢が整えられて受け止める事ができた。

 半分に減衰されたうさぎの攻撃の衝撃が体に伝わり、HPが減少する。スノーが思ったよりもダメージが大きい。

 攻撃を盾で耐えたスノーの眼前に勢いを殺されたうさぎは着地するが、それは目と鼻の先と呼べるほど近い。そして、このゲームのモンスターはターン制でもない。

 うさぎがジャンプする構えを見せたことで、スノーは槍を無理やり振るった。

 ゴルフで地面のボールを飛ばすように器用に槍の後方にある石突部分近くをうさぎに当てた。

 スキルを発動しないためダメージはない。しかし、すくい上げるように打ち上げたうさぎの滞空時間はスノーが悪く想定していたよりも長い。だが、全力で振るったにしては吹き飛び方が弱かった。


(SPを回復しないと。ポーションを! ……飲む動作が長いかも)


 槍を背中へ担ぐように納刀し、アイテムストレージからスタミナポーションを取り出す。ポーションの蓋を開けて口につけ味のしない液体を飲んでいく。しかし、思ったよりもポーションの飲む動作が長い。

 早く早くと願って焦るスノーの目の前に出来得る限り遠くに飛ばしたはずのうさぎモンスターは勢いのあるダッシュで戻ってきており、そして四度目のタックルをスノーへ放った。

 今度は受け止めることは出来ず、スノーは甘んじてモンスターからのタックルをくらい、前回のスライムと同じ末路をたどった。


 同日二度目の街の初期転送位置にリスポーンしたスノーは、静かにオーサの家へと向かった。スノーが想像していたよりもこのゲームの戦闘は厳しかった。


次話は明日18時更新予定です。

お読みいただきありがとうございます。ブクマ評価していただいた方、まことにありがとうございます。

また、よろしければブクマ評価感想いただければ嬉しいです。

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イラスト作成:詰め木様(@tumeki_kou)
ユキナとホノカをお描きいただいたものです。
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