サキュバス襲来!!
「結構早く飛ぶんだな」
と俺が言うと、
「このペースなら半日位で到着するね」
とアルムは、飛び慣れたような表情で言う。
村や町、山々が次々に現れては過ぎ去っていく……。
風の心地よさが全身を包む。
「風が気持ちいいね、ワッセちゃん。癖になりそう」
マナちゃんは風を感じながら、俺に話しかけてきた。
「そうだね。これは悪くない」
飛び始めてから、どれくらいたっただろうか……。一時間位だろうか……。
アルムが、飛行速度を緩やかに落とし、何かに警戒している。
「何かが近づいてくる!敵かもしれない!」
アルムはそう言い、周囲に目を配る。俺達も用心し、敵への警戒を怠らないようにした。
すると、前方から女の子が現れた。
黒いドレスを身に纏い、悪魔のような格好をしている。
「あんたが、神獣かな?アタシの物になれよ」
そいつはそう言うと、俺のほうに接近してきた。
「君は何者だい?」
アルムは、俺とそいつの間に立ちはだかり、そう問いかけた。
「アタシ?アタシはサキュバスだよ。そこの神獣を、アタシの物にしにきたのさ」
「ふざけるな。神獣様は物ではなし、これから教皇様の元へ向かうんだ」
アルムは怒りながらそう言う。
「俺を物にして一体どうするつもりだ?」
「決まってるだろ!アタシのペットとして可愛がってやるのさ」
そいつは、嬉しそうに答えた。
「そうはさせないよ!ワッセちゃんは私が召喚したんだから!」
「ならさ、アタシが召喚主を倒しちゃえば良いのかな?」
そいつは勢いよくマナちゃんに近づいてくると、手を掲げ殴ろうとしてくる。
「危ない!マナちゃん!」
俺はマナちゃんの目の前に鉄の塊を創造し、マナちゃんを敵の脅威から守った。
が、厚さ数十センチメートルはあろうかと言う鉄の塊が、いとも容易く崩壊させられる。
「そんなものアタシの前じゃ紙切れみたいなもんだよ。」
なんて怪力だ、この女の子は……。俺がその女の子の危険性を認知するや否や、
「一旦下に降りよう。空中戦は分が悪そうだ」
とアルムが叫ぶ。俺達は急降下し、地面に着陸する。
「僕は飛べるけれど、空中戦はあまり得意ではないんだ。そこのサキュバスは空中戦慣れしてるみたいだし、地上戦をするのが正解だと思う」
「そうなのか、分かった。」
と状況を把握した俺は答える。
「ふーん空中戦はしないのか。アタシつまらないなあ。まあ地上戦でも良いけどね」
敵は余裕そうに言った。
「あの怪力をどうするかだなあ。アルムは戦えるのか?」
と俺は問いかける。
「うーん、僕はあまり戦闘は得意じゃないんだ。一応簡単な剣術やサポート魔法使いくらいならいけるけどね。ただあのパワーの前じゃ僕の剣術は役にたたないかも……」
アルムは自信なさげにそう答えた。
「私がワッセちゃんに強化魔法をかけて戦うってのはどうかな?」
マナちゃんが提案をする。
「分かった、それでいこう!」
俺はその提案を受け入れた。
「話し合いは終わったのかな?そろそろアタシ行かせてもらうよ?」
そう言うと猛スピードで突っ込んでくるサキュバス。
「ウィース・ホルス」
マナちゃんがそう唱えると、俺の体の底からグツグツと力が沸いてくるのを感じた。
「おお、これならいけそうだ!」
俺は人型になり、サキュバスの攻撃を真っ正面から受け止めた!
腕がかなり痺れるけれど、これならなんとかなりそうだ。
「な、なんだと!?アタシの攻撃を止めただと?」
サキュバスはびっくりしたような表情で狼狽する。
その隙をついて、俺は一発蹴りを入れた。物凄い音を立てて、サキュバスが吹き飛んでいく。五、六メートルは飛ばされたのではないだろうか。
「がはっ……。やるねぇ、あんたら」
サキュバスは血をペッと吐きながら立ち上がる。
「アタシも本気でいこうか!」
そう言うとサキュバスは脱ぎ始め下着姿になり、
「こっちを見ろ!」
と言い放った。
俺は美しいサキュバスの曲線美に目を奪われ一瞬硬直した。その隙をつかれて、サキュバスに接近をされる。
「うわーん、恥ずかしいから、やっぱ見るな」
そう言ってサキュバスは俺に殴りを一発入れた。
俺は数十メートル程吹き飛ばされた。全身に激痛が走る。起きあがるのも厳しそうだ。
「ワッセちゃん回復させるね!レスレクション!」
マナちゃんが唱えると、俺の体から痛みが消え去り、体力が回復していくのが分かる。
「いてて…これならまだ戦えそうだ」
俺はそう言って立ち上がる。
しかし、サキュバス自体は恥ずかしがっているようだが、あの魅了してくるのは厄介だ。動きが止められ、その隙に攻撃されてしまう……
何かサキュバスを倒す方法はないだろうか……。