教皇の使い
「君が神獣ワッセ様で、君がその召喚主のマナちゃんだね。僕はアルムよろしく。」
「よろしく、アルム」
「アルム様、この度はありがとうございました。よろしくお願いします。」
「さてと本題に入ろうか。僕は教皇の命令で君達を迎えに来たんだ」
「え、教皇様の?」
マナちゃんは驚く。
「うん、神獣様が現れたってのは、気配で感じていたのだけれど、詳しい場所まで見つけるのに時間がかかってね。ちょうど雷が落ちた場所に行ってみたら、君達を見つけられたんだ」
「アルムは、教皇様の使いで、俺を探していたってことか?」
「そうですね」
アルムはかしこまって言う。
「良いよ、お嬢ちゃん、そんなに謙遜しなくても。タメ語とかで良いって。」
俺はレディーには優しいのだ。
「そうかい?それなら、そうさせて貰うよ。後、僕は女の子じゃなくって男の子だよ」
「え、こんなに可愛いのに?俺やマナちゃん並に可愛いのに?」
「う、うん。よく女の子と間違われるけどね。僕はね、教皇様の元で一流の鍛冶屋を目指して修行してるんだ」
「鍛冶屋ってことは武器とか防具とか作れるのか?」
「まあ、難しくないのならね。こう見えて腕前は結構凄いんだよ」
アルムは可愛らしい腕を出しグッとして見せる。
「アルム様は迎えに来たと言いましたが、どこへ私達を連れていくおつもりですか?」
「いいよ、マナちゃんも僕にはタメ語で」
「は、はい」
「うーんとね、できればこの後神聖ミヤオオ帝国に来て欲しいんだけど駄目かな?」
「神聖ミヤオオ帝国?どこだ?そこは?」
俺は、何度も出てくる見知らぬ単語に、疑問を覚えた。
「ええとね、ワッセちゃん、ここがゲオア王国のハズレの村で、その隣がラハヤミ帝国で、更に隣にあるのがね神聖ミヤオオ帝国なんだよ。」
「へぇ、マナちゃんは物知りなんだな」
「いやまあ、この辺の人なら誰でも知ってるけどね、えへへ」
マナちゃんは可愛らしく笑う。
「で、その神聖ミヤオオ帝国や教皇が、俺達になんの用なんだ?」
俺は少し警戒しながら聞いた。
「神獣様に教皇様が、君達に一目会いたいと言っているんだ。神獣様は古来より神の使いと言われてるからね。」
「なるほどね。てっきり農作機やゲーム機について怒られるのかと思ったよ。」
「神獣様を怒るなんて、とんでもない。あ、そこの領主はしっかり懲らしめておくから安心してね」
「ひぃ」
領主の悲鳴が聞こえた。
「神聖ミヤオオ帝国に行くと言うことは、暫くこの村を離れると言うことですか?」
マナちゃんが少し不安げに聞く。
「うん、そうなるね。まあ、僕の飛行魔法で行くから、そんなに時間はかからないけれどね」
「そうですか……。でも、この村は私が居ないと、守り手が居なくなってしまうんです。」
「なあに安心して欲しいのぉ」
村長が後ろから話しかけてきた。
「マナがおらん間は、わしがこの村を守っておくからのぉ」
「でもお爺ちゃんは身体が……」
「なぁに教皇様にお会いに行くんじゃ仕方あるまいのぉ。それにわしも村の一つを短時間守れない程おいぼれてはおらんのでのぉ」
「……。分かった。留守の間は任せるね」
「明日には出発したいんだけど、良いかな?」
「うん、大丈夫そうだよ」
マナちゃんは安心してそう答える。
「オッケー」
領主がアルムに引きずられていく姿が見えた。
一旦解散した後に、村長が俺の元を訪れた。
「先ほどの戦い見事でしたのぉ。」
「いやいや、まあそれほどでもあるかな?」
俺は少し自慢気に言う。
「恐らくあなた様は、最強クラスの実力の持ち主じゃ。大抵の敵ならば苦労せずに倒せるでしょうのぉ」
「おいおい、誉めても何もでないよ?」
「えぇ。……ですが、最強クラスの敵や、特殊なスキルを持った敵には、注意して下さいのぉ。」
「特殊なスキルや、最強クラスの敵?」
「はい、この世には、あなた様に匹敵するか、それ以上の強者もおります故にですじゃ。」
「そんな奴らもいるのか。てっきり俺が、無敵なんじゃないかと思っていたよ」
「確かにあなた様はお強い。しかし、あなた様より強いものはもちろんのこと、弱いものでも工夫次第では、あなた様を倒せたりもできますのじゃ。」
「そんなことが可能なのか?」
「えぇ、例えばこの私とか」
村長が眼孔を光らせる。
「はは、冗談はやめてくれ……?」
「いえいえ、冗談ではありませんのぉ。私は元B級冒険者でしてのぉ。経験をフルに活用すれば、あなた様に勝てるか、苦戦させることくらいは、できますのじゃ」
村長が、覚悟を決めたような表情で言う。
「あなた様には、一度、戦いと言うものが、どういう物なのか知っておいて欲しいのですじゃ」
「それって、つまり……」
「ええ、私と対戦して貰えませんかのお?」